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柔らかい傷  5
毎度のことながら、長くなりました。
全く・・・何故長くなるのか解からない・・・
思うように動いてくれない方々に、泣きそうです、マジに!



では、どうぞ











刺客の片腕に傷を付けた陛下は、そのまま切っ先を刺客に向けながら近寄っていく。
紅い眼が刺客に注がれ、その冷酷な表情に刺客は腰を引き、流れる血を押さえながら陛下に対峙した。 大股で近付いていく陛下は、横目で夕鈴を捉える。
裾が大きく割られ、額や頬などに土が付いている。 投げ出された足首には赤い傷があり側には刺客のものと思われる鞭が放り出されており、夕鈴がどの様な目にあったか容易に想像出来た。

「・・・・語るのは止めだ。 私からの刃を其の身に深く突き立て、妃への詫びをさせよう。 繰り返し、繰り返し詫びるのだな・・・。 私の気が済むまで」
「・・・っ!!ま、待て! 雇い主を言うから、い、命だけは!」
「そんな言葉は聞こえない。 我が妃への詫びは貴様の身を切り裂いてから聞かせて貰おう」
「ま、待ってくれ! ・・・・わ、悪かった」

平伏し命乞いを始めた刺客へと切っ先を向けたまま足を進める陛下に、蒼白な顔で夕鈴が立ち上がり取り縋った。

「へ、陛下。 雇い主を言うといってますから! 命までは・・・!」 

陛下の袖を必死に掴んだ、その妃の声に足を止めた陛下はゆっくりと振り向き、困った顔で溜息を吐いた。 夕鈴が見上げる陛下の表情は冷たく、それでいて溜め息を吐いた後は柔らかい視線を向けてくれる。 その視線が怖くて嬉しいと反する想いを胸に、夕鈴は真摯に向き合い続けた。

「ああ・・・、『陛下の敵が減らない』・・・か?」
「は、はいっ! お願いします、陛下!」

涙目でそれでも強く言い放つ夕鈴を見下ろし、陛下は肩から力を抜き 「捕縛しろ」 と告げる。 直ぐに姿を見せた浩大が刺客を捕縛し終え、もう終わりかと昏い笑みを浮かべた陛下の元へ、李順が 「また、兵を待たずに勝手に!!」 と怒りながらやって来た。
捕縛された刺客と李順の姿を見て夕鈴は力が抜けていく。 やっと助かったのだと実感して身体が震えてきた。

「夕鈴、大丈夫か!?」
「あ、だ、大丈夫、です・・・大丈夫・・・」

慌てて裾と襟元を直しながら、蒼褪めた顔のまま陛下に強張った笑みを見せる。 陛下は外套を夕鈴に掛けると、静かに頬の傷に手を伸ばして来た。 触れるか触れない内に夕鈴が目をぎゅっと瞑り思わず身体を強張らせると、陛下は手を止め、苦しそうな声で小さく呟いた。

「・・・ごめんね。 恐い思いさせて・・・」

夕鈴はその言葉に顔を上げて首を振った。

「大丈夫ですから! ほ、本当に! ちゃんと助けて下さったし、怪我も大したものでは有りませんから。 そ、それにしても陛下の敵はなかなか減りませんね。 ・・・・が来るまでには居な」

夕鈴は気付くと、勢いよく陛下の胸の中に抱き込まれていた。

「ごめんっ! 夕鈴、本当にごめんね。 ・・・・怒ってもいいから」
「陛下・・・・」

謝罪の言葉と共に強く抱き締められる。 
その腕の中で溢れ出した涙を零しながら、『今だけはいいかな』と陛下の胸に身体を委ねた。

李順が捕縛した刺客を兵に引渡し連れて行くように指示を出した後 陛下に報告を告げる。 夕鈴の怪我を知ると侍医の手配をする為に先に戻って行った。 浩大は陛下が投げた槍と刺客が持ち込んだ刀を纏め、二人に目を向ける。

「へーか、お妃ちゃんの治療があるから一旦戻ろうよ」
「判った・・・。 夕鈴、歩けるか?」
「引き摺られたから土だらけですけど・・・・歩けます。 あ、でもっ!」

陛下の胸を押し、夕鈴は真っ赤になって一歩下がった。 
陛下がその様子に 「足が痛むなら抱きかかえてあげるよ」 と手を差し出すと、夕鈴は掛けられた外套をぎゅっと握り更に一歩下がってしまう。 まだ襲われた恐怖があるのかと眉根を寄せると、夕鈴が手を差し出し近付く陛下を制した。

「あ、あの、あの陛下っ。 ・・・う、後ろを向いて下さい。 い、衣装を直しますから! お願いします!!」
「外套で見えないから大丈夫だよ。 やっぱり抱えて連れて・・・・」
「いえっ!ちょっと、下がっ・・・あ、 陛下、う、後ろを向いて下さい! お願いしますから、陛下! 直ぐ済みますからっ! お願いしますっ!」

眉間に皺を寄せて また一歩下がった夕鈴に戸惑いながら陛下が仕方が無いと背を向けた。
その背を見ながら夕鈴は裾を持ち上げて下着を直した。 下げられたままでは歩くことも出来ず、ましてやその状態で陛下に抱えられるなんて恥ずかしくて居た堪れない。 足首は痛むが歩けない程じゃないだろうと胸から裾までの土を叩き落とした。 沓が脱げていることに気づき、周囲を見回すが見当たらないと溜息を吐く。 そして擦り傷だらけの手足を見て、囮として陛下の役に立てたのだろうかと胸の痛みを堪えて、微笑んだ。

