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泡沫人の羽衣  6 
確信しました。これは長いです。娘に話したら、「私の書いているのは今18迄続いているよ。 ドンマイっ!」と言われた。何がドンマイだか分からない。娘が書いている小説はピク〇ブにあるけど、見たら怒ると言われているので、何を書いているのか不明です。まあ、アレだろうとは思うけどね。お互いに大好きだし。
と、いう訳(?)で長いです。 のんびりお付き合い下さいませ。


では、どうぞ。













笑い続ける黎翔に連れられ隣の部屋へ入ると、こちらも大きな部屋だった。 
二十人位の立食パーティは軽くこなせるほどの広さと、ホテル厨房に直結した専用エレベーターがあり、この部屋で簡易な調理も出来るだけの設備も整えられている。

夕鈴が驚いて部屋を見回していると、給仕の者が恭しく出迎えてくれた。 円卓には中華料理がずらりと並び、美味しそうに湯気を立てている。 
席に座ると黎翔が給仕に始めるように告げ、夕鈴へと取り分けられた皿が差し出された。

「珀様、では遠慮なく頂かせて貰います! わ、あ・・・・美味しそうですね」

見慣れた食事に夕鈴はほっとしながら箸を進めた。 見慣れぬ品もあったが大半の料理が見たことのある品と酷似しており、その上後宮では有り得ない出来立ての状態で出されている。
その上、美味しさも格別だった。 
「上品なお味ですね。 あ、これ好きなんです。 嬉しい!」 と夕鈴が嬉しそうに食べ進めていると、ふと黎翔の視線に気が付いた。 
夕鈴は遠慮なく食べている自分が急に恥ずかしくなり、箸を止めて 『どうしよう・・・』 と戸惑った。 李順さんからのお妃教育の成果で普段から上品な箸使いは出来ている筈だが、環境が違う場所での食事のため、余りにもじっと見つめられると、自分は何か失敗したのではないかとドキドキしてしまう。

夕鈴の箸が止まった事に黎翔が気付き、食べるようにと勧めた。

「遠慮しないで、夕鈴。 君が美味しそうに食べるから安心したんだ。 食欲が出てきて体調が良くなったと安心しただけだ。 もっと食べて欲しい」
「あ・・・ありがとう御座います。 では・・・・」

夕鈴が顔を上げてお礼を伝えると黎翔は嬉しそうな顔をした。


紅茶も、ドライヤーも、車も、ヘリも、エレベーターも、高所からの夜景も知らない少女が何故、王宮御用達の宮廷料理を慣れ親しんだ様子で食しているのか。 
余りにもモノを知らないこの少女が優雅に階段を降りてくる仕草や、美味しそうに上品に食事する様子に黎翔は魅入っていた。

ふと、彼女の何度も口にする 『陛下』 という言葉が脳裏に浮かぶ。
彼女の目に映る自分の姿は、その 『陛下』 に重ねられているのだろうか。

その人物は自分にそんなに似ているのだろうか。 そして彼は彼女の、何なのだろう。

そう思うと胸の奥に不穏な波が揺れるのを感じて不思議に思った。

そして、まだ会って間もないこの少女の一体何が気になるというのか、これも不思議だった。 
李順からも身元の判らない夕鈴に対して重々注意するように言われていたが、夕鈴の何処に注意をすればいいのか判らず、思わず苦笑してしまう。 
美味しそうに笑顔で食べている彼女の様子に黎翔は目を細めて微笑んだ。



「ご馳走様でした! お腹いっぱいです。 それに・・・この衣装もありがとう御座います。 とても綺麗で見たことのない衣装ですね。 ちょっと肩が出て恥ずかしいですが。 ・・・・何処かの後宮で流行しているのでしょうか?」
「後宮? まるで大昔の王宮を知っているみたいだね、夕鈴」
「え? ・・・・おお、む、かし・・・」

眉間に皺を寄せた夕鈴が顔色を変え黎翔を見つめて来て、細く開いた唇が震えているのが目に入った。 二人の視線が合うと夕鈴はストールを握り締め、視線を彷徨わせながらゆっくりと俯いた。 そして何か小さく呟きながら肩を震わせるのが見える。 
嫌な予感に黎翔が椅子から立ち上がり近付こうとすると、夕鈴は静かに顔を上げて、涙を溜めた瞳で黎翔を見つめてきた。

