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泡沫人の羽衣  1
えー、こちらはパラレルものとなります。バイト夕鈴が主体ですが、妄想爆発作品なので、御了承頂ける方のみお読み頂けると嬉しいです。 オリジナルキャラも少し出てくる予定です。
基本、『陛下』は余り出てこないのです。それと今までに無く長い作品になっております。ご了承の上、OKの方のみ御覧下さい。



では、どうぞ。














庭園の緑が色濃くなりつつある季節、時折強風が吹き雨雲を集めて恵みの雨を降らせる。
自然の恵みとあれば ある程度は仕方が無いと思うしかない。 
しかし5日連続の雨が続くと流石にうんざりもしてこよう。 
その雨がやっと上がり久し振りに晴れ間が見え、爽やかな風が庭園に流れていた。

侍女らが夕鈴に庭園への散策を勧め、夕鈴は笑顔でその誘いに乗ることにする。

「お妃様、風が少しありますが雨上がりの空気の良さと暖かで気持ちがよろしいですわね」
「あちらの四阿でお茶の用意をさせて頂きますわ」
「ありがとう御座います」

夕鈴は自分よりも侍女が嬉しそうに庭園を歩く姿を微笑んで見つめていた。 
初夏の風は心地良く、流される髪を押さえながら四阿でお茶を楽しみ、温かな日差しが草花に降り注ぐのを眺める。 降り注ぐ日差しは濡れた地面をゆっくりと乾かしていく。 
地面から立ち上る土の香りと風に揺れる葉音に夕鈴は静かに瞼を閉じた。

雨上がりって大好きだな・・・・。 これが実家なら、洗濯物や布団を干しているだろうな。
青慎は勉強の合間に洗濯しているかしら。 これから暑くなる時期だから食事にも気をつけて欲しいわ。 父さんは当てにならないからな。 季節の衣替えもしなきゃならないし、家中の掃除も一度しておきたい。 庭の草毟りもやらなきゃ夏になったら大変だわ。 ああ、水甕も一度良く洗って夏に備えなきゃならないし。 
ああ、李順さんにお願いしてお休みを貰って、一度実家に戻らなきゃな・・・・。


「お妃様・・・ お風邪を召しますので起きて下さいませ」
「・・・え、すいません。 つい気持ち良くって・・・」

目を閉じて深く考え事をしていただけで寝てはいなかったのだが、まさか実家の家事を考えていたとは言えず、夕鈴は微笑んで誤魔化すことにした。 
不意に強い風が吹き始め 空を見上げると雲を寄せ集め始めたのが見える。 

また雨が降るのね・・・。 梅雨の合間の晴れ間か・・・。

風がこれ以上強まる前にと、侍女が茶器を片付け始め 後宮へ戻ることにする。
侍女が茶器を持ち、夕鈴は風に煽られる髪を押さえつつ池に掛かる橋を渡り出した。 時折吹く強い風に木々が煽られて葉が舞い散り、池の水面へと落ちていく。
ふと、その様に目を奪われた時、驚くほどに強い風が下から吹き上げた。

「きゃっ! 茶器が・・・」
「目が・・・っ」

慌てる侍女の声が聞こえてくる。 裾を巻き上げて舞い上がる風は強く、茶器を持った侍女は落とさないように足を踏ん張り、盆を両手で抱えるしかない。 菓子盆を持った侍女も同じで風に舞い上げられた土埃が目に入ったようで片手で目を覆っていた。
風が舞う中、状況を知りたいと夕鈴がどうにか目を開けた時、髪に留めてあった花が風に飛ばされて宙に舞うのが目に映る。 それに極自然に手を伸ばした夕鈴は橋の欄干を掴んだ。
が、雨上がりで濡れていた欄干に乗せた手は、呆気なく滑ってしまう。 夕鈴は急ぎ落ちないように足を踏ん張ろうとしたのだが、足元も濡れていたため、踏ん張ることが出来ない。 
ずるりと滑る手と足。 そしてそれを制御することが出来ない自分。

「・・・・あっ!」

ゆっくりと、自分でも驚くほどにゆっくりと、手摺を越えた身体が吸い込まれるように水面へと落ちて行くのが解かる。 思考が止まったかのように、その時の夕鈴は何も考えることが出来なかった。 水面が近付いてくるのは判る。 それだけが視界に広がり、他は見えず、何も聞こえない。 

