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飾り付けた鎖を君に  8
もう少しお付き合い頂けたら嬉しいな! ちょっと賑やかになります。
あ、通りすがり様、リンク切れ申し訳ありませんでした。修正いたしましたので、
水鏡花3見られると思います。 御迷惑お掛けしました。(汗

では、どうぞ。


















陛下の許可を貰った夕鈴は侍女を介して琉鴇へと文を出した。
外交話し合いが終わった時刻、夕餉の宴の前に少し御時間を貰えないでしょうかと。 
直ぐに琉鴇から返事があり、その文には 『是』 と一言あった。

琉鴇皇子が 何故狼陛下唯一の妃を下賜して貰おうと思ったのか、何か意図があるのかと問うことくらいは出来ると夕鈴は思った。 もし峯山国皇子の元に白陽国の妃を下賜する意図があるなら、それは何故なのかを知りたかった。 
  
もうひとつ夕鈴の頭の中には皇女梓蘭のことが離れずにいた。 
陛下に二度も断わられたが全く気にしない態度で頬を染めて寄り添っていた。 
誰が見ても皇女が陛下に夢中になっているのが解かる。 頬を染め妖艶に微笑み、枝垂れかかる美しい皇女に誰が嫌だと言うだろうか。 第一皇女だが兄が三人、弟二人に挟まれた皇女なので甘え上手なのだろうと李順さんが言っていた。 噂の狼陛下に逢いたいと興味深々に着いて来たと峯山国使節団員からの情報もあり、縁談は本人の意向が大きいのだろうと。
実際に会った陛下に断わられても、それでも自分に自信がある皇女の態度は夕鈴には決して真似出来ないもので、貴族の女性らしい奔放な仕草に動揺するだけだった。

小さく溜息を吐き、夕鈴は約束の時間に、約束の四阿へと足を向けた。







「ねえ、お妃ちゃん。 下賜って意味解かっているの?」
「・・・・一応は。 上の人が下の人に何かをあげることよね? 今回は妃ということでしょうけど、私は臨時花嫁でバイトの立場だし庶民だから、皇子の下へ嫁ぐなんて出来る訳が無いけどね。 たぶん 皇子から見て珍しかったんだと思うのよ。 政務室に顔を出す妃なんて普通じゃないし、狼陛下の唯一の妃ってこともあって」
「・・・・で、皇子様に何を言うつもり? あんま、煽るなよな~」

侍官衣装の浩大が心配してくれていると判り、夕鈴も頭を下げるしかない。 

「浩大にまで迷惑掛けてごめんね。 ・・・・ただ何故なのかを知りたいだけ。 興味本位で妃を下賜願ったのか、白陽国に何か訴えたいことがあるのか。 たぶん・・・・ 私と皇女を交換しましょうってことだと思ってるのだけど」
「陛下は断わったんだからそれでいいじゃん! 更に面倒に巻き込まれようとするのは、お妃ちゃんの悪い癖だよな。 ・・・・・兎に角、聞くだけ聞いたら直ぐに四阿から離れて部屋に戻ることっ! 頼むよ~~~~っ」

浩大が気配を消して、暫らくすると琉鴇皇子が姿を見せた。
四阿内の椅子に腰掛ける夕鈴に拱手した後、静かに近寄り二人分の間を置いて椅子へと腰掛けた。 夕鈴が正面から琉鴇を見ると視線を逸らした琉鴇が 「お話とは?」 と問うて来た。
 
「琉鴇皇子様、先ずは私を下賜したいとの申し出ですが、それは何故なのでしょうか。 例え梓蘭皇女様との縁談を推進めるために私を下賜したいと言っても、梓蘭皇女様と私とでは立場が余りにも違います。 陛下の唯一とはいえ、私は下っ端妃ですので」

引き換えにも為らない立場なのだと伝えると、琉鴇は顔を上げて夕鈴を見つめてきた。
その表情は柔らかく、垂れた目が一層垂れて見えてしまう。 柔和な表情に夕鈴の身体から力がほにゃっと抜けそうになるが、はっと気を取り戻して琉鴇を見据えながら続けた。 
 
