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飾り付けた鎖を君に  4

あら、長くなりそうです。 「双の華」ベースなので長くなりそうなのは自分でも判っていましたが、お付き合い下さる方は大変かも。すいません。気が長い方のみ、お付き合い下さいませ。しかも今回は陛下登場なしの話です。どうしても出て来れないので、御了承してくれる方のみお読み下さい。
本当に長くなる予定ですのでご勘弁を!!



では、どうぞ





 










次の日、部屋で過ごしていた夕鈴の許へ、侍女が 「李順殿が御呼びで御座います」 と告げた。 何だろうと首を傾げながら李順が居る政務室に赴くと、李順が直ぐに夕鈴の側にやって来て小声で執務室へ移動するように伝えて来る。


「大変申し上げ難いのですが実は・・・・ 皇女様が夕鈴殿と四阿にてお茶を楽しみたいと申されております。 陛下唯一の妃という立場の貴女ですので 『バイト』 とは気付かれぬように 充分気をつけて御相手をして下さい」
「え・・・・ ええええ!? む、無理ですよ。 一国の皇女、それも第一皇女ですよ? 一般庶民の私に どんな話が出来るって言うんですかっ! 無理ですっ! それに梓蘭皇女様は 正妃候補と峯山国使節団の方が・・・・・」

ふうっと溜息を吐き、李順が眼鏡を持ち上げる。 

「正妃候補と言っても、今の陛下に妃を勧める訳には行きません。 陛下もその気がありませんしね。 峯山国使節団との話し合いの間だけですので、まあ、氾家ご息女を相手したように上手く相手をして下さい」
「で、でも李順さん・・・・ 紅珠とは事情が・・・」

涙目で李順を見上げるも、決まった事だからという雰囲気を醸しだされ夕鈴は瞑目した。
四阿であの妖艶な彼女とお茶を楽しまなければならないのか・・・・。 

今此処に紅珠がいてくれたら。
貴族らしい機知にとんだ話をする峯山国皇女と氾家息女を微笑んで見ることが出来るのに。 
今の夕鈴では持て成すどころか、いつボロを出してしまうか恐怖で身が竦んでしまう。

ばれないように・・・・。

もう、あとは祈るしかない。







侍女にお茶を用意して貰い、老師が涎を垂らして欲しがるだろう高級な菓子も出す。
夕鈴は出来るだけ御しとやかに四阿の椅子へと腰掛けた。 卓を挟んで向かい側に皇女梓蘭が腰掛け、横に使節団副団長の余琉保が腰掛けている。
何故、この場に琉保が居るのか不思議で仕方が無かったが、皇女の護衛のためだろうと夕鈴は敢えて何も聞かずに団扇で口元を隠していた。 大事な貿易の話し合いの最中だが国の宝である皇女の側に副団長が仕えるのは有り得る事だろうと 口を閉ざす。 余計な事を言って怪しまれるのも困るし、 『貴方は何故其処に居るのですか?』 と尋ねることは出来ない雰囲気でもあった。

侍女が四阿から下がると、梓蘭皇女が早速夕鈴へと話し掛けてきた。

「貴女様は陛下唯一の妃と言うことですが、いろいろお尋ねしても宜しいかしら?」
「はい、何なりと・・・・」

夕鈴の咽喉がこくりと動くが口の中はカラカラに乾いていた。 
目の前の卓には侍女が淹れたお茶があるが手を出す事さえ出来ずに、強張った顔で微笑む。

「陛下は何故、貴女のような妃一人で満足されているのかしら。 貴女の御実家は陛下と特別な間柄なの? 貴女自身に魅力がある訳ではないから、そうとしか思えないのだけど」
「・・・・・っ!!」

謁見の間で瞳を潤ませて陛下を見上げていた美しい女性は憮然とした表情で夕鈴を見下し、きつい言葉を投げ掛けている。 自分とは身分の差があるのだと謂わんばかりの台詞に夕鈴は呆然としてしまう。 しかし実際そうなのだ。 夕鈴はただの庶民で、バイトで 『臨時花嫁』 をしていなければ皇女に逢うこともなかっただろう。 普通の貴族でも他国の皇女に会う機会なぞ持ち得ないのだから。 
夕鈴は動揺を隠して団扇を持ち直すと強張ってしまった笑顔を皇女へ向けた。

「皇女様の魅力からしますと私の容姿なぞ本当に足元にも及びません。 陛下は私の心にひかれたと申され、陛下に尽くす誠を愛しいと仰って下さっているのでしょう」

自分で言っていて恥ずかしくなるが、今は特訓の成果か照れずに言い切ることが出来た。
ただ背筋を嫌な汗が流れていくのは止めることが出来ない。 特別に仕立てた衣装に汗染みを付けてしまうのだけは避けたいと夕鈴は団扇の陰で詰めていた息を吐いた。 
身体から力を抜き出来るだけ気持ちを落ち着けて、汗を掻かないように気を配るしかない。 
その夕鈴の答えに 皇女は眉間に皺を寄せて睨み付けるような顔を向けてきた。

「心なぞ目に見えないものが、あの御方のお役に立つとは思えませんわ。 ・・・・まあ、いいでしょう。 貴女には未だ聞きたいことがあるのよ」

呆れたような表情が見て取れたが、皇女の言っていることは判る。 白陽国の内政が安定したら皇女の言う通りに陛下の役に立つ貴族の中から見目麗しい御息女が陛下に嫁がれるだろう。 
でも李順の言う通り、ニ面性のある陛下は誰にも知られる訳にはいかない。

「・・・皇女様、何なりと御聞き下さいませ」

少し頷き皇女の言葉の先を促す。 貴族らしい彼女の物の言い方に驚くが、紅珠が珍しいだけで彼女のような上下関係を明確にした言葉使いは上流貴族では当たり前なのだろうと理解出来る。 夕鈴が頭を下げると、その様子に満足したのか梓蘭は小さく笑った。

