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飾り付けた鎖を君に  5
ご免なさい。 陛下全く出てこない!! それでもいいですよという優しい方のみ読んで下さい。 次は出しますから。 本当に、出しますから。
すいません!!!(汗



では、どうぞ
















夕鈴が政務室に顔を出した瞬間、一体何人の官吏がほっと胸を撫で下ろしただろう。
政務室の一箇所が暗雲立ち込めた雰囲気で、今にも雷が落ちる寸前に見える。

眉間に皺を寄せて水月を睨み付ける方淵に対し、睨まれた水月は涼しい顔で書簡を纏めていた。 卓上に広がる書簡は急ぎ見直しが必要で、地方州での新規事業に必要だと夕鈴を政務室へと連れて来た官吏が説明してくれる。 それを水月が 「今日は早退しますから」 と片付け始めているのだと官吏が蒼い顔で戦慄いていた。
だが、政務に関して夕鈴は本来口出し出来ない立場。
出来る事といえば二人を宥めて、陛下の為にと仕事を再開できるよう説得することだけ。

「水月さん、身体の具合でも悪いのですか? 早退すると聞きましたが」
「お妃様、御機嫌麗しゅう。 ・・・・邸で少し休もうかと思っております。 先程から私を睨み付ける方淵殿に 私の繊細な心が疲労しましたので・・・・」

その言葉に背を向けていた方淵が振り向き、眉間に皺を寄せて怒鳴り出した。 水月の言葉に、そうなるだろうとは思ったが、実際に方淵の怒鳴り声を聞くと夕鈴も竦み上がるほどだ。

「睨まれるような事を貴様がぬかすからだろう! 予算は決まっているというのに馬鹿らしいことばかり書簡に載せようとするからだっ!」
「なっ、何を載せようとしたんですか? 予算内で治めるように御願い出来ませんか? 新規事業が何かは判りませんが、国にとっての大事なお仕事ですし、余り余分な費用を掛ける訳にはいきませんでしょう」
「お妃様。 その大事な事業に携わる人夫のための休憩室を作ろうと提案したのですが、方淵殿と意見が分かれてしまい、この懸案に携わるのを止めようかと・・・ 」

水月が悲しげな表情で夕鈴を見下ろすと、傍らの方淵が鼻息荒く、また怒鳴り出した。

「簡単に言うなっ! 予算ぎりぎりのところに予定外のことが起きたら如何する? 予算はゆとりを持って対応する出来るよう、事業内容を作成するのが仕事だろう!」

確かにそうだと夕鈴が思わず頷くと、水月が小さく溜息を吐く。
夕鈴が振り向くと、困った顔で首を傾けた水月が続けて話し出した。
 
「夏場が近付き、工事現場では人夫も長時間の作業では疲れて倒れてしまう者もいるでしょう。 そうなると作業効率が低下しますので休憩室を作ろうと意見を出したのです」
「ああ・・・。 それはいい事だと思いますよ。 方淵殿、この意見は・・・」
「何も判っていない者が口を挟むなと何度貴女に伝えれば判るのかっ!! 余計なことに首を突っ込むなっ! もう後宮からウロチョロと出て来ないで頂きたい!」
「なっ!! 二人が諍いばかりをするから他の官吏の方の仕事が進まないんです!! それに此れは陛下に託された大事なお仕事ではないですかっ! 陛下の為にも、どの程度まで歩み寄れるかをちゃんと話し合いをして下さいっ!」

夕鈴が バンッ と卓を叩くと、二人は目を瞠り口を閉ざした。

『陛下の為にも』 が二人によく効くのを夕鈴は知っている。 基本的に陛下の為になら普段どれだけ仲が悪かろうが任された仕事はきちんと実行する二人。 時に意見が衝突するが水月が逃げ腰にならなければ、方淵が一方的に怒鳴り出さなければ、難しい課題も力を合わせて乗り越える事は出来ると夕鈴は信じている。
深呼吸をして夕鈴は二人に背を正し、真っ直ぐに目を見て向き直る。

「陛下のために、歩み寄ることは出来ませんか? 水月さん、休憩室は予算内で出来ますか? 簡易的な小屋でも休める場と報酬があれば人夫は働いてくれますよ。 方淵殿、夏場での過酷な労働ですので多少の休憩場は必要です。 もし予算内でしたら水月さんの意見に譲歩して下さい。 二人とも静かに話し合いをして他の官吏へ迷惑を掛けないようにして下さいっ!」
「・・・・・貴女にそれを言われる筋合いはないっ! 陛下のためにこれくらい、問題なく執り行える。 水月、予算内になるか、再度計算して提示しろっ!」
「どのくらいの予算が必要か、もう一度 全体を見直さなければ・・・・」

夕鈴に背を向けて話し合いを始めた方淵と水月を見て肩から力を抜き、そっと場を離れた。
振り向くと夕鈴を呼びに来た官吏が両手を合わせて何度も頭を下げるから苦笑するしかない。

「皆様、お騒がせ致しました。 お仕事頑張って下さい!」

夕鈴は怒鳴り声を出した自分を恥じながら、真赤な顔で他の官吏へと頭を下げた。
『もう少し仲良くならないものかしら』 と真剣に話し合いをしている二人を見て、夕鈴は安堵の溜息を吐き、政務室から四阿へと足を向けた。