「・・・・もし、琉鴇皇子様がその様にお考えだとしたら、申し訳ありませんが下賜の件は無理だと繰り返しお伝え致します」
「いえっ! 違いますっ。 御妃様、それは違います!」

夕鈴の言葉に顔を上げた琉鴇の瞳は一瞬大きく見開き、必死に否定しているように見える。
否定の言葉と共に夕鈴へと近寄る琉鴇に慌てるが、眉間に皺を寄せて必死な表情を呈しているのが解かり、夕鈴は直ぐに落ち着くことが出来た。

「違う・・・とは、どういうことなのでしょうか。 他に何か御理由でも?」
「私は お妃様を心から欲しています。 数度会っただけの私の台詞など信じられないでしょうが、梓蘭の縁談は関係なく求めているのだと解かって貰いたいのです。 是非、貴女様を私の妻にしたいと心から強く願っているのです。 お解かり下さい」
「・・・・・・・・・・へ? 」

ジリジリと近寄る琉鴇が何時の間にか両手を掴み目の前に迫っていたが、夕鈴はそれよりも彼が言った台詞が理解出来ずに呆けていた。 琉鴇の柔和に微笑んだ瞳が夕鈴を捉え、答えを待ち望んでいるように見え、頭の中は呆けたまま何も考えられなくなる。
しかし呆けたままで居られる訳がない。
こくんっと唾を飲み込み、夕鈴は目の前の琉鴇を覗き込むように見つめた。

「うっそ・・・・でしょう? えっと、だから梓蘭皇女のために私を下賜したいと・・・・」
「ですから、梓蘭の縁談はどうでも良いと申してますでしょう。 あの時、四阿にて毅然とした態度で私を見返した瞳に囚われたようで頭の中から貴女が離れないのです。 大事にしますっ!! ・・・・珀陛下の元ではその内に大勢の中のひとりとして、後宮に埋もれてしまう運命でしょうが、しかし私は貴女だけを妻とし、心から愛しむと誓います」
「でっ、 だっ、 え・・・・・ ええっ!? 」

驚いた。 心底驚いた! 
それに絶対に今変な顔をしていると自覚出来るのに、琉鴇皇子が嬉しそうな顔で頬に触れてくるから更に驚いたっ! 何でそんな嬉しそうな顔で近付くの?? ちかっ、近過ぎるっ!!
夕鈴が思わず目を瞑ると、琉鴇は夕鈴の耳元に顔を寄せ、低く甘い声音で囁いてくる。

「私の元へ来て欲しいのです・・・・」

その声色は恐ろしい程夕鈴の脳髄を震わせた。 甘く痺れる声音が腰に響き、知らず全身から力が抜けて琉鴇に身体が傾きそうになる。 戦慄く唇から吐息が漏れそうになり必死で留めた。 
夕鈴が必死に身体を逸らせて琉鴇の声から逃げようとすると、握られた手に力が入る。  

「政務室で御淑やかとはいえない貴女様の元気な声色に、私を見上げた強いその瞳に、私の身分を知っても変わらないその態度に、心から・・・・ 参ってしまったのだと思います。 そんな貴女が狼陛下と呼ばれる御方を翻弄する程の房中術の遣い手であることも驚きです。 そんな貴女の全てが気になり、知りたいと、求めたいと強く思うのです」

真赤な顔で耳を押えながら琉鴇を見ると、彼は訳の解からないことを言い出し始める。 
夕鈴は涙目で琉鴇が掴む手を払おうとすると、更に力が入り痛みが奔った。 その強さに恐さを感じ、首を振りながら夕鈴は抗い続ける。

「だ、駄目です・・・! 琉鴇皇子は然るべき方と添い遂げて・・・ 」
「陛下から家臣へと妃を下賜するのは昔からあることです。 他国とはいえ私は皇子。 下賜されることには、なんら問題は無いと思います。 ですから 『是』 と言って下さい」
「いや、そうではなくてですね・・・・。 う、裏はないのですか? 私を下賜して、本当は皇子は何がしたのですか?」
「貴女一人を慈しみたいと、愛おしみたいと思っております。 ですから・・・・・」 

