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飾り付けた鎖を君に  1
今回オリジナルキャラが出てきます。
大丈夫だよという方のみ、御了承の上ご覧下さい。





では、どうぞ














梅雨も去り初夏の日差しが降り注ぐ頃、城下町の商店では旬の野菜や果物が所狭しと軒先に並べられ、買い物に訪れる人の目を楽しませていた。 もちろん主婦の目は厳しく、旬の品を吟味しながら店主との値段の駆け引きも活気に溢れていた。
夕鈴も下町に居た頃は毎日夕方になる頃に、少しでも安く買い叩きに商店を梯子していただろうと卓上の豪華な食事を見ながらふと思い出していたところだ。 
未だに如何食べたらいいのか作法に戸惑う食事や品があり 李順に尋ねなければならないことが多々ある 『臨時花嫁』 は、ストレス解消に実家に帰り、思いきり主婦がしたい・・・と窓の外をそっと眺めた。



そんな折、峯山国から使節団が来ることになり、その際には夕鈴も妃として謁見の間に赴くとなった。 使節団との謁見に下っ端妃の夕鈴は普段は顔を見せないが、今回は妃である夕鈴にも献上品があると伝えられ、尚且つ 是非に直接お渡ししたいと申し出があったためだ。
多くの鉄山を所有する峯山国との貿易。
今後も友好的に長く続けたいと思う李順は、あっさりとその申し出を承諾した。

驚いたのは夕鈴の方だ。

最初は他国に見せられる顔じゃないですから!と、必死に断っていたが上司命令には従わざるを得ない。 『臨時花嫁』 は他国に対しても 『狼陛下唯一の妃』 としての演技を要求されることとなる。
夕鈴が蒼褪めようが、深紅に染まろうが、友好関係を継続したい国からの希望なのだから致し方が無いだろうと李順さんに睨まれると、それ以上は何も言えなくなる。
夕鈴は深い溜息を吐き、諦めることに・・・・ いや、諦めざるを得なかった。
陛下だけが 「夕鈴を他の奴らに見せるのは嫌だな」 と顰め面を呈していたが。

「珠には夕鈴殿を飾り付けて周囲へと牽制するのも必要では? 最近少々だれている感がありますし。 陛下が如何しても出すことを拒否するなら、それでも構いませんが・・・・」

李順がそう言うと、瞬時目を伏せた陛下は明るい表情で頷いた。

「そうだね、夕鈴の着飾った姿、見てみたいな!!」
「げぇっ! 陛下、離宮で見たじゃないですかっ! あれと一緒ですよ! 一般庶民には気後れするような豪華な衣装なんて、もう二度と・・・・」
「___李順、離宮での衣装より豪華な衣装を用意するように。 そうだな、夫婦一緒の柄の腰帯なんていいかもっ! らぶらぶアピールして他国へも牽制しておこうね、ゆーりん!!」

李順が一瞬嫌な顔をしたように見えたが、満面の笑みで書簡を手にする陛下を見ると小さく溜息を吐く。 夕鈴が蒼褪めた顔でふるふると首を横にするも、李順は 「御意」と応えて執務室を出て行った。 
蒼褪めたままの夕鈴は陛下を振り返ると、「衣装、楽しみだね」 と微笑まれてしまう。
やっぱり参加なのかと肩を落とす夕鈴だが、仕事と言われてしまうと断れない身の上。

夕鈴は一拍後、プロ妃として頑張るしかない!!と、気持ちを切り替えて涙目で顔を上げた。









峯山国から使者が来る日まであと十二日と迫った頃。
李順から今までにない程の厳しい 『お妃教育』 を受ける夕鈴は涙目で過ごす日々が続き、徐々に仕草や言葉使いが今までよりも貴族の子女らしく演技出来るようになっていた。
それでも厳しい李順からの合格は貰えず、普段から演技をするように厳命された。

「寝るまでですか!?」
「寝ている時もです! 常に妃らしい演技を身につけるためには指先まで気を遣うんです。 表面だけではなく、内面まで演技なさい!」
「・・・・はい・・・」

侍女がいない時も、掃除婦をしている時も、湯殿でも、寝所で眠りに落ちるその瞬間まで夕鈴は必死に 『プロお妃』 演技を続けた。 もちろん陛下が部屋に訪れた時もだ。
姿勢を正して茶器を用意し、瞳を伏せて陛下にそっと茶杯を差し出す。 そして微笑みながら陛下を見つめ、静かに椅子に腰掛けた。 その様子に陛下が茶杯を持ち上げながら面白くなさそうに夕鈴を見る。

