スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告 | --:--:--
バイト妃のバイト  2
二日酔いまではいきませんが、眠気が・・・。休み前の花見で良かった。
来週は総会があるので、更新滞ると思います。 仕事の体勢が変わった上に、朝起きる時間が一時間早くなり、ひえ~で御座います。 もう、笑うしかないっす。 来月のシフトは有給をうまく使って身体を休めつつ、更新出来るようにしたいのですが。

まあ、どうにかなるさ!




では、どうぞ
















下っ端侍官が政務室と執務室を頻回に出入りしている上に、陛下だけではなく側近の李順からも丁寧な扱いを受けている様子に面白く思わない輩が出てくるのは必須だろう。
最初は下っ端侍官の急な採用に何らかの思惑があるのかとか、親戚筋では無いかとか・・・、多方面から調べる者もいたが、何も明らかにならない。 その内何も掴めない事に腹を立て、陰湿な 『いじめ』 が始まる。 最初は軽いものだったため、夕鈴自身も解からなかった。

書庫に入ろうとすると鍵がかかっていたり、曲がり角で足を出されたり、持っていた書簡に水を掛けられそうになったり、後ろから突然ぶつかって来たり・・・・。
それが続くと流石に夕鈴もおかしいと思い始めた。 しかし、それと仕事は別。
自分が我慢していれば良いことだし、王宮の上下関係を思えば此れ位は致し方ないことかもと別段気にしないようにした。 それが政務に響くようだったら、その時に考えればいい。 しかし、青慎がいずれ出仕する予定の官吏の世界がこんな状態なのは腹が立つ。 
あの難しい科挙を受けて国の為にと働く文官の真の姿がこれでは情けなくなる。



夕鈴がいつものように妃として執務室に入り衝立の陰で侍官の衣装に着替えていると、誰かが入って来た。 ここに入れるのは限られた人間だ。 李順さんか・・・もしかして陛下?

「・・・・陛下、ですか?」

万が一を考えて、出来るだけ低い声で呟いてみるが返答が無い。
静まり返った室内の雰囲気に、心臓が痛いほど跳ねる。 
夕鈴がここで着替えることを知っている人間は直ぐに返答するだろう。 
もしかして陛下が急務で入って来て、物陰から突然声を掛けられ驚いて居るのだろうか。

「あの・・・・」

その時衝立が夕鈴側に倒れた。
あっと思う間も無く壁に押しやられた夕鈴だが、隙間にしゃがみ込み難を逃れる。 声を出さないように口を覆い意識を外へ向けると、走り去る足音が聞こえた。

思わず追いかけようと部屋を出ると浩大が前を塞いだ。

「お妃ちゃ・・・おっと、今は侍官だったね。 大丈夫だよ、他の隠密が追ってるから」
「な、何なの? もしかしてばれたの? それとも他に何かあるっていうの?」
「しーーーっ!」

夕鈴の声に驚いて、浩大は慌てて静かにするように制する。 夕鈴も急ぎ自分の口を押さえて肩を竦めた。 一体何なの? と思っていると、浩大が笑って簡単に説明をしてくれる。

「お妃ちゃんと下っ端侍官が怪しいと思い、何か暴けることはないかと調べている人間が居るってことさ。 同じ人間が変装しているとは思わずね~」
「まさか、それって・・・・」
「そう、陛下にも李順さんにも気に入られている下っ端侍官とお妃ちゃんを両方いっぺんに陥れるチャンスって思っているみたいっすよ。 ぷー!!」

笑っている場合じゃないだろうと浩大を睨みながら、私を陥れる為に画策する人もまあ忙しいことだわね~、と思った。 これからは更に注意して着替えなきゃ駄目かと思うと落ち込みそうだ。 肩を落としていると、陛下が驚いた顔で姿を現した。 浩大も下っ端侍官の姿をしているため、見た目には侍官同士で話しているようには見えるが、事情を知っている陛下は直ぐに表情を曇らせる。
執務室内へ入るように狼陛下の声色で告げられ、夕鈴は背筋を凍らせた。


「・・・・で、二人で仲良く何を話しているのかな?」

何故、この場で思い切り狼陛下? 
夕鈴がその表情に怯え出すと、浩大が我慢しきれずに笑い出した。

「へーか、なにやら誤解してるみたいだけど、それどころじゃないっすよ! 執務室に押し入って来た奴が居たんだからさ。 お妃ちゃんの着替えを見られて大変だったよな~・・・・という話をしていたのですが、何か?」
「浩大っ! 見られて無いわよ! 変なこと言わないで!!」

途端、背後から冷気が這い登るような恐ろしい雰囲気が・・・。 ぞくっとしながら振り向くと紅い眼が侍官姿の夕鈴を捉えていた。 浩大が 「では、退出致します」 と出て行く。 置いて行かないでっ! と慌てて浩大の後を追おうとすると直ぐに腕を掴まれた。

「夕鈴・・・何処まで見られた? どんな奴だった? まさか・・・触られ」
「もうっ! 見られていませんって! 衝立越しに音がしたので陛下かと思い声を掛けたら、急に衝立を倒されて。 ・・・今、浩大のお仲間が後を追っているそうですが」

