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見えない恋敵  2
どうして長くなってしまうのだろうか?コメディタッチで短くと思っているのに。
すいません、もんもんしている夕鈴、もう少し続きます。

では、どうぞ







 








「・・・如何で御座いましょうか」


満足そうな侍女の声が聞こえてきて夕鈴はそっと瞼を開けた。 先ず鏡に映る侍女の顔は満足そうな笑みを湛えている。 いつもより時間を掛けた着替えと化粧・・・それは。

衣装は光沢のある紫紅色の吊帯長裙の上に 緋色を基調とした帔帛が重ねられた。
細かな刺繍が華を模り、刺繍に絡めて淡水真珠が飾られ、大帯には真珠色の飾り組紐を纏わせる。 細かな宝玉が淡い光を放ち豪奢な組み紐だ。 春恵宴の衣装のように胸元が開けられた衣装で、その首元にはいつもより強めの、いつもとは異なる香りが塗込められた。

髪型は緩やかに上下に纏められ、片側に垂らされている。 
上部に纏められた髪には帔帛の刺繍に絡められた真珠と同じものが髪に飾られ、下部に纏められた髪が緩やかに波打ちながら片側の肩へと流れていく。 いつも飾っている花を耳に添わせ瑪瑙の簪が一つだけ差し込まれる。 花の色と同じ色合いの真珠が頭を動かす度に日の光を受けて淡く輝く。
 
肌の上に淡く頬紅を差し、目元と口元には少しだけ濃い目の彩りを施した。


「お妃様のご希望に添えるよう、いつもとは異なる御姿にさせて頂きました」
「首元はあえて宝飾を飾らず、白い肌が映えるように致しました」
「香油は初夏に併せて柑橘系をご用意させて頂きました。 ・・・・香りはお気に召しましたでしょうか、お妃様」

侍女の腕前に、正直言葉も見つからない。 
いつもより濃い口紅が少し開き鏡の中の私に驚いている。
腰を捻ると広がる裾と帔帛。 ふわんと香る柑橘系の香油が鼻を擽る・・・・。

「いつもより年上に見えますね・・・・。 大人っぽい感じがします」
「ええ、お妃様。 お似合いで御座います」

胸を張って出来上がった 『御妃』 に満足な笑みを浮かべる侍女らは、妃の言葉に静かに頭を垂れて声を揃えた。

「では、行ってらっしゃいませ」
「・・・・え? あ、もしかして・・・陛下の元へ?」
「お妃様、勿論で御座いますわ。 是非陛下へ御目文字なさって下さいませ!」
「どの様な御寵愛を受けるか、私共も楽しみで御座います!」









輝く期待に満ちた瞳に押し出されるように、夕鈴は陛下の元、執務室へと歩き出した。
いつもより胸元が開いているため帔帛で隠しながら侍女を伴い、執務室へと足を運ぶ。
すれ違う官吏の表情すら恥ずかしさで俯く夕鈴は気づかなかったが、足を止めて思わず見惚れている官吏達の姿に侍女は得意気な顔を見せる。
普段から此れくらいさせて貰いたいくらいだが、それを良しとしない妃に好感を持っているので口には出さないが、今回は夕鈴がたまたま呟いた言葉を耳にした侍女が良いチャンスと いつもは出来ない着付けと化粧をさせて貰い、官吏たちの惚けた顔に心から満足した。


「あの、執務中失礼致します。 ・・・・陛下、お忙しいでしょうか」
 
夕鈴の声に、衝立越しに陛下が 「夕鈴か、どうした?」 と短く聞いてきた。 
コクンッと唾を飲み込んだ夕鈴が 「宜しければ菓子を頂きましたので、お茶をと思いまして」 と告げると、陛下の嬉しそうな声が聞こえてくる。

「それなら天気がいいから四阿でお茶を楽しむことにしよう。 直ぐに行くから先に用意を頼む。 もう少しで落ち着くはずだ」
「わかりました、先に御用意させて頂きます。 では」

狼陛下の声色に、姿を見ない内から頬を染めてしまう自分を持て余しそうになる。 夕鈴は詰めていた息を吐くと振り返り、侍女に四阿にてお茶の用意をして貰うようにお願いをした。


