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紅い痕
今日、仕事場で何かにぶつけて「ひりひりするな~」と思っていたら、青タンが出来ていました。切り傷も。粗忽者なので、結構あちこち青タン作るけど切り傷って。 何にぶつけたんだろう・・・私。


では、どうぞ。














季節の変わり目、これから蒸し暑くなるだろう季節がやってくる。
四阿で侍女らにお茶を淹れて貰いながら、紅珠と話を楽しんでいた。 最近の水月の仕事振りについてや貴族間で流行っている遊びや衣装などを紅珠から聞き、話を弾ませていた。



そこへ見知らぬ女性が近寄って来た。 王宮宮女の衣装を着ている。

「お妃様、献上品の香炉が届きましたので香を楽しむように言付かって参りました」

恭しく手にした盆を差し出す。 盆の上には大きな椀が被せられている。 卓上に盆を置き上の椀をそっと外すと侍女は 「失礼致します」 と椀を持ち下がって行った。 紅珠が興味を持ち、香を確かめる。

「お妃様、沈梗の香りがしますね。 それから花香かしら? 組み香ですわね」

嗜みとして香を良く知る紅珠は袖口で香を呼び寄せ、楽しんでいる。
香を良く知らない夕鈴も、薫り高い香にうっとりとしていた。

「これは香木沈香に鈴蘭・・・でしょうか。 陛下らしい香ですわ。 お妃様らしさも表現されて甘い香ですわね。 もう一つの香が判りませんが沈梗の辛味が押さえられてますわ。 とても良い香りですわね。」

目を瞑り聞香を楽しむ紅珠の違う面を見て、夕鈴は 『(偽)妃』 として焦ってしまう。
微笑んだまま背中に汗を滲ませて 『全く判らない!!』 と口の中で唱えるように呟く。

甘い香りが四阿を包む。

「お妃さ・・・・ま。 わたくし、体がしび・・・・れ?」

呂律が回らない紅珠の言葉を聴き、夕鈴が自身も四肢が痺れていることに気付く。 近くにいる侍女に離れるよう言い、急ぎ陛下に伝えるように申し付ける。 まだ体が自由になる内に卓上の香炉を四阿から、特に紅珠から遠ざけようと持ち上げて力いっぱい放り投げた。

「紅珠! 椅子に横になって体を休めて頂戴。 今、人を呼んだから大丈夫よ」
「おきしゃき・・・・」
「喋らなくていいわ。 目を閉じて。 大丈夫よ」

長椅子に横たわった紅珠を確認して、夕鈴は小さい声で 「浩大?」 と呼ぶ。
四阿の屋根からだろうか、姿を現せた浩大は同じように小さい声で反応してくれた。

「お妃ちゃん、香炉を調べるんだろ? 了解だよん。 先ずはこの場から離れよう」

気を失った紅珠を抱え上げ、足早に後宮へ移動する浩大の後ろから、夕鈴もふら付きながら付いて行く。 一体誰が!  何のために! 寄りによって紅珠が遊びに来ている時に!! 香炉の香りを目一杯吸った紅珠に何かなければいいが、万が一を考えると恐怖が走る。
氾大臣の笑顔が頭一杯に浮かび、眩暈がする。


思わず痺れた足がふら付き、膝を突いてしまう。

「お妃ちゃん?」
「大丈夫、転んだだけ。 いいから先ずは紅珠を連れて行って」
「すぐに戻るから!」

膝に力が入らず上手く立ち上がれない。 手先の痺れも強くなってきた。
膝に手を当て、如何にか立ち上がろうとする。

その時上空から何かが飛んで来た。 降る様に飛んで来た物は夕鈴めがけて落ちて来た。 慌てて避けようとするも体が言う事を効かない。 地面に転げながら幾つかからは逃げられたが、足や腕に掠めた物もある。
今度の刺客は二重攻撃なの!?

「な、何? イタ!! 誰よ!」

目に見えない敵に恐怖より怒りが沸く。 裾や裾の衣に血が滲む。 
瞬時に 「これは弁償?」 と頭に浮かんでしまう辺り自分らしい、とこんな時なのに考えてしまった。 そんな事を思っている間にも上空から飛んできた物は地面に突き刺さり、姿を現す。

----小刀。 それも数が多い。
これでは浩大が戻って来ても対応するのに苦労するだろう。 今回の敵は何処にいるの?
緊迫した中、そんな事を考える自分に苦笑しそうになった。 刺客慣れしているのかしらと。
転げながら夕鈴は刺さった刀の傾きから敵の方向を検討して目を向ける。
王宮の屋根に黒い影が見えた。 あっと思った時。

