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綺麗な悪意  2

雨が上がり、午後から晴天。 すっきりして気持ちの良い天気に嬉しくなる。近くの桜の木々の蕾も膨らみ、枝枝がピンク色に染まって見えている。ああ、春の陽気だ・・・・。 しかーし!
目が痒い!水っ鼻が垂れる! 飛んでるっ!飛んでるよ!杉の花粉が飛んでるよ!
誰がスギ花粉を如何にかしろ!


では、どうぞ
















翌日、医局で目を覚ました夕鈴は、侍医に血圧や脈、体温、心音を診て貰い、特に問題はないと言われて、ようやくほっとした。 念のためと侍医らが見守る中で粥を食べ、嘔吐が無いかと心配された。 緊張の中、それでも美味しく食べられて夕鈴が一番安堵する。

後から陛下が様子を見に来たと聞いて、忙しい中心配を掛けてしまったことに胸を痛ませ、同時に寝顔を見られてしまった事実に身もだえした。

ようやく気を落ち着けて、取り敢えず自室に戻り衣装を着替えることにした夕鈴に、侍女たちが心配そうな表情で手を貸してくれ、元気な妃の様子にやっと安心した顔になってくれた。
陛下にも心配を掛けたと聞いていた夕鈴は、少し顔を見せようと着替えて執務室へ向かおうと部屋を出た時_______。


目の前が大きく湾曲して歪んで見え 「え?」 と思った時にはバランスを崩し膝がついていた。 再び、ズキンッと頭痛に襲われ、昨日より早い時間からの頭痛に困惑する。
「如何なさいましたか、お妃様っ!?」
侍女が慌てて妃を助けようと走り寄るが、違和感を感じた夕鈴はそれを制した。

「・・・駄目っ! 私に近寄らないで! これは・・・ 何かおかしい」

手で侍女を制止、ふら付きながら立ち上がるとどうにか部屋に戻った。
侍女には替えの衣装を頼み、寝所へと一人入る。 手先が痺れ、頭痛が襲う中、衣装を脱ぎ自身が身に着けていたものを窓から遠くへ投げ捨てていき、最後に沓を手に窓から捨てようとしていた時、昨日のような大きな頭痛が襲って来た。

「いっ・・ 痛っ・・・!」

頭を押さえると髪飾りの生花が落ち、痛む頭を押さえながらその花に手を伸ばそうとして身体が傾き、夕鈴は床に倒れてしまった。

「お妃ちゃん!? 何が・・・」

妃警護のため屋根の上に居る浩大の耳に、慌てたような侍女と夕鈴の声が聞こえた。 そして、窓から投げ出される妃の衣装らしきもの。 浩大が慌てて窓から部屋に飛び込むと意識を失った夕鈴が倒れていた。
くんっと部屋の中に漂う微かな匂いに気付く。

胸当てと下穿き姿の夕鈴に急ぎ浩大が掛け布を掛け、寝台に寝かせるとその手から花が零れ落ちた。 
「一体・・・?」
その花を持ち上げると、蟲が飛び出し開いた窓から逃げて行った。 
急ぎ小刀を投げるも当たらず、蟲はそのまま何処かへ飛んで行く。

 「・・・・っち!」

陛下が部屋に飛び込むように入って来た時、浩大は窓から蟲を追おうとしていた。 
陛下を確認すると足を窓から下ろし、 「お早いお着きで」 と笑顔を見せる。 
部屋の寝台に掛け布に包まった夕鈴を確認すると目を閉じ、ただ眠っているようにしか見えない。

「彼女に何があった?」
「あ、お妃ちゃんは倒れて意識を失っているだけだよ。 果敢にも何かおかしいと思ったらしく、何故か服とか脱いで外へ放り投げたから、掛け布の下はアラレモナイ姿だけど」
「・・・!! ・・・浩大・・・・見たのか?」

冷たい視線に背筋が凍る浩大。

「え、いきなりそこっすか!? あ、いや、部屋に入った時はもう脱いだ後で・・・直ぐに掛け布を掛けたから見てないっすよ! 本当に! マジで!!」
「・・・・で、何処に行こうとしていた?」

