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新緑の闇  4
新緑の闇・・・続きです。 あらら~、どうにも陛下の姿が見えません
ご免なさいです・・・・。方淵&水月ファンの方、えへへ。
もう少し三人の行動が続きます。




では、どうぞ














方淵は眉間に皺を寄せながら思案した。

急がなければ刺客が戻って来る可能性がある。 単独で走っている馬に追いつき気づいた時、刺客は戻って来て怪しいと思われる小屋周囲を検索するだろう。 その前に姿を隠すか、場を移動しなければ為らないというのに、水月は歩きだけで体力を消耗しているし陛下の為にも妃に傷を付ける訳にはいかない。方淵は振り返ると夕鈴に無言で手を差し出した。

夕鈴は急に目の前に差し出された手を見て、顔を上げて方淵を見るが漆黒の闇の中、その表情が読めなかった。 それでも今はそれが必要と思い、夕鈴も無言でその手を握り締めた。 
木々に掴まりながら、方淵に引き上げられ目的の場所へ着く。

人一人が通り抜けられる程の岩の裂け目を通り、奥へ続く道をそろそろと歩くと、先を歩く方淵が急に足を滑らせた。 手を繋いでいた為、引っ張られる形で夕鈴が方淵の体の上へと倒れ込んでしまった。

苔に足を取られバランスを崩した方淵が周囲の岩壁に手を付こうとして、気がついた、妃の手を握ったままでいることに。 そのまま岩壁に手をやると妃の手を傷つけてしまう可能性があると瞬時に気付き、仕方が無いと其の侭倒れる事にした。
が、倒れた自身の上に妃の体が倒れ込むと、甘い香りが舞い降り方淵の鼻を付いた。
その上、知り得ない筈の柔らかい肢体が覆い被さり重なった。

「ご、ご免なさいっ! 大丈夫ですか?」

漆黒の闇より深い闇の中、夕鈴が何処に手をやれば良いのか解からず倒れたままで方淵へ声を掛ける。 背後から追い付いた水月が 「お怪我はありませんか?」 と聞いてきた。

「大事無い。 ・・・・それよりも早く退け、背中が岩に押されて痛む」
「ご、ごめんなさ・・・・」

方淵から急ぎ身体を起こし片側へと身体を避けたが、其処には空虚が夕鈴を待ち受けていた。

「ぁ、きゃっ・・・・」

妃のその声と自身の体の上から消えていく重さに慌てて方淵が手を伸ばす。 途切れた夕鈴の台詞に近くに居た水月も手を急ぎ伸ばしていた。 瞬時、方淵の指先が夕鈴の指先に触れたような気がした。 闇の中 妃の気配が消え、そして水音が聞こえた。

「・・・・・・っ!」

水月が自身の口を押さえて声を出すのを如何にか押し止めた。 岩に反響して外へ声が響いたら逃げた意味がないし、この先に逃げるにしても岩の裂け目が何処まで続いているのか解からないのだから。 方淵の居た場所で、動く気配を感じる。 方淵が妃が消えた先を探っているのだろう。 水月が懐から携帯蝋を取り出し急ぎ灯りを燈した。

「短い間だけだよ。 ・・・・ああ、此の先へ落ちたのかも」

一瞬灯りに浮かび上がった洞窟の中、方淵が倒れた場所の更に奥には暗い穴があり水音が聞こえている。 小さな声で 「お妃様・・・・」 と穴の下へ声を掛けると、夕鈴の声がする。

「大丈夫です。 地下水が溜まっているような場所に落ちたようです。」

存外元気そうな妃の返事が返って来た。 ただ水が凄く冷たいので驚いちゃいましたと震える声が続いた。 山奥の春先だ。 雪解け水は想像以上に冷たい筈だ。

水の流れがあるなら、流れ出る場所もあるはずだ。 どの道妃を迎えに行かねばならない。
方淵は急ぎ持っていた斧に、水月の抱えていた縄を括り付けて近くの岩の裂け目に突立てた。
力いっぱい曳き、問題ないと確認して縄に伝わって夕鈴の居る穴の中へと降りて行く。
水月もその後へ続き降りて行き足を着けると、夕鈴が落ちた場所の水の冷たさに驚いた。