「ーーーー!!」

4,5本の小刀が矢のように降り注ぎ、1本が夕鈴の下肢を深く襲った。 熱い痛みに襲われた夕鈴は痺れを堪えながら、近くの四阿にどうにか駆け込む。 息着く暇もなく、屋根にいた筈の刺客の姿が四阿に向かってに走って来たのが目の端に映る。

・・・・逃げなきゃ。
そう思うが、痛みと痺れが全身を動かしてくれない。 四阿内の椅子に上体を倒し、目の端に近付いてくる刺客の姿を追うだけ。 もう後はない。

・・・浩大は紅珠を安全なところに連れて行けたかな。 まっ、浩大なら安心か。

霞む目で、目の前に迫った刺客を見ながら、 『もう駄目かも・・・・』 と思った。
もう足の感覚が無い。 寒気がするのと同時に強い眠気が襲って来た。

「・・・・うぐ!!」

くぐもった声を発して四阿に足を踏み入れたはずの刺客がその場に倒れた。
それを見て夕鈴は 『陛下だ・・・・』 と確信しながら安心して自分の意識を手放した。

「夕鈴! 大丈夫か?--!! 夕鈴!?」




四阿に急ぎ足を踏み入れた黎翔は、彼女が自身の血で衣装を染めているのを見る。
徐々に紅い衣装へと染めていく様に夕鈴を抱え、急ぎ近くの後宮へ走った。
李順が近衛兵を引き連れて他の刺客がいないか 近辺を捜査させながら小刀の出所を至急警護兵に調べるよう指示する。 刺客の息を確かめ、牢獄へ連れて行かせた。













後宮へ急ぎ夕鈴を連れて行き、急ぎ侍医を呼ぶように伝え寝台に彼女を下ろす。 夕鈴の呼吸を確かめ、安心する間も無く衣装を脱がせる。 首、両腕、脇腹、太腿、あちらこちらに刀傷があり、出血していた。
大腿部に刺さる刀を止血しながら抜くと、新たに寝台へ紅い筋が染みを作る。 張老師と侍医が慌ててやって来る。 止血作業と毒が無いかを確認し始める。 侍女らが湯桶を持ち、
大量の布を携えて侍医らを手伝い始めた。 張老師が陛下に告げる。

「血を流しすぎているかも知れないのぅ。 太腿からの出血が一番大きい。 毒は無いようじゃが、経過を見なければなりません。 陛下・・・・」

じっと陛下を見る張老師は、何かを伝えようと思案しているように見える。
その何かを言わせまいと冷たい怒りの表情で見つめ返す。

「老師、妃を助けよ。 それだけだ」
「・・・・・は、誠心誠意務めます」


強い怒りの塊のような陛下にこれ以上は伝えられず、老師は頭を垂れ拝礼する。
それを見もせずに陛下は踵を返して刺客の元へ向かう。

後宮を離れた黎翔の下へ、浩大が姿を現す。

紅珠を後宮へ運んだ後、屋根の上の刺客に気付き後を追っていた。 刺客は二人組み。
その間に夕鈴に刃の雨が降っていたと知り、浩大は怒りで体が震えた。
妃を助ける為に動いて居た筈なのに目が届かない場所で・・・妃を危険に。


「一人はもう口が利けない状態だよ。 残りの奴は生きているのか?」

浩大の問いに、黎翔は 「・・・・たぶんね」 と昏く笑った。



牢獄に閉じ込めた刺客は陛下の刀傷を受けながらも命に別状は無かった。
口を閉ざしていた刺客に近寄り夕鈴と同じ箇所に傷を付けた。 昏く冷たく見下ろしながら雇った黒幕を吐かせる作業を行なう。 息ある内に刺客は何度地獄を知っただろうか。
死ぬに死ねない苦しみを体中で味わい、その口が黒幕を吐くまで繰り返された。

黒幕である大臣はその場に引っ立てられ、無残な塊と成り果てた刺客と対面し、恐怖に 全身を振るわせたまま罷免された。 もちろん開放はされず、そのまま牢獄の客人となる。









何故、解からないのだ。

『狼陛下は妃一人を愛している。 他の妃を娶る気は無い』

そう豪語しているというのに! 次から次へと沸いてくる私利私欲の権化達に嫌気がさす。
全身を振るわせる嫌悪感と怒りに腰の刀を抜き、目に映る庭園の木々を切りつける。
夕鈴は何度 『囮』 として体にも心にも傷を負っただろう。
信じていたり、仲が良くなったりした者達からの手痛い贈り物に何度も心を折られている。
だが真に折られることは無く、彼女は信じることをやめようとしない。

