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飾り付けた鎖を君に  10(前)
どうにか終焉です。 お付き合い頂いた皆様、ありがとう御座います。 長ったらしい話となりましたが、楽しかったです。 ai様、リクエストありがとう御座います。 そして、疲れましたっ!(笑)

急ですが、携帯では長過ぎて読めないとのコメありましたので、前後に分けさせて頂きます。 (PCで判りませんでした。 以後気をつけます。 実は自分でも長いなと思っていた!) 


では、どうぞ












陛下の胸でようやく安堵した夕鈴は陛下の衣装から焚き染められた香を感じて瞳を閉じる。 身体から震えが消え、ゆっくりと瞳を開くと夕鈴の耳に砂利を踏みしめ近付く音が聞こえた。

そこには李順に連れられた梓蘭皇女と浩大に引き立てられた黒衣姿の人物の姿。 
蒼褪めた顔色をした皇女が全身を震わせていると、背後から団長と副団長である琉鴇が駆け寄って来るのが見える。 その二人の顔も蒼白で逼迫した雰囲気が見て取れ、一体如何したのだろうと夕鈴が困惑していると、李順が梓蘭皇女をその場に立たせたまま眼鏡を持ち上げて陛下へ報告を始めた。


「妃殺害を計画したのは峯山国第一皇女である梓蘭様であると、御本人が御認めになりました。 共に居るのは皇女が依頼した刺客です。 陛下、いかが致しましょうか」

李順の言葉が信じられなくて夕鈴は目を瞠った。 
李順の報告に使節団長が短い悲鳴を上げてその場に崩れ落ち、蒼白な表情で全身を戦慄かせ始めたのが視界の隅に見えたが、夕鈴はそれどころじゃなかった。 ・・・いま、皇女が私を狙ったと言ったのか? 
そう思い皇女を見ると 項垂れた皇女がボロボロと涙を流しているのが目に映る。

「・・・・皇女・・・様」

夕鈴が呟くように言葉を紡ぐと、きっと顔を上げた皇女が夕鈴を睨みつけた。 大きな瞳が夕鈴を突き刺すように見つめ白い肌が蒼白く揺らめき、紅い唇が噛締められている。 
その形相に夕鈴が柳眉を下げて息を詰めると、皇女の紅い唇が戦慄いた。

「こんな妃妾ひとりが陛下の御心にいつまでも住まうなら、それを正すのは必然! 身分を考えなさいっ。 その場にいつまでも居座るのが正しいと思うのか? ・・・そうよ! お前さえ居なければ陛下のお傍に添うのは私だというのに!」

陛下への恋情が皇女を狂わせたと知った夕鈴は、爪が食い込むほど強く手を握り締めた。 
ごめんなさい、ごめんなさい。 皇女が狂うほどに恋い慕う陛下の相手は偽者なんです。 
ただのバイトなんです。 ・・・・縁談除けの 『臨時花嫁』 なんです。
本当の妃でも、ましてや貴族の娘でもない、ただの庶民なんです・・・・。

正面から皇女の視線を受け、夕鈴は心の中で詫びた。 でも声に出すことだけは避けなければならない。 陛下に肩を抱かれながら皇女の視線を甘んじて受けるだけしか出来ない。 皇女の口から罵倒の言葉は繰り返され、視線を合わせて居ることは皇女の怒りを更に煽っているのだろうと、夕鈴は目を閉じて俯こうとした。

目を閉じようとする瞬間、肩から陛下の手が離れ、ぞっとするほどの寒気に襲われた夕鈴は瞳を開いてしまう。 陛下が一歩近寄ると、皇女は涙を流しながら手を差し出すのが見えた。 
夕鈴は握ったままの手が震えるのを感じながら、皇女の差し出した白い手を見る。

「・・・・陛下は恋焦がれた私を憐れに思いませんか・・・。 陛下を思う余りに私は・・・・。 これも陛下を愛するが故のこと。 愚かな女の浅慮をお許し下さると、私は信じております」

