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眠り姫  2

あら、もう少し続きそうです。
明るい話になりそうもないですが、もう少しお付き合い願います。
風邪気味で頭が回らない状態ですので、更新が遅くなると思います。御了承下さいませ。



では、どうぞ

















寝台で静かに眠る夕鈴を、寝台に腰掛けた陛下は静かに見つめ続けていた。 そっと手を握り、寝息に乱れはないかと片時も離れずに付き添い続けている。 
そこへ恐る恐る侍女が拱手しつつ近付く。

「陛下、側近の李順様がお目通りを願っております。 如何致しますか・・・」
「・・・・此方へ通せ」

侍女が下がると、すぐに李順が姿を見せる。 陛下の表情に躊躇するが意を決して話し出す。

「このような時に心苦しくは有りますが、政務が滞っております。 一度政務に戻られて頂きたいのですが。 その間、私なり老師なりがお后様に付き添いますので」
「・・・ああ、そうだな。 目覚めた夕鈴に怒られぬよう、仕事を片付けるとするか。 侍女に付き添わせ、何かあれば急ぎ侍医を呼ぶようにしておけ」
「・・・・はい、承りました」

夕鈴は丸一日以上眠り続けている。
寝息は静かで表情はただ寝ているだけのように見えるが、声を掛けても揺さぶっても、試しに抓ってみても眠り続けていた。 刺客に解毒剤の存在を確かめるが 『交換条件を呑め』 と嘯かれ、どの様に拷問を行なおうが 『条件を呑め』 の一点張りだ。 
今の陛下にそんな条件が呑める訳がない。 刺客には未だ判らないだろうが、今の陛下が奴の許に赴いた時が、自身の命が終わりだと気付くだろう。

執務室に戻った陛下は静かに卓に付き、書簡を広げた。
淀みなく筆を走らせ、業務に取り組んだ。 その姿はいつもと変わりないが、表情は昏く冷たい。 山と積まれた書簡を右から左へと移動させながら、無言のまま仕事を続けていった。
李順が執務室に入ると筆を走らせながら 「あ奴はどうしている?」 と聞いてきた。

「今は猿轡をさせ、浩大が見ております。 腱は切っておりますので逃げ出すことは叶わないはずです。 仲間は居ないと話しておりますが、他の隠密が高官を調べております。 確かに他の刺客の存在は今のところ無いようですが、引き続き調べております」
「・・・一刻待て。 直々に取り調べてみよう・・・・」
「わかりました。 ・・・しかし、未だ妃の献上に未練を持つ輩が居たとは正直驚きです」


夕鈴が正妃になる際、謁見の間で陛下が臣下に声高に宣言したのを忘れたと言うのか。

 『正妃として彼女は王宮唯一の妃である。 私にとっての唯一だ』

その言葉を肝に銘じた筈の臣下より、唯一の正妃に仇為そうとする者が現われるとは。
更にその陛下に他の妃を娶るようにと、夕鈴に刃を向ける所業。

今は静かな陛下が、その実は恐ろしいほどの怒りを胸に秘めていると側近である李順は知っている。 傍に居ても蒼褪めてしまう程、冷酷な表情を浮かべた陛下が刺客をどう扱うか、想像は容易に出来る。 李順は一旦執務室より退出すると、刺客が捕らえられている房へ足を向けた。






「猿轡は外さないままで・・・・」

浩大が引き立てた刺客は疲労困憊の呈で、それでも首を叛ける。
そんな態度の刺客を気にすることなく、李順は傍に寄り冷たく言葉を投げ掛けた。

「一刻も過ぎると、陛下が直々にお前の取調べを執り行うそうだ。 ・・・・・残念だよ、ここまで根性のある刺客は余り居ないものでね。 お前の元へ訪れるのは死より恐ろしい怜悧冷徹な御方だ。 あの御方は今、私にも止められないからな」

深い溜息を吐きながら李順が眼鏡を上げ、傍にいた浩大がその台詞に思わずぶるっと震えた。 
足元から冷気が這い登るかのような錯覚に陥り、寒気が襲ってくるのを浩大は感じてしまう。
 
