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夏の夜の  3
うちの夕鈴は幽霊が嫌いです。「君のために出来ること」 に書いたように幽霊が大嫌いです。 ネタばれになるので、ようやく書けますが、幽霊嫌いの夕鈴ということで宜しくお願いします。

ああ、楽しかった。


では、どうぞ。















「あ、几鍔君だ~、今晩は。 と、いうことは、そこにいるのは夕鈴?」

その声に几鍔の胸の中で震えていた夕鈴はびくりと反応した。 そろそろと顔を声の方向へ向けると小屋の蝋燭の明かりの下、黒い外套を被り眼鏡を掛けた人物が。 この声を間違えるはずが無いが、この場に居る筈も無い。 いや、居てはいけない筈の人だ!!
 
恐さの余り幻覚でも見えたのかと目を擦りながら几鍔の顔を見上げると、眉間に皺を寄せて思い切り嫌そうな顔をしている几鍔の顔が見えた。

と、いう事は?

「へっ! あっ、・・・李翔さん!? な、なんで此処にぃ??」
「うん? 下町のお祭りでしょ? 僕も遊びに来たんだよ。 偶然だねっ!」

そ、そんな筈は無い。 絶対にないっ! 
李順さんがくれぐれも注意をしてくれと念を押していたので、夕鈴も下町でのお祭りのことは陛下には一言も口にしていない。 だから遊びに来たなんて絶対に無いはずなのに! 
お化け屋敷の中であるにも拘らず、違う恐さが足元から這い上がり背を大きく震わせた。
眼鏡を光らせて後ろ髪を震わせる側近が怖ろしい程の笑みで近寄ってくる映像が頭の中に浮かび、声も出ないほど夕鈴は震えてしまう。

「役人の癖に下町の祭りに参加するなんて酔狂な奴だな。 まあ、さっさと先を行け」
「・・・・夕鈴、如何したの? ああ、恐いよね~、夕鈴お化け駄目だものね。」

そう言うと李翔(陛下)は几鍔の腕の中で震え続ける夕鈴の頭に手を伸ばして、撫で出した。
几鍔がその手を払い除け睨み付けるも闇の中では李翔には届かないと気付き、舌打ちをする。
再度伸びてきた李翔の手に夕鈴が頭を撫でられながら、蝋燭の明かりを頼りに陛下の後ろを見たが、誰も居ない様子。

「あ、あの李翔さん・・・。 もしかして御一人で中に入られたのですか?」
「そうだよ? どうして?」
「~~~っ! 明玉めぇ~~! 騙したわね!」

二人一組って言っていたじゃないの! と夕鈴が怒り心頭で几鍔の胸に手を当てて離れようとした時、夕鈴の視界に白い衣装の女性が角から姿を見せる。 
夕鈴が顔を向けた瞬間、その女性がゆっくりと顔を夕鈴たちへと向けた。 
蒼白な顔に被さる黒髪、そして口からは赤い筋が・・・。 
だらりと下げた手が前に伸び、そして夕鈴に向かって一言。 

「う~ら~め~し~や~・・・・」 

「ひいぃっ、やああああああああっ!!!」

壮絶な絶叫が几鍔の耳に響き、アバラが折れるのではないかという程夕鈴に抱き締められる。
息も出来ないほどの強さに几鍔が驚いて夕鈴の腕を離そうとするが、離れまいと夕鈴が必死の形相でしがみ付く。

「おまっ、息が・・・・ この馬鹿力を・・・抜け・・・」
「やだああああっ! 来ないでっ、来ないでえええっ!!」 
「えー、夕鈴。 なんで几鍔君に抱きつくの? 前は僕に抱きついたじゃない!」
「な、んだ、それは・・・。 兎に角・・・力を・・・ぐえっ」
「お祓いをっ! 一発で頑固なお祓いを~~~っ!!」

