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泡沫人の羽衣  4
続きです。 少しずつですが話しは現代を進んでいきます。少しずつしか進んでいませんが、のんびり楽しんでいます。猛暑が続いておりますので、皆様ご自愛下さいませ。
under upしております。 自己責任取れる方のみ御覧下さいませ。



では、どうぞ














明るい日の光りに目が覚めた夕鈴は、寝台から起き上がり部屋を見回して溜息を零した。
まだ夢から覚めない現状に出るのは溜息だけ。 
寝台から立ち上がり 窓に近付いて窓布を持ち上げると、そこには見知らぬ光景が広がっている。 一体何処まで続くのだろうというほどの芝生が目の前に広がっており、夕鈴が見慣れた後宮の庭石も、池も、木々も、四阿も見当たらず、広大な敷地には蒼い芝が何処まで続いている。 
その先に森が見え、その森へと続く道路の他は何も無かった。

違う・・・ やっぱり、ここは白陽国じゃない・・・・・

ここに至り、夕鈴はやっと違和感を理解した。

・・・でも、陛下そっくりの 『珀黎翔』 がいる。
まるで夢の中のようだが、試しに頬を抓ってみるともちろん痛い。

何故違う場所に自分がいるのかの現状が理解出来ない。 でも、違う場所だと判っている。

最後の記憶に残る橋すら、窓から見える広大な敷地には見当たらない。
この広大な庭に倒れていたと言っていたと思い出し、この広大な庭でよく見つけて貰えたと感謝しながら震えが止まらなくなる。 如何したらいいのかと頭の中を真っ白にして部屋の中をうろうろしていると、扉をノックする音が聞こえた。 
夕鈴が戸惑った後に返事をすると、見たことのない衣装を着た男性が入って来た。 
その男性が一礼したあと頭を上げると夕鈴は驚いてしまった。

「っ! 李順さん? ど、どうして此処に??」
「・・・・確かに私は李順ですが、貴女が如何して私の名前を存じ上げているのでしょうか。 珀会長より貴女の世話をするよう命じられて、初めてこの部屋を訪れたというのに」

鋭い視線に身が竦むが、目の前の李順も、あの 『李順』 ではないと解かると力が抜けてしまう。 何故知っているのかと言われても何と答えていいのか戸惑うばかり。
返事が出来ずに戸惑っていると、眼鏡を持ち上げて李順が用件を伝えて来た。

「貴女がどのように此方にいらしたのかは未だ不明です。 お手数ですが貴女の身分を証明するものか、連絡先の詳細をお答え下さい。 此方から連絡をして、早急に迎えに来て戴くよう、手配をさせて頂きますので」

丁寧な言い回しだが、怪しい人間は一刻も早く出て行って欲しい感じが伝わり夕鈴は項垂れるしかない。 身分を証明するものは何ひとつなく 『連絡先は白陽国王宮の後宮内』 そう伝えて彼に解かって貰えるのだろうか? 
・・・・・・・・いや、昨日の陛下を思い返すとそれはないだろう。
夕鈴はこくんっと息を呑み、言葉を選んで李順に答えた。 

「まずはすいません。 私の知っている方ととても似ており、お名前も同じ李順さんと聞き大変驚いております。 不躾な物言いになりましたこと、御容赦下さいませ。 それと私自身、どんな風に此方に来たのか本当に解からないのです。 連絡先と言っても御教え難い状態で・・・・。 でも、元気になりましたので直ぐにお暇させて頂きます。 御世話頂いた珀黎翔様にも宜しくお伝え下さいませ」

頭を深々と下げた後、夕鈴が自分の姿に今更ながら気付き困惑した表情で顔を上げた。
「私の衣装はどちらでしょうか?」 と尋ねると、李順さんはまた眼鏡を持ち上げて困ったように大仰に溜息を吐いた。