そして今まで執拗な拷問を自分に加えていた人物の怯える態度に、刺客が片眉を上げて視線を向けた。 蒼白な顔で俯く人物の様子に、知らず刺客の額に汗が滲み出す。

「今の内にせいぜい怯えていることだな。 陛下が来ると息することも出来ないと思え。 国王の逆鱗に触れたのはお前自身。 そもそもあの陛下に他の妃などを推奨しようとは・・・・。 直ぐに骸となり 実家に帰されてしまうだろうに。 詮無きことを考えるものだ・・・・・」

明らかに震え始めた刺客は、顎をあげて猿轡を外せと言っているようだ。 その様子を見下ろしながら李順は浩大へ告げる。 「直ぐに死なぬように水をたっぷりと与えておけ」 と。 
そんなに簡単に口を割れれては陛下の激昂は収まらないだろう。 少し位は骨のあるところを見せて欲しいものだ。 少しでも陛下の気が済むように。

そこへ警備兵が飛び込むように入って来た。

「李順殿、陛下より言付けが御座います!」












李順が 「失礼致します!」 と言いながら正妃の部屋へ飛び込むと、寝台で陛下に抱かれながら腰掛けている彼女と目が合った。

「李順さん、御心配掛けました! 長く寝ちゃっていたと聞き、私の方が驚いているところなんですよ。 目が覚めたら侍女に泣かれてしまうし、陛下は飛び込んでくるし・・・・」

何度も夕鈴の頬や頭に口付けを注ぐ陛下に困惑しながら、真赤な顔で夕鈴は元気そうな顔を見せてくれた。 侍女が丸一日以上絶食だったのでと粥を持参すると、陛下が匙を持ち食べさせようとする。 勿論、匙を取り上げようと抵抗する夕鈴に陛下は柔らかな笑みを零している。

その元気な様子に李順もほっとする。
これ以上陛下の機嫌が悪化する事が無いように気を配るのも神経を使うのだ。


「お后様の体調が戻られ安堵しましたよ。 効きが遅い類の毒だったのでしょうかね。 引き続き毒の成分を精査させていますが、取り敢えず良かったです」
「李順さん。 ・・・・御心配、有難う御座います」
「夕鈴。 ・・・・・本当に良かった。 あ、粥熱くない? それとも水を用意させようか? やっぱり食べさせてやろうか?」

甲斐甲斐しく世話を始めた陛下に、夕鈴は苦笑しながら 「大丈夫ですから」 と返答する。 
見られながら食事をする夕鈴は困った顔で、それでも匙を運ばせながら粥を食べる。 正直、お腹が空いていた。
しかし、粥を半分ほど食べると急にお腹がいっぱいになって来た。

「胃が小さくなったのでしょうかね、もう食べられません。 勿体無いのですが・・・・」
「今は無理をしないでいい。 ・・・しかし、どの様な作用があるのか全く解からないな。 眠気は無いか? 少しでも気分がおかしかったら直ぐに伝えて」
「本当に心配ばかりさせて、申し訳ありません・・・・」

陛下が 「このまま一緒に寝るから!」 と告げると、李順が 「仕事が陛下をお待ちです」 と間髪居れずに告げた。 夕鈴がくすくす笑いながら陛下を送り出す。

「私はこのまま部屋に居りますから、陛下は仕事に行かれて下さい。 目が覚めたばかりで、まだ眠気もありませんので、ちゃんと起きて陛下を待っていますから」


何度も振り返りながら、それでも李順に引き摺られるように連れて行かれた。
陛下が退室したと知り、侍女が粥を下げに来た時、夕鈴は長椅子で刺繍をしていた。 手持ち無沙汰になり、以前より少しずつ進めていた手布への刺繍の続きでもと思い、静かに針を動かし続ける。 片付けに来た侍女に軽く頭を下げる夕鈴。

「余り食べられなくて残してしまいました。 すいません」

后のいつもの様子に侍女は安堵の表情で 「無理は為さらないで下さいませ」 と卓を片付け、お茶を淹れ始めた。 振り返り卓に茶を置こうとした時、長椅子の上で自身の頭を押さえている后を見て、瞬時に蒼褪める侍女。
侍女の手から落ちた茶器の割れる音に、他の侍女も走り寄って来た。