『安全な所で何の不安もなく笑っていて欲しい』

そう思い、彼女に政治の裏を話さずにいると

『あなたの周りに敵がいるのに、それが誰なのかわからないなんて私はイヤなんです』

そういって涙を零しそうな顔で怒るのだ。

そんな夕鈴が巻き込まれ、傷ついている。 そんな姿を見たい訳じゃない。
『臨時花嫁』  として王宮に来たが、彼女の存在意義は今大きく変わっている。
黎翔にとって彼女は居なくてはならない存在に変わっている。






後宮に姿を現せた陛下に侍医らは緊張の色を隠せない。 妃の容態は変化がなく、意識が戻らない状態のまま。 出血が早くに止められたが、神経を痺れさせた香の作用もあるのだろうか、意識は戻らないのだ。 拱手して陛下を寝台の妃の元へ誘う。
蒼白な顔色は変わりなく、浅い呼吸で横たわる夕鈴の姿に胸が締め付けられる。 寝台横に膝を着き、夕鈴の手を掛け布より出して握る。 大量の血が流れたためか冷たい感触に背筋が凍りそうに感じる。 思わず手を擦っていると、夕鈴の瞼が動いた。

「夕鈴・・・・」

少し開いた唇から浅い息が漏れる。 少しずつ瞳が開かれる。

「は・・・・ぁ」
「夕鈴、大丈夫か。 痛みはあるのか?」
「へ・・いか。 ご心配・・かけました・・・・」

急ぎ侍医が熱と脈を計る。 少し発熱があるが他は現在安定していると安堵の表情を見せる。
滋養を摂り、体調がしっかり戻るまで休養するように話す。足の怪我が酷いが骨には損傷がないため傷が塞がれば徐々に歩行を始めても良いと許可が出た。
ほっとした顔の夕鈴の頬を優しく陛下が触れる。








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





数日後には背当て枕に体重を預けてお茶を飲めるまでに回復した夕鈴。
時間があると陛下は李順の目を盗み後宮に足を運んでは、夕鈴を驚かす。

「また、ですか? お仕事は大丈夫ですか、陛下」
「またって・・・・ ゆーりんが心配なんだよ。 仕事は大丈夫だよ」

優秀な人材が揃っているからね、李順もいるし・・・・と話し、夕鈴を呆れさせる。

ふっと狼陛下の顔になり、夕鈴の髪を一房取ると夕鈴に微笑を返す。
ぼんっと音を立てて夕鈴の顔が沸騰するのを、小さく笑いながら肩を揺らす。

「本当に顔色が良くなったね」
「・・・・良くなったって。 陛下、人の顔色で遊ばないで下さい!」
「えー、遊んでないよ。 安心したって話だよ」
「そう・・・・ ですか?」 

あれから毎日のように政務が終わると顔を出し、寝台で二人きりのお茶を楽しんでいた。
もちろん侍女がお茶を淹れてくれるので、夕鈴はちょっと物足りなさを感じていたが、今は仕方がない。 太腿の傷も随分良くなって来たと聞き、早速明日から歩行練習を開始しようと思うんです、と張り切る夕鈴の顔はやる気に満ちていた。

「でも夕鈴、まだ時々痛そうな顔しているよ。 無理しないでね」

小犬モードでシュンと俯くと、慌てた彼女の声が上から降ってきた。

「大丈夫です。 痛みは少しだけですし、絶対に無理はしませんから! えっと、侍女さんと 一緒に歩きます。 あ、ご心配なら浩大にも付いて貰います!」
「・・・・なんで浩大が出てくる?」
「え? あ、いや・・・・ こけそうな時の・・・・ 補助役として?」


あら? 陛下の表情が・・・・ 狼になっている? なんで??
慌てた夕鈴は体を陛下に向けようとして足を捻って・・・・・。

「痛っ・・・・!!」
「動くな! 夕鈴、ほら未だ傷むんだろう? 歩行練習はまだ早い!」
「い、いや、大丈夫です。 寝てばかりいられませんよ。 バイト中なのに・・・・」
「・・・・夕鈴」

痛みが生じたためか涙目になりながら、早く歩行練習を開始してバイト再開しますと健気に語る夕鈴に脱力してしまう。 黎翔の心配や嫉妬は全く彼女に通用しない。


「夕鈴、歩行練習は私の前だけにすること! 他の場所や人間の前では禁止。 他の者にも そう伝えておく。 これは絶対だ。 夕鈴、承知してくれるよね」
「そ、それは・・・・~~~~!! はい・・・」