「申し訳ありませんが、珀会長が戻るまでは此方の部屋で待機していて下さい。 貴女の衣装は今メイドに用意させます。 倒れていた時の衣装はクリーニングに出しておりますので、もう暫らくは預からせて頂きます。 身分が解からないとのことは・・・・・ 一旦保留としましょう。 あと他に質問などありましたら、いつでも其方のボタンを押して下さい」

何やら意味の判らない言葉がいくつかあったが、今はただ無条件に頷くしかなかった。
李順さんにそっくりな機嫌の悪そうな 『李順』さんに言われると、それだけで背筋を正さなければならない気がした。 身体に染み付いた反射神経のようだ。
いつもの李順さんより言い方は丁寧だが、眼鏡を持ち上げる仕種などは全く同じに見える。






部屋に待機と李順に言われた後、メイドといわれる女性が換気の為にと窓を開けに来たり、ベットメイキングをしたり、食事を運んだりするのを見つめるだけで、何もすることが出来ずに夕鈴は一人で部屋にいるしかない。 
この部屋で待機と言われた上に、この心もとない衣装では動きようがないため、諦めるしかない。

大きな窓の外を見ると、変わりない何処までも続く芝生が広がるばかり。

・・・・・・・自分は一体何処に来たのだろう。 
隣の国にでも流れたと言われた方がどれだけ救われるか。
実はあの池はすごっく深くて隣国のさらに隣国に流されちゃったとか? 
そうだと言われた方が嬉しいだろうと ぼんやりと考え続けていた。


陛下や李順さんそっくりの人間がいるなんて、世の中には同じ顔の人間が数人いるとは聞いたことがあるけれど、夢物語だと思っていた。 おまけに名前まで同じなんて出来過ぎているわ。 怖ろしいことに李順さんは性格まで同じにみえる。 

珀黎翔さんと陛下は同じ性格なのかしら?
ここの珀黎翔さんは陛下と同じように王様なのかしら?
 
・・・っていうか、あめりかって言っていたわね。 
近くの国にあめりかなんて国はないと思ったけど。

ああ、考えても理解出来ないし、納得も出来ない。
もう溜息しか出ない・・・・・・。

夕鈴が一人ぐるぐる考えている内に日が傾き始め 広大な芝の向こうの森へと夕日が沈んでいこうとする様が見て取れた。 考えをまとめる事が出来ずに、ただ呆然とその様を見つめていると、ふと扉をノックする音に気付く。 夕鈴がまた李順さんかしらと、首を傾げながら返事をする。

「はい、どうぞ」

夕鈴の返事と共に、見るからに元気なメイドさんが数人扉から入って来て、恭しくお辞儀をすると一斉に夕鈴に襲い掛かって来た。

「ひやああああっ!! な、何を!?」
「失礼致しますね~。 まあ、なんて白い肌でしょう」
「あら~、腰が細いですわね、羨ましいわ!」
「東洋人のようなのに、この髪の色合いったら」
「へえ~、素敵! あらぁ、この髪、染めていないわよ。 綺麗ね~」
「あ、あ、あの、あの・・・・ひぃっ!」
「胸の形もいいわ。 張りがあって、若いって素敵ねっ!」
「滑らかな肌ね~。 ・・・・うふふふっ!」

口々にいろいろ話しながらメイドは夕鈴のバスローブを脱がし、体中を採寸し始める。
悲鳴をあげ続ける夕鈴には全く構わず、肌を触りまくり、髪を撫で上げ、足のサイズから腰、腕や胸、首周りなどを採寸したあとに、何事も無かったように夕鈴にバスローブを着せて部屋に訪れた時のように恭しくお辞儀をして退室して行った。

嵐のようなメイドの一陣に部屋に残された夕鈴が心臓をバクバクさせながら戸惑っていると、昨夜風呂に入れてくれたメイドが静かに入って来てお辞儀をした。

「本日、夕食は別所にて旦那様と一緒に召し上がって頂きます。 衣装はこちらで用意致しますので それを御着用下さいませ。 では、まずは入浴して頂きますので、こちらへどうぞ。 申し遅れましたが、私は夕鈴様の御世話を担当させて頂きます、桂香と申します。 お見知りおきを」

