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溺れるものはナニを掴む  4
下町編、溺れるものは・・・です。もう少し続きそうです。
お付き合い頂けると嬉しいです(^^)/





では、どうぞ














几鍔が夕鈴に何か伝えようとした時、倉庫いっぱいに真っ白な煙幕が張られた。

「なっ、何だっ!? 誰だ?」

景升が慌てて騒ぐ声が聞こえ、周囲を見回すためか私の頭から手が離れた。 直ぐに括られた柱から出来るだけ夕鈴が背を仰け反り、縄を緩めようと必死に足掻きだす。 手首が縄に擦れて痛むが、其れより早くこの戒めから脱しなければ!! 
その時 背後から聞き慣れた声がした。 

「・・・・動くなよ、お妃ちゃん」
「んぐっ!」

縄が切れる音がして腰と手が自由になり、自分で猿轡を外すと途端に煙幕に咽込んだ。
浩大が夕鈴の頭を押さえて耳の近くで囁く。

「お妃ちゃん、このまま低い体勢で誘導するから着いて来てね」
「浩大、ありがとうね。 ・・・・でも、このまま退散なんて女が廃るのよね!!」
「 え? 」

押さえた夕鈴の頭が跳ねるように飛び上がると、咽込みながらも煙幕の中に消えて行った。

「あらら・・・。 まあ~、お妃ちゃんらしいこと!」
 
笑うしかない浩大だが、直ぐに後を追い援護に回ることにした。 お妃ちゃんのやりたいことは直ぐに見当が付く。 目には目を、歯には歯を! だろうと。







「げほっ! 何処行ったの? あの卑怯者ーっ!」

夕鈴が白煙の中、景升を探しながら倉庫内を歩いていると誰かの人影を見つける。
掴んでみると几鍔の子分の一人だった。 胸倉を掴み 「アイツは何処行ったのよ!」 と問い詰めると彼は 「姉御! ご無事で何よりです!」 と涙ぐんでいる。 夕鈴が同じ事を聞くと解からないと答えられた。
「兎も角、この煙じゃ誰が誰だか解からないですから外へ出ましょう!」 と言われ、それもそうかと一緒に倉庫の入り口へと向かった。 途中から子分の誰かが手を引いてくれたので、その手に従って歩いていると直ぐに外へと出る事が出来た。 胸を広げて思い切り深呼吸をすると手首の痛みや首の痛みに気が付く。

「姉御っ、大丈夫ですか?」
「夕鈴、怪我は?」
「痛いわよっ! 景升は何処? 女の身体に傷をつけて・・・ このまま引き下がれますか!」

見知った几鍔の子分たちが夕鈴を心配して、数人集まってくれた。 倉庫からは今だ白煙が流れ出ており、倉庫に戻る事は無理かと思われた。 バタバタと数人が倉庫から出てくるが皆、知った顔だった。 全てが几鍔の子分達だと判ると、一人一人に聞いてみる。

「あの卑怯者の景升は? 誰か景升を見なかったの!?」
「あ、姉御っ! 几鍔の兄貴は見ませんでしたか?」
「そうだ、兄貴は夕鈴を中で探しているのかも知れませんよ!」
「兄貴は未だ中に・・・・?」
「・・・・中っ? ・・・・ぐうううぅっ!」

一応助けに来たような几鍔の安否も気になり白煙立ち上る倉庫を睨みつけていたが、すうっと息を吸い夕鈴は勢い良く倉庫へと掛け出した。

「夕鈴っ! 兄貴はきっと無事だから中へは行くなよ!」
「姉御~、無茶はやめて下さいよ~!」


そんな声など夕鈴には届かず、煙幕の中 足を踏み入れる事に躊躇せずに走っていた。
倉庫に足を踏み入れると直ぐに刀が合わさる音が聞こえてきた。
「まさか・・・・」 と大きく心臓が飛び跳ねた。 耳を澄ませて音のしない方へとゆっくりと足を動かしていると、肩に誰かが触れ 驚いた夕鈴のその耳に浩大の声がした。

「お妃ちゃん、危ないよ~。 音で解かるでしょ? 斬り合ってるんだから容易に近付くと怪我しちゃうよ。 今ね、お妃ちゃんを縛った奴と幼馴染君が斬り合ってるところだから」
「え? 几鍔が? ・・・・大丈夫なの?!」

