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水鏡花  3
水鏡花最終です。 一方的に惚れられる夕鈴を書きたかった。 今回痛かったのは心だけという事で。 陛下は余りドSにはなりませんでしたが。 ・・・くすん



では、どうぞ












付き添いの水月より夕鈴が襲われた経緯を聞き、李順は溜息を吐く。 
今までも 『妃』 として刺客に襲われることはあったが、粗忽で妃らしからぬバイト小娘である夕鈴自身に興味を持ち襲われることなぞ無かった。

「どれだけ趙のフィルターは曇っていたのでしょうね」
その言葉を、李順は自分の心の奥底に沈める。 執務室の椅子に座らせた官衣姿の夕鈴は小刻みに震えながら胸で官衣をぎゅっと握り、李順と水月を不安気に見上げているからだ。 

「取り敢えず、陛下が御戻りになるまで御妃様はここでお休み頂きます。 氾殿は通常勤務にお戻り下さい。 御苦労様でした」
「では、お妃様、失礼致します。 ・・・・直ぐに陛下が戻られますので御心安らかに」

硬い微笑みを水月に見せて、夕鈴は小さく頷いた。
その頷きで乱れた髪より折れ曲がった簪が落ちる。 水月はその簪を拾うと、懐から櫛を出して夕鈴の髪を簡単に梳いた。 そして、もう一度夕鈴の顔を見て微笑むと静かに頭を下げて執務室から出て行った。
曲げられた簪を持ったまま。

「・・・・で、夕鈴殿、大丈夫ですか?」
「は、はい、もう・・・・こ、ここまで歩けましたし、怪我もしてません」

それでも女性として性的な暴力は恐怖だっただろう。 未だに小刻みに震えている蒼褪めた顔色の臨時花嫁に、流石に李順も掛ける言葉に悩んでしまうほどだ。 
李順は眼鏡を上げ 「今、お茶でも持って来させましょう」 と執務室から離れた。


一人になった夕鈴は、浅く息を吐きながら寒気に肩を大きく震わせる。
彼が・・・・・・ 趙が言っていた台詞が甦っていた。

『あの陛下の唯一の、唯一人の妃なのだから!』
『貴女に惑わされる心が苦しい・・・・ 貴女の微笑みが私を苦しめて』
『貴女が私を誘惑したんだ。 貴女がその微笑みで、他の男にも』

自分にそんなつもりは毛頭無い。 そんなつもりで彼に微笑んだ訳じゃない。 
自分の笑みにそんな深い意味も無い。 ただ・・・・・ただ弟に似ていると思って。

趙に押し倒され抗うも夕鈴の力は全く及ばず、為されるがままだった。
男の力の恐ろしさに改めて恐怖が甦る。 いつもは男勝りで、几鍔とケンカしていた時は男も女も関係なく対等で渡り合っていたつもりだった自分。 それが・・・・・。
ただ恐くて、怖ろしくて・・・・・足に触れられた時、全身が粟立つように総毛立った。
悔しいよりも、恐かった。 心底・・・・・・嫌だと全身が拒否した。


部屋に誰かが入って来た音に、思わず背を震わせて振り返ると茶器を持った陛下が居た。 知らず夕鈴が静かに椅子より立ち上がり、陛下を見つめる。 
胸元で官衣を握り締めた夕鈴の手が力を籠めすぎて白くなっていることに気が付いた陛下は、卓に茶器を置くと夕鈴の手を官衣からゆっくりと解き放し、そのまま指を絡ませ夕鈴の手が暖かくなるまで擦った。

「怪我は・・・・ ない?」

手を絡め取られながら頭上から小犬陛下の優しい声を聞き、夕鈴はその声にほっとした。

「・・・・はい、大丈夫です。 怪我はしてませんから・・・。 方淵殿と水月さんに後でお礼を言いますね。 危ないところを助けて貰って。 そう言えば、まだお礼も・・・・・」

自分の台詞に思わず身震いがして、陛下に握られた手に力が入ってしまう。 その仕草に陛下は握っていた手を離して、そのまま夕鈴の身体を優しく包み込み柔らかな声色で話し掛ける。