「ゆーりん、侍女は下がらせたから演技は終了していいよ?」
「演技だなんて悲しいことを・・・・ 陛下の妃として私は至らないのでしょうか? 陛下の御心に添えない私の何処がお気に召さないか、御教え下さいませ」

夕鈴は口元に袖を宛がい、よよよっと卓に縋るように片手を着いた。 
夕鈴の台詞と仕草に目を見開いた陛下が肩を震わせ始め、顔が真赤に染まり出す。 
夕鈴が 「ん?」 っと陛下を見ると、陛下の口が大きく戦慄き出した。 息も絶え絶えに腹を押さえて長椅子でのた打ち回り始めた陛下は 「ゆ、夕鈴、・・・すごっく、お、面白いよ」 と涙を零しながら震え始めた。

そんな陛下を見下ろす夕鈴の目が細まり、部屋には冷やかな空気が静かに、音も無く静かに足元から立ち込め始めると、漸くその様子に気付いた陛下が震え続ける身体を必死に押えて涙を拭って夕鈴に謝る・・・・・・・・・・が。

「陛下・・・・、今わたしくは妃として耐えておりますわ。 ええ、陛下がお喜びになるのでしたら多少のことは気にしませんわ。 ええ、・・・・・多少のことは」
「ほ、本当にごめんねっ! すごっく頑張っているのは知ってるよ、うん。 今ちょっと僕のツボに入っただけで、夕鈴の演技はすごっく上手だよ!!」
「・・・・面白いと仰いましたね。 面白いと・・・・。 わたくし、良く覚えて置きますわ。 陛下の正直なお気持ちとして受け止めておきますわ」
「ゆ、夕鈴! 謝るからっ!  ごめ、ご免なさいっ!」

お妃らしい微笑みを絶やさずに夕鈴は部屋の入り口を指差した。
陛下は蒼白な表情で夕鈴が指差した部屋の入り口を見て肩を落とし、長椅子からのろのろと身体を起こすと、駄目元で尻尾と耳を下げて夕鈴を見つめた。
しかし、微笑んだままの夕鈴は入り口を指した指をもう一度強く指差し、首を傾ける。 
大きな溜息を吐いて陛下は 「ゆーりんの演技、本当に上手だよ」 と伝えるも無言の夕鈴は微笑んだままだった。 青筋がくっきりと浮かんだ笑顔で。




 




  






峯山国の使者が到着する日。
いつもより豪華な衣装を整えることになったため、国王陛下唯一の妃として侍女が時間を掛けて夕鈴を着飾った。 夕鈴が帯のきつさに呻こうが、頭の重さに呻こうが、それよりもどの様に妃を飾ろうかと思案しながら、何度も離れては衣装を確認し、様々な香油を確認し化粧を施して行った。 されるがままで居るだけなのに痩せる思いの夕鈴は小さな溜息さえ吐く暇が無く、衣装が整うと執務室へと足を運ぶように侍女に押し出された。

夕鈴は緊張しながら回廊を歩く。 
それでも連日の李順の厳しい教育の賜物か、いつもより重い衣装を身に纏いながらも夕鈴は御しとやかに足を運ぶことが出来た。 裾を上手く捌きながら悠然と歩く妃の姿に峯山国使節団の訪れの対応に追われている官吏も足を止めて、呆けた顔を呈し見惚れるほどだった。

夕鈴は執務室の陛下の元へと姿を見せる。
妃に付き従って共に来た侍女は着飾った妃へと向ける陛下の視線を確認すると、満足そうな表情で退がって行く。 侍女が退がった後、椅子より立ち上がった陛下は夕鈴に近寄ると本当に嬉しそうな顔を見せた。

「わあ、夕鈴綺麗だね!」
「・・・・頭が重い上に、衣装が凄すぎて動けません・・・・」
「じゃあ、僕 抱っこしてあげようか?」
「莫迦なことを言わないで下さい!!」

