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双の華  3
今、小説に夢中です。ありとあらゆるジャンル。
息子が置いて行った文庫にふと目が留まり、毎日1~2冊読み上げています。
更に目を酷使して、気付けば目薬買うの忘れていた。 明日こそは買って来よう。


では、どうぞ















緩やかに髪をまとめ腰まで垂らしている官吏に、姉皇女が心を奪われていると欧翠は見て取った。 姉の好む男性は武官より文官タイプ。
上背が高く、線が細く、柔らかい笑顔を持つ優男風。 
まさに先程の官吏は欧花の理想像が歩いているとしか思えないのだ。
その理想像の男性を思い出しているのか欧花の瞳は潤み、頬は薄く紅潮し、艶やかな唇から漏れる吐息には男性なら誰もが目を離せなくなるだろう。 見慣れた欧翠でさえ姉のその妖艶な表情に薄く口を開き、声も出なくなる程だった。
その欧花が欧翠に振り返り、上目使いで話し掛けた。

「ねえ欧翠、あの方の御名前を知りたいわ。 お願い、使節団長を呼んで来てくれない?」
「え・・・ ええ、いいわ。 姉様、もしかして・・・・」 

きゃっと袖を口元に寄せて、はにかんだ姉の表情を驚いた顔で見つめる欧翠。
姉皇女の頼みを今まで断ったことの無い欧翠は他国ということもあり、瞬時言葉が出て来なかった。 それでも姉の希望を叶える為に外交交渉中の使節団長を呼ぶよう、御付の者へ指示を出した。 交渉中だったのにも拘らず使節団長は息を切って足早にやって来た。

「皇女様、御呼びと伺いましたが何か?」

使節団長 凋は 『まさか今直ぐに帰るとか言い出すのでは?』 と嫌な予感に怯えながらも恭しく拱手し頭を下げて皇女に尋ねた。 使節団長の荒い息遣いも気にせずに、欧翠はふうっと溜息を吐き困った妖艶な顔で 使節団長の頭を見下ろした。

「白陽国王宮へ出仕している官吏、その中の一人に気になる者がいるの。 その者と逢う機会を用意して欲しいのよ。 凋、頼めるかしら?」

皇女の 『頼めるかしら』 は 『実行しなさい』 と同義語だ。

白陽国国王との縁談に来たというのに、その国王がいる王宮の臣下と会いたいとは皇女と言えど有り得ないことであり、使節団長へ指示する内容ではない。 
しかし、凋は蒼褪めた顔を上げる事が出来ずに、どうしようかと返事が出来ずに無言で震えていると、再び溜息と共に皇女から 「頼めるかしら?」 と繰り返された。
ぶるっと体を震わせた後、伏せた顔を顰めて凋は返事をする。

「はっ、はい。 直ちに・・・! して、その者の名は?」
「解からないの。 外見は細身で背が高く、優雅な姿態。 髪が長く腰近くまで緩やかに纏められていたわ。 官吏のようだけど紗帽はしていなかったわね・・・・。 書簡を持っていたから文官と思うわ。 ・・・これでいいかしら?」
「・・・・・はっ、直ちに探して参ります。 ・・・が未だ外交中ですので暫しお時間を頂戴致します。 宜しいですか、皇女欧翠様」
「ふぅ、仕方が無いわね・・・・。 出来るだけ早くお願いね」

腕を組み溜息を吐く皇女に再度頭を下げ、額に汗を浮かばせながら凋は部屋より辞した。 
髪の長い、紗帽をしていない見目の良い臣下を探す。 それだけを繰り返し口の中で唱えながら足早に外交交渉の場へと戻って行った。

戻る途中 すれ違う官吏や大臣に目をやるが、誰しも皆 烏紗帽を着けており皇女の言うような者が果たしているのだろうかと頭を捻りながら、其れでも探さなければならない立場。
その上 陛下との縁談は如何すればいいのだろうかと 背に嫌な汗が流れるのを止めることが出来ない。 白陽国国王は元より縁談に興味がない様子だが、その御心は解からない。 もしかしたら 実はその気なのかも知れないし、本当に興味が無いのかも知れない。 外交交渉に影響があるから、縁談はその後で話し合われるのかも知れない。
どちらにせよ、杜南国国王からの厳命でもある 『縁談』 は絶対に行わなければならない。
なのに皇女の希望は白陽国国王ではなく、その臣下。 皇女に甘い国王とは知ってはいるが、どちらの希望を優先すれば良いのか思案し、凋は胃が捻れるほどの痛みを感じた。


早馬を出し、皇女の気持ちは白陽国国王陛下ではなく、その臣下に向けられていると書面を急ぎ届けることにした。 後は杜南国国王のお気持ち次第。 皇女らの動きを是とするか、国へ戻るように言うか・・・。 きっと前者だろうと凋は思った。

皇女にいつまでも甘い国王のことだ、皇女の歳も歳だし誰でも良いから気にってくれた者と添い遂げて欲しいと望むことだろう。 国の跡継ぎは太子がいるし、もう正妃と側室に子供も設けている。 そちらの方は安泰だ。 だから皇女の気持ちを優先させるだろう。 
一臣下として、国王の意向に黙って従うだけだと凋は頭を振った。











