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泡沫人の羽衣  7
楽しく続きを書いています。 サイトのリンク切れなどで御迷惑を掛けております。
自分では確認しきれない場合もありますので、すいませんが是非ご連絡くださいませ。
直ぐに直します。 (威張って言うことではないのですが・・・・
沢山の拍手コメントを頂いておりますが、ひとつの話が終わってからまとめてコメントのお礼をさせて頂いております。 それじゃあ、嫌だという方は各話の下段にあるコメント欄にお寄せ下さい。 こちらは直ぐにお返事をさせて頂きます。


では、どうぞ。














もし、どうしても、どうやっても帰る事が叶わないとしたら。
その言葉に夕鈴は一瞬にして、目の前が暗くなった。 
キンと耳鳴りがして周囲の音が聞こえなくなり、自分の心臓の音が驚くほど耳の内に響いてくる。 視線は何処を見ているのだろう。 目の前に黎翔がいるが、ぐにゃりと歪んだ世界にその姿は朧気に霞んで見えるだけ。
視界に捕らえる彼は、彼ではなくなって居た。
夕鈴の歪んだ視界に映るのは、白陽国国王陛下、珀黎翔の姿だった。


陛下に・・・・、白陽国の陛下に逢えなくなる? 青慎に逢えなくなる?
父さんにも、明玉にも、浩大にも、老師にも、李順さんや方淵や水月さんや侍女さんや・・・。
そんなっ!! そんな事になったら・・・・!

考えたくないが、桂香に話しを聞いてから何度か頭に浮かんだその言葉。 
今まで意識しないようにしていた分、陛下と同じ顔の黎翔に言われると、胸に突き刺さるように感じた。 ストールをきつく握り締め、唇を噛んで蒼褪める。 
足元の床が脆く崩れるような不安感に襲われ、細かい震えが這い上がるように夕鈴の全身を襲い始めた。 胸が押し潰されるような圧迫感と、眩暈がして立っていられない。 

息が苦しい・・・・。

もし帰れなくなったら・・・・  

頭を振って、夕鈴は現実に戻ろうと足を踏ん張った。 
その時頭に浮かんだのは彼女らしい現実感たっぷりの 『もしも・・・』 だった。


『もし帰れなくなったら』 そしたら、借金は青慎に回されちゃうかも!?  
李順さんなら遣りかねない!! 
ど、如何しよう!? そんな事になったら青慎の夢は?

・・・・・そして陛下は?

バイトが居なくなっただけと直ぐに次の 『臨時花嫁』 を迎えるかも知れない。
それとも内政が安定したからと 『正妃』 を娶るかも知れない。
・・・・ただの一庶民の行方など捜すことも、思い出すことも無いかも知れない。


陛下を思いだすと胸が苦しくなり、夕鈴の膝ががくがくと震え、床に着きそうになる。
驚いた黎翔が慌てて腰を支え夕鈴の顔を覗くと、浅い呼吸を繰り返して蒼褪めているのに気付いた。 支えた腰から伝わる体の震えが尋常じゃない様子を黎翔に伝えている。
 
急ぎ夕鈴を抱き上げると隣室のリビングへと移動し、ソファに座らせる。 ストールを強く握り締める夕鈴の指先が白くなり唇が戦慄いているのを知ると、リビング内に併設されているカウンターバーへ急ぎ、手近な場所にあった壜を取りグラスに移すと夕鈴へと差し出した。

「夕鈴っ、直ぐにこれを飲んで!」

目の前が真っ白になり、全身が震え始めた夕鈴は言われた通り目の前のグラスを受け取ると一気に煽った。 飲み干した途端に咽喉が焼け付く感じがして勢い良く咽込んでしまう。
咽喉を通った余りの熱さに目を瞠り、気を取り戻した夕鈴が飲み干したグラスを見て咽込みながら、眉間に皺を寄せて咽喉を押さえてた。

「っ! こ、これって、お酒ぇ?」

その様子を見て、黎翔が背を擦り乍ら戸惑った表情で尋ねてきた。

「気付けとして・・・・。 そう謂えば・・・・ 夕鈴って、歳いくつ?」
「ぐっ、げほっ・・・十七で、す・・・」
「みっ、 未成年!?」

黎翔が空になったグラスと夕鈴を交互に見て慌てて叫んだ。 
その言葉の意味が解からないと 咽込みながら首を傾けた夕鈴は直ぐに視界がぐにゃりと大きく歪むのを感じる。 首を元に戻そうとすると反対へ大きく傾き、ソファの上で倒れてしまった。 真赤な顔の夕鈴を見て、額に手を宛がいながら蒼褪めた顔の黎翔。