几鍔が苦しい息の下で瞑目した時、顎の下で  「・・・ゅっ」 と軽い音が聞こえた気がした。 その途端に胸の締め付けが消え、夕鈴の腕が離れていく。 思い切り咽込みながら 几鍔が状況を把握しようと目を開けると、真赤な顔で脱力した夕鈴が李翔に抱かれているのが見える。
咽込みながらも睨み付けると李翔が微笑んでいるのが薄暗闇に見えた気がした。
すいっと離れていく李翔たちに手を伸ばすが、思い切り抱き締められていた為か咽込みが治まらない。 それでも壁に手を宛がいながら追い付こうとするも一向に二人の姿は見えない。
舌打ちをして、几鍔は壁を叩いた。

「あ、の野郎・・・! いい根性してるじゃないか!」

几鍔がその後、小屋から出てくると困惑した顔の子分達ときゃあきゃあ騒ぐ明玉達の姿があった。 周囲を見ても既に夕鈴の姿は無い。 ふぅっと息を吐くと子分達が寄って来ておずおずと 「言いにくいのですが・・・」 と几鍔へと報告をした。

「あのですね、アイツが小屋から出て来て兄貴は後から来るよって、笑ってですね、たぶん、姉御を抱えていたと思うのですが・・・・、何処かへと・・・・その」

そうだろうと思った。 全く、ただの掃除婦に随分と御執心だな・・・・。 
几鍔は面白くないとばかりに踵を返して、祭りの会場から去り出した。 子分も戸惑いながら後を追い、残された夕鈴の女友達が更にきゃあきゃあと騒ぎ出す。

「あの人でしょ? 例の人っ! 几鍔さんから夕鈴を奪取?」
「几鍔さんのあの苛立った様子っ! きゃああ、三角関係??」
「夕鈴ったら、いつの間に男を手玉にする悪女にっ!?」
「あ、悪女~~~!? あの夕鈴が? それ、馬鹿受け~っ!!!」

大声で騒ぎ出す親愛なる女友達のお陰で、夕鈴の噂は本人の知らない処で走り出していた。










「夕鈴、もう大丈夫だよ。 お化け屋敷からずい分離れたからね」
「・・・・・なんで、ここに、・・・陛下が?」

祭りの喧騒から離れて 裏路地を入り小さな空き地で陛下は夕鈴を漸く下ろしてくれた。
未だ脱力している夕鈴は陛下に寄り掛かりながら、それでも居てはならない筈の陛下の存在を問い質した。

「だから、遊びに来たって言ったでしょ? 夕鈴ってば内緒にするんだもの」
「内緒って・・・ 明玉達と年に一度のお喋りをするって・・・」

夕鈴が 「内緒になんかしてません」 と頭を振ると陛下の手が伸びて両頬を挟まれ、間近で見る陛下の妖艶な表情に心臓が飛び跳ねて口から出てきそうだと夕鈴は思った。 

「お祭りのこと黙っていたでしょ? おまけに幼馴染君と二人で小屋に入って行くしさ。 ・・・夕鈴、お化け嫌いなはずなのに如何して入るかな~」
「そ、それは・・・・売り言葉に買い言葉で・・・・」

真赤な顔で夕鈴が俯くと、陛下の手がまた頬を掴み持ち上げる。 困った顔で陛下を見ると妖艶な顔は益々近付いて来て、夕鈴は慌てて胸に手を当てて距離を取ろうと抗った。

「ほ、本当に祭りの後に友達とお喋りをするんですっ! だから離して下さい! それよりもっ! 陛下が此処に来ているのを李順さんは御存知なのですか?」
「それを言われると困るんだけど・・・・・」
「ほらっ! 後で叱られるのを御存知なのに、どうして来るのですかっ!」

そうだ、李順さんからの叱責が待っている。 陛下に知られないように!の条件で下町へ戻ることを許可された夕鈴は一気に蒼褪めて、陛下を王宮へと戻るように説得しなくてはならないと思った。

「直ぐに王宮へと御戻りになって下さい。 私は一晩経ったら約束通りに戻りますので、陛下も直ぐに王宮へ御戻りになって」
「えええー? 僕は夕鈴と一緒にお祭り楽しみたいっ!」

