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眠り姫の後遺症
もしもシリーズの「その後」ですが、R指定無しの短めの話です。「その後」で under 絡まないとはハジメテカモ! 方淵&水月がメインとなります。「眠り姫」ではちっとも姿を見せなかったので、私の方が焦れてしましました。「ああ、出していないぞ」って笑ってしまいました。


では、どうぞ












久し振りに王宮へ足を運んだ夕鈴は、手に持った焼き菓子を陛下に届ける為に笑顔で歩いていた。 侍女は心配顔で後から窺うように付き従っている。

御后が刺客に狙われたことは秘密裏にされていた為、暫らくぶりの御后の姿に驚く官吏の表情が見て取れたが、 『もしかして御世継ぎが出来て体調が崩れたのか』 とか 『悪い風邪に罹りこじらせたようだ』 とか 『また家出を?』 などの噂があった事を夕鈴は知らない。
商人が訪れた日から10日余り、後宮に閉じ篭っていた夕鈴の耳に、そんな噂が届く訳もないし、届くことの無いように配慮もなされていた。
そんな噂が夕鈴が知ったら、這ってでも政務室に顔を出そうとするだろう。




執務室に入ると、李順が眼鏡を上げながら驚いた顔を見せる。

「おや、もう歩けるのですか?  御気分は変わりないですか?」
「もう大丈夫です。 御心配をお掛けしました。 ・・・・あの、李順さんもどうぞ召し上がって下さい。 焼き菓子と少しですが点心を作りましたので。 お茶請けにでも」

蒸し器はまだ温かく、厨房からそのまま移動したと判る。 その気持ちは李順にも伝わり珍しくも微笑まれた。 その表情に驚きながらも夕鈴が陛下は何処に居るのかと回りを見回すと、李順が答えてくれた。

「陛下でしたら周宰相とお話し合いで御座います。 直に御戻りになるとは思いますが、このまま此方でお待ちになりますか? それならば其処の椅子に・・・・・」
「いいえ。 その間に書庫の整理をして来ます! また違う書架に違う書物が仕舞われていると後で皆様が困りますでしょうし。 すぐに戻ります」

ぺこりと頭を下げてから執務室を出て行く夕鈴を 『バイトの時と本当に変わりませんね』 と柔らかくも眉間に皺を寄せて李順は見送った。

あの后がこの白陽国唯一の正妃。

まあ、浪費家の貴族の子女よりマシだろう。 質素倹約に関しては李順も舌を巻くほど徹底している。 簪一本買うにも陛下ではなく李順にお伺いを立てるほどだ。 今やそんな立場ではないと本人が判っていないだけかもしれないが。
今、必死に正妃教育に勤しんでいるし、指導者としては今後も厳しく指導するつもりだ。
時に見せる凛とした佇まいも、その内に常に見せるようになるだろう。 
世継ぎなど大臣が懸念している問題は陛下次第だが、李順が思うに当分は先送りになると思われる。 やっと手に入れた夕鈴にべったりの陛下のことだ。
まだ二人の時間を持ちたいと、新たな命の誕生は陛下の念頭にもないだろうことは承知だ。
政務を忘れることはないが、政務を放り出して后の許へ走ることもある。 
時に頭の痛いことだがそれを良しとせずに后が諫めてくれるから留飲も多少は下がろうものだ。 
小犬になり、肩を落として政務に戻る陛下を思わず哀れんでしまう時もあり、思い返すと苦笑せざるを得ない。 

自分はまるで王宮での親代わりみたいだ。
柔らかく作られた眉間の皺をそのままに、李順は焼き菓子に手を出した。




 

書庫に顔を出した夕鈴は、場に居た方淵と水月を見て急ぎ頭を下げる。

「お仕事中に失礼します。 ちょっと片付けに参りましたが良いでしょうか?」

久し振りに姿を見せる夕鈴に、直ぐ眉間に皺を寄せた方淵がいつものように文句を言いたげな表情を呈し始めると、ほんわりした雰囲気で水月が手を差し伸べた。

「お后様、お久し振りで御座います。 ご機嫌は如何で御座いますか。 御手を煩わせてしまいますが 宜しければ御願い致します」

夕鈴はほっとした顔で水月を見て、書架の書簡を早速確認し始めた。 
その様子に方淵が益々苛立ち文句を言おうとして夕鈴に近付いたが、直ぐに水月が間に入るとすっと口元に指を立てる。 そのまま廊下に視線を走らせ、方淵を伴い書庫よりそっと出て行く。


