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正妃の休日前夜
久し振りの『もしもシリーズ』となります。
たまにコッチも気になって、わきわきしちゃうんです。
短めの話になります。 お楽しみ頂けば幸いで御座います。




では、どうぞ













李順と老師からの正妃教育が始まった。

大量の書簡が置かれ、その量にまず眩暈が夕鈴を襲った。
歴代の正妃たちの偉業が記されており、正妃として夕鈴がこれから何を行なうか、指針が記されていた。 これだけで気力が削がれているのに現在の政務室に通う大臣の経歴や背後関係、王宮での配置図、官吏たちの名前が別の書簡に山と積まれた。
白陽国正妃の歴史だけで眩暈がするのに、臣下のことまで。
王宮に配置された各部屋、神殿、宮の名前も覚えなければならないし各部屋への道順や一部の者だけが知る抜け道や隠し扉なども必要な事だからと覚えるように指示される。

主要大臣の奥方、及びその子供の名前も簡略に覚えるようにと、伝えられた。 他にも宮中行事や季節ごとの部屋の配置、行事の正妃の衣装、覚えるべき地方貴族、その歴史、特産物等が次から次へと湧き出るように、夕鈴の前に並んでいく。

出来ることから少しずつ・・・ そう思うのだが気が急いてしまい、覚えようとする事が記憶の表層に留まるのみで直ぐに薄れ、そんな自分に腹が立ち涙が零れそうになる。

「泣いている暇はありませんよ」
「・・・泣きません! 次、お願いします」

李順さんが眼鏡を持ち上げ、次の書簡を広げていく。 朝から昼まで指導をした後、午後から李順さんは政務室に向かい政務に就く。 そして午後からは王宮の歴史と後宮の成り立ちを老師から教授願う。 季節毎の行事や必要な宴、それに伴い必要な立ち振る舞いや正妃として献上品への礼状の書き方なども覚えなければならず、正直熱が出そうだ。 しかし、出るのは溜息と涙だけ。 この時ばかりは丈夫に産んでくれた母に感謝していいのか、悩んでしまう。


そんな日々が続き、夕餉の時間には毎日疲労困憊の呈で、箸を持ちながら居眠りする事が続いていた。 最近では湯船で溺れ死ぬところだった。
侍女に心配されるたびに、『今日こそは后らしく寝台へ!』 と思うのだが部屋に戻ると緊張が解れてしまい、一気に眠気に襲われる日々が続いていた。


でも、夕鈴は知っていた。
文句も言わず (厭味は言うけど) 李順さんは忙しい政務の合間を縫って教育をしてくれているし、老師は高齢なのに (そうは見えないが) 丁寧に指導してくれている。


私が弱音を吐く訳にはいかない! 握り拳を高々と上げる夕鈴だった。








「・・・・夕鈴」

今日も愛しい后は寝台に辿り着く前に眠りに付いたようだ。 
片手が辛うじて寝台に乗っている状態で床で熟睡していた。 陛下は溜息を吐き、床から夕鈴を抱き起こして寝台へ移動する。 規則正しい寝息が聞こえ、頬を撫でるも目が覚める気配は無く・・・・。 一人 深い溜息を吐くしかない陛下。
・・・・・ああ、今日も駄目だったか。

最近、陛下自身も忙しく深夜まで政務が続いている。 季節変わりには仕方が無いことなのだが愛しい后が待っているのに逢えない状態が続くと、苛立ちも増すというものだ。
今日は少し早めに夕鈴に逢えると、部屋を訪ねると床で熟睡する妻。
最近目を合わす事も少ない上に、ましてや淫靡な夜など期待するところではなく、陰鬱な夜を迎えるばかり。 彼女の頑張りは認めるし必要な指導なのだろうが、このままでは夕鈴が倒れてしまう。(もう倒れているが)  夕鈴に掛け布を掛けると踵を返して、李順を呼び出した。




「そうですか・・・。 私も覚えが悪い夕鈴殿に倒れそうですよ」
「お前が倒れる想像が全く出来ないが・・・ 兎も角、やり過ぎだ。 連日では覚えるものも覚えられないだろう。 時に休ませないと今度は廊下で寝てしまうぞ」

