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そんなはずじゃ!  3
日曜日は丸一日引越し作業。天候が悪いけど仕方が無い。
のんびり屋の息子の尻を叩きながら、どうにかこうにか・・・・
洗濯機にレンジ、冷蔵庫、テーブル、ベッド、ポットなどなど。 新しい物の購入に、搬入に、設置に、丸一日費やしたぜぃ。ワイルドだろう?
週末は娘の修学旅行。 こっちの準備は「新しい下着とパジャマとコスメが欲しい」 どっちも金の掛かる奴らだ!! 少しは夕鈴を見習え!!!!


では、どうぞ

















「柳方淵殿、氾水月殿。 申し訳ありませんが、それぞれが、それぞれの振りをして奥の書庫へといらして下さいませ。 あ、先程の書簡をお持ち下さい。 それとその棚のこれとあれを・・・・・」

李順が書庫に居る二人へ移動を申し付け、その際に多量の書簡を二人に持たせて足元が見えないようにした。 尤もらしく李順が持たせた書簡の重要性を解き、急ぎ必要であると話す。

「不正に関わっている高官がいるとの情報が入り、書庫を替えてその書簡の細部に渡っての見直しが必要となりました。 暗号化されているのか、それとも裏の大物が釣れるのか・・・・。 陛下の御世を脅かす輩を見つけることが急務ですので申し訳ないですが 急ぎ精査を願いますよ」

李順が早足で歩きながら二人へ小声で重要な事を伝えるため、聞き逃すまいと自然に二人の足も急ぎ足になる。 水月(方淵)は眉間に皺を寄せながら、 「そのような事が・・・!」 と怒り出し顔を赤らめ始めた。
共に書簡を持ち歩く方淵(水月)も難しい顔で書簡を見つめながら、遅れないようにと足を速める。 李順が 「この事はまだ内密にして欲しいのですが、早急に対策を講じなければなりません」 と蒼褪めた顔で振り返ると、二人は小さく頷いた。
李順は更に足を速めて、人がいないことを確かめながら回廊を曲がり書庫へと二人を導く。


「こちらでしたら誰も入らないように出来ますので」

すっと書庫へと消える李順に遅れまいと 水月(方淵)が書庫へ足を踏み入れる。
途端に唯でさえ暗い書庫だというのに、灯っていた明かりが消えてしまい足元がおぼつかなくなった。 目が慣れずに先へ進むのを戸惑っていると、後ろから方淵(水月)が追い付き、ぶつかってしまう。

「おっと、真っ暗ですね。 李順殿、明かりが・・・?」
「今、火を探しております・・・。 暫しお待ち下さいませ・・・・」

回廊から外の日差しが幾分入っては来るが、奥行きがある書庫のためか、先は暗く李順の姿は見えない。 書簡を持ち、暫し李順の言葉通りに待つ二人。

「・・・・こちらへ」

奥の方から声が聞こえ、書架を曲がり少し抜けると明かりが見えた。
「良かった。 やっとこれを降ろせますね。 もう手が痺れていたんです」 と方淵(水月)が笑いながら話すのを、水月(方淵)は 「軟弱な! 私の体はそんなに柔じゃないぞ!」 と睨みながら振り返った。 実際文官である方淵は文武どちらにも秀でていると自他共に認めている。


その時。


文句を言うために振り返った水月(方淵)の足元に、体を丸めた官吏が一人。
書簡を持っていた為 手を出す事が出来ずに水月(方淵)が勢いよく床へダイブした。 薄暗闇の中、先を歩いていた水月(方淵)の姿が消え、書簡が盛大にばら撒かれる音が。
くぐもった痛みを訴える低い声が聞こえ、方淵(水月)が慌てて声を上げようとした時、勢いよく方淵(水月)の背を押す官吏。 「・・・え?」 勢い良く押された上、手には大量の書簡。
足を踏ん張ろうとしたのだが何故か床が濡れており、おまけに良く滑っるよう仕掛けられており、勢いよく押された上に足場が滑り、手に持った書簡をばら撒きながら前に倒れる。

