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親切な人への報い
なんか、久し振りの短編です。
方淵&水月さんを書いてみたくなりました。もちろん陛下も出て来ます。
さっと読んで頂けると、嬉しいです。内容が全く無いもので・・・。



では、どうぞ















方淵が書庫に入ると、卓で眠る妃が目に入った。

「お妃様、ここは仮眠室ではありません!」

その厳しい声色に、夕鈴ははっとして卓より顔を上げた。 その顔色は蒼褪めており、声を掛けた方淵も戸惑うくらいだった。 小さく息を吐き、夕鈴は卓に手を付きながら立ち上がる。

「すいません、つい・・・」
「・・・・お妃っ!」

立ち上がる夕鈴は直ぐに膝から崩れそうになり、方淵が急ぎ手を差し伸べ身体を支える。
離宮で湯あたりした夕鈴を抱えた時に香った温泉の匂いではなく、彼女が身に纏う香の薫りに瞬時驚いてしまう。 脇に手を入れ引き摺るように長椅子に座らせると、夕鈴から小声で礼を言われる。

「ごめんなさい・・・ ちょっと貧血気味のようで・・・」
「ならば後宮に戻るがいい。 妃付きの侍女を今呼んで来よう」
「いえ、もう少ししたら自分で立てますから。 片付けが済んだので戻ろうと思ったのですが 立眩みで座り込み、つい寝てしまったようで。 少しだけ休んだら歩けるようになりますので、すぐに御暇乞いをさせて・・・」

扉へ向かった方淵へ伝えている最中に、すうっと血が下がる感覚に襲われ夕鈴は言葉を失った。 目を瞑り、胸を押さえて耐えているしかない。 その様子を見て方淵が溜息を吐く。

「・・・貴女がそんな調子だと・・・」
「え・・・? 何?」

目を閉じ俯いたまま方淵からの台詞を待っている間にも、気が遠くなりそうな感覚に襲われる。 耳鳴りがしてきて、自然に眉根が寄せられる。 黙って耐えていると、長椅子に座る夕鈴の隣に扉近くから戻って来た方淵が座り、半開きの口から小声でごにょごにょと声が漏れだした。

「・・・肩・・・寄りかかっても・・・」

いつもなら大袈裟に驚いてしまうところだが、今の夕鈴には正直有り難かった。

「御仕事、大丈夫ですか?」
「・・・・少しの間なら」

それを聞き、再度襲ってきた眩暈に夕鈴は身体を連慮無く傾けた。 こんなに酷い貧血は久し振りだった。 後宮でバイト生活を始めてからは海の幸や山の幸と豪華な食事内容で健康面は優良の筈だったのに。 それでも貧血になってしまったのだから仕方が無い。

人肌の温かさに身体を預けていると少し楽になった気がした。 眩暈に頭が回らず、無言で目を閉じている内に夕鈴に眠気が襲ってきた。 ダメ・・・・、方淵に悪いから直ぐに起きなきゃ・・・・
そう思いながらも夕鈴はいつしか深い眠りの中に。











「おや方淵殿、珍しくこんな所でサボって・・・・え?」
「水月・・・・」

書庫に水月が姿を見せると、方淵が困惑した珍しい表情を見せた。 その顔に驚きながら水月が近付くと、方淵の膝の上には狼陛下唯一の妃の頭が乗っていた。 青白い顔色で寝息をたてている様に水月は何があったのかを推察出来た。
しかし・・・・・。 
くるりと方淵に背を向けて書庫を後にしようとすると、方淵が小さくも鋭い声を掛けてきた。

「逃げるなっ! これを如何しようか困っている。 案を出せっ!」
「・・・ふう、そういう時は助けて欲しいと言うんだよ・・・」

逃げようとした水月も青白い顔で眠る妃に声を掛ける事が出来ない。 具合が悪いなら抱き上げて医局に連れて行くのが一番だが、もし誰かに見られたら良からぬ噂が流れるかも知れない。 運ぶ途中で陛下に見られるかも知れない。 ・・・・・それだけは勘弁して欲しい。