夕鈴の口元を押さえて耳を済ませる浩大。

「ああ、幼馴染君ってこういうのに・・・ 慣れてんね」 と、直ぐに教えてくれた。
「でも!」 と夕鈴が戸惑うと浩大の笑い声が聞こえる。

「大丈夫だよ。 ああ、押し倒したな・・・。 刀を放り投げて・・・ 外へ向かってる」
「外ねっ! ありがとう浩大!」

白煙の中、更に明るい方向へ夕鈴が走ると直ぐに外に出る事が出来た。 外では几鍔が景升の襟首を引き摺りながら歩く姿があり、安堵と共に・・・・ 目の前の光景に驚愕してしまう。



・・・・・・・・・・何故、この場に陛下が?



「あ、夕鈴。 怪我なかった? 大変だったね~」
「へっ・・・李翔さん!? イッタイ何をされているのでしょうか・・・・?」


陛下は景升の手下達を次々と縄で縛り上げている。 
そして 「倉庫から出て来た手下を全て叩きのめして縄で捕縛していたんだ~」 と笑顔で答えてくれたが、夕鈴は大きな眩暈を感じてふら付きそうになった。

『あああああっ! 李順さんに知れたら私にも絶対とばっちりが来そうだ・・・・』

「あ、あの・・・ 李翔さん、此方で何をされているのでしょうか。 お仕事は・・・・」
「夕鈴が心配だから来ちゃった!! 攫われたと聞いて助けに来たんだ!」

小犬の笑顔全開で褒めて欲しいとばかりに盛大に尻尾を振っている。 
私は眩暈の他に頭痛が襲って来た。
頭を押さえる夕鈴に近付くと陛下は直ぐにその腕を捕らえて手首の縄跡を見つめ、紅い眼を細める。 急に変わったその怖ろしいほどの冷たい表情に夕鈴は全身が固まってしまう程だ。 冷たい表情で手首の傷を眺められると、夕鈴はどうしていいのか困惑してしまう。

「・・・・夕鈴、髪も掴まれたの?」
「え、あっと・・・ はい。 あの、それより何故ここに・・・・?」

夕鈴は景升に引っ張られ乱れた髪を押さえ、直ぐに直せないと知ると髪を下ろすことにした。
陛下が夕鈴の腕を攫い後ろから軽く抱き締めて、その髪に口付ける。

「夕鈴、心配したよ・・・。 傷はない?」
「だ、大丈夫ですっ! それより早く王宮に御戻りを! 李順さんにきっと怒られちゃいますよ! どうせ、また黙って来たんですよね?」
「・・・・・今この場で君を心配している私を追い返すつもりか・・・・」

背後から聞こえた其の声は狼陛下!
笑っているような雰囲気だけど振り向くことが出来ないくらいに冷やかだ。 夕鈴が固まっていると後ろから回した手で、夕鈴の腕を確認し始めた。 縄の痕をなぞるその手の動きが何故かいやに艶かしく、夕鈴は思わず陛下の手から逃げるように手を隠してしまう。 夕鈴の動きに陛下が苦笑を始めると、夕鈴は直ぐに気付き振り向いた。

「っ! またからかってますね!」

真赤な顔で睨み付けると、苦笑したまま 「違うよ~」 と否定された。

「浩大に聞いたんですね。 ってか、お休みの日にも浩大が警護に付くのって大変じゃないですか。 浩大にも休暇が必要だと思いますし・・・・・」
「夕鈴、実際に攫われちゃってるよ。 おまけに手首に傷付けられてるし」

うぐっと言葉を詰まらせてしまう夕鈴の元に、几鍔が姿を見せた。 真っ直ぐに夕鈴の元へ来た几鍔の顔は少し蒼褪めていたように見える。

「夕鈴っ! お前、大丈夫かよっ!」
「几鍔、あんたこそ刀で斬り合っていたって? 大丈・・・・ うわっ!」

几鍔が眉間に皺を寄せながら夕鈴の手首を強引に攫い、両手首に付けられた縄の擦り傷を確認すると溜め息を吐きながら、その手をそっと離した。

「お前なぁ~、ああいう時は黙って大人しくして居ろよ。 本来の性格そのままに暴れやがって傷まで付けてよ。 馬鹿じゃねぇの? あ、首は・・・・」
「・・・・・っ!」

几鍔の言葉を聞くと同時に、夕鈴は右腕を思い切り振り上げて几鍔に殴りかかった。 
・・・・が、難なくその手は掴まれ、左腕を直ぐに振り上げるも、その手も掴まれてしまう。 真赤な顔で几鍔を睨み付けながら夕鈴は怒鳴り出した。