「ゆうり・・・・」
「・・・や、やっぱりここは白陽国のある世界ではないのですね・・・・。 桂香さんから、もしかしての話を伺いましたが、私の居た時代とは異なる時代か世界なのですね・・・・・」

夕鈴の頬に一筋の涙が流れた。 その瞳はゆっくりと細められ、覚悟はしていたと語るようで、それでも未だ戸惑っているような引きこまれそうな色合いが混在している。
夕鈴の瞳を見つめながら黎翔が近付き、流れる涙から目を離さずに語り出す。

「・・・・正直、解からないことだらけなんだ。 君が何故、私の邸の庭に居たのか、どうやって来たのか、君が居た世界がどんなものなのか、今の時代とどの様に違うのか、そして君はこれからどうなるのか。 ・・・・・・解からないことだらけだ」
「・・・ はい・・・」
「何か解かるまで、君は安心して私の邸で過ごしていたらいい。 君がこの先どうなるか解からないけれど、出来るだけ手助けをさせて貰うよ、夕鈴」

瞬きをする度に夕鈴の瞳から流れ落ちる涙。
その綺麗な涙から黎翔は目が離せなくなっていた。 黎翔の言葉を聞き終えた夕鈴は席から立ち上がると眉根を下げて黎翔を見つめ、ゆっくりと頭を下げた。

「・・・・暫らくの間で結構です。 この世界のことが理解出来るまでの間、それまではお世話になります・・・・・。 珀黎翔様・・・・」
「・・っ!? 暫らくって、どういうこと? 君がこの世界を理解して、その後はどうやって過ごすというんだ? 君が居た世界とはまるで違うのだろう! 君を助けたいと思う私の手は要らないと言うのか、夕鈴?」

夕鈴の言葉に対して、怒気を孕んだような台詞が返って来た。 
その久し振りに聞く狼陛下の声色に恐ろしいと思いながらも、知らず微笑みを浮かべてしまい涙を拭うことさえ忘れて夕鈴はその声に聞き入った。 
顔立ちが似ているだけでなく、声もそっくりなことに震えるほどに嬉しさを感じてしまう。
そして怒っているという事は私をそれだけ心配してくれているということだ。 
素直に嬉しいと感じてしまう自分自身を駄目だと思い、悲しそうに眉根を寄せた。

「・・・・では、珀様のお邸で、何か私に出来ることは御座いますでしょうか。 慣れないまでも掃除とかでしたらお役に立てると思うのですが。 何もせずに、ただお世話になるというのは私には無理です。 ・・・お願いです、仕事を下さい」

夕鈴がもう一度深々と頭を下げると、黎翔の溜息が耳に聞こえた。
異世界から来たかも知れない、身元不明の女をあの大きな邸で使うなんて普通は無理だろうと思った。 それでも行く当てがない上に、この世界の何も判らない自分は彼の差し出す手に縋るしかない。 頭を下げ続けていると、肩に黎翔の手が触れ、顔を上げると困った顔の彼が見えた。

ヘリ内で暴れたためと、泣いてしまったために、多少は崩れてしまったが化粧をしている彼女は可愛らしさと上品さを合わせもつ女性に見える。 衣装は彼女に合わせた品なので勿論よく似合っているが、その真摯な態度、姿勢の良さ、言葉使い、気品は彼女独特のもの。 
そんな彼女を見つめ、そう謂えば李順とも話し合っている面倒なことがあったなと思い出した。
  
「・・・君は僕の客人として持て成したいと思っているが、それが心苦しいというのならば、君に手伝って貰いたい仕事がある。 それで良ければ考えても・・・・。 ああ、掃除は・・・。 夕鈴、掃除機って知ってる? ダスターやスクイザー、ワックス、洗濯機、アイロン、スチーム洗浄器、ワイパー、あとは・・・・・・」
「へっ!? すっ、すいません! 何語だかさっぱり・・・・。 掃除、は無理ですか。 そうですか・・・。 では庭仕事なら? 草むしりとか、畑仕事は?」
「・・・・専用の庭師が居るし、悪いが畑はないんだ」
「では、えっと、あとは・・・・ あとは」

夕鈴は違う意味で涙が溢れてきそうになり、全く役に立たない自分にがっかりした。
何も解らない自分が、何か仕事が欲しいと願い出ても無理な話だ。 項垂れていると顎を捉えられ持ち上げられる。 黎翔の顔が驚く程近く夕鈴は慌てて視線を逸らした。 
陛下じゃないと判っていても、全く同じ顔と声。 
まともに直視すると、夕鈴の身体が小刻みに震えてしまい止めようがない。

