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小夏  2
こんな短い話、ひとつにまとめて短編でも良かったかな?



では、どうぞ












夕鈴が陛下の部屋を訪れてから夜着を脱がし、退室するまで15分も経過していない。
上夜着なので多少は大きいが、夕鈴の希望は叶えらえた。
仕事の邪魔にはならない時間で事を成したと、夕鈴は小さくガッツポーズをした。

希望のモノをゲットした夕鈴は、先ず本当に染み抜き作業を行なった。 絹の夜着に肉汁なんてモノを垂らさせてしまい心苦しく思いながら、次の作業へと取り掛からなければならない。 
すぐに寸法を測り、用意した布地へと落とし、浩大に用意させた裁縫箱から裁ち鋏を取り出し、布を裁断していくと、慣れた手つきで布を縫い合わせていく。


寝所には誰も通さないようにと侍女へ強く念を押して、夕鈴は作業に夢中になっていた。
衣装を繕うのも、作るのも下町では当たり前の作業。 しかし此処は王宮であり夕鈴は 『妃』 の立場。 出自不明ではあるが一応貴族の息女となっているのだから刺繍は兎も角、裁縫等はしてはならないし、出来る息女も余りいないだろう。 夕鈴は夢中になってその作業に取り掛かっていた。

久し振りの針仕事。 それも陛下の衣装作り。
夏に向けて、下町では当たり前の女性の仕事であり、母代わりをしてきた夕鈴は日々成長する青慎の為に毎年行なってきた衣装作りだ。 買うこともあるが作った方が早くて安いこともあり、手馴れたもの。 ただやはり素人の手縫い作業のため、国王様が着る衣装としては格段下がる品にはなるだろう。 でも其処は気持ちだからと一針一針、心を込めて縫っていった。

身長の高い陛下の為の品なので布地も多く丁寧に縫うため思ったより時間が掛かってしまう。

それでも夢中になると何時しか時間を忘れて針を動かしていた。
侍女が 「お妃様、お茶を」 と声を掛け来ても 「今は暫らくは結構ですので」 とやんわり断り、時間を惜しんで針を動かし続け、この作業は既に三日目だ。




「お妃ちゃん、今日はそれまでにしないと陛下が来る時間だよ。 それに遅い時間だし、蝋燭の明かりじゃ目が悪くなっちゃうよ」
「え? ええっ! 浩大っ!!」

浩大の目から隠そうとして慌てる夕鈴に、 「大丈夫だよ、言わないよ」 と哂ってくれたが夕鈴は信用出来ないと浩大を睨ねつけた。 一応陛下には内緒にしておきたい作業。
針山を片付け終えてから浩大に問い掛ける。

「何をしてるのか・・・・ 判っちゃった?」
「まあ、へーかが喜ぶことだろうとは思うけど、まあ、無理しないでね。 お妃ちゃんは根詰めちゃうタイプだからさ~」

のんびり言われると肩の力が抜ける。 くすりと笑い、浩大の分も作ろうかと思ってしまう。
隠密らしい衣装ばかり見ているから、普段着る衣装が有るのか無いのか判らないけれど、休日に来て貰えたら嬉しいかもと夕鈴は思った。 
何だかんだ言ってもお世話になっているなと彼の身体を見つめた。 青慎くらいかしらとサイズを測らずとも仕上げられそうな気がして布地はどうしようかしらと考え始めると、寝所の向こうから侍女が声を掛けてきた。

「お妃様、陛下がいらっしゃいましたが・・・・ 御出になられますでしょうか?」
「あ、はい。 直ぐに!」

寝所から出て姿を見せると、陛下が笑顔で椅子に座っているのを確認する。  
『もう少しだ』   
夕鈴が出来上がった衣装を着て貰えるかしらと微笑んで茶器の用意をすると陛下が夕鈴の腕をやんわりと掴んだ。 後ろを振り向くと侍女の姿は既に無い。

「ねえ、夕鈴。さっき浩大が来てたでしょ? 何か用事?」
「いいえ、ただそろそろ陛下が来る時間だよって教えに来てくれたんです。 ついでにお菓子も持っていかれましたけど」

くすくす笑って陛下に答えると、掴まれていた腕から陛下の手が離れる。 
長椅子の背凭れに身体を預けて陛下が苦笑するので、何故そんなことを聞かれたたのだろうと首を傾げると 「何でもないから、気にしないで」 と言われた。
陛下の焼きもちなんて夕鈴には届かない。
夕鈴の表情に苦笑するしかない陛下は、肩を竦めてお茶を淹れる夕鈴を見つめていた。