狼陛下で強く言うと、彼女は蒼褪めた顔で承諾した。 何故狼陛下になったのか彼女は
気付くことも無いだろうと思うと、自分の考えに落ち込みそうだ。


「夕鈴、歩行練習をしようとするのは良いが、傷の具合はどうなんだ?」
「へ? あ、はい。 急に動いた時は今みたいに痛みが走りますが、他はちょっと動いても 問題ないです。 着替えの時も問題ないですし」
「ふぅ~ん」

夕鈴の台詞に閃いた考えをすぐに実行する。 椅子から寝台に腰掛けて直し夕鈴に近付く。 狼モードに体が固まった夕鈴の髪を掬いながら、耳元で囁くように声を掛ける。

「大丈夫っていうなら・・・・ 傷を見せて」
「はい、どう・・・・って! な、な、なんで??」
「うん?だって歩いている内にまた出血したら大変でしょ? 確認させて!」


小犬モードで狼の眼で、夕鈴ににじり寄る。 覆い被さるように両手で彼女を挟み込む。
もう逃げ場はないよ。
にっこり笑いながら掛け布を取り除くと、彼女の小さい悲鳴が聞こえる。 足元の寝着を捲ると白い足が現われた。 脹脛から太腿へ黎翔は手を滑らせると細かい震えが黎翔の手に伝わる。 太腿の包帯が目に入り、その包帯を片手で器用に解き始める。 
・・・・・次第に紅い染みが現われ始めた。


「痛いからやめて! 陛下!やっ」
「動くから痛くなるんだよ。 夕鈴、傷を見るだけと言っただろう?」


完全に狼陛下モードになった黎翔に、体が竦むが場所が場所だけに夕鈴は抵抗を続ける。
が、夕鈴の上体に覆い被さるような陛下の体に邪魔されて、自分の下半身に手が届かない。
夕鈴は足を閉じて抵抗するが、するすると包帯は解かれていき、刺し傷が顕わになった。
陛下の視線はその傷に注がれ、そっと指先が触れる。 痛みとは違う、ちりっとした感触に夕鈴は総毛立つ。 蒼褪めていいのか、赤らめていいのか感情が追いつかない。
出来るだけ足を閉じてみるが、恥ずかしくて居た堪れない。
こんなに自分の生足を異性に晒したことなんてない!

「夕鈴の白い肌に紅い傷が・・・・」
「触らないでぇ~、へいかぁ~。 出来れば見ないでぇ~」
「紅い傷が・・・・ 此処にも傷が・・・・」

夕鈴の足にある小刀が掠めた傷 全てに触れる。 その度に震える下肢。
足だけじゃなく、他にも傷があると聞いたのを思い出す。

「夕鈴、他の傷も見せて」
「へ? ・・・・い、嫌です! 今は歩行練習出きるかどうかの話しだったじゃ無いですか! 他の傷はたいした事無いものです! それに・・・これ以上は脱がせないで下さい!」
「脱がなければ見えないではないか。 歩く時に他の傷が痛むようではバランスが悪い。 ちゃんと治療が進んでいるか確認するだけだ」

其の侭もう片方の足に触れ出す。 足先から太腿までをじっくりと嬲るように、探るように撫で上げる。 夕鈴から更に悲鳴が上がる。
そして。
真剣に傷を探っていた陛下の頭上に、大きな枕が叩き下ろされる。

「な、ゆーりん? わっ! 何?」
「何・・・・・・ じゃあああああない!」

深紅に染まった夕鈴の顔は怒りで一杯だった。 大きな枕を掴んだまま何度も陛下に振り下ろし、 「馬鹿、馬鹿、陛下のばか~~!」 と繰り返し叫びながら、ぼろぼろと泣き出した。
夕鈴の顔を見て、自分が何をしたのか把握した陛下は慌てて叫び返す。

「ごめん、ゆーりん! そんなに嫌だった?」
「~~~~~!! 陛下のえっちぃ~~!」
「え・・・・っち・・・」

夕鈴の足まで深紅に染まっているのを見て、黎翔は自分の手の動きを思い返す。
刺激が強すぎたかなと夕鈴の顔を見ると、ふるふると震えながら枕を握り締める彼女。
これ以上は無理かなと思うが、やはり傷は気になる。 物は試しと再度挑戦してみる。

「触らないから見ていい? 脱げないなら手伝うけど・・・・・」

夕鈴の手が枕から離れ、寝台近くの茶器に伸びるのを視界に捕らえた黎翔は脱兎の如く妃の寝所から逃げ出した。









歩行練習は侍女らと後宮だけで行い、陛下が来ることを頑なに拒んだと、
浩大から老師へ報告があったとか、なかったとか。




FIN

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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

短編 | 22:29:11 | トラックバック(0) | コメント(0)
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