ごくんと唾を飲み込んだ浩大は、窓の外を指差したが・・・。

「あ~、部屋の匂いがおかしいと思って、この花を持ち上げたら蟲が飛んで逃げたんすよ。 その蟲を追おうと思ってね。 ま、ちょっと遅かったけど」
「花か・・・・ 確かに異様な臭気が残っているな。 何の匂いだ? 調べろ」


夕鈴の髪飾りは時に生花を使用する。 その花から特殊な匂いが香り、誘われた蟲が寄って来たのか。 もしかして夕鈴の頭痛の原因はそれか? 夕鈴を彩る花の髪飾り。
それが頭痛の原因かと、急ぎ調べると。






希釈された毒が花に噴霧されていたと判る。 直ぐには効き目が現われず、何度も吸う事で身体が侵されていく。頭痛と吐き気が続き、四肢が痺れ、呼吸器が麻痺し、それが続くと死に至る場合も・・・・・。

陛下の書面を握る手が震えているのを知ると、浩大がその紙面を受け取る。
寝台に近付き夕鈴を見ると蒼褪めた顔で眉間に皺を寄せたまま、唇を小刻みに震わせて眠っていた。 頬に触れると冷たい感触が黎翔に伝わる。

「・・・もう解毒剤を作り始めているよ。 試飲をしてその後お妃ちゃんに飲んで貰う。
 へーか、大丈夫だよ・・・・」
「・・・・そうか・・・」

悲壮な表情な陛下が夕鈴から視線を浩大に替える。 その表情が訴えるものは・・・。
浩大は深い溜息を付き、 「進行状況を見てくるよ」 と、薬師の元へ足を運ぶ。
浩大が姿を消した後、黎翔は寝台に腰掛けると夕鈴の髪を梳く。 解毒剤が出来るまでこの苦しそうな夕鈴を見ているのが辛い。 一刻も早く解毒剤を飲ませてやりたい。
そして・・・・・・・・・・・。

報復を願う君じゃないことは承知しているが、其れを 『是』 とする立場に居る自分。
ましてや君の命に係わる事。 国王の妃に対する事態に執り行うべき報復。
昏い表情となり闇を見つめていると、夕鈴の髪を梳く陛下の手に冷たい感触がした。
目をやると、夕鈴の冷たい手が触れていた。

「・・・夕鈴?」
「へいか・・・ここは駄目、です・・・・。 出て、いって」

こんな時にも、自分の事より私を気遣う君。
青い顔の夕鈴に覆い被さり、掛け布ごと君を優しく包む。 驚いた君は短く息をつき、柔らかく僕を押しやってきた。 「駄目・・・です・・・」 喘ぐように伝える言葉。

「大丈夫だよ。 もう君の頭痛の原因が解かったんだ。 今解毒剤を作っている。 其れを呑んだら直ぐに元気になれるから・・・ 夕鈴・・・ごめんね」

刺客に狙われたことと、頭痛の原因が 『毒』 という解かっていることだけを話した。 僕の言葉をゆっくり理解した君は身体から力を抜き脱力し、息を吐き目を伏せるが眉間には皺が刻まれたまま。

「まだ頭痛がする? 吐き気はまだある?」
「吐き気は・・・随分楽になりました。 頭痛は少しだけ・・・・」

話しながらも頭痛が襲うのか、時折苦しそうな顔を見せる。 額に浮かんだ汗を拭うと夕鈴は目を閉じたまま、問い掛けてきた。

「・・・陛下、花・・・ですか?」
「ああ、花に毒液を噴霧させていたようで、それが気化した毒を吸って頭痛がしたのだろう。 今、調べて解毒剤を作っている。 だから・・・・ 少し待っていてくれ」

夕鈴は静かに僕の話を聞いて、そして一言ぽつりと呟いた。
「・・・花に罪は無いのに・・・・ かわいそ・・・・」

夕鈴はいつも生花を髪に挿して過ごした後、小さな器に水を入れて部屋に飾っていたなと僕が思い出している内に、彼女は静かに眠りに落ちていった。





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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

長編 | 23:09:01 | トラックバック(0) | コメント(0)
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