ふぅんと、紅い眼が廊下を見やる。 夕鈴の腕を掴んだまま、狼陛下の雰囲気でどう見ても怒っている様子。 思わず 『李順さんのお手伝い中止』 を告げられるかもと焦ってしまう。

「陛下、下っ端侍官が私だとばれていませんから、お仕事は続けますからね!」
「・・・衝立がぶつかっていたら怪我では済まないこともあるんだよ。 もしも当たり処が悪ければ大怪我となる場合だって・・・」
「でもっ! 大丈夫でした。 お願いです陛下。 続けさせて下さい! 李順さんのお役に立てさせて下さい。 せめて添え木が取れるまではっ!」

掴まれた腕に縋るように夕鈴は頼み込むと、陛下はすぐに微笑みながら頭を撫でてくれた。
その微笑みにほっとすると、何故か急に陛下に抱き上げられ、目を瞠って急ぎ開放してくれと抗うが勿論解放されるはずもない。

「なっ! 陛下、私今は侍官ですよっ! おかしいですって!」
「だって夕鈴は夕鈴でしょ。 それに誰も来ないよ、隠密が追っているなら大丈夫」
「でも・・・ ここで抱き上げる必要は無いでしょ!」

そのまま陛下は椅子へ移動し、夕鈴を抱き上げたまま卓へ腰掛けた。 髪を纏め上げ紗帽に纏めているため襟足が出ており、その襟足に唇を近づけて夕鈴の言葉に答える。

「だぁって、最近ゆーりん、李順ばかりに構って仕事ばかりしてるし・・・」

襟足に響く声と、触れそうな唇に夕鈴は一気に紅潮して陛下を押しやるが、腕の中、膝の上では押しやるにも限度があり、背筋がざわざわしてしまう。

「私が原因で怪我をさせたのですから、出来る僅かなことをしているだけです! もう暫らくの間、侍官としてお手伝いをすることを許して下さい!」
「だって、さっき危ないところだったんだろう? 確か 『万が一ばれたら・・・』 」
「ばれていませんっ!」

膝上から落ちるように飛び降りた夕鈴は、背筋を伸ばして腰に手を当て元気良く言い放つ。

「ばれていない内は大丈夫です。 今まで通り仕事をさせて頂きますからね!」

真っ赤な顔で少し涙ぐみながら、それでも言い切って執務室から出て行った。
溜息を吐き、困ったものだと陛下が呟くと、そこに浩大が姿を見せて報告を始める。

「まあ、正直なところ下っ端侍官に対する僻み、妬み、中傷の類だね。 お妃ちゃんが化けているとは知られてはいないっすよ。 いじめがあったのは知ってるよね。 まあ、お妃ちゃんは言わないだろうけどさ。 ・・・・執務室にまで入ってくるのは、ちょっと遣り過ぎだけどね・・・」

もう縛り上げてあるからと哂い、浩大は夕鈴の護衛に就くため部屋を出て行った。 
万が一、着替え中の夕鈴を見ていたとしたら命は無かっただろう。 見ていなくとも執務室に無断で入ったことで奴の将来は消えたも同然。 一族郎党、先はないだろう。 馬鹿な事をしたものだ。 民の手本と為るべく官吏を目指し、王宮に来た筈なのに。


「何かありましたか? 今浩大が侍官らしからぬ笑顔で走っており、注意をして来ましたが詳しくは陛下に聞けとのことでしたが」
「・・・執務室に忍び込んだ輩がいたんだ。 侍官としての夕鈴を陥れようと探っていた様子だ。 もう捕らえているそうだから後で逢いに行って来るよ」

昏い笑みを浮かべる陛下を見て、李順は口を噤んだ。 忍び込んだ官吏の先は知れている。
それよりも妃が下っ端侍官として良く働くほどやっかみに遭うという事の方が問題だと思い、もうこれ以上は無理だと考えた。 陛下を見ると、眉を下げて肩を竦めていた。 李順が 「?」 と思うと、そのまま苦笑し出した。

「先ほど、夕鈴に 『ばれたから』 と中止を命じようとしたら、『まだばれていない』 と涙ぐみながら出て行ったんだ。 思い出すと、それが面白くて・・・・」
「陛下、面白いでは済みませんよ。 無理でも、もう中止して貰いますからね。 何か遭ってからでは困ります。 危険手当だって馬鹿になりませんからね」
「それを夕鈴が納得出来るならな」
「させますよ、次に狙われた時は危険が伴いますよ。 今は妃としてバイトして居る訳ではないのですから。 いいのですか、陛下は」

う~んと陛下が腕を組みながら、李順の言っていることも一理あると考える。
浩大からの報告にも遭ったが、陰湿ないじめが横行している以上、怪我があってからでは遅い。
一番いいのは李順の骨折が完治するというのがいいのだが、簡単にはいかない。