それは困ると、李順も否定出来ない想像に蒼褪める。
確かに彼女は必死に覚えようと、連日書簡を広げている。 膨大な量にめげそうになりながら、それでも解からない事項は直ぐに質問をし、答えを吸収しようと努めている。
・・・その努力は認めましょう。

「それでしたら、週に一度は休日を設けて頭を休ませましょうか。」
「焦って覚えようとしている夕鈴には、それくらいの間隔がいいかも知れないな。 あ、それなら僕のお休みも一緒に____ 」
「陛下は無理です!! 私だって休みは無いんですから!」

間髪入れずに李順にじろりと睨まれてしまい、卓に身体を預けていじけるしかない陛下。







「え? 明日はお休み・・・ですか?」

驚いた顔で書簡を広げている夕鈴。

「そうです。 いきなり全てを覚えようとしても頭の回転は付いて行きませんから、明日は一日のんびり自習でもして下さい。 私も政務に集中させて貰いますし」
「そ、そうですか。 そうですよね、李順さんも御仕事ありますし・・・・ 解かりました。 明日は部屋で自習して質問事項などを書き出して置きます。 後日 御教授下さい!」

見ると確かに眼が紅く、少しやつれた感もある。
陛下の言うとおり休日を設けるのは必要かもしれない。 ただの庶民が一国の王妃になったばかりだ。 出自不詳のお后と言われているが、元々は唯の一般庶民。 
貴族のなんたるかさえ知らないのだ。 憐れといえば哀れ。
眼鏡を持ち上げて、本日分の書簡を開くように指示する。 白陽国の歴史を教えるため。






******    *******     *******






急に降って沸いた休日に、何をしようかと考える夕鈴。
バイト妃の時は庭で花を摘み、四阿でお茶を飲んでいたりと比較的のんびりと演じていた。
時に政務室に通ったり、書庫で片付けをしたりしていたけど辛いものでは無かった。
時間を持て余し掃除婦としても働いていたけど、あれは気分転換みたいなもの。 綺麗になるとすっきりしたし、持て余した時間を身体を動かす事に満足も覚えた。

それに比べると今は頭も身体も酷使している。 一日中卓に向かうのがこんなに辛いとは。
李順や老師に悪いとは思うが、正直休日は嬉しい。
部屋を見回して、何処を片付けようかと思案する。 侍女に任せきりは悪いので、最低限の衣装替えと棚整理の他は普段出来るだけ自分で行なうようにしている。 部屋の模様替えも、楽しいかもと想像する。庭で季節の花を摘み大きな花瓶に飾るか、小さな器に水を満たし素朴な花を幾つも並べるのも楽しいかも。

まずは湯殿でゆっくりと身体をほぐして今日はよく寝ておこう。
明日の天気次第で動くのもいいな。 そう考えると疲れも薄れていくようだ。
綻んだ顔で書簡を片付けると侍女に湯殿の用意をお願いした。

侍女が気を利かせてくれた湯殿は花湯。 良い香りが湯殿に広がり夕鈴は手足を伸ばして心身ともにリラックスして楽しんだ。
湯殿から上がり 「すごく良い香りでした。 有難う御座います!」 とお礼を言うと、夕鈴の言葉に侍女も心から微笑みながら 「最近お疲れのご様子でしたので良かったですわ」 との返答をしてくれる。 その温かい言葉に涙が出るほど心から感謝した。

湯上りには熱めのお茶を淹れ、ほっこりとしていた。 昼間の正妃教育疲れも抜けていくようだった。 寝台に腰掛けて伸びをしながら陛下にお菓子を作るのもいいかも!と、ふと思う。
最近お忙しい様子で部屋への渡りもないし~、と呟きながら。