「心の傷はどう償えばいいのかな・・・・。 僕に出来ることがあるなら・・・・」

ぎゅっと包み込む腕に力が入る。 その腕の中に囚われた夕鈴は深く息を吸い、静かに息を吐いた。 陛下の胸に手を当てて少し離れ、見上げる。

「大丈夫です、陛下。 怪我もしていませんし驚いただけですから。 本当にいろんな人がいるものですね。 ・・・私、落ち着いたら部屋に戻りますから。 方淵殿に官衣を返さなきゃなりませんし・・・って!! 皺くちゃになってる! ど、どうしよう・・・? 方淵殿にすごっく怒られるかな」

すんっと鼻を啜り、自分の胸元の官衣を見た夕鈴は明るい声を出した。 
そのまま陛下から離れて、裾を持ち卓に近付くとお茶を淹れる用意を始める。

「折角用意して下さったので、お茶を飲みましょうか。 飲んだら部屋に戻り着替えます。 あ、方淵殿は他の官衣をお持ちでしょうか。 予備って他にあるんでしょうかね」

お茶を淹れながら夕鈴は淀みなく喋り続ける。 
頬を紅潮させ、手を忙しそうに動かして陛下にお茶を差し出した。 
 
「どうぞ、熱いですから御気をつけて」 

陛下は茶を受け取り、そのまま卓へ置く。 瞳を大きくした夕鈴が 「あら、飲みませんか?」 と尋ねると、陛下が夕鈴に近付きそのまま黙って抱き上げると歩き出した。

「えっ? 陛下何処へ?」

執務室に入ろうとした李順がすれ違う陛下に驚いた顔を見せるが、昏い表情の陛下にそれ以上は問い掛けることが出来ず、蒼褪めた顔で抱き上げられた夕鈴を黙って見送った。 
暫らくは帰ってこないだろうと嫌でも想像出来る。 
仕方が無いと、闇い目をした李順は、先に捕らえた趙真孔の詰問をすることにした。



部屋に入ると、陛下は直ぐに侍女らを下がらせ、静かに長椅子へ夕鈴を下ろした。 
昏い表情の陛下に夕鈴は口を閉ざすしか出来ない。 一官吏の暴挙に怒っているのだろうとは思うのだが、ただその対象が目の前の私に向けられているようで、戸惑うしか出来ない。

もしかして優秀な官吏を惑わせたと怒っているのか? 
さっきまでは心配の言葉を掛けてくれたけど、余りに元気な私に呆れたのかしら。
呆れて・・・・そんな恐い顔を・・・・・?

夕鈴が自分の考えに怯え俯いて震え始めると 「ごめんね、夕鈴・・・・」 と両肩を掴み立たせ、そのまま肩口を掴んで官衣を上に持ち上げられる。 
「うわっ!」 両手が持ち上がり、あっという間に官衣が脱がされた。 
書庫から出て直ぐに方淵に官衣を被せられたので着衣は乱れたままだった。
そのまま床に捨てられた方淵の官衣に 「陛下、それは方淵殿の・・・っ!」 と意識を向けると陛下の腕に身体が絡め取られ、床から足が浮き上がるほどの強さに夕鈴は酷く焦った。

「陛下っ! あ、あのっ、方淵殿の官衣が・・・・」
「方淵の官衣はどうでもいい、夕鈴君の方が大事だ。 夕鈴、どうしたらいい・・・・?」
「だ、大丈夫ですっ、大丈夫でしたからっ。 あの、私着替えて来ますので・・・・。  離して下さいませんか? 汚れていますし、ちょ、ちょっと乱れてしまってますし」

真っ赤になり足をバタつかせる夕鈴をしっかり抱き上げると、共に長椅子に腰掛ける。 
陛下との顔が近くなり今度は蒼褪めて俯く夕鈴は慌てて肩口を持ち上げ、裾の乱れを直した。 陛下はそんな夕鈴の腰を掴むと膝の上に抱え上げて、じっと目を見る。 膝の上では思ったように乱れを直せない上に、見つめられて動けなくなると夕鈴は焦った。

