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漁夫の利

『もしもシリーズ』です。 方淵と夕鈴が主に出ていますが、タイトルは陛下のためのものです。 いやいや・・・全く・・・。 なんか気の向くまま書きなぐった感がありますが、宜しければお読み下さいませ。


では、どうぞ









「・・・おきっ・・・、御后様、またこんな場所に顔を出して・・・・」
「方淵殿。 良いところにいらっしゃいました! この竹簡を書架の一番上に片付けて欲しいのです。 足台を探そうかと思っていたのですが助かります」

眉間に皺を寄せた方淵に竹簡を差し出し、卓上の書簡を他の書庫へ移動させようと腕に持ち纏め出す正妃に、方淵は声を抑えて文句を言い出した。

「貴女は正妃になられたというのに、一体いつまで書庫や政務室に顔を出すのだ! 後宮より出ずに、陛下の御為に控えて待つべきだろう!」
「方淵殿の言う通りで御座いますね。 でも陛下は御止めになりませんでした。 今まで通りで良いと仰って下さいましたので遠慮なく来させて頂きますわっ」

方淵の怒鳴り声に、夕鈴は后スマイルで切り返した。
本当にこの人は変わらないわねと、夕鈴は睨み返す。 一瞬火花が散るが、夕鈴が書簡の重さに気を取り戻し、 「失礼します!」 と書庫から足早に出て行った。 次の書庫へ持っていた書簡を片付けるため、一旦方淵のことは頭から叩き出すことにした。



「一体、全く、あの御后は・・・・」

姿を消した正妃にぶつぶつ文句を言いながら、政務の続きを始めていると次から次へと書簡が送られて来る。 時期的にも忙しい時期ではあるが、何故こんなにも仕事が舞い込むのだ?
一度席を立ち政務室に足を運ぶと、他の官吏たちが足早に走り回っているのが見える。
忙しいのは私だけではないな・・・・。
方淵は溜息を吐き書簡を広げ、新たな案件に取り組み始めた。

しかし、方淵に大量の仕事が回されているのは事実。

「鉄は熱いうちにっ・・・て言うだろう」 と陛下は嘯くが、正妃と仲の良い(?)方淵や水月に優先的に仕事が回されているのは事実だ。 しかも水月が休むたびに方淵の仕事量が増えていき、息吐く暇もないほどに忙しいと知っているのは、陛下側近の李順だけ。 
その李順も溜息を吐き、陛下の愚行を半ば諦めている。 
政務が滞りなく進んでくれたら多少の事には目を瞑りましょうと。



陛下が後宮を訪れると、大量の書簡を前にうとうとする夕鈴がいた。
正妃教育を自室でも行なっている夕鈴だが、日中の疲れが出たようだ。 陛下が眉根を下げて苦笑しながら夕鈴の肩に触れると、少し揺れた夕鈴から呟きが聞こえてくる。

「・・・・ほぅ・・え・・・」

静かな部屋に呟かれたその言葉は陛下の耳に難なく拾われた。 眼を細めて夕鈴を見ると、そのままゆらゆらと揺れている。 書簡には四季折々の行事が書かれており、春に行なわれる花恵宴の項を見ている内に居眠りしたと思われた。
それはいいとして、呟かれたその台詞は確かに 『方淵』 だったと陛下は昏い表情で夕鈴を見た。 あとで聞くと何のことはない、互いに怒鳴り合いをしていた夢でも見ていたか、夕鈴が関わった花恵宴の時の夢でも見ていたかだろう。
きっと笑えるような答えを夕鈴から聞かされるのがオチだ。 そんな呟きで悋気など・・・。
うたた寝をする夕鈴の肩に上着を掛けながら、矮小な自分の心に苦笑する。

「・・・だめ・・・そん・・・」

次に聞こえた夕鈴の声に、陛下の苦笑が凍りつく。
上着の暖かさにとうとう書簡に顔をつけて深い眠りに入る寸前、夕鈴から艶めいた寝言が漏れたのだ。 いや、艶めいて聞こえたのは陛下だけなのだが、そう聞こえてしまうと悪い方向にばかり考えが巡る。
頭を振りその考えを追い出しながら、椅子から夕鈴を抱き上げ、寝台へと移動させた。 横にさせた夕鈴の頬に無言のまま触れると、くすぐったいのか身体を反転させて背中を向けられる。 まだ政務が残っているが、このまま立ち去るのは釈然としない。 とうとう寝台に腰掛けた陛下は、夕鈴の耳へ囁きを落とす。