小犬陛下は口を尖らせて文句を言い出した。 妖艶な狼陛下は去ったが、今度は夕鈴の腰を掴み一緒に祭りを楽しもうと小犬陛下が愚図り出した。 くらりと眩暈を感じて何かに縋りたくなったが、如何にか意地で足を踏ん張ると、涙目で陛下を睨み付ける。

「駄目ですっ! 陛下にはお仕事いっぱい待っているんですから。 李順さんに叱られる前に御戻り下さいませっ!!」
「だって、もう祭りに来ていることは李順には知られているだろうから、どうせなら夕鈴とお祭りを楽しんでから叱られるよ。 ね、だから一緒に楽しもう?」

変装用の眼鏡の奥で、小犬の目がきらきらと輝くのが見える。 眩暈が酷くなった夕鈴は陛下の胸を押しやりながら、それでも反対をする。

「あ、あのですね・・・・。 私にも都合がありまして、女子会への参加という年に一度の楽しみがですね・・・・。 ああ、明玉にちゃんと理由を説明しないと! でも何て説明をしたらいいの??」
「お婿さんとお祭りを楽しんでいましたって言っていいよ! ねっ?」
「おっ、いっ、・・・そんな事言える訳無いでしょう!? ねっ、じゃありません! 兎も角 陛下は至急王宮へと御戻り頂き、私は直ぐに明玉達のっ!!」

夕鈴が一生懸命陛下を説得し続けていると突然ぎゅっと抱き締められ、夕鈴は喋り続ける事も出来ないくらいに強く束縛される。 胸に押し付けられたため息も出来ずに、陛下の背をバシバシと叩いていると、夕鈴の耳元に低く声が響く。

「夕鈴が足りないんだ。 だから今夜は僕だけの夕鈴でいて・・・・」
「んんん~~~~っ!!」
「女友達には悪いけど、几鍔君と二人で抱き合っていた夕鈴が悪いよね? 君は僕のお嫁さんなのに。 だから この後は僕と一緒に楽しもうね」
「んんっ、んんん~~~~っ!?」
「いいよね・・・・ 夕鈴・・・・」

耳に響く最後の言葉は思い切り狼陛下の低く甘い声。 
漸く陛下の胸から離れ、耳を抑える。 耳朶に陛下の唇が掠めるように触れた感触がして、囁かれた夕鈴は目を瞠ったあと足が震えて立っていられなくなった。 
夜目にも真赤に染まった顔が映り、陛下はにっこりと微笑むと夕鈴を抱かかえて祭りの会場へと足を運ぼうとした。 気付いた夕鈴が沸騰しそうな頭で、それでも懸命に陛下の足を踏み留めようと戦慄く唇から必死に叫んだ。

「だっ、抱かかえて移動するのは嫌ですっ!! お願いですから、それだけは嫌ですから・・・・! 陛下、駄目だって言ってるでしょ!」
「今は李翔だよ。 抱かかえるのが駄目なら手を繋いでいい?」
「でも、明玉が~~~! 女子会が~~。 お願いですっ! 行かせて下さい」

夕鈴が頭を下げて繰り返しお願いをすると、背後から声が聞こえて来た。 直ぐに浩大の声だと気付く。 やはり警護の為に夕鈴に付き従っていたのだとわかるが、それなら小屋に入る前に来てくれてもいいのにと文句を言いたくなる夕鈴。 まあ、無理だと解ってはいるが。

「へーか、お妃ちゃんが可哀想だよん。 折角の友達との集まりなんだからさ、参加させてやろうよ。 大事にしないと後でお妃ちゃんに怨まれちゃうよ~」
「・・・・・浩大」
「陛下、お願いですから! 一晩したらちゃんと戻ります。 約束しますからっ!」

二人に挟まれて陛下は益々面白くないと眉間に皺を寄せたが、夕鈴の顔を見て溜息を吐いて肩から力を抜いた。

「じゃあ、その集まりの場所までは付き添わせて。 酔っ払いも居るし・・・ね。 そこまでは手を繋いで歩いていい? これくらいはいいでしょ?」
「参加してもいいんですね? あぁ、良かった・・・・・」
「いや、お妃ちゃんは元々お休みなんだから、へーかの我が侭に付き合うこと無いっすよ。 全く狭い心の持ち主・・・・ あ、やばっ!!!」