「本当に・・・・あの、大丈夫ですので降ろして頂いてですね・・・・、着替えをさせて頂けないでしょうか・・・。 聞いてますか、陛下?」

そんな夕鈴に溜息が漏れる。
今は興奮して必死な状態なのだろう。 いつまで持つのか、その精神状態も気になるが、それよりも方淵の官衣を着ている彼女に我慢が出来なくなった自分。 
おまけに官衣を脱がすと乱れたままの状態で・・・・・。 趙真孔に改めて怒りが沸く。 
奴の話では裏など無く、盲信するように夕鈴を 『陛下唯一の聖なる妃』 と思い込み、思っていた理想像と違うと、その怒りを夕鈴に襲うことで晴らそうとしたらしいと聞く。
それも恐怖で慄く夕鈴の口を覆い、許可無く肌に触れたと。

「夕鈴・・・・ 何処を触られた?」
「・・・え? あ、あの・・・足を・・・・でも怪我とかはしてませんから大丈夫、です」

裾を持つ夕鈴の手に力が入ったのが視界に映る。 何が大丈夫なのか解からないが真っ赤な顔で夕鈴が繰り返す 『大丈夫』  必死にそう言っていないと崩れてしまいそうなのかと陛下は思った。 
・・・・それなら一度崩してしまうのがいい。

「奴に触れられた肌を消毒しなくてはな・・・・・」
「あ、あとで湯殿へ行きますっ、大丈夫ですっ! 陛下っ? イヤ、な、何を?」

夕鈴の両手を攫い、膝の上で暴れ出した彼女を気にすることなく裾を広げ出した。 そのまま裾から見えた足に手を這わせ始めると夕鈴が悲鳴を上げる。 膝下に手を入れ、そのまま長椅子に夕鈴を押し倒し、脹脛から膝へ、膝から太腿へと徐々に手を這わせていく。 両膝を合わせて震えながら夕鈴が目を大きく開き、必死に叫び続けた。

「やっ! 嫌ですっ! 陛下っ、お願っ、っん・・・!」

自分から漏れた声に一気に深紅に染まる夕鈴を見て、陛下もその様を見下ろす。 
暴れるだろうとは思っていたが、夕鈴から艶声が漏れるとは思いもしなかった陛下は、自分の声に驚いた顔で固まる夕鈴に顔を近づけて、耳元に囁いてみた。

「・・・・奴にもそんな声を聞かせた?」
「っ! く、口を覆われていて声なんか出ませんでしたっ! それより手を離して!」
「・・・ふぅん」

そのまま耳元から開かれた襟元へ唇を落とす。 鎖骨に陛下の息が掛かり、一気に夕鈴の背がざわめき出す。 太腿に陛下の手が添われたままで、鎖骨から肩口へと陛下の唇が彷徨うように触れ出した。 もう何が始まったのか、夕鈴はパニックで目の前で展開されていることが把握しきれない。

「・・・・ここには?」
「解かりませんっ! もう、許して下さいっ、陛下!」
「夕鈴、許して欲しいのは私のほうだ。 だから消毒をしているんだ」

顔を首筋から離して夕鈴を見ると眉を寄せて困惑した表情。 
僕が舌を出してみると眉間に皺が寄り、ワナワナと震える唇から想像通りの台詞が響いた。

「そ、それは消毒じゃ有りませんからっ!!」
「だって僕だって触ったこと無いのに、あいつが・・・・」
「今触っていたじゃないですか! 沢山、たくさん触って~~~、首舐め・・・・」

夕鈴はようやく、ぼろぼろぼろっと泣き出した。 泣き出したのを確認して夕鈴の手枷を開放し、身体を起こして胸に抱き締める。 僕の胸元をぽかぽかと力無く叩く彼女を支えるように手を背に回すと、僕の胸元をぎゅっと掴んだ。

「・・・・恐かった! ・・・・嫌だった! 私・・・・趙殿を信じてたのにっ!」

堰を切ったかのように泣き出した夕鈴は、震えながらも叫ぶように怒る。 僕の胸に額を擦り付けて、襟を掴み怒っていた。 僕は支えた手で背を撫でながら夕鈴の叫びを静かに聞いていた。

「あっ、ああっ! うあああんっ! 信じていたのにぃ! あああーっ!」
「夕鈴、君は変わらず信じたいものを信じていてね・・・・」
「だって、だってぇ・・・・ くやっ、悔しいっ! ああああっ!」

