スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告 | --:--:--
新緑の闇  2
新緑の闇、つづきです。
最近本当に新緑が色濃くなってますね。葉桜のトンネルを通るたびに季節の移り変わりを感じています。 だって、眼の痒みがないんですもの!! わーい! 超うれしいっす
最近またまた大量に漫画を購入! 仕事のストレス度合いが解かります。
ヨルムンガンド・・・終了してしまいました。 くすん・・・
明日はワンピース発売! どーん!! 娘ときゃーきゃー言いながら読みますわ。
楽しみ ワキワキしています!!



では、どうぞ













「・・・・此れからも過去の正妃達の意思を継ぎ、正常に養護院が継続出来るよう、支援をしていく所存で御座います。 皆様の御支援を引き続きお願い申し上げます」

にっこりと微笑みながら書面を畳み、傍らに立ち添う李順へと渡す。 
李順が王宮より持参した下賜品と共に書面を施設管理人へと渡すと会場には静かな拍手が響き渡る。 夕鈴はその間も手の動きにすら気を配り優雅な動きを心掛けた。 李順からの小さな頷きに安堵の息を吐く。 良かった・・・・。 合格みたい。

妃としての仕事が終了し、御壇上から降りる夕鈴は今日一番の微笑みで用意された椅子に腰掛ける。

李順は講堂内の職員、管理官らの予想外の表情に眉を上げながら夕鈴に視線を走らせた。
到着時と違い、今の夕鈴は妃然として煌びやかな衣装と宝飾に身を包んでおり、更には妃教育の賜物か優雅に見える微笑みで落ち着いて口上を述べる事が出来た。 そんな妃に見惚れるような視線が集まり、溜息を漏らす職員すらいた事実に李順が驚いて視線を巡らせると、妃を見慣れている筈の柳方淵すら固まっているように見えた。

・・・・・政務室でそんな表情を見せると陛下の機嫌が最悪な事になりそうだ。
思わず背筋に嫌な気配を感じる。 考えたくはないけれど、想像出来てしまう事態。
漏れそうな溜息をそっと逃すしかない。

李順が視線を講堂の貴賓席に向けると氾大臣と共に氾水月が座っていた。 出仕をさぼり式典に出席とは相変わらずマイペースだなと、思わず瞑目する。 水月が李順に気づき静かに目礼をする。 李順も其れに目礼を返すしかない。 水月も夕鈴のいつもと違う、優雅ささえ感じる妃の動きに柔らかい視線を送っていた。



大臣や管理官などの挨拶が終わると、夕鈴は敷地内の施設見学を勧められた。
侍女を伴い施設内を視察し中庭へと降りると元気な子供達が、わぁっと集まって来た。

「これっ! お妃様の御前ですよ、近寄ってはなりません!!」

管理官が慌てて子供達の足を止めようと厳しい声を出すと、それを夕鈴がやんわりと止めた。

「大丈夫です。 ・・・こんにちは、皆さん」

その場に腰を落とした夕鈴は子供達の目線になり、にっこりと微笑んだ。 管理官からの叱責後の子供達がおずおずと夕鈴に近付き、照れたような笑みを見せる。 その笑みに思わず 『青慎の子供の頃を思い出すわ』 と手を差し出した。 近寄って来た小さな女の子が手を伸ばして夕鈴の指先をきゅっと握る。

「温かい可愛らしい手をしてますね。 お名前は?」
「・・・・香佑です、お妃様・・・」

か、可愛いっ!!
思わず夕鈴がその小さな手を包むと、一斉に集まった子供達が夕鈴に群がって自分の名前を伝え出した。 その一つ一つに頷きながら名前を繰り返していると夕鈴を取り囲む子供達より少し年嵩の子供たちも近寄って来た。
何か言いたげな 其の表情に気付いた夕鈴は周囲の小さな子供達に 「では、お兄さんたちともお話をさせて下さいね」 と立ち上がった。
ゆっくりと近付くと、拱手した一人が震える声で話しだした。

「お、お妃様っ、本日はご、御足労頂き、有り難う、ご、ござります・・・」

背後の子供が口上を述べる子供の背を叩き 「しっかりしろ!」 と無言で励ました。
紅潮した顔で咳払いをして彼は続けて話し続けた。

「こ、此方をお受け取り下さい。 今日のお礼を書かせて頂きました。 出来ましたら後ほど、後で、読んで下さいませ! ど、どうぞ!」

震える手から書面を受け取り夕鈴は嬉しく思った。 偽妃である事に胸を痛めながら頭を下げ書面を大事そうに胸に抱くと子供達に礼を述べた。

「・・・有り難う御座います。 有り難く受け取らせて頂きます」

子供達も周囲の管理官たちも、夕鈴のその言動に心底驚いた。
通常の貴族子女として、ましてや一国の妃としての振る舞いでは有り得ない言葉を述べた上、子供に頭を下げるなど考えられないと注目を浴びてしまった。 周囲の動揺に李順が舌打ちしながら 急ぎ夕鈴に足を進めせた時、ゆっくりと頭を上げた夕鈴の表情にざわめきが起きた。