*****       *******         ********












「陛下、お忙しいのではないですか?」

夕刻に後宮の夕鈴の部屋へと姿を見せた陛下に驚いて出迎える。
多少疲れた様子を見せながらも夕鈴へ微笑みながら陛下は答えてくれた。

「決まった貿易内容に関して、のらりくらりと話を伸ばす杜南国に多少疲れただけだ。 だが 午後から使節団長の顔色が悪くて早めに切り上げた。 ・・・・ああ、皇女の部屋へ呼ばれてから顔色が悪くなったようだな。 妃は一人で良いと、縁談を断ったことも関係あるかもな」
「そ、そう・・・ ですか。 大丈夫でしょうかね、使節団長様は。 季節の変わり目でもありますし大事に至らなければ良いですが。 あ、お薬湯などを用意して差し上げては如何でしょうか?」

侍女が居るため、未だ狼陛下の演技が続く。 
杜南国使節団との交渉に関して疲れたと昏く笑いながらも、陛下は何やら楽しそうにも見える。 
そう思いながら、夕鈴は頬を撫でる陛下の手に緊張しつつ、頬を染めていた。
その言葉を聞き、眉間に皺を寄せた陛下は夕鈴の両頬に手を宛がい、そのまま顔を自分に向けさせた。 至近距離に怒った表情の陛下がいて、夕鈴はすごく驚いてしまう。

「君の口から他の男の心配など、聞きたくはないものだ」
「なっ、会ったこともない人でも具合が悪いと聞けばっ・・・・。 こほんっ。 心配にもなりますわ、陛下。 でも私の心は陛下だけのものですと、言の葉に乗せねば判って貰えませんか?」

侍女がいるのに・・・ と思わず涙目になりそうな自分を律して、慌てて妃演技を取り戻す。
その様子を楽しげに紅い瞳を細めて更に顔を近づける陛下が 今度は夕鈴の腰を攫う。

「嬉しいことを言う。 その言葉に私は如何返せば良いのか。 口付けか、抱擁か、それとも夜の帳が降りる頃、閨でゆっくりと君に・・・・・」
「っ!! まあっ、陛下のその、その御心だけでぇ 嬉しいっ、ですわぁ・・・・・」

この場に李順がいたら白く輝く眼鏡を持ち上げて大仰な溜息か咳払いが飛んで来ただろう。
涙目で震える夕鈴の頬を掴んだまま陛下がちらりと侍女を見ると 『心得ております』 と無言で侍女達は退室をして行った。 侍女は他国から来ている美妃と噂のある皇女より夕鈴の元に足を運ぶ陛下に満面の笑みを浮かべていた。

息を荒くして脱力した夕鈴は卓に手を置き睨み付けると、笑顔で頬から手を離した陛下は長椅子に腰掛けて尻尾を振りながら 「ゆーりんのお茶が飲みたいな」 と首を傾けた。 
小さな溜息を吐き、のろのろと夕鈴が茶の用意を始めると陛下がくすくすと笑い出した。
 
「なんですか? その哂い方は・・・・」
「え? 笑い方にまで怒るの? 何か僕おかしなこと言ったかな」
「・・・・・・・・も、いいです」

卓に茶杯を置き、 「どうぞ」 と差し出すと哂い続ける陛下が夕鈴の手を取り謝って来た。
「ごめんね、ちょっと言い過ぎたね」 と小犬の顔で見上げられると、もう夕鈴は怒ることが出来なってしまう。握られた手に力が籠もり夕鈴は慌てて 「本当にいいです!」 と答えるしかない。 夕鈴からのその台詞に小犬陛下は嬉しそうな笑顔でお茶を飲み出した。

「明日には話し合いを終わらせて、さっさと帰って貰うからね。 夕鈴とのいちゃいちゃを披露する機会があればいいんだけど・・・・」
「だっ、・・・・いえ、お仕事第一で頑張って下さい。 やっぱり他国の皇女の前に下っ端妃が姿を見せるのは奇怪しいですもの、ね」

夕鈴が紅い顔で僕を睨むように答えるから、思わず 「ええっ?」 と文句を言ってしまう。
本当に君とのいちゃいちゃぶりを見せることが出来たら諦めてくれると思っているのに。
あの二人の皇女は多数の他国の太子や陛下からの求婚が来ていると聞いているが、どれも素っ気無く断り続けている。 杜南国国王の意思ではなく皇女らの意思で断っているのだから、僕自身が彼女らに嫌われたらいいだけ。
その方が話が早いだろう。 面倒な顔合わせもせずに済む。
その為にも夕鈴と沢山いちゃいちゃしたいと願っているのに、夕鈴は至極真っ当な意見で僕をがっかりさせてくれる。 肩を落として夕鈴を見上げると、紅い顔のまま夕鈴は目をぐるぐるさせ始めた。 

耳を落とし、尻尾を下げて寂しそうな表情をすると・・・・・・・。

「・・・・陛下の休憩時に・・・ 四阿で御茶でも・・・・ 御用意しましょうか?」
「!! うんっ! 明日、四阿でねっ! 池の畔がいいね。 紫陽花が見頃だし!」
 
尻尾を盛大に振り出すと、真赤な顔の夕鈴が小さく頷いた。
ああ、明日の午後休憩が楽しみだ。 さっさと外交交渉を終わらせて時間を作ろうっと。
李順に言っていちゃいちゃしているところを皇女らに見せられるように手筈を整えさせておこう。


満面の笑顔を見せる陛下に、夕鈴も真赤な顔で曖昧な笑顔を見せるしかない。









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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

長編 | 20:00:01 | トラックバック(1) | コメント(0)
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まとめtyaiました【双の華  3】
今、小説に夢中です。ありとあらゆるジャンル。息子が置いて行った文庫にふと目が留まり、毎日1~2冊読み上げています。更に目を酷使して、気付けば目薬買うの忘れていた。明日こ...
2012-06-20 Wed 04:09:08 | まとめwoネタ速neo

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