姿を見せずに声だけで退室した夕鈴をおかしいと思い直ぐに追い掛けたいが、李順と宰相に押し付けられた書簡が山と詰まれており 手が離せない状態の陛下。
そこへ李順が追加の書簡を持って入って来た。 うんざりとしながら書簡を受け取り、内容を確認しようとすると、李順が眼鏡を持ち上げて 驚いたように話し出した。
 
「陛下がそのまま席にお座りになっていることに安堵致しました。 あのような姿で来られていましたので、直ぐに姿を晦ましていると想像してしまいましたよ」
「・・・・・? 何のことだ、李順」

書簡から目を離さずに李順の言葉を耳にするが、意味が解からない。 
筆を持ち署名をしながら先を促すと、李順が抑揚の無い声で 「おや」 と呟いた。
 
「大した事ではありませんので、先に仕事を終わらせて下さい」 

端的に返答し、李順は次の書簡を陛下に差し出した。 陛下が違和感を感じながら差し出された書簡に目を通し 「仕事はちゃんとするから言え」 と眉を顰めると、李順は溜息を吐き署名が終わった書簡を纏め出した。

「夕鈴殿ですよ。 珍しく着飾っておりましたのでね」
「・・・・え?」
 
顔を上げた陛下の表情を見て、李順はやはり姿を見てなかったのかと気付き、舌打ちをする。
筆を置く音に、慌てて 「こちらは至急の決裁が必要です!」 と叫ぶが後の祭り。 
狼陛下は立ち上がると李順の指差す書簡を一瞥して悠然と微笑んだ。

「この案件は差し戻しが必要だ。 予算を見直すように印を付けてある。 もう一度詳細を見直すよう伝えよ。 ・・・・では 私は愛しい妃と過ごして来る」

もうこれ以上邪魔はするなと視線を送ると、李順は諦めるしかない。
嬉しそうに四阿へと足を運ぶ陛下に、それでも叫ぶように釘を刺す。

「他の書簡も急ぎですからね、陛下。 お茶を飲んだら直ぐにお戻り下さいよ!」

果たしてこの釘は陛下に有効なのか・・・。
無理だろうな、と李順は署名の終わった書簡を持ち政務室へと足を向けた。








「・・・・我が妃よ、待たせたな」
「いいえ。 お仕事中でしたのに声を掛けてしまい、申し訳御座いません。 美味しい菓子がありましたのと、お天気が良かったのでご休憩にと思いまして」

四阿にて侍女とお茶の用意をしている夕鈴の姿に、僕は思わず見惚れてしまう。 
初夏の風に帔帛が柔らかく揺れ、夕鈴の首元から胸元をいつもと違う装いが煽るように見せている。 四阿に足を踏み入れると、いつもと違う芳香を放つ夕鈴に気付いた。 
俯いて茶を淹れる夕鈴の髪がいつもと違うと目を細めて眺めていると、顔を上げた君が頬を染めて 「先ずは お掛け下さいませ」 と柔らかく声を掛けてきた。

夕鈴に見惚れて立ったままだったと気付き苦笑しながら椅子へ腰掛けると、侍女が満足げに満面の笑みを見せ、静かに四阿から離れて行く。 
 
「夕鈴、・・・・すごっく綺麗だね!」
「あ、ありがとう御座います・・・・。 たまには妃らしく着飾ってみようと思い立ちまして。 ちょっと、はっ、恥ずかしいのですが」
「すごっく似合うよ。 僕、思わず見惚れちゃったよ!」
「・・・見惚れ・・・って、そんなこと・・・」

思わず帔帛を寄せて顔を赤らめる夕鈴を見て、可愛いなと僕も頬が染まる。

そしてふと気付いた。
この姿で執務室まで歩いて来たということは、もしかして数人の官吏と擦れ違ったのだろうか。
その官吏がどんな表情で見ていたのか想像するだけで、直ぐに夕鈴を後宮へ隠したい気持ちになるが今はその気持ちを押し止める。 折角の夕鈴の誘いを、悋気で潰したくはない。
ここは楽しいひと時のために、小犬で過ごすのが一番と判っている。 しかし、夕鈴の肩に掛かった髪に手を伸ばすのさえ躊躇う自分に戸惑ってしまう。 

「夕鈴、香油もいつもと違うものを付けているな。 良い香りだ」
「なっ、なんで狼陛下? 誰も居ませんよ?」
「・・・・しっ、方淵が来る」
「え?」

振り返ろうと思った時には腰を攫われて、あっという間に陛下の膝の上に座らされていた。 騙されたと、夕鈴が慌てて陛下の胸に手を当てた時、本当に柳方淵の声が聞こえてくる。