「・・・・なんだ水月! 私はお后にお后らしく後宮に籠もるように伝えようと・・・!」
「方淵殿、最近お后様が此方に姿を見せなかっただろう?」
「~~~~っ! 知っているが・・・・・」

機嫌の悪い方淵が答えると、水月が肩を竦めて溜息を吐き、話し続ける。

「その間、陛下の機嫌がどの様だったか、政務がどの位進行しなかったかを、君はしっかりと見ているよね。 あの恐ろしさといったら・・・・ 思い返すだけで早退したくなる」
「貴様が軟弱なだけだ。 ・・・まあ、陛下の機嫌の悪さは・・・・・」

思い返すと方淵でも寒気がするようだ。 思わず腕を擦ってしまっていた。
あの恐ろしい低気圧爆弾はどれだけ壁や天井や窓を補強したとしても王宮全体を大きく揺らすだろう。 側近である李順殿さえも顔を背けて、ただ耐えていたように思い返される。 
お后が不在なだけで・・・・。 それも 『あのお后』 だ。 
後宮に戻れば逢えるだろう后が政務室にいないというだけで、何故にあれほど冷酷非情に政務にあたられるのか息が詰まるほどだった。
方淵はお后には文句を100言ったって足りない程だと言いたい。 後宮よりちょこまかと顔を出し、頼まれもしないのに片付けを始めるし、過去には行事に関わることもあったな・・・・。

しかし、いろいろ考え水月の言いたいことが判ると溜息を吐くしかない。

「貴様が言いたいことは遺憾ながら判った。 お后様への文句は言わずに居てやる。 ただし、政務が通常に戻るまでだ。 陛下のヤル気が戻り、政務が恙無く動き始め、それでもお后様がちょろちょろと顔を出すようなら、その時は文句を言わせて貰うからな!!」
「・・・・・・・」

肩を竦めた水月に両手を差し出され 『どうぞ、お好きに』 と無言で伝えられた気がする。 
書庫に戻ると多少は聞こえたようで憮然とした表情の后が二人に丁寧に頭を下げて来た。

「・・・・・本当に邪魔なようですので戻ります。 どうも御邪魔しました!」

方淵限定に睨む夕鈴の顔を見て、眉間に深い皺を寄せた方淵は 『そうだ、邪魔だ!』 と思ったが、瞬時に 『政務がまた滞る!』 と思い出し留まるように伝えようとした、その時。

方淵と水月の側を通過しようとする夕鈴の身体が大きく傾いた。

二人同時に手を出し膝から崩れ出した夕鈴の身体を支え、慌てて顔を見ると瞼を閉じていて・・・・ どうやら眠っているようだ。 

急にぐったりと脱力した夕鈴の身体を支えた二人は思わず顔を見合わせ、とりあえず急ぎ書庫内の長椅子に横にさせる。 試しに水月が声を掛けるが、念を押して方淵が怒鳴るが、夕鈴は目を覚ます様子がない。 后の余りにも深い眠りに二人は何事か考えた。


「昨夜、陛下が精力的に励まれたのかな? お后様が暫らく此方に顔を出さなかったことと関係があるのかもね。 もしかして家出をしていたか、喧嘩していたか・・・。 そして仲直りで夜通し励まれた可能性があるね。 方淵殿は如何思う?」
「夜通しって・・・・ 励まれ・・・・ 如何って・・・・」

顔を蒼白にしつつも赤らめた面白い顔色の方淵が、水月を睨み付ける。 方淵は咳払いをして夕鈴を見下ろし「きっと何か変な物を食べたのだろう!」 と呟いた。

「毒見がいるから変な物は出されないよ。 やっぱり陛下が夜通し頑張り過ぎ・・・・」
「き、貴様はそればかり! 他には無いのか!?」
「ご夫婦だもの、閨で励まれるのは仲良きことだよ。 陛下、凄そうだと思わないかい?」
「ね・・・・っ、 すご・・・・・」

ああ、方淵殿をからかうのは楽しいな・・・・・。 
水月は苦笑を噛み殺しながら、真面目な顔で方淵を見つめていた。 意味有りげな水月の視線を感じたのか、方淵は憤った顔で睨み返してきたが、彼は涼しい顔で受け流す。
ただ、このまま書庫に三人でいるのは得策ではない。
水月がすっと立ち上がると 「執務室にいるはずの陛下を御呼びして来るよ」 と告げた。
大袈裟に咳払いをした方淵が頷きながら、ちらりと夕鈴を見たのを水月は見逃さなかった。

