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溢れない涙   1

夕鈴、痛いです。すいません、痛い度が高いかも、このサイト。夕鈴大好きなんですけどね。本当ごめんなさい(汗)



では、どうぞ








「お妃ちゃん!!」

浩大の声を聞いたのが先か、腕に熱い痛みを感じたのが先か。
傾く景色を見つめながら、夕鈴は短く思案した。



・・・・・・・・




麗らかな風が吹き渡る午後。
大きな池の畔にある四阿で、氾家息女である紅珠とお茶を飲みながら話を楽しんでいた。 ほわほわと花が舞うような紅珠から、隣国の楽士や流行の服など次から次へと万華鏡のように紡ぎ出される話が楽しい。 ふんわりとした雰囲気に心が癒されるようだと 「妃バイト」 の夕鈴は微笑んだ。
駆け引きなしに好意を向けてくる紅珠が可愛らしくて堪らない。
お妃らしい微笑を紅珠に向けると、少しうつむき、頬を染めた紅珠が告げる。

「お妃様とお話していると、時間を忘れてしまいそうになりますわ」
「まあ、紅珠。 わたしも同じことを思っていましたの」

夕鈴の返答を耳にすると、更に頬を赤らめ朝露の中で咲き始めた花のように紅珠は微笑んだ。
《~~~~~くぅう! か、可愛い!》
その時風が吹き、夕鈴の髪飾りの花を攫うようにふわりと落とした。 コロコロと舞い転がる花を見て、風の冷たさを感じた夕鈴は、切り上げるには頃合いかしらと侍女に目くばせする。

「風が出てきたので今日はこの辺にしましょうか。 万が一、貴女が風邪でも召したら大変ですから」

少し屈んで花を拾いながら紅珠に告げると、彼女の背後から花が咲き乱れる幻影が見える。 驚き、知らず口が開いてしまったが、急いで団扇で隠して笑みを浮かべることに成功した。
可愛らしい瞳を潤ませた紅珠から、少し残念そうな色が含んだ返事が返ってくる。

「お妃様。 お優しいですのね。 御心遣い痛み入りますわ。」

いつものお茶会を少し早めにお開きにして、次の約束を交わし紅珠と別れた夕鈴は、後宮へと戻る回廊を歩きながら、この先の予定を頭に浮かべた。
《このまま書庫で整理整頓しようか。 それとも立ち入り禁止区域の掃除をしようか》
書庫で方淵に会う可能性・・・・もちろん火花散る睨み合いが始まる
陛下に捕まり、甘い演技を強要される可能性・・・・人前で私が逃げられないのをいい事に狼演技全開!

「・・・・・」

《・・・・・掃除をしてから部屋でお茶を飲もう》
午後の予定はあっという間に決定した。

「私はこのあと老師様の元へ行きます。 先ほど紅珠より頂いた菓子を持って伺いますので、皆様は部屋にお戻り下さいませ」

後ろに控える侍女に告げ、夕鈴は後宮立ち入り禁止区域へと足を向けた。 菓子を携えて一人足を進めていると、頭上から声が聞こえてくる。 ちょっと驚いたけど聞き慣れた声なのですぐに返答した。

「お妃ちゃんから、いーい匂いがするね」
「紅珠から珍しいお菓子を貰ったから、一緒に食べようかと思って。 さすが氾家御推薦の菓子職人よね、すごっく美味しかったのよ! 妃らしく食べるのが大変だったんだから」

へぇっと頭上から目の前に降り立った浩大は、私が持つ荷物に鼻を近づけて嗅ぎながら、上目遣いに 「陛下なら、お妃ちゃんの作る菓子が一番! って言うだろうね」 と意地悪そうに笑った。
まあ、陛下ならそう言うだろうな。 本当に演技がお上手ですから。
きっと頬が染まっているだろうと自覚しながら浩大を睨む。 意に介さず人の顔を覗き込みながら、しれっとした表情で浩大は へへっと笑った。

「もちろん、俺にも御裾分けはあるよね」
「・・・掃除の邪魔をしないなら・・・」
「しな~い、しない、したこともないっすよ!」

ぷぷっと笑いながら返答する浩大に、わなわなと震えるように拳を上げる。
「やべっ」 と小さく漏らした後、浩大はあっという間に姿を消した。 睨む対象が消え、夕鈴は溜め息を零しながら足を進めた。 その後、浩大がけろっとした顔で現れ、老師と共に菓子を平らげたことは言うまでもない。 怒りながら菓子くずを掃除するのはいつものことだ。 
掃除を終えて着替えながら、夕鈴は今日一日会っていない陛下を思った。

「今日もよく働いたわ~。 政務室通いはしなかったけど、午後は忙しいって李順さんが零していたし、邪魔しちゃ悪いものね。 ・・・・・陛下、頑張っているかなぁ」

李順に叱咤されながら嫌いなデスクワークを強いられている陛下を想像し、可哀想にと思いながら笑ってしまう。 もし陛下が顔を出したら、せめてお茶くらいは飲んで行ってもらいましょうと笑みを零す。

老師に挨拶をして、夕鈴は自室に戻るため回廊に出た。 
薄暗い空模様の外は冷たい風が吹いている。 雲が速く流れていて、空を仰ぎ見ていると急に強くなった風が回廊に流れ込んだ。
煽られて自身の髪が目に掛かりそうになる。 手で遮ろうとした時、頭上から切迫した浩大の声が聞こえてきた。

「お妃ちゃんっ!!」





・・・・






「・・・ごめんっ! ちょっとしくじった!!」

人払いしていることを承知だとはいえ、突然、隠密が飛び込んできた。 浩大が顔色を変え、息を切らしながら口早に告げる。 政務室には陛下と李順のみだった。

「! 夕鈴か! 何があった!! 今何処に居る?」

椅子を倒す勢いで立ち上がった陛下は、獰猛な狼そのものに見えた。 
護衛を任されている浩大の 「しくじり」 は、すなわち夕鈴の命の危機に直結する。 瞬時に政務室が凍りつき、灯が消えたかのような底冷えのする雰囲気に呑まれた。 
冷酷な表情を顕わにした陛下に、渇いた喉を詰まらせながら浩大が告げる。

「立ち入り禁止区域の掃除を終えたお妃ちゃんが後宮に戻る時、これで狙われたんだよね! あ、お妃ちゃんはすぐに老師と侍医に診せている」

浩大が差し出したモノは吹き矢で使われる針。
黒ずんだ針の先から、毒が使用されていると思われた。

「っ!」

陛下の握り締めた拳に更に力が入り、奥歯からはギリッと鈍い音が響いた。 しばらく姿がなかった刺客に油断があったのか。 自身へ詰問しても、いまは始まらない。 それよりも。
李順が 「すぐに毒の成分を調べ、解毒をさせねばなりません」 と告げると衛生兵を呼び出し、針に付着した毒成分を検分するよう至急手配した。
暗器の調べを李順に任せ、陛下は政務室より離れる。
行き先は後宮官吏人老師の元に居る夕鈴のところだ。
浩大と共に移動しながら、現在夕鈴を襲った刺客は追跡中であること。
残っていた吹き筒が特徴ある物ではないこと。
刺客は立ち入り禁止区域から後宮間の回廊を調べていたであろうことなど妃のみを狙っていたということを簡略に報告される。  沸騰しそうな頭の中で、それでも先ほど眼にした針に付けられていた風受けが特徴ある動物の毛であると冷静に思い返していた。








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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

長編 | 22:42:46 | トラックバック(0) | コメント(0)
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