繰り返される台詞に皇子には言葉が通じないのかと夕鈴は浩大を呼んだ。 
小声だったにも拘らず浩大は直ぐに姿を見せてくれて 「やっぱ面倒事になったよね!」 と哂いながら琉鴇の後頚部に手刀を放った。 
夕鈴に覆い被さるように迫っていた琉鴇は一言も発することなく、その場に倒れる。 
夕鈴は琉鴇を見下ろしながら、恐ろしいほど跳ねる胸の鼓動を抑えるのに必死だった。

「お妃ちゃん、煽るなって言ったじゃんかー」
「なっ、何も言っていないでしょう? 皇子が勝手に話し出して・・・・。 何、何なの? 本当に意味が判らないんですけど! 見上げた強い瞳とか、御淑やかじゃないとか・・・。 普段皇子としてチヤホヤされている人間って、変わったものを欲しがるものなの?」
「いや、それはお妃ちゃん・・・・・」
「それに、それに・・・ 浩大・・・・ 房中術って ______ 何?」

夕鈴が小首を傾げて真面目に聞いてきたので、浩大は口を押えて瞬時堪えたが、堪えきれずに全身を戦慄かせて爆笑した。

「おっ、おきぃ、・・・・し、死ぬ・・・・ これは死ぬ・・・・! お妃ちゃ・・・・ オレ、腹いたひぃ・・・・。 だ、だめ・・・・・」

余りにも盛大に笑われたので、夕鈴は吃驚してその様子に口をぽかんと開けた。 が、何時までも哂い続ける浩大に段々腹が立ち、意味が判らないまま眉間に皺を寄せてしまう。 
どうなっているの? どういう意味なのよっ!

ひぃーひぃー言いながら涙を流す浩大は真赤な顔で頬を膨らます夕鈴を四阿から連れ出した。 そこには官吏姿の桐が真顔で立っており、夕鈴が驚いた顔をすると恭しく頭を下げてくる。 

「お妃様、皇子のことは御任せ下さい。 直ぐに後宮へと戻り、陛下が訪れるのをお待ち頂くよう御願い致します」
「で、でも・・・・ 」
「奴がお妃を下賜して貰いたいと願い出ても、現状は無理でしょう? だったら黙って奴の前に姿を見せるなと言っているんです。 ・・・・お判りか?」

途中から慇懃無礼とも謂える言い方になったが、桐の言わんとすることは解かった。
黙ったままでいる夕鈴の態度を 「了解」 と取った桐は四阿の琉鴇の身体を持ち上げると肩に乗せ、そのまま払暁殿へと運んで行った。 
夕鈴は戸惑ったまま、浩大に背を押されて後宮へと戻ることになる。




夕餉の宴が終ったのだろう。 陛下が酷く険しい表情で妃の部屋へ訪れたので、侍女は蒼褪めた顔で拱手し、合図と共に急ぎ退室する。 使節団が来てから、こんな陛下を何度見ただろうと侍女は蒼い顔で下がって行った。 その侍女よりも蒼褪めた顔で怒気も顕わな陛下に、夕鈴は茶の用意を始めようと立ち上がると、直ぐに陛下の胸に囚われ、腕の力に顔を顰める。

「夕鈴、浩大から聞いた!! 奴にはもう二度と会うな!」
「いっ、痛いです! お願い・・・・ 陛下、離して下さい!」

夕鈴が胸の中で暴れると、陛下は渋々腕から力を抜くが夕鈴の背からは手を離さない。 
見上げると小犬陛下が口を尖らせて面白くないとブツブツ言っているので、夕鈴は困ったものだと胸に手を当て、出来るだけ身体を離しながら答えた。

「会うなって言いましても、峯山国との話し合いが終われば、どうせ会うことも無い方でしょう。 下賜の件だって皇子の、もの凄い勘違いだと解かりましたし」
「・・・・・今年始めに峯山国の鉱山から良質の銀が出たそうで、新たに取引を行なうかの更なる検討を必要とすることとなったんだ。 もう少し話し合いが続くから奴と会う機会があるかも知れない・・・・」

