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柔らかい傷  2

柔らかい傷 続きです。 久々の「ぐちゃぐちゃ考え過ぎバージョン」です。陛下出て来ません。あらら・・・、今頃陛下出てこないと気が付く私。夕鈴主体ですね。まっくらです。 シリアスです。 笑いなしです。・・・それでも良いよと言って下さる方のみお読み下さい。


では、どうぞ












次の日から夕鈴はいつも以上に早起きして、後宮立入り禁止区域で掃除婦姿になってから山道を走り出す。 時間は掛けられないけれど 出来ることはしてみよう走ることにした。
後宮立入り禁止区域の裏庭から王宮管理区域の山へと足を向ける。 朝靄の中、まずは身体を走ることに慣らさなければならない。 急には身体が悲鳴を上げるから、無理せず徐々に走るよう浩大に言われていた。 まずは少しずつ体力をつけることからやっていこう。

その夕鈴に隠れながら、伴走するように浩大も走る。 夕鈴に 「陛下には絶対内緒で」 と言われたが、内緒になど出来るはずもない。 陛下も浩大からの話に悩んでいたが、短期間だけと厳命して 『是』 と言った時には驚いてしまった。

「全く、どんだけお妃ちゃんに甘いんだよ、へーかは!」
浩大は苦笑しながら、走る夕鈴を警護し続けた。

激しい雨の日以外は欠かさず夕鈴は走り続け、持久力が付いてきたと自分でも判る程になる。
護身術では刺客撃退法も習い、最終的には夕鈴が安全に逃げられる方法を繰り返し覚えるようにと指導された。 大事なのは 『刺客を捕まえるのではなく、自分の身を守れるように』 と浩大に繰り返し、しつこいほど言われた。 その為に走り込みをするんだと夕鈴も頷く。

あらゆる手段を使って襲い掛かる刺客から上手く逃げる方法や、その場の状況を即時に判断出来るように訓練を繰り返していく。 浩大との刀を使った護身術では呆気なく毎回負けてしまうが、回数をこなせるようになり指導が終わっても息切れする事が少なくなっていた。
もちろん、浩大が加減をしていることは承知しているが、それでも最初に比べると随分と身体が楽に動く。 掃除をしていても身体が軽く、自然と姿勢が良くなったようで李順に褒められることもあった。

「夕鈴殿、最近姿勢良く歩かれているようで、大変結構ですよ」
「あ、ありがとう御座います!」

最初の内は疲れで居眠りしそうになり、何度李順からの咳払いと叱責を受けたことだろう。
掃除婦のバイトが終わると、寝台で夢も見ずに朝を迎えたことも度々あったのに、身体が慣れてきたのか今は楽に動けるし、身体を動かしていると余計なことを考える時間が少なくなっていた。




余計なこと・・・バイトには関係のない・・・ 『正妃問題』

花恵宴が終了した頃より概ね内政も落ち着いてようで 『そろそろ正妃を!』 との動きが再燃し始めたと夕鈴も耳にしていた。 政務室から書庫へと移動しようとしている時に高官が話しているのが聞こえて来る。

『隣国からは皇女の姿絵が描かれた書簡が届き、大臣らが勧める貴族子女や実の娘など、国王ともなれば多方面から見合いの書簡が届けられ、執務室に山と積まれ出した』 と。

陛下は一瞥して 「まだ内政安定には程遠い」 と、それらを見ることもないと聞くが、国の為には今後どうしても必要なこと。 正統な血統を次の世代へと引き継ぐためであると同時に、陛下の大きな後ろ盾となるような 『利』 を持つ女性を娶らせようと周囲が動くのは当然だろう。
そこに個人は必要ない。 陛下の結婚とは磐石な国造りに必要な、国の大事なのだから。

老師が 「今からでも遅くはないぞ、陛下との間に御世継ぎを産めば国母じゃ!」 と騒ぐが、御世継ぎ問題なんて、それこそ一庶民が関わることではない。 
それに陛下は絶対に私に手を出すことはしない。
それは陛下自身が解かっていることだろう。 抱き締めたり、髪に口付けをしたり、狼陛下の言葉と態度で私を翻弄するけれど、それは私をからかっているだけ。

自分でもただの 『バイト妃』 と充分理解している。 ただ勝手に陛下に恋をしているだけ。
身分違いのこの恋は絶対に知られてはいけない。 陛下に知られたら・・・・バイトを続けることは困難になる。自分に嘘を吐くのが上手ではないと自覚しているから、知られてしまったらまともに妃演技が出来なくなるのは目に見えている。 まだ借金がある内は、この恋を知られる訳にはいかないのだ。