穏やかに微笑むその表情は全てを包み込むような慈愛に満ちており、淡く輝いて見えた。
宵闇の中、中庭を照らす篝火を受けて宝飾が輝いているのは勿論、妃自身が放つ輝きが見て取れるようで、周囲の見つめる視線が変わったように思えた。

そして、・・・・誰かが拍手をした。
釣られるように次々と拍手が巻き起こり、講堂での拍手より大きな拍手に包まれた夕鈴は戸惑いながらもう一度会釈をした。 その動きに歓声まで沸き上がる。

『全く、焦らせないで欲しいものですよ・・・・』

子供達からは羨望の表情が見て取れ、管理官や集まり出した貴族達からも感嘆の声が聞こえ、取り敢えずは成功と知ると李順は胸を撫で下ろした。 軽く咳払いをして 「お妃様、では王宮へ戻りましょう」 と夕鈴を促すと、周囲の子供達へもう一度微笑みながら 小さく手を振って夕鈴は李順のあとに従った。









「・・・あのっ! だ、大丈夫でしたか? 変じゃなかったですか、私!」

着替えに通された最初の控え室に戻ると、李順に小さな声で聞いて来た。 真赤な顔の夕鈴は、先程と同一人物とは到底思えない・・・。 これが本来の彼女の地ですからね~、と肩を竦める李順を見て 「へ、変だったんですか!?」 と、わなわなと唇を震わせる夕鈴。 真赤な顔が蒼褪めていく様を見て、李順は溜息を吐く。

「大丈夫ですよ夕鈴殿。 まあ、今回は合格点を差し上げても良いくらいでした。 子供たちが押し寄せるとは思いませんでしたが、あの演技で義援金が増えることは間違いないでしょうね。 口上も思ったよりも上手く喋れていましたし」

李順からの言葉に驚くほど脱力した夕鈴は、椅子に腰掛けると卓に肘を付き深い溜息を吐いた。
「さあ、のんびりせずに着替えたら馬車で急ぎ戻りますよ!」 と李順に急かされるも腰から力が抜けてしまったようで直ぐには立てなかった。 それでも李順の退室後、入って来た侍女に衣装の交換や宝飾の片付けをして貰い、熱い茶を飲むとやっと心から安堵することができる。 失敗なくやり終えたと、思わず涙が溢れそうになる。

「お妃様、先程の子供達との交流、胸が熱くなりましたわ」
「本当に・・・・。 美しいものを見せて頂いた心持ちですわ・・・・」

その言葉に恥ずかしいほど真赤に染まる頬を押さえて 「有り難う御座います」 と囁いた。
・・・・・正直 『美しい』 とは子供達の方だ。

偽妃である自分が何を言おうと、何をしようと、全ては 『まやかし』 に過ぎないのだから。
それに近所の子供達で子供の扱いは慣れている。
その近所の悪餓鬼共と比べたら可愛らしく、無垢な瞳で、何より落ち着いている。
最初に手を握って来た女の子は大きな瞳で妃を見つめ、とても可愛らしかった。

養護院で過ごす孤児たちの事情は様々だ。 先の内乱で親を亡くした者や、職を無くした親が一時的に子供を預けて過酷な職に精を出しているとか、離婚が原因とか、捨て子とか。 どの様な事情があろうと、置いていかれた子供に罪はない。 昔の正妃が創立した養護院が継続して、子供を護る城となっている事実に夕鈴はこの国の正妃達の存在を嬉しく思った。

陛下にもそんな心優しい正妃が来て欲しい。 心から陛下と国に仕える正妃が・・・・。

そう思っただけで指先から血の気が引き、痛い程に痺れを感じた。
共に千切れるような痛みを胸に感じ、そっと胸を押さえた。
長くなったバイト生活で慣れ親しんだ環境。 強く目を瞑り、夕鈴は自分の立場を自覚する。

『今はバイト中!! 正妃がいないから、偽妃が代行を勤めただけ!』

あとは妃らしく養護院より王宮へと帰るだけ。
あと少しだけ演技を続け、純真な子供達を欺こう。
いつか本物の正妃が此処を訪れるだろう。 その時にはすっかり忘れられている筈だ。
下っ端妃の事などは・・・・・。

「お妃様、この書面は先程の子供からの物で御座いますね」
「・・・え? あ、そうです。 後で読んで欲しいと言っていましたが・・・」

気を取り戻し、はらりと書面を開くと子供らしい字体で挨拶が書かれていた。
普段余り使わないだろう敬語が使われた丁寧な文章に自然と微笑みが漏れる。


・・・・・と、夕鈴の笑みが固まった。

「お妃様、御出立の用意が整いました。」
「・・・・すいません、側近の李順殿を至急お呼びして!」

真剣な表情の夕鈴の言葉に侍女は緊張して頷いた。
「あ、さり気無く・・・・ です」 追加の言葉に、侍女は足を止めて、一つ息を吐いた。









→ 次へ



スポンサーサイト

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:05:58 | トラックバック(0) | コメント(0)
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。