昨日の晩もして貰ったとはいえ、他人に世話を受けるのには なかなか慣れない。
それでもここの仕来たりならば・・・・と夕鈴は桂香に挨拶をした後、素直に従った。 
入浴後はこちらで用意した衣装に着替えますと、バスローブ姿で部屋に戻ると先ほどの嵐のメイド軍団が待ち構えていた。

夕鈴が驚く間もなく椅子に座らされると、髪の乾燥及び整髪、お肌の手入れ、マニキュアやペディキュア、ブラジャーやストッキングの着用、イブニングドレス、靴、アクセサリー等が身に纏わされていく。 最後に柑橘系の香水が噴霧され、夕鈴の全身を確認した後、嵐のメイド軍団は満足そうな笑みを残して退室して行った。

初めての下着や衣装に戸惑いながら、上手く息が出来ない状態でされるがままだった夕鈴は肩で息を吐き喘ぐように桂香を見る。

「あ、あのっ・・・ご飯食べるのにこの衣装って・・・可笑しくないですか!? かっ、肩が出ていますし、く、沓がこれでは歩けませんっ! 私の沓を持って来て下さいませんか? あと、出来れば帔帛を掛けたいのですが・・・ 駄目でしょうか?」

お世話になっている以上、ここのやり方には出来るだけ添いたいと思うが 肩が丸出しの上、踵部分が高過ぎて、これでは歩けない。 初めての靴に立つのもやっとなのだ。 

姿見を掴み、踏ん張りながら振り向いた夕鈴が涙目で桂香に訴えると、彼女は困った顔でしばらく考え、そして微笑を浮かべる。 

「解かりました。 靴はローヒールのサンダルにしましょう。 後はショールをお持ちします」 

そう告げると、彼女は部屋を出て行く。 桂香の言葉の意味は全く解からないが、何とかして貰えると解かり夕鈴は安堵した。 そして大きな姿見に映る自分を見て心底驚いてしまう。

いつも陛下が捉える耳元の髪の他は緩やかに上部に纏められ、小さな輝く星で縫い纏められているように見えた。 衣装は胸元から足元へと柔らかく滑らかな生地が落ちている。 
胸の下で細かく寄せられたその縫い方に夕鈴は驚いて触れる。 胸元が柔らかく寄せられた生地に包まれ 見たことも無いデザインだ。 所々に髪に飾られた星と同じような物が散りばめられ、布地を少し持ち上げると部屋の明かりに瞬くように輝いている。 
とても素敵な衣装なのだが、胸部分から肩へと心許無い紐が伸びているだけで、肩から腕が露わな状態。 長衣が無いので、せめて帔帛が欲しいと思い桂香にお願いした。 
そして大きく開いた胸元にとても高価そうな宝飾が付けられ、夕鈴は温泉離宮の最後の夜に着飾った自分を思い出した。

「これって同じくらいか、それ以上・・・だろうな。 一体この国の人は夕餉を食べるくらいで、何故こんなにも着飾るのかしら? やっぱり・・・・珀さんって王様? あっ、じゃあ、珀様って呼んだ方がいいのかしら?」

夕鈴が呟いていると、桂香が戻って来て踵の低い沓を見せてくれた。 
足首に革紐が幾重にも巻かれ草履のようだけど可愛らしい沓だ。
「今邸にあるサンダルの中で一番フラットなサンダルです。 ヌーディーなサンダルですがアンクルベルトで履きやすい品です。 いかがでしょうか?」 と聞かれ、訳が解からないが 『妃』 演技している時のように夕鈴は微笑んで見せ、桂香が頷いたので静かに息を漏らす。
光沢のある柔らかい大判の帔帛が肩に掛けられ、夕鈴はやっとほっとした顔を桂香に見せた。