「陛下は私を美しいと思うでしょうね。 私ほど正妃に相応しい皇女はいないわ。 貴女もそう思うでしょう?」
「・・・・・陛下のお心は判りませんが、皇女様は女性から見てもお美しいですわ」

心から夕鈴はそう思ったので素直に言葉にした。 梓蘭はちらりと夕鈴を見て目を細める。
その視線に嫌な感じがしたが 『プロ妃』 として微笑んで受け流すことにした。 傍らに居る副団長の琉保が小さく笑ったように見えたが、皇女を見つめたまま背を正す。

「そうでしょうとも、この衣装も父にお願いして最高の品を用意して頂いたのよ。 ・・・・それにしても唯一の妃という割りに、昨日とは違って貴女の今日の衣装は質素ではなくて?」
「普段はこのような衣装で過ごしております。 陛下は国の為に質素倹約を心掛けてお過ごしですので、そのお心に添いたいと思っております」

普段の衣装よりは質の良い衣装を着ているのに質素と言われてしまい、まずかったかと夕鈴は焦ってしまう。 それでも上質の絹の衣装には、同じように絹糸で細かな刺繍が施され光沢が艶やかな、着ることを緊張してしまうような衣装だ。
梓蘭皇女は昨日の衣装とは異なり、深紅の衣装を身に纏っていた。 胸元が大きく開き皇女の素晴らしい姿態を更に魅力あるものに見せている。 薄地の霞帔には細かな黒曜石が縫い付けられ少し動くたびに、日の光を受け輝いていた。 髪飾りも耳飾も金で出来た宝飾で、峯山国特産の金が 国の宝である皇女をより美しく魅力ある女性へと飾り立てる。

「私のような女性なら、陛下は喜んで昨日の貴女のような衣装を山のように贈って下さるでしょうね。 普段着も私に似合う豪奢な衣装を用意して下さると思いませんこと? 私の願いならば陛下は喜んで聞いてくれるでしょう」
「・・・・・・・・・」

夕鈴は何も言うことが出来ずに、ただ微笑んでいるしか出来なかった。 
夕鈴の微笑みをどう思ったのか判らないが、梓蘭皇女は満足そうに頷いていた。

「・・・・そう謂えば、聞いた話によると後宮には貴女お一人とか。 それって本当なの? 本当は他に知られたくない妃が大勢隠されているとか・・・・」
「そんな必要はありませんし、後宮には本当に私一人で御座います」

夕鈴は皇女に頭を下げて答えた。
 『と言っても偽者のバイト妃ですけどね。 それにしても大勢の妃を隠しているって?』
可笑しなことを言う皇女に眉がコイル状になりそうだが、今は持て成す側なので微笑んで答え続けるしかない。 すると少し身を乗り出して梓蘭が夕鈴を不躾に見回してきた。

「白陽国の陛下といったら巷でも噂の 『狼陛下』。 その御方がたった一人の妃で毎夜満足されているなんて信じられないですわ。 それに御世継ぎのこともありますでしょ? まあ、あの御方を毎夜独り占め出来るならそれも良いけれど・・・・」
「・・・・・・・・」

夕鈴の頭の中は真っ白になっていた。

午後の爽やかな風が四阿を通り過ぎて行く昼日中、目の前の一国の皇女の口から、今、何を言われたのかしら? 

毎夜・・・・ 満足って・・・・・・。

台詞の内容が頭に入って来た瞬間、夕鈴は団扇を持っていない片手で膝を思い切り抓った。
ここで真赤に染まる訳にも、いつものようにわたわたする訳にもいかないのだ。 
完全に固まった自分の表情をどうする事も出来ずに、ただ背に流れる汗を感じていた。
このまま持て成すことなど出来ないと 夕鈴の眦から涙が滲みはじめた時。


「御歓談中、大変申し訳御座いませんっ! 誠に、誠に申し訳御座いませんが、お妃様に御願いの儀あり、馳せ参じました。 何卒御時間を頂戴しても・・・・」

いつもよく話す官吏が二人、蒼褪めた顔で平伏して四阿の傍らで必死に夕鈴へと告げる。
その様子に夕鈴は急ぎ立ち上がり、官吏の下へと身を寄せ、地面に頭を擦りつけ震える彼の肩に手を置き 「如何したのですか!?」 と問い掛けた。

「・・・・政務室で氾水月殿と柳方淵殿がいつものように言い争いを始めたのですが・・・・ と、言っても柳方淵殿の一方的な いつもの争い。 そのため、政務が滞ってしまい・・・・。 何しろ今は他国との話し合いの最中。 通常業務が進まないままでは陛下に後でどの様な叱責を受けることになるか・・・・ 他の官吏も困っております! あの二人を止められるのはお妃様だけと、代表で私どもが此方へ・・・・。 ご歓談中に、本当に申し訳御座いませんっ!!」

涙目の官吏の様子からして、水月さんが早退を申し出て、方淵が怒り出して・・・・。
ああ、目に見えるようだ。 全く迷惑な二人だっ!!
他の官吏にどれだけ迷惑を掛けているのか、知ろうともしないでっ!!
 
夕鈴は立ち上がると梓蘭皇女に向き直り、深々と頭を下げて謝罪した。

「皇女様、申し訳御座いませんが政務室へと行かなければならない事態となりました。 改めて御時間を設けさせて頂きますので、本日は退席させて頂きます」
「え、ええ・・・・。 宜しくてよ・・・・」

皇女の驚いた顔がちらりと見えたが、夕鈴は振り返りもせずに官吏と政務室へと急いだ。










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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:05:45 | トラックバック(0) | コメント(0)
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