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幸せ
SNSよりの転載に多少修正した作品。 
ふつーのバイト夕鈴と、小犬陛下です。 今回はふつーの弟、青慎の主観で話が進む、ふつーの短編です。 そういえば春一番が吹き荒れ、犬が怯えて大変な一夜でした。 花粉も飛び、さっそく鼻炎薬服用中。 鼻と口中が渇いて、辛いです。


では、どうぞ







「姉さん、もし・・・もし、科挙の試験・・・、落ちたらごめんね」
「何を言っているの、青慎。 落ちるなんて考える前に、まずは一生懸命頑張るだけよ! 一生懸命やっていたら、ちゃんと結果が出るから、それまでは毎日頑張りましょう? ね、青慎」

姉が勢いよく振り向くと同時に大丈夫だと励ましてくれるが、現実は厳しい。 
今の陛下の御世になってから平民からの登城も可能と謂われるようになり、狭き門はさらに狭くなりつつあるのが現状だ。

「うん、頑張るね」
「だけど無理はしないでね。 無理をして体を壊すことだけはしないで」
「ありがとう、姉さん。 風邪をひかないよう、気を付けるよ」
「手洗い、うがい、そして十分な睡眠。 しっかりした食事もね。 ・・・時々しか帰って来れないけど、青慎は家のことより、自分の勉強だけに集中して。 ああっ、父さんが居たら注意出来るのに!」
「大丈夫だよ、姉さん」

お金のある貴族は専門の講師を家に招き、子息に充分な勉強をさせてると聞く。 自分も庶民にしては充分な時間を勉強に当てることが出来ているが、それは姉の力によるところが大きい。
姉ばかりに負担を掛けているのは心苦しいが、ここまで頑張って来て投げ出す訳にはいかない。
部屋の窓から見える梅の花に誓いを立てる。 
ここまで期待されているのだ、応えなきゃ男として廃る!

「頑張って、僕が姉さんを幸せにしなきゃ!」
「それは大丈夫だよ、弟君」

驚いて振り向くと、いつの間にか部屋の入り口に李翔さんがいて、にっこり微笑んでいた。 
今回もまた姉の里帰りに着いてきた彼は、姉のバイト上司だと聞いている。 
どうしてバイト上司である貴族が毎回、姉の里帰りに付き合って下町に来るのか不思議だが、深く追求しようとは思わない。 以前尋ねてみたことがあるが、姉は蒼褪めているのに紅潮しているという、世にも不思議な顔でひどく狼狽するから、これは訊いては駄目なことのかと納得した。 
納得しないと、姉が可哀想という気になったのかも知れない。
 
どうやら李翔さんは、夕餉が出来るまで暇だからと僕の部屋に来たようだ。

「君のお姉さんは、今のままでも充分幸せだと思うよ。 大事な弟のために頑張ることが出来るって、毎日、それはもう楽しそうに嬉しそうに働いているから」
「・・・李翔さんにそう言って頂き、嬉しいです。 ありがとう御座います。でも、もっと頑張って、もっと幸せになって貰えるように頑張りたいです」
「君は本当にお姉さん思いだね。 幸せにしたいと思うのは僕も同じだけど、お姉さんは結構頑固でね。 もう少し押した方がいいのか、引いた方がいいのか・・・・。 それも楽しいんだけどね」

耳に届いた台詞に青慎が顔を上げると、李翔さんが妖艶ともいえる笑みを浮かべていた。
その笑顔に、ぞくりと背が震え、何故か怖いと息を飲む。 姉が幸せになれるなら、誰と一緒になろうとも、どんな人が義理の兄になろうともいいとは思っていた。 姉が選ぶ人に悪い人はいないと、そう思っていたのだが。
いや、姉さんが幸せならいい。 
いい筈だ・・・・・・。

青慎が逡巡している間に李翔さんは姿を消していた。 いつの間にか強張っていた肩から力を抜き、大きく息を吐く。 意識を切り替えて勉強しようと教卓に向って筆を持つと、遠くから姉の叫び声が聞こえてきた。

「きゅ、急に後ろから抱きつくのは止めて下さい!」
「一番美味しそうなのは、どれかなって思ったら、身体が動いちゃって」
「・・・まだ生地を捏ねている段階なのですが?」
「うん、僕もよく捏ねたいなぁ? いいかな、夕鈴?」
「な、何がいいって? ・・・・えっ? やっ、やぁ・・・っ!」


姉が幸せなら、幸せだと感じているなら、どんな義理兄でも、どんと来い!