「長椅子から落ちないように、しっかりとお后様を見ていて欲しいな」
「なっ! ・・・・見て?」
「落ちそうになったらちゃんと支えるんだよ。 よーく見ていて欲しい。 では」

真面目な方淵のことだから片時も眼を逸らすこと無く見ているだろう。
その様を見られないのは残念だけど、陛下の醸し出す昏いオーラには近寄りたくは無い。
執務室の李順に深々と拱手して書庫での事の顛末を報告した後、水月は早退することにした。








方淵は長椅子の近くに椅子を持ち寄り、眠る夕鈴の顔を暫らくは無言で眺めていたが窓の外で鳴く鳥の声にはっとして、卓へ椅子を移動し 書簡を広げて仕事を再開した。
微動だにせずに眠り続ける夕鈴に時折視線を投げ掛けるが、その度に眺めてしまう自分に驚きを隠せない。 
横たわる彼女は特別美人な訳でもなく、豪華な衣装に身を包んでいる訳でもない。 
ばたばたと走るし、睨み付けるし、文句は言うし、後宮から出てくるし・・・・・。

しかし、彼女は陛下がこよなく寵愛を注ぐ正妃だ。
何かあれば臣下として助けるのは当然のこと。

眼を向けると依然として眠り続ける夕鈴の姿。 どんな変な物を食べたのか判らないが、よく寝ているものだ。 ・・・・少し痩せたか? 頬が少しこけたように見えるが。
ここ最近は姿を見せなかったが何があったのか。
あの流れる噂のうちの一つに本当があるのか?
方淵がつい夕鈴の顔を覗いたまま固まっていると、背後に足音が聞こえてきた。

「方淵、世話を掛けたな。 我が后は未だ眠ったままか・・・・・」
「・・・・はっ」

椅子から立ち上がると陛下に拱手して後退りした。 すいっと陛下が近寄り夕鈴の頬を撫でる。 その様子に水月が言っていた台詞が思い出され、思わず咳払いをしてしまう。 
夕鈴を抱き上げた陛下が不思議そうな顔で 「方淵、風邪か?」 と聞いてきた。
「いえ大事無いです。 御心配有難う御座います」 と即答し、抱かれた后を見る。

「何か、あったのでしょうか。 声を掛けても目を覚まされない様子でしたが」
「・・・・ああ。 もう大丈夫だと思っていたが、まだ後遺症が出るとは思いもしなかった。 暫らくは後宮より出ないで休ませるとしよう。 世話を掛けたな、礼を言う」
「いえ、臣下として当たり前の事で御座いますから」

方淵は 『後遺症とは?』 と思ったが、今は聞かずにいた。 陛下がそれ以上言う気がないのが解かったためだ。 ただ静かに拱手し、頭を下げて見送ることにする。

暫し方淵を見つめた後、陛下は夕鈴を連れて書庫より離れて行った。
陛下は方淵の 『臣下として当たり前』 と言った台詞が本心であると知っている。
だが、そこに 『ソレだけではない』 何かが生まれそうな気配を感じてしまう。



「知らず僕に焼きもちを妬かせているのを、君は知らないだろうな」

抱き上げた夕鈴に口付けしながら呟くも返答は無い。
今回の眠りは解毒剤の後遺症で予め侍医より説明を聞いていたので大きな心配はない。 急な眠りが出現するが、それが数回繰り返しその内完全に消滅するだろうと言われていた。 熾き火が最後に爆ぜるようなものと聞いている。 たまたま今回、書庫で方淵と水月の前で後遺症が出てしまったようだが。

暫らくは後宮より出ないようにきつく言わなければ。
夕鈴が文句を言ったら足腰が動けないくらいに・・・・・ しちゃおうかな。
うん、そうしよう!

夕鈴の部屋で寝台に彼女を寝かせた後、いつ文句を言われても良いように李順が愕くほど仕事を捗らせておこうと、闇い笑顔で眠る夕鈴に話しかけた。

「君からの文句を待っているよ。 君からの差し入れを食べながら仕事に取り組むから、元気に文句を言ってね。 ・・・・夕鈴!」



眠る夕鈴の眉間に微かに皺が寄る。
何か嫌な夢でも見ているのか、これから見るのか・・・・。







FIN




 
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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

もしもシリーズ | 18:43:22 | トラックバック(0) | コメント(0)
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