「御休憩中とは存じますが、先程差し戻しされた書簡についてお話があり伺いました。 少し宜しいでしょうか、陛下」
「もう終わったか。 ・・・・流石だな、方淵」
「数字の見直しが終わりましたので、至急陛下に見て頂くようにと李順殿に言われましたので、持参した次第で御座います」

柳方淵は陛下へと書簡を差し出しながら膝の上の夕鈴をちらりと見ると、眉間に深い皺を寄せていつもと変わりなく睨み付けてきた。
いつもは睨み返す夕鈴だが、今は侍女さん力作の <妖艶妃> 風衣装。
いつものように睨み返すのはどうよ?と瞬時に考え、大人しくするに限ると黙って微笑むことにした。 陛下の膝の上ということもあり恥ずかしさもある。 団扇で口元を隠し、一応にっこりと方淵に微笑んで見せた。 ・・・・睨み返されることは承知の上で。

方淵は政務中の陛下を連れ出した妃を、いつものように睨み付けた。
その時、嗅ぎ慣れない匂いに眉を顰めて視線を落とすと、妃はいつもより華やかな化粧を施し、いつもより着飾っていると判る。 その上、睨み返すことなく微笑を向けていた。 それが何故か気に入らない。 陛下の膝の上でしな垂れかかっているのも、いつもの妃らしからぬ行動と更に深く眉を寄せて睨み付けた。

片や夕鈴は。
ああ、やっぱり睨み付けているわ、この人。 ふっ・・・想定範囲内よ。
いいこと? 貴方に見せるために装ったんじゃないからね! 気に入らないのは解かっているけど、休憩中の陛下の前でも変わらないわね、方淵は!

いつもと変わらない方淵からの視線に、微笑を浮かべていた夕鈴も青筋を浮かべ始める。
柔らかな微笑を一転させ、いつものように睨み合いへと転じていた。


陛下の膝の上で徐々にいつもように方淵を睨み出した夕鈴と、同じように夕鈴を睨み付ける方淵。 書簡を見直し終えた陛下が静かな声色で 「・・・方淵」 と名を呼び書簡を差し出した。

「これを李順へ。 この修正案で問題はない。・・・直ぐに戻るからと李順に伝えておけ」
「解かりました。 失礼を致しました、陛下・・・・お妃様」

その声色に背を正した方淵は、書簡を受け取ると踵を返して政務室へと去って行った。
夕鈴も仕事モードになった狼陛下の声に緊張して心臓が跳ねてしまう。

「ごめんね、夕鈴。 まだ仕事が溜まっていて、ゆっくり出来ないみたいだ。 あ、夕鈴はこのまま執務室に来る?」

方淵が去り小犬陛下に戻って尻尾を振り始めた陛下の膝から急いで降りた夕鈴は、慌てて冷めたお茶を飲み込んだ。

「い、いえ。後宮に戻ります! お仕事の邪魔をしてすいません!」

卓上の茶器を片付けながら夕鈴は李順の白く輝く眼鏡を想像し、蒼褪め出した。
執務室前で李順に会った時、特に文句も言われなかったが、陛下の仕事の邪魔をすると後でどんな叱責が待っているか・・・・。 これ以上四阿にいると必ず李順がやって来るだろうと思い、陛下を執務室へ戻すことにした。


『綺麗だ』 と言って貰えたことで溜飲も下がり、ここ数日の溜息も出なかった。
今の自分はこれで充分だと思い始めた夕鈴は、バイト妃として居るだけなのに、何をしているのかと冷静に自分を振り返る。 胸が痛くなるが、それは此処に居る間だけなのだと繰り返し自分に言い聞かせた。

・・・・・・・幻の 『お色気美人』 に対抗してどうするんだろう、私。

お盆に茶器をまとめていた夕鈴の手に陛下の手が重なる。
思わず顔を上げると、眉を下げた陛下の表情に夕鈴は驚いた。









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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

長編 | 01:15:55 | トラックバック(1) | コメント(0)
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まとめtyaiました【見えない恋敵  2】
どうして長くなってしまうのだろうか?コメディタッチで短くと思っているのに。すいません、もんもんしている夕鈴、もう少し続きます。では、どうぞ
2012-06-01 Fri 03:34:07 | まとめwoネタ速neo

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