何を飲ませてしまったのかと、カウンタバーに取って返し壜を持ち上げると。
気付けの為にと夕鈴に急ぎ飲ませたのは レミールイ13世ブラックパール マグナム。
アルコール度数43度。
手近にあったとはいえ、どれだけ自分は焦ってたのだろうかと黎翔は瞑目してしまう。
夕鈴の蒼褪めた顔色が紅く染まり、荒い息遣いになっているのに気付き急いで水を用意する。

「ゆ、夕鈴、・・・ごめん。 水飲んで!!」

ミネラルウォーターのペットボトルをカウンターバーの冷蔵庫から取り出し差し出すが、倒れた夕鈴は心臓がバクバクして起き上がることも出来ない。 量は少ないから急性アルコール中毒ではないだろうが、少量でも度数が高いために体が驚いているらしく、夕鈴は動悸と眩暈に身体を起こすことが出来ない。
差し出されたペットボトルを見て、これを如何するのだろうと 訝しげな表情を見せるだけ。 
それもその筈なのだが、黎翔にはそれが解からない。
それでも此の侭では飲めないのだろうかと、グラスに水を注ぐと、やっと夕鈴が理解して震える指をグラスに伸ばした。 黎翔が夕鈴の背に手を回し身体を起こすと少しづつ口にした。

「・・・ゆっくりでいいから、沢山飲んで。 本当にごめん。 ごめんね、夕鈴」

夕鈴が水を飲みながら視線を上げると、そこには小犬陛下の姿。
夕鈴が涙を滲ませた瞳で黎翔を見つめ、グラスから口を離すと、黎翔へとゆっくりと手を伸ばした。 肩を落とした黎翔の頬に触れると小さな声で 「陛下・・・・」 と呟いた。
酩酊した夕鈴の視界には、肩を落として申し訳なさそうな顔の、耳も尻尾も垂れ下がった陛下の姿が見える。 夕鈴が抵抗出来ない、逆らえない小犬陛下の姿が。

「・・・だいじょうぶ。 だいじょうぶですから・・・・。 へいか」

 
頬に触れた夕鈴の、その指先が震えていることに気付いた黎翔の胸は小さな棘が刺さったかのように痛んだ。 自分に似ている、自分じゃない 『陛下』 への囁き。 
その柔らかい声色に苛立ちと痛みを感じてしまう。

まだ会って数日の、何処の者とも知れないこの少女。
だが、何もかも解からないと戸惑う少女から目が離せない上に、庇護欲が駆られ 既に離れがたく感じてしまう。 何がそうさせるのか、黎翔自身も解からない感情に困惑するほどだ。

その少女の瞳が潤み涙が溢れ出すのを見て、黎翔は胸の痛みを抑えてグラスを夕鈴の口元へ寄せる。 「もっと飲んで」 そう言うと夕鈴は瞳を伏せてグラスの水を時間を掛けて、それでも飲み干した。 飲み終えたグラスをテーブルへ置くと、夕鈴の身体を自分へと傾けさせ、頭や髪を何度も撫でながら謝罪を繰り返した。

「本当にごめんね。 気付けにと思って飲ませた酒が未成年の夕鈴にはきついものだったんだ。 すごく・・・慌てていたようで、本当に、ごめんねとしか言えない。 君がこんなに動揺するなんて思わなかったんだ。 兎に角、私の邸には何時までも滞在していて良いから何処かに行くなんて言わないで欲しい・・・・。 それと、ゆっくりでいいからバイトの件も考えておいて」

目を閉じた夕鈴は聞き慣れた懐かしい声に耳を傾けながら、内容は把握出来ないままで荒い呼吸を繰り返し 深い眠りの中へと堕ちていった。

深く気だるい漆黒の闇へと・・・・。






***





目が覚めると、酷い頭痛が夕鈴を襲う。 
また風邪がぶり返したのだろうかと咽喉に手を当てるが咽喉の痛みは感じない。 額に手を当てるも熱がある感じはしない。 それでも頭痛はするし、少し動いただけで眩暈がする。
 
