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飾り付けた鎖を君に  2
ようやくオリジナルキャラ登場です。 リクエストの話しなので、「双の華」と流れが酷似してますが、気にならないわよという方のみ御覧下さいませ。 本当に、リクエストって・・・難しいです。
お気に召しますように・・・・(祈)




では、どうぞ
















峯山国使節団は総勢三十名にもなろうかという団体で白陽国へ訪れた。
4頭立ての豪奢な馬車が3台と、その馬車を囲むように騎馬兵ら、そして使節団員らが静々と白陽国王宮の大門を通過し入って来た。 全ての者が王宮に入ると、馬から降りた使節団の一人が王宮を見上げ、片側の口角を持ち上げる。 
彼は小さく何かを呟くが 誰も其れを耳にしなかった。




謁見の間に夕鈴は緊張を隠しきれない表情で陛下と姿を見せる。
あれだけ厳しい李順からの 『お妃教育』 を受けたというのに、いざ本番となると指先から血の気が失せて冷たく震え始めた。

『ほ、本当の妃でもないのに・・・い、いいのかしら? 他国の使者様の前に顔を出してもいいの? いや、駄目だろう!? か、顔が固まっちゃう!!!』

足が竦んでしまい陛下と共に高座に上がりたいのに足が言うことを聞かない。 
固まった笑顔のまま小刻みに震えてしまう自分の足に必死に命令を送るがちっとも言うことを聞いてくれないのだ。 すると陛下が夕鈴へと手を差し出し、おずおずと差し出した夕鈴の手を力強く引き寄せた。 身体が前のめりになるほど強く引き寄せた陛下は夕鈴の身体をやんわりと受け止め、そのまま耳元で小さく囁きを落とす。

「夕鈴は黙って側に居るだけでいいんだよ。 団扇で顔を隠して黙っていてね。 心配ないよ、大丈夫だから。 直ぐに終わらせるよ」
「は、はいっ! すいません、緊張して・・・・ 折角演技の勉強したのに無駄になるところでした。 妃らしく微笑んでますから・・・・」
「・・・・・微笑んでは駄目だ・・・・・」

囁くような小犬の優しい声が急に変わり夕鈴は驚いた。 耳元で低く響く狼陛下の声に背筋がぞわっとするが、それよりも囁かれた言葉の意味が判らないと、夕鈴は陛下を見上げた。
狼陛下の紅い瞳が夕鈴の顔を正面から見取り、真摯な表情で 「笑うな」 と告げる。 
「何故でしょうか?」 と首を少し傾げるとまた耳元に低い声が響く。

「私以外に微笑むことは禁ずる・・・・」
「・・・・・微笑むことで陛下の妃を演じるように言われておりますが?」
「君の微笑みは私だけのものだから、他の男に見せたくは無い」
「・・・・・・・っ!」

瞬時に真赤に染まり俯く夕鈴の頤を持ち上げ、妖艶な笑みを見せると兎は団扇で顔を隠しながら こくこくと何度も頷いた。 その仕草に更に笑みを浮かべていると、夕鈴の顔といわず、耳や首、団扇を持つ指先まで深紅に染まり出してしまう。 
夕鈴の頷きを確認し、そっと頤から手を離して陛下は椅子に深く腰掛けた。
傍らに立つ夕鈴は団扇で隠した口元が戦慄くのを堪えながら涙目で睨み付けるも、陛下は満足した顔で峯山国の使節団を招きいれるように衛兵に指示を出す。


謁見の間に姿を見せた峯山国の使節団は皆、白い衣装を身に纏い、使節団長と使節副団長の二人だけは襟元に金糸の龍の刺繍が入った豪奢な衣装を着ていた。 陛下の座る高座の前に悠然と近寄り、拱手した使節団長は壮年の顎鬚を蓄えた人物だ。

「此度は新たな国交間貿易に関しての詳細を話し合うための場を、白陽国に設けて頂き、有り難う御座います。 貴国との交流が今後も円滑に執り行えるよう、今回も宜しくお願い申し上げます。 まずは白陽国国王陛下へ献上品を・・・・。 こちらが目録で御座います。 御確認を」