遠くから聞こえてきた何かが落ちる音と、姉のくぐもった呻き声を耳に、青慎は覚悟を決めた。



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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

短編 | 00:11:17 | トラックバック(0) | コメント(9)
コメント
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2016-02-17 水 07:40:52 | | [編集]
「どんな義理兄でも、どんと来い」青慎君の決意はすばらしい!しかし、事実は本当に恐ろしいんだよぉ~。
腹黒に慣れると、ふつうの展開が物足りないのはなぜだろう?
2016-02-17 水 10:00:54 | URL | ますたぬ [編集]
腹黒に慣れると
普通の陛下も、何か裏がある様にしか見えませんね(^^;

昨日今日と本当に風が強いですねー。
私も花粉で鼻がむず痒くて仕方ありませんッ!!
2016-02-21 日 11:26:59 | URL | ハニー [編集]
Re: タイトルなし
れん様、コメントをありがとう御座います。青慎は夕鈴の期待に応えて、きっと科挙に合格して順調に官吏への道を進むでしょう。そして王宮に足を踏み入れ、様々な洗礼を受け、幾年か過ぎてから自分が誰に従事しているのかを知り、腰を抜かすんじゃないかな。その前に夕鈴が幸せになっていて、「あれ、義兄・・・だよね?」とひとり突っ込みを覚えるでしょう。あと数日でコミック発売、めちゃ楽しみです!
2016-02-29 月 22:45:50 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。青慎が事実を知った時の顔を想像するのが楽しいです。「・・・・」無言になって、それでも笑みを崩さずに拱手しながら低頭する。そんで、後日に慌てたように駆け寄ってくる李翔さんに、どう対応するのか・・・。うん、頑張れ青慎! 腹黒好きで嬉しいっす。
2016-02-29 月 22:49:50 | URL | あお [編集]
Re: 腹黒に慣れると
ハニー様、コメントをありがとう御座います。腹黒じゃなきゃ、王様なんてやってられないよね~。水月さんも実は弱々しい仮面を被っていながら、堂々と家の威光を押し出して官吏職をボイコットしていたんだから、たいした珠です(笑) 逆に方淵なんかは損してる人かも。李順さんは・・・・んん、彼もある意味、苦労人ですよね。腹黒狼に振り回されている調教師? 
2016-02-29 月 22:56:07 | URL | あお [編集]
うさぎのしっぽ様、めちゃくちゃお久し振りです!! コメントをありがとう御座います。そして、おめでとう!! うちの娘も志望のところに春から行くことになり、わたしゃ、その支払い金額に乾いた笑いを零しまくっています。娘の親友も無事に合格し、この間一緒に菓子パーティしました。春が来て嬉しいです。 でも・・・・花粉が・・・(泣笑)
本当に、ほんとーにおめでとう御座います!
2016-02-29 月 22:59:50 | URL | あお [編集]
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2016-03-08 火 19:33:37 | | [編集]
Re: 初めまして
順子様、コメントをありがとう御座います。めちゃくちゃ嬉しくて、舞い上がってしまうようなコメントを頂き、しばらく天国を彷徨っていました。拙い愚作をお読み頂き、すごっくとっても感謝です!! ここ最近は卒業した娘と遊び回ったり、実家に行ったりとパソコン離れが著しい日々を過ごしてました。ひと月放置すると妙な広告が出ちゃうので、その前に・・・・と思いながら遊び回り続け、今慌てて書き出したところです。長編はもうしばらくお休みで、短編で誤魔化している今日この頃。のんびり更新ですが、たま~に足を運んでいただけると嬉しいです!
2016-03-14 月 11:03:11 | URL | あお [編集]
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