「お、お后様っ!?」
「だ、大丈夫・・・です。 少し眩暈がした・・・・け」

意識を失いそうに見え、「私、陛下をお呼びして参ります!」 と侍女が立ち上がると、夕鈴が静かに手を上げてその動きを止めた。

「陛下は御政務に行かれたばかりです・・・・ 私は大丈夫。 少し休めば治まりますから。 お願いです。 陛下の御政務の邪魔は決して・・・・・ してはなりません」

ふぅっと溜息を吐き目を覆うその様子に、后からの言葉を遵守していいのか戸惑う侍女達。
取り敢えず后を寝台まで移動させ、休ませることにした。 そして后の言うとおり暫らくは寝所で休んで貰い、二刻しても目が覚める様子が無いようなら 陛下か側近へ進言しようと侍女達は決めた。

寝所でどの様にも対応出来るように、灯りを増やし、水差しなどの用意をしながら。











もう少しで宰相からの案件見直しも終わるという頃、李順が蒼褪めた顔で訪れた侍女からの報告を聞き同じように蒼褪める。 瞬時、政務を優先させるかとも考えたが、後々を考えると恐ろしいことになるだろうことは容易に想像できたので、すぐに陛下に伝えることにする。

李順は陛下の怒気を想定して、深呼吸をしてから足を向けた。

「陛下・・・・ お后様がまた意識を失いました」
「・・・・・っ!!」

持っていた筆が折れるのと同時に陛下は卓から離れ、執務室より飛び出していた。
やはり仕事より優先させるのか。 ・・・そう思いながらも飛び出した陛下を追うために李順も正妃の部屋へ赴いた。 部屋に入ると侍女が集まり、悲愴な面持ちで李順は囲まれた。

「お后様はどうなるのでしょうか? またお眠りに為られてしまわれ、私共はどうすれば良いのか・・・・。 また直ぐにお目覚めになられますよね?」

涙目で問い詰められても、正直李順には解かりかねる事態であり、答えようが無い。
侍女達に首を横に振るしか出来ない。 振られた首に侍女たちが嗚咽と共に肩を震わせた。
寝所から陛下が后を呼ぶ大声が聞こえるが、その声に答える声は聞こえない。
李順が部屋に足を踏み入れると悲壮な表情で寝台の妃の頬を撫でている陛下を見る。

「・・・・・・」

李順は掛ける声を失ってしまう。 
内政を立て直す為に奔走し、内乱を落ち着かせるために戦地に赴いた陛下がたった一人の后の眠る表情に、蒼褪めた顔で息すら詰めて見つめ続けている。 自身が傷付けられても一言も発せずに静かに哂いながら敵を斬り付けていた陛下が、そんな表情で后を見つめているとは・・・・。
それでも李順は息を整えると、陛下の背後から声を掛けるしかない。

「陛下、お后様はきっとまた目を覚ましましょう・・・・」
「・・・・一日以上眠っていたのに、目覚めて数刻でこの有様だ。 次に目覚めるのはいつになるか・・・。 『もし』 を考えると、この私が震えるほどだ・・・・・」

陛下は寝台の夕鈴から目を離さずに李順に答える。 李順がその手を見ると、頬に触れる手が僅かに震えているのがわかり、李順は思わず視線を逸らしていた。

ただ眠っているかのような夕鈴。 静かに寝息が聞こえ、胸が規則正しく上下している。
違うのは幾ら声を掛けても、揺すってもその瞼が開くことが無いだけ。


「李順・・・・・。 奴は、何処だ・・・・・」

寝台に腰掛け夕鈴の髪を撫でながら、地を這うような低い声を響かせる。 瞬時に蒼褪めた李順が両手を強く握り締める。 闇い焔が陛下の背に立ち上るかのような錯覚に襲われ、今の陛下に何を言っても止めようがなく、止めるべきではないと解かる。 
頭を垂れて掠れた声で李順が答えると、陛下は静かに立ち上がり部屋を出て行った。

李順が寝台に視線を落とすと、陛下の怒気にも気付かずに眠り続ける后がいる。

いつもは陛下を制し、許しを請う夕鈴が目を覚まさない以上、あの刺客の命はあと数刻とないだろう。 それも死んだ方がマシだと思われるような残酷な遣り方で、刺客をじりじりと追い詰めていくことだろう。 素直に早く口を開けば良いが・・・・・。
いや、今の陛下ならば素直口を割ったとしても追い詰めつづけることは間違いない。
本当に馬鹿なことを仕出かしたものだと、李順は頭を振った。
寝所外で待つ侍女へ、后の傍に仕えるよう伝え、陛下が足を向けた場所へ移動する。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

もしもシリーズ | 00:18:48 | トラックバック(0) | コメント(0)
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