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昏く冷たい月  2

続きです。 陛下×夕鈴ってスタンスはそのままなのですが、ちょっと方淵より?
書いていて傾きが・・・・。 あれ?って自分で思うのですが。


では、どうぞ













真っ暗な井戸の中で震えながら桶を持つ夕鈴は、冷たさが痛みに変わり、やがてその痛みさえ感じなくなりつつある自分に、正直 「駄目かも・・・」 と思った。 寒さって眠気を催すんだなと、ぼんやり考え始め、慌てて頭を振る。 
今、自分を助けようとしている人が居るのだから、ここで力尽きてどうするんだ? 
駄目だっ! 寝ちゃ駄目だ!
夕鈴はもう一度桶を持ち直し、気を引き締めた。




「・・鈴! ・・・夕鈴!!!」

いつの間にか桶から手が外れそうになっていた夕鈴は、意識を手放していたようだ。
声のする方向を見上げたが、もう応えようとしても声は出ない。 全身が冷たい水で犯され、桶を掴んでいるのが自分でも不思議なくらいだった。 聞こえた声は私の名前を呼び捨てにしていた。 ということは・・・。 陛下だ。 どうにか桶を引き、無事であることを伝える。 伝わったようで、少し穏やかな声が降って来た。

「・・・今、方淵が降りていくから、もう少しだ」

もう少しで救出されると聞き気が緩みそうだが、方淵が降りてくると聞き驚いた。 
てっきり浩大が来るのだと思っていたから。 そして縄が目の前に下りてきた。 ぱらぱらと細かな石が落ちてくるのを避けるため下を向いて居たら直ぐに眠くなる。 壁に縋りつきながら桶を持ち瞼を閉じていると、方淵の声がした。

「お妃様、迎えに来ました。 ・・・御体に触れることをお許し下さい」

上に陛下が居るためか丁寧な言い方をする方淵に、苦笑も返事も出来ない。 だけど来てくれたことに安堵して気が抜け、桶から手が抜けて水の中に沈み込みそうになる。 
その様子に方淵が慌てて夕鈴の脇に腕を通した。

細い紐が降りて来て灯りが周りを燈すと、妃の顔が近くで見え、額から血が流れているのが解かった。 共に水の中に浸かったため、冷たさが身に凍みる。 この冷たい温度の中、よく意識が保てたなと思わず抱き締める腕に力が入った。 妃の手を自分の首筋に当てる。 少しでも温めることが出来るようにと。
震えもしなくなった妃の身体が心配だと、急ぎ脇の下に縄を巻き付けた。 
方淵は出来るだけ妃に触れないように、手早く縄を巻き付けながら声を掛け続ける。 意識がなくなるのが一番怖い。 閉じた瞳も力ない腕も、いつもの妃とまるで違い、方淵は声を荒げた。

「もう少しだから、頑張れ! 目を開けろ!」
「う・・ん、方え・・・」

だけど、そこが夕鈴の限界だった。 
ゆっくりと項垂れ、意識を失った妃の脇下に腕を入れる。 顔を見ると蒼白だと解かり急ぎ水の中から膝下を攫い、抱きかかえて上に声を掛けた。

「陛下、上げて下さい!」




その声に井戸の脇で待機していた陛下と李順、浩大が縄をゆっくりと引き上げる。 意識の無い人間とそれを支える人間、二人分の体重が掛かる綱を井戸から近くの木に回し、少しずつ慎重に引いていく。 
対して、井戸の中では方淵が意識を失った夕鈴の手を自身の襟中に突っ込み、縄を巻きつけた脇下に負担が掛からぬように抱き上げ、背と足を石壁に当てながら少しずつ上にずり上がっていった。 濡れた衣装が冷たく、胸に凭れ掛けた妃の意識が無いことに気が急くが 先ずは落ちないように気を引き締めて、引かれる綱と共に身体を動かす。


「方淵、御苦労! 夕鈴は・・・気を失っているのか」
「・・・へ、いか、お妃様は冷たい井戸水に浸かっていたための低体温症と思われます。 急に温めては危険です。 急ぎ、侍医に指示を仰いで下さい・・・・」

震えながら方淵が伝えるその言葉に頷き、陛下は急ぎ侍医が待つ部屋へ急いだ。 李順が大判の布を方淵に掛けながら 「御苦労様です。 さ、部屋へ急いで下さい」 と促した。 震えながら頷き、方淵も着替える為に場を離れた。 皆が消えた後、姿を現した浩大が急ぎ井戸を塞ぎ、もう二度と誰も落ちないように対処を施した。