使節団長の威厳ある響く声が謁見の間に流れる。
紅い瞳を薄く開いたまま陛下はその目録を李順に受け取らせ、使節団に告げる。

「峯山国の使者殿、長旅でお疲れだろう。 まずは身体を休ませ、その後会議を執り行うこととしよう。 峯山国の方々を払暁殿へ案内せよ」
「・・・・陛下、少し御時間を頂きたくお願い致します」

使節団長の背後に控えていた青年が、陛下に恭しく頭を垂れながら良く通る声で話し出した。

「お目にかかれ恐悦至極に存じ上げます。 今回、峯山国使節団副団長として同行しております 余琉保と申します。 此度は陛下唯一の御妃様へ、献上品が御座います。 お受け取り頂けましたら、我ら一同至福の喜びで御座います」

静かに顔を上げた青年は日に焼けた精悍な顔を高座の二人に向けた。
前髪が揺れると癖のある髪がふんわりと額で動き、その下の涼しげな瞳に影を落とす。 少し垂れ目のためか柔和な感じを醸し出しているが、白い官吏服の下は逞しい体躯である事が外見からも判るほどだった。 その副団長である青年は夕鈴を見つめると、目を細めて微笑む。

夕鈴はその笑みに一瞬体が固まったが 『え、演技よっ! 妃演技っ!』 と正気を取り戻し、団扇で口元を隠しつつ少しだけ首を傾け、無言のまま会釈した。
その夕鈴の仕草に陛下はちらりと目を遣ると、すっと手を伸ばして傍らの夕鈴の手を掴んだ。
指を絡めて愛しそうに夕鈴を見つめながら妖艶な笑みを浮かべる。 その笑みに夕鈴は演技を忘れそうになる自分を律するのが辛いほどだった。 真っ赤にならないように腹に力を入れて肩に力が入るのを堪える。 それでも絡めた指が震えるのは止めることは出来ない。

『ぎゃああっ! 陛下ったら何で今そんな事を!? そうか、え、演技よね!? そう、ラブラブな仲良し夫婦アピールの演技ぃー!!』

笑みを絶やさず陛下を見つめていたが、夕鈴はそろそろ限界だと思った。 
団扇で隠している口が震え始めたので唇を強く噛んでしまい、口中に血の味が広がり その痛さに涙が滲み出てきたのだ。 それに気付いたのか、ゆっくりと夕鈴から手を離した陛下は使節団に向き直り礼を伝える。

「我が妃にまで献上品とは、有り難く頂くとしよう。 ではごゆるりと休まれるがいい。 あとは李順、任せた。 一刻後に会議を開始するとしよう」

李順は陛下の言葉に短く了承の意を伝えるが、陛下の昏い笑みの意味を知り溜息を吐きたくなっていた。 遠目で見ても夕鈴殿が翻弄されて小刻みに震えているのが判り、アピールの方向性をこの場で指摘したくなる。 それでも峯山国の使節団からは呆れた顔は見られず、李順も真面目な顔で使節団を払暁殿へ案内しようと足を踏み出した。 

その時。

「陛下、献上品はまだ御座います。 貴国との国交を更に友好にするべく、我が国一番の宝を陛下に御贈りさせて頂きます。   ・・・・・此れに」

副団長が背後に目配せをすると、夕鈴が実は先程から気になっていた縦長の品が台車に曳かれて副団長の横に置かれた。 使節団と共に台車に曳かれて謁見の間に入って来た其れは、人一人が入れるのではないかと思うほどの高さがあり、縦長の箱のようなものに白い絹布が覆い被さっている。