皇女は泣き濡れた顔を歪め、それでも美しく頬を染めながら陛下へと許しを請うた。
黒髪が風に揺れ、差し出された手が儚げに揺れて陛下を求めている。
陛下の肩が揺れたように感じた。 
今、陛下がどの様な表情をして皇女を見ているのか夕鈴には判らない。 判らないから苦しくなる。 指先が痺れるほど冷たくなり、この場から逃げ出したくなった。 
陛下が手を差し伸べて皇女の手に触れるところを見るくらいなら李順さんに怒られてもいいから、裾を捲り上げて逃げ出したいとさえ思った。 
・・・それなのに足は縫い止められたようにその場から動けずに居る。 嫌だと思っているのに、陛下の手がゆっくりと皇女に向かって動くのを見つめてしまう。

「峯山国 第一皇女 梓蘭・・・・・」

耳に響いた声は恐ろしいほどに低かった。 地を這うような低音が、泣き崩れそうな皇女へと向けられ夕鈴の目に皇女の表情が一変するのが見える。 唯一の妃と称される夕鈴に憤りをぶつけ、陛下へ許しを請うていた紅潮した顔が、瞬く間に蒼白に変わるのが見て取れた。

「・・・・っ、ぃ・・・・」

声にならない悲鳴が紅い唇から漏れ出し、差し出した手は宙を舞ったあと、皇女の胸へと引き寄せられる。 使節団団長と琉鴇も蒼白な顔色に変わり、団長は瞬時その場に平伏した。
陛下の手が腰に廻り、鞘ごと刀を持ち上げるのが夕鈴にも判り、急いで止めなきゃと思うのだが、緊迫した空気がその場の誰一人の動きも赦さないとばかりに冴え渡り、息をするのも苦しくなるほどに感じてしまう。 そして小さく哂ったような声が聞こえてきた。 
その声にゆっくりと場に崩れた皇女は戦慄く唇を袖で隠して陛下へ向けていた視線を逸らす。

「我が愛しい妃に刺客を向けようとは・・・・。 皇女といえど我が妃に対してのいく度も繰り返される不遜な態度。 これは抑えようにも容易には抑えられぬぞ・・・・」
「・・・・・っ、陛下っ!!」

梓蘭皇女を庇うように前に進み出たのは琉鴇だった。 
蒼褪めた顔で、それでも皇女を背に庇い、冷酷に見下ろす陛下に必死に懇願した。

「お、御許しっ、御許し下さるよう御願い申し上げますっ! 浅慮な行動で御妃様の御命を狙ったこと、誠に申し訳無くっ・・・・。 しかしながら梓蘭は峯山国皇女、これからの両国間の友好な国交のためにも、此度のことはどうぞ御容赦を・・・・!!」

平伏し、震え続ける梓蘭を庇う琉鴇の姿に夕鈴は息が止まりそうになる。 
思わず視線を移すと浩大と桐が縛り上げた刺客を王宮へと運ぶのが見えた。 この場ではもうすることは無いとないとばかりに目が合った夕鈴に手を振ってくる。 助けを請い、涙目で追うが二人の姿は消えて行ってしまった。

「国交の為と我慢をしていたのだがな・・・・。 李順」

名を呼ばれた李順は青白い顔色で拱手すると陛下へと近寄った。 李順自身もこの騒動をどう締めくくればいいのか思案していたのだが、妙案が浮かばず眉間に皺を寄せるばかりだ。 相手はこれからも国交を続けたいと願う膨大な資源が眠るだろう鉱山を持つ大国。 
昔からの繋がりだけに此処で絶つのは惜しい。
しかし陛下の怒りは治まらないであろうことは側近である李順が一番理解している。
たった一言で、数日かけた国交の書簡さえも破り捨て去ることを厭わないであろうと。

陛下の傍に寄ると冷やかな視線を感じた。 今回の件で 自分が峯山国と白陽国との間の貿易を如何に動かそうとしているのかの算段を始めたことを目の前の人物は存じている筈だ。 
その上で陛下は何を言おうとしているのだろうか。  

「李順、我が妃に矢を放った者が目の前に居る。 さあ、如何したらいいのだろうか。 ああ、皇女のため、特別に独房を設え用意して差し上げようか・・・」
「・・・・・陛下」