夕鈴が泣き疲れて眠るまで陛下は背を擦り続けた。
恐怖を全て涙で流してしまえるように何も謂わず、泣くに任せて・・・・。




寝台で横になる夕鈴の真っ赤な目尻に指を添わせる。 深い眠りに付いた君は僕の指に反応しない。 首筋を確認すると何の痕も無いと、安心する自分がいる。 侍女が用意した濡れ布で首筋と腕を拭く。 足は・・・意識の無い夕鈴とはいえ躊躇してやめておく。 目覚めたら湯殿に入れるように侍女に告げておこう。

「へーか、お妃ちゃん寝ちゃったのか?」
「ああ・・・。 あとでお腹が空いて起きるかもしれないが、今は寝かせておこう。 ところで奴はどうした? ・・・・李順が対応しているのだろう」
「ああ、ちょっと暴れたけど独房に押し込んだら大人しくなったよ。 それにしてもお妃ちゃん、モテモテだったな~。 極端なモテ方だったけど!」

浩大が哂う声に、陛下が鋭く睨み付けた。
冷酷な表情に思わず背が伸び、浩大は 「取り敢えず李順が呼んでいると知らせに来たよ」 と告げて窓から逃げるように去って行く。 嘆息を零した陛下は、逃げた浩大は後で仕置きをするとして、盛大に泣いた夕鈴が目を覚ます前には戻って来ようと部屋を出た。




執務室に戻ると李順が闇い顔で待っていた。

「お帰りなさい、陛下。 遅くまで一体何を・・・まさか手は出していませんよね?」
「あー・・・、まあ出してはいない。 ちょっと・・・・盛大に泣かせてきたところだが」

間が開いたことには苛立つが、それよりも 「泣かせてきた?」 と不思議がる。 
陛下が夕鈴殿を? 一体何故? 恐怖に慄いている彼女を更に泣かせる必要が何処に?
不思議がる李順に、溜息を吐き説明をする。

「恐がっていたが、その後必要以上に喋り出したんだ。 ま、一種の興奮状態だな。 あれじゃあ後で尾を引くから、盛大に泣かせてすっきりさせてしまおうと考えてね。 その方が精神的に楽になれるし・・・・。 泣いたら、すごっく怒っていたよ、夕鈴」

昏い笑みで卓に乗る書簡を広げる。 趙真孔の経歴が書かれた其れには地方での優秀な経歴が記されていた。 王宮に上がり陛下に仕えることを目標に日々努める一人として。 
王宮に出仕し、話題になっていた妃を見て何が彼を変えたのか。

「・・・・で、奴は? 会える状態か?」

書庫で陛下と趙真孔、二人きりになった時、明らかに精神的に異常を来たしていた。 
小声で呟き始め、陛下の足元へ這いずって来て祈るように額を付けていた。 兵が引き立てて連れ出すまで、何かを呟き続けていた。 一瞥した後書庫を出て夕鈴の元へ足を運んだ為、その後は浩大の報告で知っただけだ。

「今の彼は一種の錯乱状態で、取り調べも侭なりません。 盲信していた妃が誰とでも仲良く話す気さくな妃であることが異常な程許せなかったようですよ。 彼の言うことを掻い摘んでみると。 まあ政務室に足を運ぶ妃自体が稀有ですからね・・・」

誤算でしたねと李順が眼鏡を持ち上げた。 危険な刺客から夕鈴を護る為に目の届く政務室へ連れ出したが、まさかこんな事態が起こるとは想定外。 かといって、今更夕鈴の居ない環境には戻りたくないと、ごねるだろう陛下。 頭の痛いことだと李順は思った。

「陛下、今後を考えて、夕鈴殿には後宮以外立ち入らぬように・・・・」
「え~、だって夕鈴は何も悪くないでしょ? 趙を罰するだけで、夕鈴の政務室通いは継続したっていいじゃないか。 何か・・・・ 問題でもあるか、李順?」

台詞の最後は完全に狼陛下。 また面倒が起きたらどうする気なのか。 
想像通りの台詞に肩が下がってしまう。
「で、趙の処分は如何様に?」 と頭を切り替えて問うと、「う~ん・・・」 と悩む声。

「そのまま地方に返すのは簡単だが、戻した先で面倒が起きるのは面倒だ。 彼には病気療養中になって貰おうか。 その様に実家に書面を送れ。 面倒は王宮が一生面倒看てやるとな」
「・・・・はっ」