携帯蝋で水月が灯りを燈すと、肩車すれば元の場所へ這い上げれそうな程の深さと知る。
水の流れを確認すると、なだらかな傾斜が何処かへと続いている。
縄を強く曳き、斧と縄を回収して元居た頭上の場所から痕跡を絶った。

周囲の状況がわからず腰を降ろした状態のままの夕鈴へ手を出すと、顰めた顔で立ち上がったが その身体は冷たさに震えている。 灯りで確認すると側頭部を打ち付けたのか血が流れていた。

「お妃様、頭を打ち付けたのですね。 血が・・・・衣装も随分と濡れてしまい、其の侭では風邪を召してしまいます。 私の衣装を代わりに・・・・」
「っ、いえ、大丈夫です。 ここで脱ぐ訳にも行きませんし、怪我も大丈夫です。 それより早く進みましょう。 水の流れに沿って進みますか? それとも上に登りますか? ・・・・今は私のことより、急ぎましょう!!」

震えながら力強く指示を問う妃に方淵と水月が顔を見合わせて肩を竦めた。 灯りを消すと流れる水の先から風が流れて来た。 その風を感じた夕鈴が 「外はこっちですね」 と顔を向けた。 風を受け寒気が増したのか肩を竦めたが夕鈴は足を進め始めた。 方淵が慌てて夕鈴の肩を曳くと 「ぐぅっ!」と呻き声が響く。

「お、妃様、肩を打ち付けたな。 腫れているじゃないか!」
「大丈夫です、歩くには問題ありません。 さあ、早く行きましょう」
「・・・・痛みが増したら教えて下さいね。 また落ちたら大変ですから、慎重に進みましょう。 では、私が先を行きますよ」

水月が慎重に地下水流れる闇の道を進み出した。 間に夕鈴を挟みながら水の中、足を運ばせていく。 肌を切るような水が身に染みるが、救いは水月が持っていた携帯蝋の灯りと元気に歩を進める妃。 そして屈まなくても進めるこの道。
一刻も早くこの場を離れ、刺客から王宮へと移動しなければ。 ただ、此の先の水の流れが何処へ通ずるのかは不明だった。 留まる訳には行かず、岩壁に手を添えて足を進める。

ふと水月が気付いて振り返った。

「お妃様、足元は大丈夫ですか? 私共と違い、女性の沓は水場等には適しておりませんよね。 それに素足でしょうし・・・・・」
「お気に為さらないで下さい。 急ぎましょう。 今はそれだけですよ!」

夕鈴は気付かれまいと水月の背を押し、歩みを進めるように声を掛けた。 今はどの位の時刻なのか判らないが、養護院へ向かった時の所要時間を考えると王宮まではまだまだ時間は掛かるだろう。 水が冷たかろうが、肩が痛かろうが、刺客が向かっていようが関係ない。 今は子供達に託された 『妃』 としての仕事に向き合うだけだ。


暫らくは黙々と足を進めていた。 時折水月が先を確かめる為に携帯蝋を燈す。 風の向きと、そして妃の顔色を確かめる。 水の冷たさに強張った笑顔しか出来ないが、それでも笑顔で水月に向き合うと溜息を吐かれて、明かりが消される。 明かりが消えた瞬間、夕鈴が詰めていた息をそっと逃す。 しかし、背後に居る方淵には気付かれていた。
背後から付き従っていた方淵は 水を掻き分け進む夕鈴から聞こえる水音の変化に気付いていた。 息遣いも荒くなり、ただ水の冷たさと疲労だけではないと知る。

「水月、悪いが灯りを点けろ」
「・・・・やっぱりね。 ・・・・はい、燈したよ」

二人の遣り取りに夕鈴が息を整えながら頭を傾げた。 方淵が眉間に皺を寄せながら告げる。

「お妃様、他意はない。 ・・・・頼むから口を閉ざしたままで居てくれ」
「え・・・・?」





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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 19:50:24 | トラックバック(0) | コメント(0)
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