どうして浩大が部屋に来たのを知っているのかは兎も角、夕鈴は内緒の作業が気付かれなかったことだけに安堵した。 このまま頑張れば明日には出来上がる。
絹の布地を用意することは出来ないが、それでも夏用に上質の本麻の布地を奮発して用意して貰った。 借金に足して貰ったため心情はとても苦しいが、それでも気持ちを込めて贈りたいと用意して貰った布地。 独特の光沢とシャリ感が良く、放熱性があるため夏には重宝するだろうと、夜着代わりに着て貰えたらと心を込めて仕立てていた。

夕鈴が陛下にお茶を差し出すと、ほっこり笑顔の陛下が 「ありがとう」 と微笑んでいる。

「まだお仕事ですか? まだ夜は寒いですので冷えないようにちゃんと上着を羽織って、温かい飲み物を用意して、出来れば早めに御就寝下さいね」

夕鈴がそう伝えると卓上できゅっと手を握られる。 瞬時に真赤に染まった夕鈴の顔に満足して陛下は  「もう少しだけ頑張って夕鈴の言うとおりに寝ることにするよ」  と笑ってくれた。

昼間は梅雨が過ぎたためか、時に強い日差しにクラリとするほど暑さを感じ洗濯物があっという間に乾くだろうなと空を眺めてしまうほどだった。 しかし、夕方になると日中とは打って変わって涼しさを感じ、夜は肌掛けだけではまだ少し寒さを感じるほどだ。

そう思うと、夕鈴は明日出来上がる予定の夜着代わりに着て欲しい衣を陛下にすぐに渡していいものか悩み始めた。 湯上がりにはいいだろうが、そのまま夜着として着るには風邪を召してしまうかも知れない。
渡すのは、もう少し暑くなってからの方がいいかも知れない。
でも、もう直ぐに出来上がるのに渡せないのは・・・・・。

何時の間にか俯いて、ぶつぶつと小声で呟き始めた夕鈴に陛下が声を掛けるも、夕鈴からの返事はない。 夕鈴は 腕を組み眉間に皺を寄せて深く考え始めてしまった。

「・・・・内重ねを付ける? いや、折角のシャリ感が勿体無いわね。 あとで外せるように・・・・。 いや、布地に跡がつくのは・・・・ 直ぐに暑くなるだろうし、暫らく渡さない方がいいのかな? ・・・・でもあと少しで渡せるまで頑張ったのに」
「何があと少しなの?」
「はぁ・・・。 陛下に渡す予定の夏用衣装よ・・・・・」

大きな溜息を吐く夕鈴は未だぶつぶつ呟いている。 夕鈴は直ぐに渡せる衣装に出来ないものかを深く深く考えていて、陛下に 『内緒の贈り物』 を自ら暴露したことを解かっていない。
 

夕鈴の台詞に大きく眼を見張った陛下は 頭の中で夕鈴の台詞を復唱してみた。


・・・・・夕鈴が、 僕の、 夏用の、 衣装を・・・・・


ぱあっと満面の笑顔を見せる陛下は、腕を組みうんうん唸っている夕鈴を背後から思い切り抱き締めた。 突然の抱擁に叫び声を上げようとした夕鈴の口元を大きな手で覆い、もう一度ぎゅっと抱き締める。 抱き締めた夕鈴の体が大きく震え、そして真赤な顔が振り向くと身体を束縛する陛下を涙目で睨み付ける。

・・・・・ああ、どうしよう。 可愛くって、嬉しくってこのまま口付けしたくなる!