眼鏡を上げた李順が夕鈴の全身を確認して、小さく息を吐いた。
背を正し何を言われるのだろうと夕鈴が緊張していると、李順は静かに頷いた。

「良いですね、夕鈴殿。 この衣装は特注で仕立ててあります。 急ぎとはいえ、その道の職人が丹精込めて手間暇掛けて仕立てた布地を使用した最高級品。 もしも・・・・・ もしも汚したら・・・・・・ 」
 
李順の眼鏡が白く光り、夕鈴を震え上がらせる。

「はっ、はいっ!! 李順さん、判っております! 絶対に汚しませんからっ!」
「・・・・李順、衣装の汚れなんか問題ないだろう。 夕鈴、それより本当に似合うよ。 すごっく綺麗だし、色合いが夕鈴に合うね。 本当に妃らしいよ。」

陛下は纏め上げた髪を崩さないように、夕鈴の頭をふんわりと撫でた。
夕鈴が顔を上げるとその耳元で銀の耳飾が涼やかな音を立てる。 銀の簪で緩やかに纏め上げられた髪はいつもの夕鈴より大人びて見せていた。 

緩やかに纏められては居るが、そこは侍女の腕の見せ所。 銀の簪が緩やかに纏めた幾つもの髪の束を其々綺麗にまとめ、一際大きな銀の簪がそれらを一箇所に集めて留める。 その大きな簪には飾りが下がり、少し頭を動かすだけで涼やかな音を奏でる。
纏め上げられているので、いつも捉えるべき耳元の髪もなくすっきりと項を見せている。
普段髪で隠れている分 項の白い肌が見えて触れたくなる程艶かしい。
鎖骨が見えそうなほどの衣装で普段よりも大人びて見える。 腰帯は陛下とお揃いの柄で、一緒がいいと陛下が希望した品。
柄は商人に任せていたが選ばれた柄は 比翼の鳥。
その柄に陛下の顔に笑みが零れたのは言うまでも無い。


いつもは無地に近い衣装が多いが、今回は他国への牽制もあるのか華やかな衣装を着せられていた。 吊帯長裙は紅紫色で薄い布地のものが幾重にも重ねられ華やかな仕立てだ。
細かな花々の刺繍が施されており、金糸の他 淡水真珠が縫い付けられている。 
それを知った時から夕鈴は容易に裾を持ち上げることも出来なくなり、いつものように歩くことも、座ることも出来ない状態だった。 長衣は紅紫色で吊帯長裙と同系だが、それよりも淡い色合いの素晴らしい品で夕鈴は自分には似合わないだろうと溜息しか出てこない。 こちらも薄い布地が重ねられており、薄地の絹に豪華な文様が織り込まれている。 
織り糸には金糸銀糸が織り込まれており、いくら爪を切っても何処を摘めばいいのか戸惑ってしまうほどだ。 それに衣装自体が重く、動きが取れない。

いや、妃は大人しく座っているだけの存在で、華やかに着飾れば着飾るほど、身動きが取れないほどの衣装になるのは判る。 しかしバイト妃はその上に、借金の追加になるかもしれない粗忽な自分自身にも恐怖を抱いていた。 
笑顔は強張るし、緊張の余り妃らしい歩き方さえ出来るか心配になっていた。

陛下も同じように豪華な衣装に身を包んでいるが、慣れているのだろう。
花恵宴の時のように滑らかな動きでくるくると私の周りを歩いている。
・・・・私も陛下の衣装をよく見たいのに。
夕鈴が顔を上げると、簪からまた涼やかな音がした。







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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

長編 | 23:45:06 | トラックバック(1) | コメント(2)
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2016-09-18 日 19:19:39 | | [編集]
Re: タイトルなし
のん様、コメントをありがとう御座います。そして返事が遅くなり、本当に申し訳ありません。(土下座!!) 痛い話が多くて、自分でも見直すたびにそう思います。誤字の多さや文脈のなさに、時折見直すのですが、同じように夕鈴痛い痛いが多くて、可哀想と思います(本当か?自分)
「すごっく」・・・・妙、ですか? なまり、かも知れない。「とても」か「すごく」に直した方がいいかな? 時間を見繕って、頑張ります。御意見、ありがとう御座います。
2016-10-06 木 20:47:43 | URL | あお [編集]
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まとめtyaiました【飾り付けた鎖を君に  1】
今回オリジナルキャラが出てきます。大丈夫だよという方のみ、御了承の上ご覧下さい。では、どうぞ
2012-07-03 Tue 23:37:46 | まとめwoネタ速neo

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