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南柯の夢  1

バイト夕鈴編です。冒頭から痛い思いをしています。ごめんね~~~~!!
今回は短めになる予定です。前が長かったので(笑) さくっという感じの予定です。



では、どうぞ














 
「待ちなさーい!!!」

掃除婦姿の夕鈴は必死に先を走る侍女を追い駆けていた。 陛下の部屋に何かを仕掛けようと後宮をうろついている所を怪しんだ警備兵が追い掛けていたが、後宮立入り禁止区域に入り込み、掃除を終えた夕鈴が後をついで追い掛けていた。 警備兵も引き続き追い駆けてはいるが、装備が重いのか夕鈴ほどには走れない様子だった。

それに構わず後宮立入り禁止区域を追い掛けていると、頭上から浩大の声が聞こえた。

「お妃ちゃん、深追いしないでくれよ~。 何を持っているのか解からないんだから!」
「わ、解かったから、浩大も は、早く!!」

息が切れる。 相手が時折振り返り、それでも足を止めずに走るため、何度も叫びながら走り続ける。 浩大が先回りして、回廊にくないを投げて進路を塞ぐと侍女は 「くっ」 と脚を止め横の部屋に飛び込んだ。 その後に夕鈴が続き、浩大が叫んだ。

「だから追うなって!!」



その瞬間





バァンッ!!





部屋いっぱいに黒煙が広がり硝煙の匂いがした。 
浩大が煙の中部屋に飛び込むと、倒れた夕鈴の足先が目に入った。 

「お妃ちゃん!」

急ぎ駆け寄ると、彼女は侍女の腰を掴んだまま共に倒れていた。 侍女は喘ぐように腰に廻った夕鈴の手を外そうと悶えている。 その手を掴み背に回して捕縛すると、直ぐに夕鈴の手を外した。

「お妃ちゃん・・・・ 大丈夫か!?」
「あ・・・ こぅ・・・・」

煙に咽喉を痛めたのか、呻くような声が聞こえたが、直ぐに咽込んだ。 夕鈴の顔を見ると涙を流しながら咳込んでいる。 そこへ警備兵が煙の立ち込める部屋へと足を踏み入れ、周囲を警戒しながら侍女を立たせる。 侍女も咳込みながら涙を流し、ふら付く身体を警備兵に引き摺られるように引き立てられて行った。 浩大が夕鈴を引き摺りながら部屋より出て、少し離れた部屋へと移動して改めて夕鈴の身体を確認するが大きな怪我はないと判る。

「お妃ちゃん、怪我はない? 痛むところは何処?」
「ごほっ、ぐぅ・・・ ノドが・・・ ごめっ・・・」

その言葉に急ぎ水を持って来て、背を支えながら水を飲ませる。 煙に燻されたのか涙が止まらない夕鈴は 「目が痛い・・・。 ちくちくする。 痛い・・・」 と浩大に訴えた。
布に水をかけ夕鈴の瞼に宛がい 「目を開けないで、このまま侍医に見せよう」 と浩大が話すと夕鈴が戸惑いながら俯いた。 浩大が不思議そうに 「どうした?」 と聞くと、細かく震える夕鈴が答えた。

「・・・・刺客を追い駆けたなんて、李順さんに知れたら・・・・」
「ああ・・・。 それは恐ろしいほど・・・・・」

バイトの癖に余計なことをしてましたね、と厳しく叱責されることは間違いない。
浩大の返事を聞き、夕鈴はぶるっと大きく身体を震わせる。

「目を冷やしていたら大丈夫よね。 その内痛みも無くなるわよね。 わざわざ侍医さんに診て貰わなくても大丈夫よ、きっと。 だから・・・・」
「___侍医に見て貰うんだ、夕鈴 」

頭上から陛下の声が響き、夕鈴は背筋を正して驚いた。 いつの間に陛下が背後に来たの? と夕鈴が驚く間も無く陛下の腕に囚われると抱き上げられ、部屋へと向い歩き出した。

「へ、陛下! 今、私掃除婦の姿です! 妃の衣装に替えなきゃ!!」
「それより侍医に診て貰う方が先決だ、夕鈴」
「お願いっ! 直ぐに着替えますから、直ぐに~!!」

腕の中で必死に陛下へと願い出た。 陛下に溜息を吐かれたが、いつも着替えている部屋へと通された夕鈴は痛む目を閉じたまま、どうにか衣装を着替え終える。 掃除婦の衣装をどうしようか、髪は下ろしたままでいいかしらと悩んでいると焦れた陛下が 「夕鈴、もう待てない!」 と部屋へ入って来て、あっという間に夕鈴を抱き上げた。


  








暗幕を張り部屋を暗くした状態で侍医が宛がわれた布を外し涙が零れ続ける妃の眼を診る。
眉間に皺が寄り痛みに顔が歪む夕鈴の瞼をそっと持ち上げると、蜀代を近づけて覗きこむ。