書面上は病気療養中。 そして密偵が実家の中心人物に事実を報告。 
お前の家人は王宮に、国王陛下に矢を射る行為を行なったと。 重大な離反行為に、狼陛下の報復に怯えるだろう。 そして趙真孔の件は深い闇に沈み込む。 
『其のように為りました』 と蓋を閉めるように。

夕鈴に懸想する人間に対し、見るなとも話すなとも制限する事が出来ない自分。
夕鈴を後宮に今更閉じ込める事も出来ない自分。
振り回される事にも慣れてきたが、離れる事には未だに慣れない自分。

こんなに僕を捕らえて離さない彼女は、いつか王宮から消えていくのか。
いつか、彼女は彼女の世界に戻ろうとするのか。
欲しがるのは僕だけか。 
水に映った月を欲しがるだけで、鏡に映る花を愛でるだけで満足しろと? 
・・・・望む真実は手に入らないというのか。

それを決めるのは夕鈴だ。 未来は未定で決定ではない。 だが、僕の心はもう決定している。 

「李順、他の政務は明日に回してくれ。 予定は入れるな・・・・」
「はっ? 陛下、午後から政務が中断されていて案件も溜まっております! どうせ夕鈴殿のところでしょう? 浩大が見てますから政務を先に片付けて下さい!」
「・・・・何故、我が妃の寝顔を浩大に見せなきゃならない?」
「~~~~っ! 偽妃でしょうが! 解かりました。 急ぎの書簡を持ち、明日までには確認作業と署名、押印をお願い致しますよ! これが精一杯の譲歩です!」
「おや、珍しく優しいな李順・・・・」

ふんっと息を吐く李順を置き去りに、急ぎ彼女の部屋へ移動する。
それでも箱いっぱいの書簡を持たされた。
妃の部屋で真夜中まで仕事が続いた陛下だが、ようやく仕事を終え、盛大に泣いたことで恐怖から開放された夕鈴をそっと窺った。 深い眠りに誘われた夕鈴の落ち着いた寝顔を見て安堵の息を吐く。
後は夜中に思い出して悪夢を見ないように、添い寝をしなきゃ!
一見安全そうな小犬の顔で狼陛下がいそいそと夕鈴の寝台に潜り込もうとした時、聞き慣れた側近の声が。

「お疲れ様です、陛下。 お早い仕事に感激です・・・」

振り向くと、いつの間に此処まで入って来たのか李順が書簡が入った箱を持ち上げながら、寝台に潜り込んだ僕を昏い目でじっと見ている。 ・・・・・固まったままの僕をじっと見ている。

「・・・・・わかったよ」

諦めて寝台から足を出し、李順と共に夕鈴の部屋を離れる。 後ろ髪が引かれるようで心残りだが、側近の目から逃げるのは困難だ。 今日のところは諦めよう・・・。

だが、 『今日のところは』 だ。
心の中で哂うと、目の前を歩く李順が背を震わせた。







FIN

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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:05:04 | トラックバック(0) | コメント(4)
コメント
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2013-05-29 水 23:02:55 | | [編集]
Re: タイトルなし
コメントありがとう御座います。 水月さんが簪を持ち帰ったのは、襲われた事実を思い出すのは可哀想と、他で処分するために持ち帰った、そういう設定でした。 そこまで詳細に書いていたら良かったなと反省です。あと、趙真孔は王宮奥の刑房で一生を終える設定。正気を失った状態で家に帰せば新たな火種を広げる可能性があるので、そのまま出さずに飼い殺し状態。 ここまで細かに書くべきでした。 反省します(汗)
2013-05-30 木 00:48:58 | URL | あお [編集]
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2013-05-30 木 01:10:26 | | [編集]
Re: タイトルなし
コメントありがとう御座います。 私の中での水月さんは、何というか、のんびりというか、自分が大好きで・・・・。 王様が大好きだけど怖くて、妃は観察対象と思っている、人です。(笑) いい人だけど、恋愛対象とは見てないかな? その内、彼の心情が変わると面白いなーと思っています。(本誌での水月さんですよ)
2013-05-30 木 23:49:33 | URL | あお [編集]
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