話し合いがまだ続くと聞き、それでも琉鴇に会う機会はないだろうと夕鈴は思った。
話し合いが続くのだから、使節団副団長の琉鴇だって忙しいだろうと。




しかし、夕鈴が少しでも後宮から出てくると、待ち受けていたように笑顔の琉鴇が姿を見せて 「この間は興奮して気を失ったのでしょうか? もちろん下賜の件は諦めませんので!」 と詰め寄って来るようになった。 まさか、何処まで本気なのかと夕鈴が驚くも、琉鴇は追い詰めるように連日迫り続ける。

私はただのバイトなのだ。 それも普通の一般庶民。
夕鈴は蒼褪めて逃げるしかない。 一度は書庫に入った途端に琉鴇が現れ、夕鈴の名前を紡いでも良いかと詰め寄って来た。 他国の妃の名を、一皇子が声にして良い訳がない!
夕鈴が涙目で駄目だと言うと、 「では暫しの間、耐えます。」 と答えるので眩暈がしそうになった。 直ぐに官吏姿の桐が書庫へ入って来たので皇子は残念そうに出て行ったが。

「後宮から出ない方が宜しいのでは? 会議が行なわれている宮では副団長の替わりに皇女が参加して陛下にべったりですよ。 兄妹して何しに白陽国に来たのやら・・・・」

桐が頭を掻きながら呟くその台詞に夕鈴は驚いた。 
陛下へ積極的にアプローチする皇女の行動は峯山国使節団を困惑させていたが、もちろん皇女に文句を言える筈もなく、頭を抱える使節団長とその配下は陛下に寄り添う皇女の姿に目を合わせないように仕事を続けていると教えて貰った。
黙する陛下は苛立った態度で話し合いに参加しているが、場の空気を読まず頬を染めて寄り添う皇女の態度に機嫌は刻々と悪化し、周囲の人間を心底震え上がらせているそうだが、そんな状況を知らない夕鈴は違うことに気を取られ、ぽろりと呟いた。

「陛下は・・・・ 皇女様が話し合いの場に居られることを許されているのですね」

それに対して、桐は鼻で笑っただけで返答しなかった。 
陛下の気持ちを解かっていないお妃に何を言っても無駄だろうと思ってだ。 
それよりも黙したまま機嫌の悪い陛下が気になる。 
 『夕鈴の傍に控えよ』 
それだけを伝える陛下の心の奥底が恐ろしい程に昏く渦巻いているのは判る。 燻り続ける噴火口に誰かが火種を投下した時・・・・・。 嫌な汗が流れそうだと、桐は哂って夕鈴を見た。
眉根を下げた心許無い表情の彼女が、陛下にどれだけ大切にされているのか、それを理解していない理由は 『臨時花嫁』 として雇われているバイトだからと一線を引いているためだと承知している。
だが、陛下の気持ちは違うと知る隠密は、互いの気持ちのすれ違いを正したくなる自分を押し止めるのがやっとだ。 正直になればいいと思う反面、此の先どうなるのか傍観したくもある。

「まあ、貴女は陛下のお気持ちを信じていればいいでしょう。 娶らないと言っているのだし、皇女を献上品として受け取らないと言っていたのでしょう?」
「・・・・でも、皇女はお綺麗です。 そして新たに銀が発掘されたとあれば李順さんだって考えが変わるかも知れないし。 陛下の二面性を隠すより、国のために縁談を取るかも知れない。 私、借金が残っているから此の先の立場をどうすればいいのか困って・・・・」

夕鈴は自分の台詞を何処か遠くで聞いていた。 
陛下の傍にいられるための 『借金』 がどの位残っているのか、何時まで傍に居られる、いや居ていいのだと言って貰えるか、悩んでいるなど桐に話しても仕方が無いと判っている。 
判っているからこそ、言葉には出せず誤魔化した台詞を紡いでしまう。



毎晩部屋に訪れてくれる陛下に微かな安堵と、此の先どうなるのか解らない不安が綯い交ぜになり 手先が冷たく痺れてしまう。 
それに暇があれば夕鈴へ本気とも取れる台詞を吐く琉鴇にも疲れていた。 
夕鈴がつい、疲れた表情でお茶を淹れていると陛下が呟いた。