「お妃様、痛みますでしょうが暫し我慢をお願い致します」
「・・・・はい」

息を止めて夕鈴が痛みを我慢していると、冷たい水が眼に注がれた。 頭が思わず下がりそうになるが医官が押し留める。 充血した眼球に薬品が滴り落ちた瞬間、我慢出来なくなった夕鈴がくぐもった声で喘いだ。 清潔な布を宛がい、包帯を巻きつけると侍医が陛下に向かい頭を垂れた。

「お妃様の御目に軽い火傷のような症状が見られます。 何かは判りませんが、近くで火花か強い光の様なものに御目を晒されたように見受けられます。 細かい破片などは見当たりません。 一応眼炎と思われますので暫らくの間は処置を続けながら御目を休ませ、様子を診させて頂きます」

侍医は刻限を決め、点眼をするようにと医官と侍女へ指示を出し部屋より退室した。 医官も静かに暗幕を外し薬品などの片付けを行なうと頭を垂れて退室して出て行った。
陛下が侍女へ 「下がれ」 と声を掛け、部屋には三人だけとなる。


椅子に腰掛けた夕鈴は膝上で手を握り、だらだらと汗を掻き始めた。 部屋に漂い始めた冷気に汗が冷やされ寒気が襲う。 握る手に陛下の手が触れ、びくんっと身体が震える。

「・・・夕鈴・・・」
「も、申し訳御座いません! 本当にっ・・・ 御迷惑を掛けてしまい・・・」


思わず身体が動き、怪しい人物を追い掛けていた。
鼠を見つけた猫のように夢中になって他のことは頭に浮かばなかったのだ。 
警備兵の叫ぶ 「怪しい奴」 の言葉に走っていた自分。 見かけたことのない侍女は何かを持っているように見えたし、浩大の押し止めようとする声も聞こえてはいた。

しかし、陛下の為にならない 「何か」 が起きるのが恐かった。
私が止めることが出来るならと思わず走っていた。
その後、刺客が懐から出した物を床に叩き付けられ、ましてや爆発するなんて思いもせず。




近くで李順さんの深い溜息が聞こえ、額と背筋に嫌な汗が流れる。

「夕鈴殿、通常女性は刺客に向かって走ることはしません。 ましてや追い詰めるなんて・・・・。 これではバイト妃としての仕事も出来ませんね」
「・・・はい。 ご尤もです。 本当に申し訳御座いません・・・」
「怪我は致し方ありませんので、治るまではバイトをお休みして頂きます。 その怪我では実家に戻ることも出来ないでしょう。 怪我の理由の説明に困ります」
「・・・はい。 ご尤もです。 本当に申し訳御座いません・・・」
「こちらで静かに、大人しく治療に専念して下さいね! いいですね、夕鈴殿!」

李順さんの昏いオーラが見えるようで、背を正して声の聞こえる方向に深々と頭を下げるしかない。 掃除婦が追い駆けたのだから警備兵も驚いただろう。 掃除婦がバケツを放り投げて刺客を追いかける様を目撃するなんて・・・・ きっと唖然としただろう。

「捕らえた刺客の詮議に行きます。 陛下は執務室での仕事がありますのですぐにお戻り下さい。 ・・・・いいですね、大量の仕事がありますから、すぐに、です!」

李順さんの昏いオーラが去ると、今度は冷たい雰囲気に包まれる。 背を正したまま細かく震え続けているだけの夕鈴は陛下からどんな叱責があるのかと怯えていた。
『臨時花嫁』 が暫らく後宮に籠もる。
それは妃推奨を牽制をしていた大臣や高官へと隙をみせることになる。 バイトとしての自覚が無いといわれると頭を下げるしかない。 夕鈴は息を詰めて、陛下からの言葉を待っていた。

「夕鈴・・・。 今回は君が悪いね。 無茶をしたものだ」
「・・・・はい。 ご迷惑をお掛けしてしまって御免なさい・・・」
 
これ程の迷惑を掛けるとは自分でも思っていなかった。 ただ身体を小さくして謝るだけ。
膝の上で握り締めていた手が持ち上がり暖かく包まれた。 擦り傷だらけの甲に陛下の指が這い始めた。 驚いて陛下より逃げようと手を持ち上げるも、何処へ動かしたら逃げられるのか解からない。 難なく捕らわれ柔らかく捕縛される。 手巾で手の甲を巻きつけたようで、その後ポンッと軽く叩かれてしまった。

「君の行動は決して褒められたものではない。 浩大や警備兵が居たのだから。 暫らくは身体を休ませることを念頭に、後宮から出てはならないよ。 いいね」
「はい・・・」

今の状態では部屋から出ることも、着替えや食事にも人の手を借りなければならない。
夕鈴は肩の力を落として項垂れるしかなかった。 
陛下の役に立つどころか、余計な怪我で勝手に足手纏いになっている自分に涙が出そうだが、処置後のため泣くことも出来やしない・・・・。


頭を撫でられ、 「今日は兎も角ゆっくりとお休み、夕鈴」 と優しく言われるも、頷くことさえ出来ずに、ただ黙っているだけだった。





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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 03:33:33 | トラックバック(0) | コメント(0)
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