「あ~、後宮管理人としてじいちゃんも怒られるだろうな・・・・」

あと出来ることは、肩を竦めて張老師の行く末を祈るだけ。












部屋では侍医に指示されたとおりに対処を施していく。
侍女を呼び、夕鈴から濡れた衣装を全て脱がせて、幾重にも掛け布を巻きつける。 全身を驚くほど冷たく濡らした妃の様子に 「一体何が?」 と驚きを隠せない侍女だが、それよりも冷たい視線を寝台に向ける陛下に怯えながら衣装を脱がせていった。
肌を擦ってはいけないと謂われ、軽く拭くだけに止めて冷たい肌に掛け布を巻きつけると静かに退室する。 蒼褪めた顔色の夕鈴は意識を取り戻し、心配顔の陛下に見下ろされていた。 乾いた掛け布にくるまれた夕鈴はまた震えに襲われている。

「・・・ご心配かけ・・ました。 方淵殿にも、あとで・・・」
「夕鈴、短い時間とはいえ冷たい水の中に居たのだから喋らず、安静にして」

寝台に腰掛けた陛下が、夕鈴の背に手を入れて身体を起こした。 何っ? と近くなった顔に驚いていると、暖かい白湯が口元に近付く。

「じ、自分で飲めますっ!」 と慌てるが、巻きついた掛け布に手を出すことが出来ない。
わたわたする姿に頭上からくすくすと笑う声が聞こえて、夕鈴は諦めて飲ませて貰うことにした。 

少し熱めの白湯には砂糖が溶かされており、身体の中からじんわりと温かくなるような気がする。 少しずつ飲み込むと、やっと人心地ついた気がしてきた。

「甘い・・・です」
「中から先ず暖めることが先決だって。 もう少し飲んでね、震えが止まるまで」

暖かい飲み物で体内を暖め、充分に全身が温まったと判るまでは寝かせないようにと侍医より指示があった。 このまま眠ってしまうと低体温が進んでしまうため、予後を考えて完全に震えが止まるまでは、覚醒させておくように言われている。 ただし、出来る限りは安静にと。

加糖の白湯を3杯飲むと 「もう、お腹がいっぱいです」 と夕鈴が困った顔を向けてくる。
夕鈴の背中に潜り込んだ陛下は、濡れたままの夕鈴の髪を丁寧に拭い始める。 額には消毒をして布を宛がっていて、幸いにも傷は浅く残るようなものではないという。 その傷に注意しながら髪の雫を拭き取る。

「陛下・・・いいですよ。 陛下の胸元が濡れちゃいますし、髪汚れていますから」
「動いちゃ駄目だよ、夕鈴。 心配させたんだから言う通りにしてて・・・」

そう言われると夕鈴は動けなくなる。 陛下に髪を梳かれる、その気持ち良さに瞼が下がってきた。 知らぬ間に眠りに誘われ項垂れると、耳元に陛下の声が低く響く。

「夕鈴、まだ寝ちゃ駄目だよ。 まだ細かく震えているから」

急に耳元に響いた陛下の声に瞬時に眠気が消えた。 
真っ赤になった夕鈴は 「ね、寝ません!」 と慌てるしかない。 耳元に低く囁かれ、背中が妙にぞわぞわしてしまうが、それも寒気のせいかと身震いしてしまう。 兎に角、今はしっかりと目を開けて起きていなきゃ駄目だと背を正した瞬間、耳元に聞きなれない音が響いた。

・・・・ちゅっ。

夕鈴の肩口にさらさらした髪が舞い降りたと思ったら、温かいものが触れて・・・・。
首を竦めて振り返ると、すごく近い場所に陛下の顔があり夕鈴は 「ひぃっ!」 と叫んだ。 

その反応に笑みを浮かべた陛下は、同じ場所にもう一度唇を触れさせた。 半開きの唇を戦慄かせながら夕鈴の顔が紅潮していくのを見て 『気絶させたら駄目だよな』 と小さく苦笑する。 後ろから夕鈴をきゅっと抱き締めて、そのまま耳元に話し出す。

「右肩、痛そうだね。 思い切り石壁に叩き付けたようだし、痛みがある内は動かさないようにね。 足も同じだよ。 一日に何度か湿布の交換をしてね。 冷やし過ぎないように気を付けるようにして、温かい物を食べたり飲んだりするように内側から暖めて」

肩に触れた唇は一体何っ!?
真っ赤になり寒さとは違う震えを纏いながら、陛下の言葉にどうにか返答する。

「・・・はい。 えと、陛下・・・・今のは・・・・・・いえ、本当に粗忽者で・・・。 発見が早かったのと、直ぐに助けて頂けて助かりました。何度も寝ちゃ居そうになりましたから・・・。 最初に気づいてくれた方淵殿には感謝しても仕切れません!」

夕鈴がそう言うと、耳元で話す陛下の声音が急に小さくなる。

「・・・僕が直に夕鈴を助けに行きたかったな~」
「そう・・・言えば、方淵殿が降りて来て驚きました。 てっきり浩大が来ると思っていましたから驚いたんですよ。 どうしてですか?」
「うん、方淵に浩大を見せたくなかったんだ。 隠密として動かしている内はね。 そして僕が降りるより方淵の方が体格的に細かったのと、持ち上げる時力が必要だったから彼に夕鈴を任せることにしたんだ」
「・・・そう、ですか・・・・」