ただ、落ちているのだと 何処か遠くから見つめる自分を感じながら・・・・。








*****








「・・・夕鈴が!?」


妃が橋から池へ落ちたと報告がされたのは、それから間もなくだった。
駆けつけた陛下がそのまま池へ飛び込もうとするのを、身体を張って押し留める兵や臣下達だが、その勢いと怒気に怯みそうになる。 しかし一国の王が池に飛び込むのを黙って見守る訳にはいかない。 狼陛下の怒声に蒼褪めながらも必死に押し止める周囲の必死な態度に、流石の陛下も折れるしかない。 直ぐに池を攫うよう指示を出した李順も蒼褪めているように見える。 急遽庭師を始めとして手の空いている者が多数集められ、池の水を抜く作業に掛かったが、広く深い池の水抜き作業は困難を呈した。
 
しかし、数日掛かっても底が見える事は無く、蒼褪める陛下の紅い双眸に背を震わせながら皆が必死に池の底が見えるまで浚い続けるも、結局池から妃の姿が見つかる事は無かった。


「・・・浩大」
「陛下、お妃ちゃんが落ちたのは確かにこの池だ。 他へ流れるにしても落ち葉などの塵取り用の金網が数箇所あるし・・・・・。 見つからないなんて奇怪しい。 オレも今回はお手上げだ・・・・・ 神隠しみたいで」
「お前がそう言っても諦めることはない。 見つかるまで・・・・続ける」

卓に乗せた陛下の手が震えていると知り、それでもこれ以上の対策が見つからない状況。
疲労困憊の様子は陛下だけではなく、侍女も連日の捜査に気を揉み、倒れる者もいた。

陛下の自室に李順が姿を見せて 「このまま他の池の捜索も継続します」と告げる。

「ですが、ここ数日政務が滞っております。 捜索は此方に任せて、陛下は執務にお戻り下さい。 このままの状態で政務が滞っておりますと、・・・・・あとで夕鈴殿に叱責を受けますよ」

台詞の後半は苦しそうな声色で陛下に告げる。 彼も彼なりに王宮でのバイトとして預かった娘の心配をしているのだと判る。 それでも 『政務第一』 を掲げる李順を睨み付けてしまう自分がいると 陛下は昏い表情で黙していた。
誰かが悪い訳ではない、それは明らかだというのに・・・・。

「李順、池の捜索に関してお前に陣頭指揮して欲しい。 そして逐一詳細報告を行なえ。 どんな小さな事も漏らさずに、報告することだ。 ・・・・執務室へ行く」
「・・・・御意」

深々と頭を下げて陛下が前を過ぎるのを待つ。 
自室から漸く執務室へと向かった陛下の動揺の原因が、あの一庶民であると理解して、李順はただ溜息を吐くしかない。 そして、ここまで深く関わりを持ち、『臨時』 とは言えないほどの長期間の雇用になった彼女を捜索するため、庭園へと足を向けた。



あの日、浩大は四阿が見渡せる近くの屋根から、風に煽られながら侍女と共に橋を渡る夕鈴を見ていた。 橋の下から強風が舞い上がり、侍女の持つ茶器や夕鈴の衣装を舞い上がらせる勢いで襲い掛かるのを、自身も飛ばされないように低い体勢を保ちながら視界の端に捉えていた。
強風に瞬時目を閉じ、次に目を開けた時に視界に捉えたのは夕鈴が橋からゆっくりと落ちていく様だった。

『お妃ちゃんっ!!』

慌てて浩大が屋根から飛び降り橋へと駆け寄り橋下を見下ろすが、そこには風に靡く池の波紋だけが見て取れる。そして、ここへ着くまで池へと妃が落ちる音も、水の跳ね返りも目にしていない。 それは何か一種異質な感じがした。
・・・・隠密としての感じたことの無い違和感を感じざるを得なかった。


























夕鈴は、足を滑らせて橋から落ちた! と思った時から急に大きく目が廻り、その後は意識と身体が何処までも落ちて行くのを感じていた。 
真っ暗な闇よりも昏い闇の中を 更に落ちていくような感覚。
何も見えないし、目を閉じているのか開けているのかも自分自身全く解からない。
ただ、自分が何処かへと落ちているのが何故か解かる。

何処までも、何処までも・・・・

何時しか 意識が無くなっても夕鈴は何処までも落ちて行った。


深淵の闇の底へと__________________












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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 03:33:33 | トラックバック(0) | コメント(0)
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