「夕鈴、その衣装見たいな~!! もう少しで渡せるって何処まで出来たの? 手作り夕餉も、おやつもすごっく嬉しいのに、その上、僕の衣装だなんてっ! 本当に夕鈴は最高のお嫁さんだねっ!! 僕、幸せだよっ!」

ぎゅっと強く抱き締めて、嬉しさの余りについ大きくなりそうな声を抑えて耳元で話し出すと、夕鈴の身体が固まっていることに気付いた。
手の中で夕鈴の唇が戦慄いていることに気付き、そっと覆っていた手を離すと。

「な、な、なんで・・・・ 何で知っているの? なんで?」
「夕鈴、今 呟いていたよ。 『もう少しで渡せるのに』 って。 だから 『何があと少し?』 って聞いたら、僕の夏用の衣装だって。 嬉しいよ、夕鈴!」

そして耳元で 「ねえ、見たいな~、寝所にあるの?」 と尋ねると、夕鈴の身体が更に固まった。 僕の腕を掴む夕鈴の手が震えているけれど、強い力で引き離しにかかっているのが判り、素直に束縛を解き放つと、夕鈴はそのまま少し進んで卓に手を付き溜息を吐いた。

「・・・・完成したらお渡しします。 それまでは駄目です・・・・」
「えええ~~っ! もう少しってどの位? 楽しみ過ぎて待てないよ、夕鈴っ!」

小犬が盛大に尻尾を振るが、真赤な顔の夕鈴は項垂れたまま首を横に振る。
諦めきれないから尻尾を振りつつ卓上の夕鈴の手に自分の手を重ねて、小さい声で、でも狼を混ぜながら耳元へと囁くようにお願いをする。

「奥さんの手作りを一刻でも早く、この目に焼き付けたいのだが。 ・・・・夕鈴。 駄目?」
「・・・・っ!! あ、で、でも・・・・」
「頼むよ、夕鈴。 ・・・・・お願いだ」

耳朶に唇を掠めながらお願いを繰り返すと、夕鈴は膝から崩れるように脱力した。
陛下が直ぐに後ろから夕鈴のお腹を抱き締めて抱え上げると、全身を小刻みに震わせながら深紅に染まった夕鈴が振り返り、睨み付けて来た。

・・・・・・あ、これは。

羞恥だけで深紅に染まっているのではないと気付いた時には遅かった。

「~~~~っ! もっ、もう、出てって下さいっ!!待ってって言ってるでしょ!? そこで演技って・・・っ! へっ、陛下の馬鹿~~~~~~っ!!!!」
「ごっ、ごめん、夕鈴! ちょっ、楽しみ過ぎてっ!」
「知りませんっ! 出て行ってっ! じゃないと・・・・ もう、何も作りませんっ!」
「っ!! そ、それは!」
「出て行って~~~~~~っ!!!!!!!」



夕鈴の逆鱗に触れた陛下は、それ以上言葉を発することが出来なくなり、真っ青になりながら静かに夕鈴の部屋を退室するしかない。 嬉しさの天辺から一気に地面にのめり込んだ悲しさを政務室で発散させるしかなかった。



次の日に出来上がるといっていた衣装は、遅れること2週間。
熱帯夜が始まる夜にやっと陛下へと届けられた。









FIN


 
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

長編 | 22:05:20 | トラックバック(1) | コメント(4)
コメント
結局…
夕鈴ったら、独り言だだもれですね折角、浩大黙っててくれたのにね

結局、浩大には作ってあげたのかしら?浩大に休みは無さそうだけど、変装とかには使えそうですしね陛下にばれたら、没収されそうだけど
2012-06-30 土 23:33:45 | URL | ともぞう [編集]
Re: 結局…
ああ、放置していた(汗) やっぱり作ってあげようかな? 着たところを見たら陛下がブチ切れそうだけどね。それはそれで楽しいかも!! その場合、浩大にねちねちと嫌味かな? それとも夕鈴にねちねちとイジケタ文句かしらね~。
2012-07-03 火 09:21:40 | URL | あお [編集]
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このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-07-03 火 14:48:33 | | [編集]
こんばんは。
私は裁縫が全く、全然、本当に駄目なんです。 中学時代にミシン針貫通させてるし、見かねた母親が全ての作品を仕上げていたし(母は洋裁学校卒)。ただし、中学の家庭科の先生は母の同級生。もちろん、直ぐにばれて電話で怒られていた。(爆)

今、娘がミシンに夢中でホビーショーにも毎年行っているし、全国工業機械ミシンコンクールなるものにも作品を出品してます。何故、私の娘がミシンを?と時々思いますけどね。

陛下、ちゃんと洗うんだよー。汗臭いと嫌われるよー。
2012-07-05 木 01:55:50 | URL | あお [編集]
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まとめtyaiました【小夏  2】
こんな短い話、ひとつにまとめて短編でも良かったかな?では、どうぞ
2012-07-02 Mon 10:36:36 | まとめwoネタ速neo

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