方淵に冷たい思いをさせてしまった。 ・・・後でしっかり謝罪と感謝をしよう。
落ちた私を見つけてくれた上に井戸の中にまで助けに来てくれた。
暫らくは睨まれても睨み返さずに居るしかないかしら? いや、それは別の問題だろう。
でも睨み返すのは難しくなるかも・・・。 暫らくは大人しく後宮に引き篭もろうかしら?
・・・でも、それではバイトにならないか・・
ああ!! 方淵に大きな借りを作ったようで、困ってしまう。

夕鈴がう~ん、う~んと唸り出すと陛下が拗ねた声を出した。

「夕鈴が方淵のことばかり考えているのは嫌だな。 君は僕の奥さんなのに」
「へ・・・? 助けて貰ったのですし考えるのは仕方ないです。 ・・・それに奥さんって、私はバイト妃ですよ。 其れと此れとは別ものです! 演技は今はいらないですからね」

すっぱりと話を切って、夕鈴は御礼をするなら何がいいのか考え出した。 掛け布の中で腕を組み悩んでいる彼女から震えはすっかり消えていた。 面白くないのは陛下だけ。

思い切り耳としっぽを下げて、背後からきゅーきゅーと泣いてみる。 背後の小犬にぎょっとして、優しい夕鈴が慌て出すのが伝わって来る。

「あ、あの、陛下はお礼って何がいいですか? 助けて下さった皆さんにお礼をしたいのですが、参考までに陛下が希望するお礼って何がいいか教えて下さい」

夕鈴の意識が自分に向いたと、ぱあっと笑顔になった陛下は 『お礼』 と言われて考える。
皆にお礼というけど、浩大はいいや、職務怠慢だし。
李順は 『お礼よりも節度を持ち、井戸に落ちない妃を演じて欲しいです』 と言いそうだ。
方淵は 『臣下として当たり前のことですから』 と遠慮しそうだ。

しかも・・・・。

奴は普段見る表情とは異なる真剣な顔で井戸へ降りて行ったな。 綱を引き上げた時夕鈴の手を自分の襟中に突っ込んでいたし、胸元に夕鈴の頭が寄り掛かっていた・・・・。 
ちょっと昏い表情で思い出してしまう。 まさか・・・とは思うが。

それでも夕鈴は何かお返しをしたいと強く望んでいるし、実行するまでは諦めないだろう。

「・・・日持ちする焼き菓子がいいな。 形に残るものより残らないものの方が互いに気が楽だろう。 きっと大袈裟にされると困るよ。 夕鈴があそこに居た理由とか」
「・・・・あっ! そう、ですね・・・・」

ふんふんと、夕鈴が納得したところで 「安静にする時間だよ」 と、寝台に横にさせる。

「もう震えは止まったようだから、あとはゆっくりと休むこと!」
「あ、あの・・・侍女さんを呼んで欲しいのですが・・・」

真っ赤な顔で僕を見上げる夕鈴。 小首をかしげて夕鈴を見ると戸惑った顔をしている。

「僕じゃ駄目? お腹すいた? 白湯もう少し飲みたい? 何?」
「いえ、あの、あの・・・侍女さんを・・・・」
「?」

掛け布の中でもじもじしている。 もしかして?

「夕鈴、厠に行きたいの? 連れて行ってあげるよ」

掛け布ごと抱き上げると、腕の中で夕鈴が叫び出した。

「違います! わ、わたしまだ何も着ていないんです! 何か着る物を!」
「ああ・・・今日はそのままで休んでいて。 侍女はもう下がらせたから・・・」
「自分で着ますから、陛下はお仕事に行って下さい! もう歩けますし!」
「駄目っ! 今日は一日安静にしていなきゃ駄目だよ。 侍医にも言われているしね」

甘い声色だが狼陛下の顔。

「~~~~~~っ!!」

安静にするのと夜着も着れない、下着も穿けないって、どう関係するのか解からない!!
真っ赤な顔で如何しようか悩みながらも 紅い眼に見つめられ仕方無しに目を閉じた。

やはり疲れていたのだろう、すぐに微睡み始めた夕鈴は知らない筈の方淵の体温を思い出していた。 あの冷たい井戸の中で仄かに暖かかったような記憶がすると。




その触れた手の温もりは。








FIN

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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:05:34 | トラックバック(0) | コメント(2)
コメント
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2012-04-08 日 01:19:24 | | [編集]
Re: タイトルなし
幻想民族様、コメントをありがとう御座います。何かもう申し訳ないと言うしかない。今頃コメント頂いていることに気付く阿呆です、私。もう、ずいぶん昔の話なのでコメントしたこともお忘れでしょうが、ここに謝罪しておきます。今頃で、本当にすいません。
2014-02-15 土 00:17:04 | URL | あお [編集]
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