「夕鈴に手伝って貰いたい仕事があるって言ったよ。 庭師も掃除もしなくていい」
「・・・・はい。 ではどのような仕事なのでしょうか! 私でもお手伝い出来るなら、何でも仰って下さい! 力仕事でも何でも一生懸命に頑張りますからっ!!」

挑み掛かるように握り拳を上げて黎翔に伝えると、柔らかく微笑んだ黎翔は目を細めて頷いた。


「・・・夕鈴、君に私の妻を演じて貰いたい」
「_____ はあっ?」



その言葉に陛下の、いや黎翔の顔を見ると真面目な顔で夕鈴を見下ろしていた。
顎を捕られたまま、思わず口をあんぐりと開けて呆然と黎翔を見上げると、真面目な黎翔の顔が徐々に崩れ出して、肩が震える様が見て取れる。

「ゆ、夕鈴のその顔っ! 面白いよ! 笑っちゃ駄目だろうけど・・・。 あはははっははっは!! お、お腹が痛い・・・・・ ひぃ・・・」

どこかで見た光景に夕鈴は目を瞠った。 そして 同じように笑うから本当に腹が立つ。
人の顔で同じように笑うなんて、乙女を馬鹿にするものいい加減にして欲しい!!

それに、まさか此処でも 『偽妃』 ならぬ 『偽妻』 を演じろと言われるとは。
それも陛下そっくりの珀黎翔に。
陛下より 『小犬度』 が少ないようで狼と使い分けている様子はないが、それでも夕鈴が戸惑ってしまう 『狼度』 は高い。 白陽国でも同じようなバイトはしていたが、夕鈴の概念が通用しないこの世界では無理だと、直ぐに思った。

「そ、そんなのは無理ですからねっ! その仕事は余りにも無謀です、珀様。 御承知とは思いますが、私はこの世界の事を何も知らないんですよ?」
「くっ、くっ・・・いいよ。 深窓のお姫様みたいじゃないか。 そのままの君でいていいよ。 私は君が気に入ったんだから」

涙を拭きながら、いまだ哂い続けている黎翔の言葉に夕鈴は如何しようかと思った。
それでは王宮と同じで、ただ庇護の下 『甘やかされている』 だけの存在じゃないかと。
しかし、本当に役に立たない状況の上、何処にも行き様のない自分。 
如何返答すれば解って貰えるのだろうか、そして自分は如何すればいいのだろうかと悩んでいると、漸く笑い治まったのか落ち着いた黎翔の声色が聞こえて来た。

「それに夕鈴、君が元の世界に戻る機会も私の邸に居た方が確立は高いだろう? 私は君を臨時としての 『妻』として雇い、君は私の邸に居る機会を得る。 問題はないし、もし帰れなくなったら・・・・・。 万が一の為にも この世界を知る機会を得た方がいいだろう」


『もし帰れなくなったら』  

・・・・・その言葉に夕鈴は眉を顰めて目の前の黎翔を見た。





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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 00:03:10 | トラックバック(0) | コメント(4)
コメント
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2012-08-03 金 21:01:02 | | [編集]
いつもドキドキ読ませて頂いてます☆
最近見つけたのですが、あおさんの文はとっても面白くて、睡眠削って読んじゃってます(///ω///)♪
これからも頑張って下さい!楽しみにしてます♪
思わずコメ書いちゃいました☆失礼しました(^_^)/
2012-08-03 金 23:25:42 | URL | バニーガール [編集]
涙、涙です。
こんなコメントを頂き、涙、涙で御座います。 夕鈴に溺れる・・・・・きゃああっ! もう溺れてしまえっ!と突っ込みを入れたくなる。 本当に嬉しいコメントにニヤニヤが止まりません。 ホウレイ線が深くなりそうで恐いです!!(爆) ありがとう御座います。
2012-08-04 土 00:25:44 | URL | あお [編集]
初コメ、ありがとう御座います。
バニーガール様、思わずのコメ、ありがとう御座います。 褒められてチョッパー並みに照れてしまいます。
腰が大きく左右に揺れて・・・・、おっと地震かと想われてしまうと大変ですね。 自重します。
これからもお時間有る時に来て頂けると嬉しいです。 ありがとうです。
2012-08-04 土 00:28:09 | URL | あお [編集]
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