水月は溜息を付き、第二案を方淵に告げる。
つまり上手く膝から妃の頭を降ろして、その後側近である李順を呼ぶか、陛下を呼ぶというもの。 書庫に行ったら妃が具合悪そうに寝ていますと、告げればいい話。
方淵もそれが良いかもと、納得して膝の上の妃を見下ろした。
自身の膝を少し開き、その間に手を差し込み、そうっと妃の頭を持ち上げる。 水月が妃の頬を掴み持ち上げられた隙間より方淵が足をゆっくりとずらしていく。 しかし気付くと方淵の官衣を夕鈴が掴んでいる事に気が付く。 水月が夕鈴の頬から手を離し、掴んでいる手をそっと開いて。

「・・・ん、んんっ」

夕鈴の身体が震え、瞬時に眉間に皺が寄る。 その表情に驚いている内に、水月の手をきゅっと握り締められて今度は水月が困惑の顔色になる。

「方淵殿、私も動けなくなりました・・・・」
「・・・なっ! どうすればいいんだ?」
「誰かを呼びに行く事も出来ませんので、ここはお妃様に起きて頂くのが一番かと思いますが・・・。 ちょっと可哀想にも思いますね。 ああ、汗が・・・」

水月が袖口で夕鈴の額に浮かんだ汗を拭っている間、方淵は上を仰ぎ見て溜息を吐いた。
膝の上で眠る妃の体調も心配だが、こんな事態になるなら早々に書庫を離れるべきだった。
今は自分の首が心配になる。
陛下の臣下が、陛下の唯一の妃に寄り添い、共に過ごしているのだ。
良からぬ輩が見たら、すぐに良からぬ噂が広まるだろう。 それだけは阻止したい。

「・・・致し方が無い、起きて貰おう。 貴様が起こせ」
「仕方が無いか・・・これでは逃げる事も出来ないしね。 ・・・お妃様、申し訳御座いません。 柳方淵殿が起きて欲しいと申しております、お妃様?」
「そ、そんな起こし方っ! 水月、貴様・・・」

漫才のような二人の騒ぎに夕鈴が目覚めるより早く、部屋に訪れた人影が哂い出した。
その声に顔を向けた二人は、息が止まるかと思ったほどだ。


「我が妃が迷惑を掛けているようだな、方淵、水月」
「・・・っ陛下! こ、これは・・・」

柔らかい表情で方淵の膝の上で眠る夕鈴を見下ろし、夕鈴に手を掴まれた水月を一瞥した。
蒼白い顔で横たわる夕鈴を静かに抱え上げると、水月から手がするりっと離れた。
開放された二人が直ぐに立ち上がり、陛下に拱手して頭を垂れる。

「お妃様は体調が悪い様子で、貧血だと申しておりました。 立つことも困難な様子で暫し此方でお休み頂いておりましたが、正直苦慮しておりましたところです」

方淵が背を正して陛下に正直に事情を話し緊張の中、安堵の顔を見せる。
水月も同様に魂が抜けそうな表情だが並んで背を正していた。
一体いつから陛下は見ていたのだろうと内心思いながら背に流れる汗を感じつつ二人は静かに立ち竦む。 陛下が妃を抱きかかえたまま、二人を黙したまま見つめ続けるので動く事も侭ならない。 その様子に、ふっと陛下の表情が緩んだ。

「朝から具合が悪そうだから、後宮で休むように伝えていたのだがな。 妃をすぐに部屋に連れ帰る旨を李順に伝えて置いてくれ。 二人とも御苦労だったな」
「はい、陛下。 承りました」




そのまま陛下は妃を抱きかかえ、書庫を出て行った。 水月が直ぐに長椅子に腰掛けて深く息を吐いた。 方淵はその様子を見下ろし、何か言いたげな顔をする。

「方淵殿が珍しく親切心を披露すると、飛んだとばっちりを被るね」
「・・・・あの妃に親切心は必要ないようだ。 ・・・心象が悪くなる」
「それは、陛下に対して? それは無いだろうと思うけどね、心臓に悪いけど」