もちろん、其処には・・・・・・・・・・・・

「・・・ったあ!!」
「・・・ぐぅっ!!」


二人の悲痛な声が聞こえ、李順が急ぎ場に灯りを持ち近寄った。 

「大丈夫ですか!?」
「な、何かに足を取られ・・・」

方淵が頭を擦り乍ら周囲を確認すると、床に這い蹲ったままの官吏が震えている。 
柳大臣の息子に仕掛けた罠。 今更ながら片棒を担いだ事に恐ろしくなり震えが止まらないのだろう。 同じく氾大臣の息子を押した官吏も手を差し出したまま硬直していた。 半開きの口からは浅い呼吸が繰り返され、過呼吸の一歩手前だ。

水月が額を押さえながら足元を見ると、李順の持つ灯りにぬらぬらと濡れる床が見て取れた。

「油・・・ですか? これは一体?」
「何故書庫の床に油が撒かれているのだ? 誰の仕業だ!!」

わっと夕鈴が顔を出して床で叫ぶ二人に駆け寄り、李順が幾つもの明かりを灯して二人の顔を確認した。 明かりの中、戸惑う二人はお妃の明るい表情と、李順の難しい表情を見比べる。

「それぞれの名前を言って下さい」
「・・・・? 柳方淵・・・あっ!」
「・・・氾水月です。 ・・・あ・・・」
「戻った!! 戻りましたよ、陛下っ!!」

涙目で背後から姿を見せた陛下へ大きな声で報告をする夕鈴は、嬉しさの余り二人の手を取り 「元に戻ったんですよ。 解かりませんか?」 と大きく手を上下させた。
水月が夕鈴に捉われていない方の手で自身の顔を触り 「・・・本当ですね」 と安堵の表情を夕鈴に見せ、方淵が勢い良く夕鈴の手を払い頭を押さえながらも立ち上がると書架に手を掛けながら呟いた。

「だから・・・ だから互いの頭をぶつけると貴女に先程申し上げたのに!! こんな手間暇を掛けてまで行うことかっ!? 」
「だっ!! 結果良ければ全て良しよっ! 元に戻ったのだから文句は受け付けませんよ、方淵殿っ!! 普通に喜びなさいよ!」
「想定以上にぶつかっていたら、貴女のようにお気楽な思考回路になるところだったではないかっ! 陛下の為に日夜努力しているこの私の向上心を無にする気かっ!」
「文句は受け付けませんっ!! 男の癖に愚痴愚痴言わないで下さいませ!」
「文句ではないっ! 貴女へ苦言を申し立てているところだ!」

睨みあう二人の壮絶なバトルに、震えていた官吏らがやっと力が抜けたように床に腰を降ろした。 いきなり始まった方淵と妃のバトルに呆気にとられ、脱力したのだろう。 頭を押さえる李順が口を挟もうと二人に向き直った時、陛下が話しだした。

「そう言うな、方淵。 互いが了承しての打撃より、知らない偶然の方が良いと提案したのは私だ。 許せよ。 最初が偶然なのだから、同じような偶然を装った方が確率は高いのではないかと思ったのだ。 ・・・・・元に戻って何より」

陛下からの言葉に方淵はぐっと口を噤み、恭しくお辞儀をした。
水月も掴まれていた妃の手を離して立ち上がると同じように拱手してお辞儀をする。

「陛下のお陰をもちまして、二人このように元に戻る事が出来ました。 お妃様はじめ、側近の李順殿にもお手数を掛け、恐縮で御座います」

水月からの言葉に陛下は瞳を細くして黙って頷いた。 先程まで妃に手を掴まれていた水月は陛下が醸し出す悋気を感じて蒼褪めて小さく震え始め、その様子を見た方淵は、陛下の考えに水月が感動して奮えているものと勘違いし、急ぎ礼を告げ始めた。

「私も同じ考えで御座います。 陛下の御配慮により無事、心と身体が元に戻り心より嬉しく思います。 今後も陛下の御為に心より仕えると誓わせて頂きます」

李順が 「そういう訳でして先程の不正の話も嘘です。 お二人を騙す形になりましたが御了承下さいませ。 お二人の為でしたので」 と告げると、二人は黙って頷いてくれた。