だから、身体を動かして考える時間を減らすしかない。
くたくたになるまで身体を酷使して何も考えずに深く眠れるように・・・・。
それまでは 『臨時花嫁』 は 『囮』 として、いずれお越しになる 『正妃』 のために、陛下の敵を減らす助けになればいい。

借金返済はいつまで続くんだろう・・・。 あとどのくらい残っているのかしら・・・。
後宮内でも最高級の青磁の器。

『名釜にて焼成された青磁・・・その美しく なめらかな翡翠色は人々を魅了してやまない。 財政難なのに・・・っ 売ったらいい値がついたのに・・・っ』

一庶民には想像も出来ない程の値段ですよと李順さんに言われたけれど、それでも王妃が嫁がれる時に臨時花嫁がいたら邪魔になるだろう。 もし王妃が来た時にまだ借金が残っていたとしたら・・・・・。
バイトは邪魔だと ここを追い出されたら借金返済のあてがないじゃない!

夕鈴はブルッと震えた。 青慎の学費も払えなくなるのは困る!
陛下に正妃が来るのは最初から解かっていた事、それに意見を言いたい訳じゃない。
私の借金返済は一体どうなるのか、そう、私の心配はそれだけ・・・・他にはない筈。




立入り禁止区域の掃除が終わり、浩大からの護身術指南も終え、夕鈴は一人四阿で休憩がてら時間を潰して居た。 夕日がゆっくりと傾き、藍色が濃い闇へと沈み込んでいく時間。
ひとつ、またひとつと小さな輝きが空に滲み出した。
 
「・・・はぁ・・・」

星が滲んだ訳じゃない。 私の瞳に涙が溢れ出したからだ。
もう、何度考えても仕方ない事。 指でそっと涙を拭う。 その指先が痛いほど痺れている。
陛下の元へと嫁ぐ正妃の事を考えると、指先が震えるほど痺れるのだ。 もう、この手で陛下に触れる事はなくなる・・・そう思うと・・・。
膝を抱え、何度目かの溜息を吐く。
こんなに長くなるとは思わなかった臨時花嫁のバイトを恨んでも仕方が無い。 備品を壊して借金を作ったのは自分自身だし、青慎の学費を捻出したいと思っているのも本当のこと。
ただ陛下に恋をしてしまっただけ。
・・・・・それがこんなにも辛い事だとは思いもしなかった。
恋の唄に悲恋の曲が多い訳がなんとなく判る気がするなんて重症だ。 膝を抱えながら、苦笑してしまう。 ああ、残りの借金の金額を聞くのが恐い・・・。

涙を拭って夕鈴は四阿から歩き始めた。 後宮に戻り、臨時花嫁としてのバイトをする為に。




或る日、掃除婦として立入り禁止区域で働いている時、それを聞いてしまった。
バケツの水替えの為に、どうしても官吏や大臣が行き来する場所を通らなければ為らない。
そこで顔だけは見知った大臣らが朗らかな顔で談笑していた。

「やっと陛下も其の気になったようで、安心しましたよ」 
「どの国の姫を娶られても陛下と共に上手く発展させてくれるでしょうな、この国を」
「今のところ、三カ国から立候補が上がっていると?」
「氾大臣はもう娘を召し上げる気は無さそうだが・・・?」
「・・・まだ判らんぞ・・・。 其の気になったんだ、正妃だけとは限らぬぞ」

平伏していた夕鈴の耳に 嫌でもその言葉が届いた。 届いた言葉に胸が掴まれ息が止まりそうになる。 震えないように、涙が出ないように、声が出ないように堪えるのが精一杯。
・・・・噂は本当だった。
白陽国 国王陛下に本当の花嫁が・・・来るんだ。 
袖の中の夕鈴の手が痺れ出した。

大臣らが場を去ってからも夕鈴は暫らく平伏したままで動けずにいた。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 03:33:33 | トラックバック(1) | コメント(0)
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まとめtyaiました【柔らかい傷  2】
柔らかい傷 続きです。久々の「ぐちゃぐちゃ考え過ぎバージョン」です。陛下出て来ません。あらら・・・、今頃陛下出てこないと気が付く私。夕鈴主体ですね。まっくらです。シリア...
2012-05-12 Sat 10:07:43 | まとめwoネタ速neo

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