官吏に急に呼ばれたため置き去りにする形になってしまい、夕鈴は皇女がそのまま四阿にいるのか気になって急いていた。 周囲に人が居ないことを確かめてから裾を持ち上げて早足で四阿に戻ると、そこには誰の姿も見えない。 
茶器だけがその場に置かれている状態で、皇女はすでに帰ってしまったと判り、蒼褪めた夕鈴は震える足で四阿へと進み茶器を片付け始めた。

「ど、どうしよう・・・・。 もてなすように言われていたのに・・・・」

あの皇女のことだ。 夕鈴が途中で四阿から退席し官吏と共に皇女を置き去りにしたことを峯山国の使節団の人へ報告するのは目に見えている。 その後、李順さんからどんなに叱責を受けることになるか・・・。 ペナルティとして借金追加になんて事になったら・・・・。
頭の中に李順の光る眼鏡が浮かんで来るが、夕鈴は震える手で茶器を片付けるしかない。

其処へ皇女と共に姿を消していた副団長の琉保が姿を現した。

「妃自ら片付けですか? そのような雑事は侍女にさせておき、少しお話をさせて頂けますか? ・・・・もちろん宜しいですよね?」

そう言うと琉保は柔からい微笑みで茶器の片付けをしていた夕鈴の手を止めて、顔を近づけて来た。 夕鈴が蒼褪めたままの顔を琉保に向けると、彼の垂れた瞳が細くなる。

「陛下の信頼厚い御妃様は政務室にまで足を運び、陛下の為にと臣下を叱咤することもあるのですね。 驚きました・・・・。 あのような剣幕で大きな声を出す御妃様は、今までどの国へ赴いても見たことも聞いたこともありません・・・・」

その言葉に夕鈴は蒼褪めた顔から色が抜け、蒼白になった。

「み、見ていらしたのですか・・・・・。 もしや私の後をつけて?」
「ええ。 官吏と共に消えた御妃様が気になり、政務室の入り口から覗かせて頂きました。 官吏からの信頼もあり、政務に口を出す狼陛下の御妃様をね」

膝が震え出した夕鈴は卓に縋るように手をつき、如何しようかと考えるも何も浮かばない。
他国の使節団員 それも副団長に、ただの妃が政務室に顔を出し、補佐官である方淵と水月に声を荒げているところを見られていたと知り、夕鈴は震えが止まらなくなった。 この失態をどうすれば無かったものに出来るのかと必死に考えるも 真っ白な頭の中に答えは出てこない。


琉保____ 峯山国第三皇子 琉鴇は楽しそうに夕鈴を見ていた。

四阿で妹皇女である梓蘭と話していた御妃は ただ大人しいだけの普通の妃に見えた。
それでも 『狼陛下』 と名高い珀黎翔の唯一の妃だ。 
何か特別なモノを持っているに違いないと見つめ続けていた。 
其処へ官吏が突然現れ蒼褪めた顔で、他国の皇女と歓談中の妃を連れ出したのだ。
有り得ないことだと思い、梓蘭に払暁殿へと帰るように強く言い伝えて、妃が向かった白陽国の政務室へと後をつけた。 峯山国使節団との話し合いが行われていることは全ての官吏が知っているようで、琉鴇が政務室近くを悠然と歩いていても咎める者は誰も居ない。
だが政務室内となると話は別だろうと、琉鴇は戸口近くで中の様子を隠れるように覗いていた。 その時に妃の声と他官吏らの声が聞こえて来た。

四阿での妃とは異なる、官吏を怒鳴りつける元気な妃の声。
その直後に何かを叩くような音が聞こえ、続けざまに妃の元気な声が聞こえてくる。
官吏が応え、その後静かになり妃が退室する旨を告げたのを聞き、急ぎ四阿へと戻ったのだ。

琉鴇は目の前の夕鈴に興味が湧いていた。 ただの妃じゃない。 狼陛下の妃だ。
それも唯一であり、政務室にまで顔を出すことを許された特別な妃。

口角を上げて薄く笑みを零す。 他国の使者に見られたと動揺する妃の様子に、さらに興味を注がれ、琉鴇は卓上の夕鈴の手にそっと自分の手を重ねた。

「御妃様・・・・。 お話というのは私の身分で御座います」
「・・・・え? 余殿の・・・ 身分・・・ ですか?」

蒼白な顔で顔を上げると、思った以上に近い場所に副団長の柔和な顔があり、夕鈴は焦って一歩下がる。 卓上で重ねられた手は押さえ込まれたように動かず、夕鈴はぎょっとなるが副団長は気にすることなく、更に顔を近づけて来た。 そして耳元に低く囁く。

「私の身分は峯山国第三皇子 琉鴇と申します。 お見知りおきを・・・・ 」
「・・・・・・っ!!」

耳に響いたその声が発した内容よりも、腰にまで響く声色に腰が砕けそうになった。
ただでさえ自分の失態に膝が震えるほど動揺していたところに、甘く響くような重低音の声。
夕鈴は膝から力が抜け、落ちそうになる身体をどうにか四阿内の椅子へと移動させた。
痺れるような声音に真っ赤になった顔で、夕鈴は副団長を見上げる。
その顔を見て、ゆっくりと彼が言った言葉の内容が頭の中に浸透していく。

 峯山国の_______第三皇子・・・・って?????










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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:07:24 | トラックバック(0) | コメント(0)
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