うっすらと口角を持ち上げる陛下の表情に俯いた李順は 『是』 としか答える術がなかった。
名を呟かれるも李順を振り返ることなく、陛下は目を細めて琉鴇と梓蘭を見下ろし続ける。 
背に梓蘭を庇ったまま苦渋の表情を浮かべる琉鴇はその言葉の意味を知り、空ろな瞳を地面に落とすしかない。 目の前の兄の頭が項垂れた様子に梓蘭は短い悲鳴をあげた。 
自分の恐ろしい未来が浮かび口に当てた指先が大きく震え出した。

「・・・・ぁ、あ、そ、そんな・・・・」

梓蘭の言葉を耳にした陛下は冷たい視線を地べたに這い蹲る皇女へと向けた。

「そんな? 我が妃に矢を射たことを、 『そんな』 と?」
「陛下っ、お、御許しをっ! 少し恐がらせようとしただけで妃を殺そうなど!」

その言い訳に狼がじりっと足を進めると、蒼白な顔をした梓蘭が後ろへ身体を捻りながら陛下が手に持つ刀に視線を彷徨わせ、小さく首を振った。 ここに来て、やっと自分が起こした事態が陛下の怒りを爆発させたのだと理解し、理解した途端、恐ろしい結末が脳裏に浮かび、気を失いそうなる梓蘭の耳に底冷えのする声が響いた。 

「皇女、国に違いはあれど罪を犯した咎人が辿る道は同じ。 貴女が思い浮かぶような生易しい刑はこの国には無いと思った方がいい・・・・・」
「・・・・っ」

梓蘭が大きく見開いた瞳で、鋭利な刃物のような視線を向ける人物を見上げた時、人物の背後から明るい栗色の髪を靡かせた妃が飛び出した。 
妃は直ぐに琉鴇と梓蘭の前に背を向けて膝をつき、両手を広げて陛下を正面から見上げる。

「・・・夕鈴。 ・・・君が何を言おうとも、私は聞くつもりはない」
「いいえ! そ、それでも聞いて頂きますっ!」

梓蘭が妃の背が震えていることに気付くと琉鴇が梓蘭の手を掴んだ。 
兄である琉鴇へと視線を合わせると蒼白の悲壮な表情で見返されたが、掴まれた手に込められた強さに梓蘭は力が抜けそうになった。

「夕鈴、狙われたのは君だ。 次の矢が胸を射れば、どうなっていたか判るか?」
「でも、大丈夫でした。 袖が破れただけで大丈夫だったんです! お願いです、陛下! 良くお考え下さいませ! ・・・処断は無かったことに出来ませんか?」

くっと短く哂う陛下の顔は恐ろしい程に妖艶だ。 その美しい程の凍りついた表情に恐いと感じながらも思わず見惚れそうになり、夕鈴はきゅっと唇を噛締めて強く見返した。

「皇女様の浅慮な行いを、寛大な陛下の御心で御許しになって欲しいと願います!」
 
夕鈴が震える掠れた声を張り上げると、陛下に向き直った李順が頭を下げ恭しく拱手した。
 
「陛下・・・。 短慮とは申しませんが簡単に処断を決するのはお勧め出来ません。 この件を私に預けては頂けませんか。 国の為により良い方向へと運べるよう考えさせて頂きたい。 もちろん、御妃様が 『是』 と申しますなら・・・ですが」

李順の言葉に夕鈴は顔を上げて、李順を見た。 そして陛下を見上げた。
縋るような強く見開かれた瞳を見て、陛下は深い溜息を吐く。

「・・・・李順、この場を任せた。 夕鈴の怪我の手当てをする」

袖に矢を射られたが身体に怪我などないと夕鈴が告げようとした途端、広げていた手を掴まれ上へと引き上げられる。 体が浮くほど急に引き寄せられ驚くと、そのまま横抱きに抱えられ陛下の胸にぎゅっと抱き寄せられた。 息が止まるほどの強さに目を瞬かせるている内に陛下は後宮へと歩を進めていた。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 22:50:02 | トラックバック(0) | コメント(0)
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