副団長が笑みを浮かべて、恭しくその絹布を引くと其処には一人の女性が立っていた。
濃紺の衣装を身に纏い、黒檀のような長い黒髪が片側に流れ、真白い肌に紅い唇の美しい女性が金の支柱に掴まり微笑んでいる。 副団長がゆっくりと立ち上がり支柱に掴まる女性に手を差し出すと、女性は優雅に手を重ねて足を差し出した。
二人が並ぶと真っ白な衣装の副団長と濃紺の衣装の女性が一枚の絵のように美しく、夕鈴は思わず見惚れてしまうほどだった。 李順からの咳払いがなければ団扇が下がっていた事にも気付かずに、そのまま口を開けているのを見られるところだった。
宰相と氾大臣、柳大臣らは無表情だったが、他の大臣らは一体何事かと、あの女性はもしやと、ざわめき出した。 予定に無かった女性の登場。 それも豪華な衣装と美しい容姿。

女性と副団長が陛下の御前に静かに傅くと、陛下は足を組んで見下ろした。

「余殿、此れは何の余興かな?」
「陛下、この御方は峯山国第一皇女、梓蘭様で御座います。 陛下には御妃様が未だお一人と聞き、我が国の宝を献上させて頂きたく、このように御連れ致しました。 両国の国交が更により良いものと成るように、『正妃候補』 として此方の後宮に召し上がらせて頂きたく存じます」


皇女が拱手していた袖から顔を上げると、物凄く美しい女性だと判った。
真白い肌は日に当たったことなど無いようで陶器のように滑らかな肌をしており、その肌とは対照的な艶やかな赤い唇に目が奪われる。 長い睫に囲まれた瞳は潤んでおり陛下をじっと熱く見つめている。 肩に掛かった美しい黒髪が震え、皇女の胸の高まりを伝えていた。
皇女の瞳は真っ直ぐに陛下を捉え、うっとりと見つめているのが見て取れる。 息を詰め陛下を見つめ続ける皇女の耳元で大きな琥珀の耳飾がゆらりと揺れるのを、夕鈴は眼にした。

その皇女と夕鈴の様子を気にすることなく、副団長が皇女を乗せていた台車を振り返る。
 
「此方の支柱は金で御座います。 皇女と共に陛下に献上致します。 我が国の宝、梓蘭様を末永く御可愛がって頂けますよう我ら一同心より、切に・・・・・」
「____余殿」

紅い瞳が細まり、口角を持ち上げた陛下はゆらりと立ち上がると副団長余琉保を見下ろした。
副団長は表情を変えずにその視線を受け止めると、静かに頭を下げた。

「此度は国交間での新たな輸出入に関しての話し合いの筈。 皇女の件は聞いていない。 それに我が妃は一人でよい。 ・・・・・その話は聞かなかったことにしよう」
「陛下、御妃様は御一人で良いとのこと。 しかし正妃となれば話は別で・・・」
「李順・・・・・・」

踵を返した陛下は夕鈴の腰を掴むと、高座からゆっくりと離れ出した。 名を呼ばれた李順が陛下に拱手し、使節団へと払暁殿の案内を始めたが、皇女は頬を染めながら場を離れていく陛下だけを見つめ続けている。 傍らの夕鈴の姿など全く目に入っていない様子だった。 反対に、副団長は陛下と共に謁見の間を離れようとする蒼褪めた顔の妃を見ると小さく舌を出して唇を舐めている。
 
背後で大きな溜息を吐くのは使節団長。 
壮年の団長は陛下の表情が落ち着いていたことに心から安堵し、今回の国交間会議の行く末を案じた。 以前の話し合い時には白陽国はまだ内乱収束直後で国内が治まり切っておらず、それでも両国にとってより良い貿易草案を提示した陛下に信頼に値すると団長の権限を使い先々代からの輸出入を継続した。 最初は若輩な陛下を甘くみて痛い目に遭いそうだった事を 背を震わせて思い出す。 此方の言い分を黙って聞いていた陛下は、次の日には打開策を講じ、やり込められそうになった。
その時の紅い瞳と迫力ある表情が脳裏に浮かび、団長は副団長に目を移した。


副団長琉保は皇女梓蘭を立たせると、その手を携えながら払暁殿へと歩き始めていた。








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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

長編 | 16:14:29 | トラックバック(0) | コメント(0)
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