柔らかく微笑み、水月は立ち上がる。
卓上に置いた書簡を片付けると書庫より出ようとした。

「方淵殿、君からお妃様の香油が匂うよ。 着替えた方が良いかもね。 戻って来た陛下が 何と言うか楽しみだけど・・・・あ、私は早退させて貰うよ。 体調が優れなくなったのでね 」
「水月っ! なんて軟弱な事を言うのだ! 臣下としての責務を果たさずして・・・」
「おっと、方淵殿、陛下は体調優れないお妃様を放ってはおかないだろう。 後の政務は荒れるのが目に見える。 あ、李順殿にはちゃんと伝えておくから、まずは御着替えを」

それだけ言うと水月はするりと書庫を出て行った。
方淵は眉間に皺を寄せたまま憮然としていたが、水月の台詞を思い出し自分の官衣を持ち上げた。 確かにふわんっと甘い香りが鼻を擽るような気がした。










夕鈴を寝台に横にさせると、そのまま腰掛けた陛下は夕鈴の青白い顔を見つめた。
いつも元気な彼女が珍しいことだ。 政務室で具合の悪そうな夕鈴を下がらせたが、まさか書庫で仕事を続けているとは思わなかった。 夕鈴が体調不良と聞き、侍女も控え室で驚いていたし。
そういう時は部屋で休むべきなのだが、バイト中は休めないと気を張って政務室に来たのだろうな。 ・・・・でもそれで倒れていたら駄目だろう、夕鈴。

しかし、方淵が膝を貸すとはな・・・。 水月とも手を握っていたし。
どんな経緯でその様になったのかは解からない。
夕鈴への親切心なのは解かるけど。

寝ている夕鈴に微笑んだ陛下は静かに退室した。









「おや陛下、思っていたより御早いお帰りで」

李順が心底驚いた顔で陛下を見た。 陛下が政務室から抜け出て、書庫から妃を抱いて後宮に向かったと聞き、半刻しても帰って来なければ迎えに行くつもりだったのだ。

「ああ、眠っているから其のまま寝かせようとね。 それより・・・水月は帰ったのか? 方淵は残っているだろうが・・・ 」
「? ? まだ帰るとは聞いておりませんが、何か用でも?」

ふふんっと鼻で哂うと 「まあ、明日でも良いことだ」 と卓に就いた。 李順が小首を傾げるも陛下は それ以上話す気が無いらしい。 ただ哂い方がおかしいと、李順は二人の臣下の明日が何事も無く過ぎるように祈るだけしか出来ない。 卓で何かを仕分けている陛下の機嫌がすこぶる良いのが気のせいであるように思いながら。







妃に振り回されるのは陛下だけではないようで。
そんな妃は、重い生理による貧血打開のために新たに勉強を始めることになる。
老師だけが別の期待を込めて、夕鈴を見つめていた。







FIN




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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

短編 | 23:10:21 | トラックバック(0) | コメント(2)
コメント
やっぱりこのコンビはいいですね
後日談ぜひ読みたいですっわがままを言うなら、陛下サイドと夕鈴サイドの話でっ想像しただけで、ニマニマしてしまいます
2012-04-13 金 20:00:54 | URL | ともぞう [編集]
Re: タイトルなし
有難う御座います。そうですよね~、このコンビってお笑いには最強ですよね。つい、使ってしまうんですが、大好きなキャラでもあります。特に方淵は上手く動いてくれるので楽しくてしょうがありません。(笑)陛下の焼きもちにも一役買いますし、なんていったって人柄が面白い。合わせて水月さんが出てきたので、楽しさ倍増です。方淵の心を表すのにぴったりですもの。
楽しんでいただけて嬉しいです。コメント有難う御座います!!










2012-04-13 金 21:39:23 | URL | あお [編集]
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