「私共の為にとのこと、何の文句も御座いません。 本当にお手数を掛けました。 これからも陛下と国の為に誠心誠意尽くす所存です」 

熱く語ると方淵は 「仕事に戻ります」 と踵を返して政務室へ向かって行った。 二人の官吏も慌てて立ち上がると 「ありがとう御座います。大事になるところでした!」 と陛下へ拱手し、散らばった書簡を片付け始めた。 夕鈴も急ぎ書簡を拾い、笑顔で陛下を見上げる。

「陛下、上手くいきましたね。 本当に・・・・ ほっとしました」
「・・・・李順」

夕鈴の言葉には応えず陛下は李順に声を掛け、 「あとは頼むぞ」 と書庫の片付けを任せた。 
李順が 「陛下っ! 仕事が溜まって・・・」 と言い掛けるが、陛下は背を向けると夕鈴を抱き上げ書庫からあっという間に出て行こうとする。

「・・・・仕事が溜まっているのに・・・。 半刻だけですよ!!」

書庫から顔を出し李順が陛下の背中へ叫ぶも返答は無し。
抱き上げられた夕鈴の見開いた大きな瞳と、真赤な顔が見えただけだった。





「あ、あのっ、陛下? 李順さんが仕事が溜まっているって!!」
「それより大事なことだ、夕鈴」

後宮夕鈴の自室まであっという間に連れて来られた夕鈴は、無事に解決したのに何故陛下が怒っている様子なのかが解からず頭を捻るしかない。 おまけに目の前の陛下は狼陛下!
やっぱり油はやり過ぎたかしらと自分のアイディアに身体を震わせた。
勢い良くぶつかる為に、もう一押しと油を床に撒く事を提案したのは夕鈴。 李順がやり過ぎなのでは渋ったのを押し切ったのは自分。 それが悪かったのかしらと、震えながら俯くしかない。 侍女を下がらせ、二人きりなのに感じる気配は未だに 『狼陛下』。
夕鈴は慌てて謝った。

「ご、ごめんなさい。 油はやり過ぎましたっ! 良かれと思ったのですが・・・。 ・・・・・こぶでも出来ていないかしら? 私見てきますっ!!」
「夕鈴っ! もうこれ以上二人に構うな」
「で、でもこぶでも出来ていたら・・・。 せめて冷やす位はしないと・・・」

陛下は溜息を吐くと夕鈴を長椅子へと座らせて、その手を持ち上げて両手で包んだ。 手の感触に、ぎょっとして真っ赤になる夕鈴は唇を震わせながら陛下を見上げ、困惑するしか出来ない。

「もう二人は元に戻った。 あとは自分達で痛みの処理も、仕事も出来るだろう。 それより夕鈴・・・・簡単に他の男の手を握るなんてしないで」
「・・・・はぁ?」

台詞の後半は小犬陛下で眉根を下げて寂しそうな表情を夕鈴に見せる。 
夕鈴はその顔に困惑して 「だ、だって、二人が元に戻る確信がなかったのに、上手く行って嬉しくて・・・・・つい」と答えるしかない。 確かに二人の手を握ったが、直前まで上手く行くかどうか不安で堪らなかった分、余計に嬉しくて手が出てしまったのだ。 それを咎められるとは思っても居なかった。

「うん。 ゆーりんがすごっく不安だったのは知っているけど、僕の目の前で二人の手をぎゅっと握っていたでしょ? 夕鈴から僕の手を握ることなんて滅多にないのに。 面白くなくって・・・・」
「あの、面白くないって・・・。 あれは不安が消えて思わず手が出ただけで、深い意味なんてないんですけど・・・。 陛下の手を握ること・・・・ ありませんでしたか?」
「演技のためと抱きつかれたことはあったけど、夕鈴から進んで握られたなんて記憶にないよ。 水月の手をずっと握ってたよね・・・・。 これは妬いていいよね?」

思い切り耳も尻尾も下がった陛下は肩を落として見るからにしょんぼりと項垂れていた。
意味が解からないわと真赤な顔の夕鈴は 「妬く必要がありませんっ!」 と答えるが、夕鈴を見上げる陛下の表情を見て瞑目してしまう。

何であの状況で 『妬かれなきゃ』 ならないの? だって 『偽妃』 でしょ?
そんな者に何故陛下がそんな表情で!!!