「奴は今日も外交交渉の場に居なかった・・・・。 今日も奴に会ったらしいね。 午後に書庫で追い詰められたと桐に聞いたけど、本当?」
「追い詰められたというか、下賜の話を繰り返して来てますよ。 何度断わっても彼はめげないんです。 ある意味根性があるというか・・・・」
「・・・・絆されないでね。 夕鈴は僕のお嫁さんなんだから」
「お嫁・・・ って・・・・ 臨時花嫁ですから、もちろん断固拒否を続けてますよ。 それでも連日笑顔で迫って来るから・・・・。 桐さんや浩大には迷惑を掛けっ放しだし」

受け取った茶杯を置き、陛下が夕鈴の手を握ってきた。 卓の向かい側に座る陛下の瞳が紅く染まったように見えて寒気を感じてしまう。 少し怖くなり手を引こうとしたが強い力で掴まれ、引くことは敵わない。

「・・・迫って来るから? 奴に何処まで近寄られた? また耳元で声を聞かされたか? 君は私の妃なのだから容易に他の男を近付けぬよう気を付けるべきだろう?」
「・・・なっ! 気を付けてますよ! だけど琉鴇様はいつも隙を縫うように目の前に現れて、惚れてるだの、妻は一人だけだの、判って欲しいだの、繰り返し訴えてくるから!」
   
掴まれた手に力が入り、顔を顰めるほどの痛みを受けた夕鈴は目を瞠って陛下を見た。

「繰り返し訴えてくるから・・・・・ だから何だ、夕鈴・・・・ 」
「ちょっ、・・・痛いです。 手を離してっ、 陛下・・・ 」
「夕鈴、私を拒むのか・・・・・」

涙が滲み、何故陛下が自分に怒っているのか判らず顔を逸らした。 
自分が全て悪いのかと陛下の視線を避けるように俯くと、囚われていた手が自由になる。 
見上げると黙ったまま立ち上がり部屋から去って行く陛下の背中が見え、夕鈴は痛みで痺れる手を握りながら、どうしてこんな風になったのか判らないまま涙が頬を流れるのを感じた。











「お妃ちゃんが悪い訳じゃないのに、かーわいそうだよ、アレは」
 
浩大が執務室に戻った陛下に文句を言うと、不機嫌なまま背を向けた。
 
「判ってはいる。 ・・・・夕鈴は悪くない。 妃として副団長である皇子に妃らしく付き合っているのだろう。 判っているけど面白くない」
「陛下の苛立ちを受けるお妃ちゃんが可哀想だろ? 駄目なら駄目だと皇子に直接言えばいいじゃん。 外交抜きにしても、それは言ってもいい話しだろ?」
「先に好条件で話し合いを進める必要があるし、下賜はしないと既に奴には何度も伝えてある。 夕鈴にも酷く問い詰めそうになったから離れただけだ。 悪いとは・・・・思っているんだ」

全く難儀な性格だと浩大が肩を竦めて溜息を吐くと、陛下が睨みつけて来た。
睨み付けられても浩大は平気な顔で陛下を見返した。 
実際連日追い駆け回されて、何度断っても執拗な態度を見せられ、疲れている夕鈴が憐れだ。 
その上、陛下にまで追い詰められては彼女も行き場がないだろう。 それに夕鈴は会議の場に皇女が陛下に寄り添っているのを知っている。 
互いの気持ちを知ろうともしないで 『陛下』 と 『臨時花嫁』 を続けている二人に焦れったくてイライラしてしまう。 今回、疲労困憊の夕鈴のために、これだけは確保しようと浩大は陛下の元にやって来たのだ。

「なあ~、お妃ちゃんにさ掃除婦くらいはさせてやりなよ。 あそこなら皇子も来ないし、お妃ちゃんもストレス解消出来るし、オレもいつもの衣装で気楽になれるし。 許可してやらない?」
「・・・・そうか、今掃除はしていないのか。 毎日 奴に追い駆けられるよりはいい。 書庫に行くより掃除の方が気が休まるだろうな。 うん、その方がいい!」

にっこり笑った陛下が自ら夕鈴へ伝える為に立ち上がったのを見て、肩の荷を少し降ろした感で浩大が苦笑した。   「全く、お兄ちゃんは大変だよ~ん!」













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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 14:30:00 | トラックバック(0) | コメント(0)
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