「・・・方淵が何したの?」
「・・・・」

返事はない。 紅い目を細め、夕鈴の耳朶に唇を這わせながら華奢な顎を持ち上げる。

「夕鈴・・・・ 駄目って、何が?」
「・・・んん? あ・・・・ん・・・・」

耳から顎を伝わって唇が蠢き、夕鈴の下唇を軽く喰む。 昏い感情が揺らめき、背を向けた夕鈴の顔を捻るように上に向けさせていた。 肩が開き、自然仰向けになる夕鈴に覆い被さるように陛下が続けて問い続ける。

「方淵が駄目って・・・・ 何?」
「んんっ・・・その書簡は・・・・、そこじゃな・・・」

やっぱりそうだよね!
深い安堵と共に満面の笑みを浮かべた陛下は、夕鈴の首筋にきつく吸い付いた。 痛みに夕鈴から吐息が漏れ、それに気を良くした陛下は愛しい后の腰紐を解きながら、深い口付けを与える。
一方、咥内を深く探られた夕鈴は強制的な目覚めに驚き、覆い被さる人物に目を瞠った。
一体何が始まったのだと、慌てて陛下の胸を押し出した瞬間、いきなり下腹部に甘い疼きを感じる。

「んんんっ!!! ん・・・・ ぐぅ!」

肌蹴られた胸を弄りだした手と、大きく開けられた裾へと潜り込む手に翻弄され始め、一体何がどうなって、何時の間にこんな事になったのか考える暇もなく、甘く熱い夜が始まっていた。






夕鈴が腰の痛みに耐えながら書庫で書簡の整理をしていると、憔悴した顔の方淵が現われ、后の姿を認めるも無言で書簡を片付けて、そのまま書庫より出て行った。 珍しいことがあるものだと出て行った扉を見ていると、すぐに水月が姿を見せる。

「御機嫌麗しゅう・・・・と言って宜しいのでしょうか、御后様。 お腰が辛そうですが、大丈夫ですか?」
「え、ええ。 季節の変わり目でしょうかね・・・・。 ちょっと。 ほほほ」

真赤な顔になっていることを水月はすぐに理解して、それ以上は言わずもがなと思った。
正妃が誤魔化しているのだから突っ込むのは止めようと。

「と、ところで水月さん、方淵殿は如何されたのでしょうか。 ちょっと・・・いえ、すごっく御疲れの御様子ですが。 頬もこけているし、何より私に睨むことさえしなかったのですよ! 何かあったのか、ご存知でしょうか・・・」

水月は夕鈴のその言葉に肩を竦めた。 何となくは解かっているが、それに御正妃が気付いていないのだから言う必要はあるのかと。 しかし、心配げな顔の正妃を見て、困ったなと肩を竦める。

「さあ・・・・私より李順殿の方がご承知と思いますよ。 正直私はよく休みますし、方淵殿とは御承知の通り、仲が良い訳では御座いませんので」
「・・・以前よりは仲良さそうに見えますけど。 ・・・・そうですか。 李順殿に訊いた方が良いですね。 流行り病でしたら早々に御帰りになってお休み頂いた方が良いですし。 本当に酷い顔色で・・・・」

心底心配している正妃の様子に、水月も同情せざるを得ない。 もちろん、方淵にだ。
まあ、最初から睨み付けるなどの愚考を行なってきた方淵に否があるとは思うが。 流行り病などではなく、陛下より方淵指名の仕事が大量に押し寄せ、その対処に追われて頬もこけるほど憔悴しているなんて・・・。 誰もとばっちりを受けないように遠巻きに見ているだけだし。

まあ、その事実を知ったら正妃がどう出るか。 陛下がどの様に対応するのか。
恐ろしくも見てみたい気もするが・・・。
そんな考えを微笑みに隠しながら、書架に書類を仕舞うと拱手をして水月は出て行った。


あそこまで憔悴しきった方淵は、夕鈴が初めて実家に里帰りした時、何故か陛下がくっ付いて来てしまい、政務が滞り、とばっちりを受けた方淵をはじめとした臨時補佐官が疲れ果てるほど仕事をした時以来かも知れない。
陛下は最近お仕事頑張っていると聞くし、何処にも出掛けていないはず。
とばっちりなんて、方淵には行っていないわよね・・・・・。 やっぱり風邪かしら?
心配顔の夕鈴は明日も憔悴しきった方淵を見かける事があったら、早退を勧めてみようかしらと親切心で思った。 
『禍福は糾える縄の如し』
時に助けられる時もあるでしょうしね。 珍しい方淵の様子が妙に心に残る。