「あんたねっ! 誰のせいでこんな傷を負ったと思っているのよ! おまけにアンタの女扱いまでされてっ! 一発黙って殴らせなさいよ! この馬鹿几鍔っ!」
「黙って殴らせる訳ねぇ~だろ! いいから、お前は黙って消毒されろっ! 首から血が流れているじゃねぇか! 服が血で汚れるぞ!」
「あんたを殴ってからだっ!」

両手をがっちりと握り合いながら、睨み合う二人を見て倉庫から逃れて来た子分達が慌てて止めに入る。 双方を取り押さえるように腕を絡ませて押さえ込んだが、暴れる夕鈴を押さえる子分は 彼女からの蹴りや肘鉄に余計な怪我を負い始めた。

「あんた達、離しなさいよっ! 私はコイツに一発お見舞いするんだから!!」
「あ、姉御~~~! 止めて下さいよ~」
「ゆ、夕鈴、兄貴は助けに・・・・っ! や、やめて!」
「五月蝿~~~い!!」

腕だけではなく、脚や腰にも子分達が纏わり付くが夕鈴の怒りは収まらない様子で几鍔へと噛み付かんばかりに睨み付けている。 そこへ肩を震わせながら近付く一人の男が。

子分が驚きの顔で夕鈴から力を抜いた。 急に纏わり付く枷がなくなり、思わず前のめりに倒れそうになる夕鈴の腰を攫うように抱き上げたのは陛下。 
抱き上げられた夕鈴がその腕に気付き 瞬時に紅く染まった顔で 「へっ・・・り、李翔さん!」 と叫ぶと、耐え切れなくなった陛下が笑い出した。
 
「すごいねっ! 夕鈴って強いんだね! 僕もう可笑しくて・・・ あはははははっ!!」

自分の台詞と行動を思い返した夕鈴は陛下の腕の中で震えるしかない。
陛下が居たのになんて事をしたのかと、恥ずかしさで穴を掘って隠れたい気持ちになる。
几鍔との言葉の投げ合いで頭に血が登り、陛下が居ることを完全に失念していた。

「そ、そんなに笑わなくても・・・・」

涙目になり恥ずかしさに俯いてしまった夕鈴に、笑い過ぎて涙を零しながら陛下は腕の中の夕鈴を抱き締める力を込めて話し出した。

「笑ってご免ね、夕鈴。 さあ、このまま君の家に行こうね! 急いで消毒しなきゃ」

余りの光景に固まる几鍔と子分達。
一番先に我に返ったのは几鍔だが、思い切り眉間に皺を寄せて李翔を見つめる。

「おい・・・ お前何しに来たんだ?」
「何って夕鈴救出のお手伝いだよ。 あ、几鍔君のお友達はあちらに纏めて捕縛してあるからね。 すぐに警備兵が来る手筈も整えてあるから安心して」

笑顔の李翔は夕鈴を抱き上げたまま場を離れようとした。 その動作と台詞に几鍔が怒鳴り出した。 顔を赤らめた夕鈴の姿にも知らず腹が立っていた。

「余計なお世話だっ! お前の手を借りなくても景升は押さえ込めたし、ソイツも助けられたんだ。 大体どうやってお前は此処が解かったんだ?」
「・・・几鍔君、夕鈴は怪我をしているよ・・・・」
「・・・・ぐっ!」

台詞と共に紅い眼が几鍔を冷たく撥ね付ける。
一瞬で冷気を帯びた雰囲気に子分達が怯えるように固まった。 その台詞に几鍔も唇を噛み言い淀むしかない。 抱かれた夕鈴が慌てて 「り、李翔さん。 怪我は大丈夫ですからっ」 と告げると、陛下は困った顔で夕鈴を見上げて首を傾げた。

「夕鈴・・・・。 几鍔君を庇うの?」
「か、庇った訳じゃないけど本当に大丈夫ですから。 ・・・・ね」

小犬に戻ったと知り、ほっと胸を撫で下ろしながら陛下へ繰り返していると、面白くないという顔のままで几鍔に背を向けて歩き出した。

几鍔はその姿を追えずに 踵を返して景升の元へと移動して行く。










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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:46:03 | トラックバック(0) | コメント(0)
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