「あの・・・、今更御聞きするのも恐縮なのですが、珀様はどうして私にこんなに良くして下さるのでしょうか? それと、一体どの様なお立場のお方なのでしょうか・・・・。 判らない侭では不安なのです。 もし、教えて下さるのなら嬉しいのですが」

ずっと気になっていた事を彼女にならと、素直に聞いてみることにする。
その問いに桂香は少し眉を上げて驚いた顔を見せたが 直ぐに頷き説明を始めてくれた。

「珀黎翔様は 珀コーポレーションの会長職に就かれております。 珀コーポレーションは石油・軍需・金融など多岐にわたり経営しておりますが、現在はバイオ化学やスペシャリティケミカルズ分野も研究開発中で一目置かれております。 ・・・会長はハイスクール時代にAPクラスを選択しSATにてハーバードにて経済学、MITにて経営学を修得され、個人的にホテルやビルも多数所有しております。 珀一族はアメリカでも、いえ世界でも有数な財閥として知られておりまして、一族の中には上院議員も多数輩出されています。 ・・・・・夕鈴様、御気分でも?」
「・・・い、いえ。大丈夫です。 すいません・・・」

教えて欲しいとは言ったが、桂香の言っている事が小指の爪の先ほども理解出来ない。
何となく判ったのは 『難しい国の偉い王様・・・らしい?』 とだけ。 得意げに珀黎翔のことを語る桂香の様子から、家臣から敬われているのは解かった。 そしてそれを知らない私は珍しいのだと桂香の表情は語っていた。 誰しもが知っている存在の彼。

それは夕鈴の知っている珀黎翔陛下、『冷酷非情な狼陛下』 に酷似していた。
だが、ここは白陽国ではない。 ここには陛下は居ないのだ。 
名も、顔も、あんなにも同じだというのに・・・・・・彼は陛下ではないのだ。
そう思うと夕鈴の胸は苦しくなる。

「夕鈴様がお住まいの国の御名前を伺っても宜しいでしょうか?」

桂香の言葉に夕鈴は唾を飲み込み答えたが 首を傾げられ 「申し訳ありませんが存じません」 そう告げられた。 昨夜 陛下に似た黎翔が肩を竦めたのを嫌でも思い出し、夕鈴は俯いて 「ここには白陽国を知っている人は居ないようですね・・・・」 と柳眉を下げて呟いた。

夕鈴が悲しい表情を見せると桂香は 「タイムトラベルかパラレルワールドのようですわ」 と話し出す。 桂香が 「私、実はSF小説が好きなんです」 と話してくれたが、夕鈴は更に言っていることが理解出来ず瞑目するしかない。

夕鈴の様子に、桂香が簡単に、過去の世界に住む人間が何らかのきっかけで他の時代や世界へと移動してしまう物語りがあるのだと楽しそうに話してくれた。 
瞳を大きくさせる夕鈴に桂香が微笑んだ。
「今度お時間が有る時に ゆっくりお話をさせて頂きますわ」 と言ってくれたので夕鈴は色々聞きたい事を次に会う時まで我慢するしかない。

色々聞きたいこと。

桂香が知っている、その物語りに出て来る人物は異なる世界でどうなったのかということ。
それは夕鈴が 『白陽国』 へ戻れるのか、ということだ。



   





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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 00:02:10 | トラックバック(0) | コメント(2)
コメント
この分だと…
陛下に続いて李順さんまで表れたとなると、徐々に彼らもでてくるのかしら?

一話、二話と話が進むにつれ、話しにすっかりのめり込んでいます

続きも楽しみに待てします
2012-08-02 木 10:15:20 | URL | ともぞう [編集]
Re: この分だと…
出て来る予定? あるかしら? う~ん、考え中としか言えない。 でも出したら楽しいかも?? 自分が一番楽しんでいるから、出しちゃうかも。一番難しいのは・・・・・老師かな? これは・・・・・無理???
2012-08-02 木 10:52:50 | URL | あお [編集]
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