その晩、夕鈴が後宮自室で片付けをしていると陛下が訪れる。

「お疲れ様です、陛下。 今日はお早いですね」
「ああ、我が妃に逢いたくてな」

その言葉に夕鈴は 『昨夜も逢ったじゃない! いつの間に来たのか解からない上に、あんな展開になっていたし・・・』 と思い出し顔を真っ赤に染めてしまう。 お茶の用意が出来ると陛下が侍女を下がらせ、長椅子にくたんっと身体を投げ出した。 すっかり小犬に戻って、ほんわりした顔になっている。 陛下にお茶を淹れながら夕鈴はふと聞いてみた。

「あの・・・昨夜は私どこで寝ちゃっていたのでしょう? 陛下が来たのも解からないで、いつの間にか・・・・・」

そのあとはごにょごにょと小声になる夕鈴は深紅に染まってしまい、見つめていた陛下は苦笑してしまう。 焼きもちを妬き、その後安堵で眠りの淵から君を叩き起こしてしまった昨夜の所業を怒る訳でもなく、ただ羞恥に染まる夕鈴を見て陛下は素直に謝った。

「ごめんね、書簡を広げたまま居眠りしていたから風邪をひいちゃうかもって思って夕鈴を寝台に寝かせたあと、寝顔の可愛さについ・・・ね」
「そ、そ、そうですか・・・。 ああ、はい・・・」

腰が痛くなる程の 「つい」 に紅く染まるが陛下の行動を諫める気はない。 
それより陛下の言葉にあった 「風邪をひいちゃう」 に夕鈴は方淵を思い出した。

「そう言えば、方淵殿が憔悴しきってましたね。 ふら付きも見られましたので、風邪でしょうかね~。 鬼の霍乱というか、無理しないでお休みしたらいいのに・・・。 根を詰めても仕事は進まないと伝えたいけど、それさえも出来ない様子で心配です」

溜息を吐いて語る夕鈴。

夕鈴の溜息の原因は僕が作ったものだから、方淵の体調が戻るのは至極簡単なこと。 夕鈴が奴の心配をするくらいなら仕事の配分量を元に戻した方がいいのか。 このまま方淵に関心を寄せる夕鈴を見るくらいなら・・・・ 大きな溜息を吐き、陛下は明日の業務内容を変更する事を決めた。 

仕事が出来る方淵はふら付きながらも案件を片付けており、実際は充分成果を挙げていた。 
明日から仕事量をセーブし、その分陛下も頑張らなくてはならない。
幾ら頑張っても、次から次へと仕事が舞い込むが・・・・。
しかし、自分が目指す国作りのためには誠心誠意務めるだけと解かっている。 だから。

僕のやる気を増すためには、今日も寝かせてあげられないな。 覚悟してね、夕鈴!



夕鈴は熱いお茶を飲んでいる筈なのに寒気に襲われ 『風邪かしら? 流行ってるのかな』 と思い、今晩は早めに就寝しようと思った。

しかし・・・・夕鈴の予定は決定ではなく・・・・・。











腰を押さえながら夕鈴が書庫に顔を出すと、方淵が眉間に皺を寄せて夕鈴を見た。

「・・・調子が悪いなら後宮より出て来なければ良い。 それを何度御后に伝えたら理解が出来るのか。 全く以て理解出来ない!!」

元気な様子の方淵から零れるような悪言に、夕鈴は微笑みながら切り替えした。

「少しお元気になられた様子で何よりですわ。 実は昨日まで憔悴していた御様子で書簡を間違えて入れておられた方が居ましたので、その尻拭いに参りましたの」

方淵がその台詞にギッと睨みを利かせて夕鈴を見た。
その瞳を受け流し、妃スマイルで睨み付け返す夕鈴。

台風並みの低気圧が周囲の空気を低く、重苦しい雰囲気に変えている。
熱い火花が周囲にまで飛び跳ねている様子に数人の補佐官が書庫に入れずに居た。
その壮絶な睨み合いを遠巻きに見つめるしか出来ない状況。 その様子に水月は溜息を吐きながら、隣に立っていた補佐官へ持っていた書簡を預けて早退することにした。



夕鈴との甘い夜を連続して過ごせた陛下は嬉々として政務に励んだ。
李順が 「何があったか知りませんが、滞りなく政務に励まれるのは良い事です!」 と静かに眼鏡を上げた。






FIN






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

もしもシリーズ | 01:18:56 | トラックバック(0) | コメント(0)
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