「苦労するだろうけど・・・説得するか・・・」

泣かせそうだと思いながら夕鈴を探しに執務室から出て行った。
陛下が出て行った部屋で李順は陛下を真面目に仕事させる良い機会だったのにと、本当に残念に思った。 いつもの妃スマイルも妃らしい仕草も必要ない、実直な彼女にぴったりな仕事だったのにと。 実際に多少は助かった面もある。
しかし、危険を伴って来たのだから、これ以上は無理と判断せざるを得ない。
こうなった以上すっぱりと切るのが一番いい。 必要なら妃として執務室にも居座らせるか。
まずは陛下の手が止まらぬように出来ればいいのだから。

眼鏡を上げようとして、右手の痛みに気付く。 この骨折が夕鈴の違う面を見せてくれたきっかけ。 しかし、それも今日で御終い。 これからは今まで通り妃として演技をして貰うこととなる。 少しでも妃としても大人しく演技して欲しいと心から期待するしかない。







「嫌です! まだばれていませんから、私頑張ります!」

強情な夕鈴は 『やめません』 の一点張り。 いつもなら真赤な顔で腰が引ける筈の狼陛下でも駄目だった。 困ったものだと、それでも夕鈴を説得するしか無い。

「ねえ、李順もこれ以上は何かあっても危険手当の支給は出来ないと言っているし、中止したいと僕に言ってきたんだよ。 夕鈴の頑張りは解かっているけど、上司として無理だと判断したんだ。 諦めて、夕鈴」
「でも、条件の 『ばれないこと』 には・・・」
「夕鈴、君の基本的なバイトは?」
「・・・・臨時花嫁です・・・」

俯き出した夕鈴を見て胸が痛むが、止めを刺すことにした。

「執務室に入って来た官吏は下積みが長い者で、最近漸く内史府で働き出したそうだ。 そこで僕や李順と親しく動き回る夕鈴を、下っ端侍官を見て苛立ちを覚えたと言っていた。 ・・・まあ、やっかみだよね。 すんなり上に取り入っていると思い込んで」
「そんな、だって・・・李順さんの腕代わりで、私・・・」
「うん、でも彼はそれを知らない。 私欲で動いてはいけないと官吏受験時にも、登城する際にも厳しく言われてはいた筈だけど。 ・・・夕鈴も知っている通り、王宮は私利私欲の塊だ。 あわよくばと考える狸や狐ばかりだ。 夕鈴が頑張れば頑張るほど、闇い感情を煽られる輩もいるということなんだ。 だから、ごめんね」

官吏は私利私欲に左右されては為らず公平無私に誠意を尽くすべきなのだが、人間である以上それは難しいようだ。 私欲が増してくると他人を蹴落としたくなる。 たとえ、どんな手を使っても。

そして陛下が語る表情が切なそうだと知り、夕鈴はそれ以上反論することが出来なくなった。
自分の頑張りが他の官吏の感情を逆撫でしていたと知り、悲しくもなる。

「わかり・・・ました。 侍官の仕事は終わりにします・・・」

がっかりと肩を落として了承する夕鈴の姿に、心を痛めながら陛下が肩を抱こうとした。
その時、夕鈴が大きな声で新たな決意を叫び出す。

「では、李順さんの邸に泊まり込んで御世話させて頂きます! 陛下、暫しのお休みを下さいませんか? 3週間ほどでいいですので!!」

にこやかな笑顔で陛下を見上げる夕鈴。 かたや、この世の終わりのような表情の陛下。
李順に侍官として働くことを 『是』 と言わせた夕鈴が、しぶとく願い出すのは目に見えている。 李順が絶対反対するだろうけど、万が一折れたら・・・・。

「夕鈴は僕の奥さんなんだから、他の男の邸に行くのは絶対に駄目!!」
「それは一旦お休みさせて頂きたいのです。 侍女でも召使でも何でもいいので、しばらく李順さんが心地よく過ごせるように手助けをさせて下さい。 お願いします!」
「絶対に駄目っ!」
「陛下から李順さんに言って貰えると、助かるんですが」
「だから、絶対に駄目! ・・・夕鈴これ以上言うと唇を塞ぐよ・・・・」

頬を掴むと、目の前の夕鈴は一気に蒼褪めた。 僕の台詞をどうやら取り違えて解釈したらしい。 
口を塞ぐと・・・・物言わぬ状態にさせると。 老師から後宮での過去の陰惨な話を耳にしていたのだろう、蒼褪めた夕鈴は僕からゆっくりと離れようとしているのが判り、慌てて手を伸ばすと脱兎の如く逃げ出してしまった。 君にそんなことをする訳ないのに、狼陛下の口調に驚き怯えていた。



口付ける意味で言ったのに・・・。
李順の邸に行くことを許可しない僕の気持ちも、君はきっと理解出来ないのだろうな。

逃げ出した兎を追うべきか、少し時間を置いた方がいいのか、陛下は立ち竦みながら悩み続けた。 有能な側近が怒りを露わに姿を見せるまで。







FIN

スポンサーサイト

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:04:03 | トラックバック(0) | コメント(0)
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。