何かを感じたのか浩大は言うだけ言って直ぐに姿を消した。 確かにそうだと夕鈴が頷くと小犬陛下が振り向き、耳と尻尾を垂らして寂しそうな顔を見せる。 
ぎょっとして夕鈴が慌てると、呟くように夕鈴にお願いをしてきた。

「夕鈴、僕と一緒にお祭り歩くのって、・・・嫌かな? 送って行くのも迷惑?」
「え? あ、いえっ、そんな事はないですよ!? だ、大丈夫です!」
「・・・・・本当?」
「はいっ! 是非、送って下さいっ!!」
 
こんな寂しそうな顔の陛下を置き去りにさっさと去る訳にはいかない。 夕鈴は悲しそうな顔の陛下を押して空き地から祭りの会場へと移動した。 どうにか嬉しそうな表情になった陛下と恥ずかしながら手を握り、『如何してこうなったの?』 と首を傾げた。

祭りの出店であれやこれやと買っては笑顔を見せる陛下に苦笑する。 
楽しそうに手を握り一緒に歩いていると、陛下が楽しそうなんだから 『もういいや』 という気になってくる。
陛下に誘惑されて寄り道を繰り返して歩いていた夕鈴が、やっと女子会に参加したのはお開きになる寸前だった。 駆け込んだ夕鈴は直ぐに女友達に囲まれ、矢継ぎ早の質問を受ける。

本当にどうしてこうなったのだろうかと深く悩んだ後、夕鈴は気がついた。

 
・・・・陛下と一緒だと休まることはないのだと。
あの人のそばにて、気の休まる日なんか存在しないんだと。
陛下に見つかることなく下町に来るしか、自分の安寧はないのだと。



明玉らに揉みくちゃにされながら、夕鈴は陛下対策を考えた。
今度下町に来る時は、李順さんと一緒に来ようかしら・・・・・・と。






FIN









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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 23:59:30 | トラックバック(0) | コメント(4)
コメント
こんにちわ!!おばけ屋敷面白かったです!!
夕鈴も怖がる姿がメッチャ可愛くて・・・。自分も怖がりで、大昔おばけ屋敷に入った時があんな感じで、入り口で足が動かなくなって・・・。回れ右して入口から出ようとしまして、旦那に手を引かれ、目を瞑ったまま足早に行った記憶が・・・・。昔は私も可愛いかったのかな?反応が・・・。
いまは、始めから近寄りませんね・・・。
それにしても、陛下は何処から情報を仕入れてきたんでしょう???凄いです!!!尊敬しますね!!!あの鮮やかに兄貴の手から夕鈴を奪取した手腕はさすがに狼陛下だわ!!と惚れ惚れしました。
美味しい萌えご馳走様でした♡
毎日暑い中、お仕事・ママ業・サイト運営と大変でしょうが、どうぞご自愛なさってカキカキして下さい。次回作も楽しみにしています♪
2012-07-26 木 15:12:14 | URL | よゆまま [編集]
やっぱり…
夕鈴はやっぱり陛下に持ってかれてしまいましたね物の見事に…兄貴には是非幸せになって欲しいのですが、夕鈴の幸せこそが兄貴にとっての幸せなのかな?
2012-07-26 木 18:16:50 | URL | ともぞう [編集]
Re: やっぱり…
ええ、やっぱり陛下です。(爆) 心が狭いから~。 そして何処にでも、夕鈴がいるところには陛下ありで。陛下なしの下町も楽しいかと思ったのですが、出しちゃいました。 最初と話が変わって自分でも驚いてます。ぷぷぷぷぷ
2012-07-27 金 09:23:34 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
よゆまま様 お化けダメですか。 もしかして映画もダメですか? あおは怖い映画大好きなので、DVDのコレクションもすごいですよ。(自慢っす) 娘が嫌がるのですが、息子は大好き。 また夕鈴を怖がらせたいと思ってますよ。 ふふふふ。
2012-07-27 金 09:28:59 | URL | あお [編集]
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