それでも小犬陛下にとことん弱い夕鈴は真赤な顔で瞬時迷ったが、思い切って陛下の手を取りぎゅうっと握った。顔を上げた陛下と目が逢い、自分の顔が更に赤くなるのを自覚しながら唾を飲み込み、どうにか陛下へと声を掛ける。

「も、もし陛下のお心が他の方へ移っていたら、私はもっと悩みましたよ。 浩大と私が入れ違った時、すごっく大変だったのを思い出して思わず二人の手を握っちゃいましたけど、陛下がもしそんな事になったら・・・・ なったら・・・」

ぼろっと夕鈴の瞳から涙が零れた。

考えただけで涙が溢れて零れ出してしまい、夕鈴は慌てて陛下の手を離し涙を拭おうとした。
しかし夕鈴の手に自身の指をするりと絡めた陛下は夕鈴の手ごと頬へ持ち上げると指で涙を掬い上げ、そのまま自身の唇へと触れたる その時夕鈴の手に唇が触れ、夕鈴は深紅に顔を染め上げた。

「なあっ、なっ、へ、陛下っ!」
「夕鈴・・・ 君の気持ちが嬉しいよ。 この涙は私だけを思ってのものだから・・・」

椅子に腰掛けていなかったら、確実に腰が抜けて床に座り込んでいただろうと夕鈴は思った。
どうしてここで狼陛下なのかと唇を戦慄かせていると、にっこりと微笑んだ顔が近付いて来て、余りにも近い距離に何をされるのか、頭の片隅で嫌な想像が浮かび上がり蒼白な表情を浮かべた時__________。



「さあ、陛下っ!! 半刻が経過しましたっ! 二人の件も上手くいきましたので、今度は政務を上手く片付けましょう! さっさと片付けて下さらないと私も周宰相も、官吏の者も皆大変困りますっ! 陛下!」

李順の台詞と共に、余りにも近い場所での狼陛下の苛立った顔に夕鈴は慌ててその手を振り解くと、椅子より立ち上がり 「が、頑張って下さい!」 と震える声で応援をした。 
振り解かれた手を見つめた陛下は深い溜息を吐き、李順を睨み付ける。
「二人の件で仕事が滞っております故」 と陛下の睨みに眼鏡を持ち上げ 『さっさと仕事に戻れ』 オーラを陛下へ投げ付ける李順。

肩を落として立ち上がると、陛下は夕鈴に向き直り微笑みながら頬に触れてお願いをした。

「嬉しかったよ。 またお願いね、夕鈴!」

真赤な顔で口をぱくぱくさせ、応えることが出来ない夕鈴に 「ねっ! 約束だよ」 と盛大に尻尾を振り出す陛下に、ぐるぐる目を回しながら夕鈴が頷くと、嬉しそうに仕事へと戻って行った。

「何の事だか解かりませんが陛下がやる気になったのでしたら結構。 頑張って下さいね!」

李順の置き台詞に一気に脱力した夕鈴は長椅子に倒れ込んでしまった。






もう誰もぶつからないで欲しいっ!!
ぶつかったとしても意識を交代させるようなぶつかり方は絶対にしないでっ!

夕鈴は心から願った。





FIN














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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

長編 | 01:59:11 | トラックバック(1) | コメント(0)
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まとめtyaiました【そんなはずじゃ!  3】
日曜日は丸一日引越し作業。天候が悪いけど仕方が無い。のんびり屋の息子の尻を叩きながら、どうにかこうにか・・・・洗濯機にレンジ、冷蔵庫、テーブル、ベッド、ポットなどなど。...
2012-06-11 Mon 04:07:35 | まとめwoネタ速neo

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