「夕鈴・・・・もう振り向いていい?」

その声に夕鈴が顔を上げると、陛下の背中とぽかんと口を開ける浩大の顔が目に入った。

え・・・?  
夕鈴がその浩大の顔に驚くと、浩大は慌てて口を閉じてた。 何を見られていたのか瞬時に解かり、夕鈴は自分でも解かるくらいに真っ赤になっていると思った。 
ワナワナと震える指で浩大を指すと 浩大は急ぎ首を横に振る。

「み、見てないよ。 見えなかったよ! 大丈夫だよ、お妃ちゃん! 暗いしさ、外套で隠れていたし、下着上げていたのは見えなかったって!!」

あっと口を押さえる浩大を見て、一気に爆発した夕鈴が深紅に染まりながら怒り出した。

「み、見えていたんじゃないの!! 浩大の馬鹿、馬鹿ーーっ!! 後ろ向いててって言ったのに~~~~!」
「だって、陛下に向かってお願いって言っていたじゃんか! それならそうと言ってくれたらいいじゃん! パンツ上げるから見ないでって!」
「~~~~っ! 浩大の馬鹿~~~~!!」


「・・・・・・・・・浩大」


瞬時に凍る場の空気。 薄暗闇の中、更に暗いオーラを纏った陛下が浩大の肩を掴んだ。
「ひぃっ」 と全身を震わせた浩大が紅い目の陛下に身を竦ませる。

「陛下、見えてないっすよ! マジに! なんかモゾモゾしてるなって、それだけっす!! 本当に見てないっすよ~!!」
「・・・・後でゆっくり話そう・・・」
「へーか! 目がマジっすよ! 恐ぇって!!」

必死に陛下の手から逃れた浩大は槍などを抱え上げると、あっという間に遁走した。

「あの・・・僕は・・・見ていないよ」
「・・・・は、い」

ゆっくりと振り向いた陛下は小犬陛下。 それを知っても聞かれた話に真っ赤になって顔を合わせられないでいる夕鈴。 陛下は俯いた夕鈴に近寄れずに、必死に弁解を始めた。

「夕鈴・・・大丈夫じゃなかったね・・・。 本当にごめんね。 刺客が来るだろうとは思っていたんだけど まさか三種類の刺客が現われると思わず手が廻らなかったんだ。 君の居場所は限られた者しか知らない筈だったから、大丈夫だろうと、その」

陛下の声は覇気が無く明らかに凹んでいるようだ。 恥ずかしさを堪えて夕鈴は顔を上げた。
耳も尻尾も下がっている陛下に恥ずかしさを我慢して声を掛けるしかない。

「陛下っ! だ、大丈夫でしたから! そうですか、三組もの刺客が来ていたんですか! 私は大丈夫でしたから心配御無用です! 浩大から護身術を習っていましたし! あ、習って・・・たんです。 ・・・・すいません」
「うん、知っていた。 でも実際に使わせるつもりは無かったんだ。 本当だよ。 だけど、間に合わなくてごめんね。 それも・・・あんな卑劣な・・・・。 アイツ、命が惜しくないのか」

急に冷気が増し、夕鈴が身体を震わせた。 狼陛下の言葉に自分がされたことを思い出してしまう。 外套を握り、ぎゅっと目を瞑り頭を振った。 それなのに・・・思い出したくないのに、何故か脳裏に浮かんできてしまう。 やはり男の力には敵わないのかと悔しくて止まったはずの涙が溢れてきた。

「・・・夕鈴」

何時の間にか近寄った陛下が優しく夕鈴を包み込んだ。 その腕は簡単に振り解けそうな程に柔らかく、自身を抱き締めるその柔らかい束縛に夕鈴は小さく身を震わせた。

・・・・陛下は、恐くない。
恐くないのに、辛い・・・・。
とても優しい束縛を与えてくれるこの人に、この人だけの妃が来るんだ。
きっと優しく慈しむだろう。 この人は人の痛みを知る人だから。
それを知っているからこそ、私はこの人に恋をしてしまった。


夕鈴は俯いたまま陛下の胸を押した。 手の震えに気付かれないように陛下の胸を軽く叩く。

「陛下、本当に大丈夫です。陛下の敵を減らすことが私の仕事ですから気にしないで下さい。 本当に大丈夫ですから」
「・・・・ゆう」
「護身術を習っていた御陰で落ち着いて対応出来ましたし、結果命も無事でした。 でも、もう少し体力をつけた方が」

言葉が途中で途切れてしまう。 今度は陛下の腕に強く締め付けられてしまったから。 
強く抱き締められ夕鈴は息が止まりそうだと思った。 先程とは違う、強い束縛に気が遠くなりそうになる。 夕鈴が陛下の胸に置かれた手を無意識に動かすと、更に強く抱き締められる。 息が出来ないほど抱き締められ、困惑した夕鈴が陛下を見ると怒った顔が見て取れた。

何で、何故 怒っているの?
・・・・勝手に襲われたから?
・・・・自分の 「妃」 が襲われたから?
それとも・・・・・呆れている?

胸が痛くなる。 バイトとしても囮としても役に立たなかったのかと苦しくなる。
そう思った瞬間、夕鈴の身体は宙に浮いていた。 抱かかえられたのが判ったが如何したらいいのか判らない。 怒った顔のまま後宮へと足を進める陛下に、何か言うことも出来ない。 外套を強く握り締め、その腕の中で震えるしか出来ない・・・・・。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 21:45:11 | トラックバック(0) | コメント(0)
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