侍女は普段陛下が足蹴く通っているのを知ってはいるが、対する夕鈴が死んだように眠っていたり、床で倒れて熟睡していている為、本人ばかりが其れを知らない状況だ。
傍から見たらコントのよう。
しかし侍女の目には陛下に寄り添える自分になろうと努める夕鈴が、羽化を待つ蝶の様に見えて眩しいくらいだった。 下っ端妃から正妃への階段を一歩ずつ登ろうと努力する姿に感動して手助けが出来る立場にいる自分達を誇らしく思っているくらいだった。

明日は正妃教育がお休みと聞き、陛下のお渡りがあるだろうと、・・・・否、有るはず!! と確信した侍女は茶器を新しく用意して、陛下の訪れを待っていた。

・・・・知らぬは夕鈴ばかり。


菓子作りの小冊を読んでいる内に、夕鈴の瞼が重くなってきた。

駄目だ・・・・。 寝よう。
明日の休日は頭の回転を休めるためのもの。 なのに今 根を詰めてどうする? 
どんな菓子を作ろうと考えるのは明日にしようと、欠伸をして寝台に倒れる。

だめ・・・・ 足を掛け布に入れなきゃ・・・・ 湯冷めしちゃ・・・・・・・

そのまま夕鈴の瞼が閉じていく。





また今日もか。
寝台に倒れたままで規則正しい寝息をたてて寝入る夕鈴を、苦笑して見る陛下。
抱き上げて掛け布を掛けると、夕鈴からは花の香りがした。 花湯に浸かったのかと鼻を近づけると、夕鈴の手が伸びてきた。 顔を上げると、薄目を開けた夕鈴が笑っている。
浅い眠りだったのか、抱き上げた時に意識が浮上したようだ。

「へいか・・・ ひさしぶりですね・・・・」
「・・・・君の寝姿が心配で、毎日顔を出してはいるんだけどね」

陛下が思わず笑うと、微笑んだまま夕鈴は目を閉じようとする。
その顎を持ち上げて口付けをすると、気だるそうに僕の首に夕鈴の手が纏わり付く。
夕鈴の後頭部を持ち上げて、背に腕を回し深い口付けに変えていくと、ゆっくりと応え出した。 それでも眠気が勝るのか、吐息が漏れるだけで首に纏わり付く夕鈴の手にも力が無い。 疲労が溜まっているのだろうと口付けしながら陛下は思った。

・・・そのまま寝かせてあげようか・・・・・。

僕の心に反して僕の手が乳房に触れると、彼女の背が大きく震えた。
乳房の頂きを摘むと唇から微かに喘ぎ声が漏れ出す。 夕鈴の唇から首筋へ舌を這わすと、肩を竦めながら囁かれた。

「んんっ・・・ だ、め・・・」

僕が顔を上げると、頬を染めて眉を寄せる夕鈴が戸惑った瞳で僕を見上げている。
眠気があるためか、瞼をとろりと閉じかけた妖艶な瞳。
そんな表情で、こんな時に僕に 『否』 を言えるのは夕鈴だけ。 でも、もう駄目だ。
_____その瞳に煽られてしまう。


「駄目は聞かないよ。 ・・・休みは明日だろう? 今晩の君は正妃として僕を癒す仕事をしなくてはいけない。 随分と放って置かれたから夕鈴不足なんだ」
「でも・・・ 陛下も身体を休めなきゃ・・・ 私とは比べものに為らない程にお仕事されていますのに疲れちゃい・・・・」

それ以上は言わせない。 君の唇が語るのは熱い吐息と喘ぎ声だけでいい。
久方振りの夕鈴の熱に重ねるように口付けを深めていく・・・・。 夜の帳は降りたばかり。









夜の帳が深くなるにつれ、狼陛下唯一の后から途切れる事の無い喘ぎ声が寝所に響く。
高く響いていたその声がやがて掠れ出し、許しを請うようになっても二人の宴は続いた。







その後夕鈴は陛下に休日を絶対知らせないで欲しいと、李順に頼み込むことになる。
折角の休日に腰が立たなくなるほど疲労してしまう自分を労わるために。





FIN




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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

もしもシリーズ | 15:43:53 | トラックバック(0) | コメント(0)
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