昨日の夜をぼんやりと思い出し、部屋を見回してみる。 見たことの無い、後宮でも黎翔の邸でもない部屋。 しかしベットに大きな窓、テレビという物、天井は高く、床はモコモコしている。 見たことの無い部屋だが元居た世界でない事は明白。 きっと昨日連れて来られた場所の一室なのだろうと想像がついた。
枕に顔を埋めて、『まだ夢の世界が続いているのか・・・』 と溜息を吐いた。

しかし、溜息をついていても仕方が無いと起き上がり 寝台から足を降ろすと・・・・・・。


「きゃああああああああっ!!」

夕鈴が部屋いっぱいに悲鳴を響かせると、部屋の扉が勢い良く開き黎翔が飛び込んで来た。

「どうした、夕鈴っ!」
「っ! いやあああああああっ!!」

夕鈴は寝台から床へ転がるように落ちると、掛け布を引っ張って自身に巻き付ける。
叫んだために恐ろしい程の頭痛が夕鈴を襲い身体を強張らせるが、それでも寝台を挟んで佇む黎翔を睨み付けた。 何事かと飛び込んで来た黎翔が呼吸を荒くして真剣な表情を見せているが、夕鈴は気付かない。 巻き付けた掛け布から顔だけを出した状態で唇を戦慄かせながら叫ぶように問い掛けた。

「なっ! なっ! なんで私・・・・裸なの!?」

真赤な顔の夕鈴に睨みつけられた事より、扉を開けた瞬間に見えた夕鈴の背と腰が鮮やかに脳裏に甦り 口を押さえた黎翔は小さく「・・・それは」と呟いた。


昨夜気付けの為にとブランデーを飲ませ、そのまま眠ってしまった夕鈴を寝室へ運んだが寝かせた途端に眉間に皺を寄せて、荒い息を吐く。 「・・・熱い。・・・・苦しい」 と何度も繰り返す夕鈴を見て、ドレスを着たままでは苦しいだろうと急ぎホテルメイドを呼び、下着以外を脱がせるように指示をした。 髪に飾られた宝石もネックレスもストッキングも。 
全ては息苦しそうな夕鈴の身体を楽にしようとしただけのこと。


「ご、誤解しないでね! メイドに脱がせたんだ。 度数の高いお酒を飲ませてしまって、君が 『熱い、苦しい』 って言うし、ネックレスとか首に絡んだら苦しいだろうと思って・・・。 君に聞ける状態じゃなかったから・・・・。 ごめんね、それは・・・・驚いたよね」

そう説明をすると視線を合わせずに黎翔は違う扉へと近付き、その中へ入って行った。

夕鈴が目をぐるぐるさせながら 『そう言えば、飲んだかも、お酒!』 と痛む頭を押えて昨日をぼんやりと思い出し、更にメイドとは何だと考えた。
 
・・・ メイドって桂香さんみたいな人のこと? 
苦しそうな私を気遣ってくれったってこと? 
やだっ、それなのに私ってば、黎翔さんを思い切り睨み付けちゃった!?


黎翔が部屋に戻って来てバスローブを夕鈴に掛けると、戸惑うように優しく頭を撫でてきた。
「すっきりするから お風呂に入って来て」 と気遣いまでみせてくれる。

「あ、あのあのあのっ! すいません! 御迷惑を掛けたようで・・・。 それなのに、ご、誤解も、その・・・。 わたし、・・・本当にごめんなさい!」
「大丈夫だから、夕鈴。 シャワー・・・・お風呂に入ってサッパリして朝食を一緒に食べよう。 この後に連れて行きたいところがあるから。 ・・・・ね」

優しい言葉を繰り返す黎翔に、夕鈴は黙って頷くしか出来ない。
確かにお酒のせいで重だるい身体と、頭重感はこのままにしておけない。 夕鈴は、少しは慣れてきたユニットバスへと足を向けることにした。





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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 23:59:05 | トラックバック(0) | コメント(2)
コメント
ここでも[i:63992]
夕鈴はどこにいても、このお仕事なのですね
なんかもう、ただただ頑張れと言うしかないですね私は楽しくてしようがないですけど
2012-08-04 土 01:13:08 | URL | ともぞう [編集]
そうそう
やっぱり 『狼陛下の花嫁』ですから。 頑張れと言ってあげて下さい。 もう、彼女は頑張るのが得意ですから。 そしてそれを苛める私。・・・・・ふふふふふ。
2012-08-04 土 01:52:46 | URL | あお [編集]
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