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泡沫人の羽衣  8
続きで~す! 
指摘があったように、ほんの少しですが原作になぞらえて書いています。 
指摘された方、解ってくれてありがとう! 



では、どうぞ。
















その後 風呂から出た夕鈴が部屋に戻るとホテルメイドが二人 にこやかに待っていた。
「え?」 と夕鈴が驚いている内に笑顔で近付くと下着から、髪から、衣装から、靴まで全ての支度を整え出した。 夕鈴が 「じ、自分でっ!」 と言うが無言の笑顔で黙々と手を動かしていく。 プロのメイドの動きに、正直ブラジャーやストッキングに慣れない自分を知り、途中からはもう黙ってされるがままで居ることにした。 

あっという間に鏡の中の夕鈴は昨日とは違う衣装に身を包み、髪は素直に下ろされていた。

ただ片側上部の髪が少し捻られたように可愛らしいピンで留められ、頭を少し動かすと日の光を浴びてキラキラと輝いている。 大き目の石の周りに細長い石が取り囲み、花のように綺麗だなと見ていると、メイドさんが 「お似合いですわ」 と微笑んだ。 
メイドの微笑みが飾られたピンに集中していると解り、嫌な予感に夕鈴が強張った笑顔で 「高そうですね・・・」 と尋ねると 「そうでしょうね、ピンクダイヤですもの!」 と目を輝か
せた。
強張った笑顔のまま 『すごく高いんだ・・・。 後で桂香さんに尋ねてみよう』 と息を吐く。


メイドさんから 「お疲れ様でした」 と言われ立ち上がるが 夕鈴は戸惑うしかない。
肩から肘へ緩やかな布地が纏い、動かす分には支障ない。
上からスポンと被る形の衣装で鎖骨が見えるほど開かれている。 背側に衣装が引っ張られ鏡に背を映すと背中にたくさん付いたボタンが見えて緩やかなギャザーを作っている。
腰には幾重にも細身の革のベルトが巻かれるが締め付けることは無く、そういう飾りなのだろうと思うしかない。 質感は滑らかで、色合いも上品だと解かる。

ただ・・・・膝が見えるのだ。 腰に巻かれた布地が少ない上、屈んだだけで下着が見えてしまうのではないかと気が気じゃない。 それならバスローブで過ごす方がマシだと涙目で鏡の中の自分を見て困惑していた。 それでもメイドが 「お似合いですわ!」 と繰り返すので曖昧な笑顔で固まるしかない。


案内された部屋へ移動すると、黎翔が立ち上がって夕鈴に近付いて来た。 慣れた仕草で手を取るとテーブルへと案内しながら、嬉しそうに夕鈴の衣装を褒めてくれる。

「夕鈴可愛いよ。 うん、すごっく似合う!」
「・・・・・ありがとう御座います。 でも、あの・・・足が出てるんです! これじゃあ恥ずかしくて仕方ありません。 先ほどのバスローブを腰に巻いても良いですか?」

真赤な顔の夕鈴が少し背を丸めて恥ずかしそうに、上目遣いで黎翔を見る。 膝を少しでも隠そうとしているのだが、背の高い黎翔は夕鈴の顔を見るのと同時に、丸めた背のせいで胸元が目に入り慌てて視線を逸らした。 

「食事が終わったら買い物に連れて行くよ。 その時、気に入る服を見つけよう。 それまでは悪いけど我慢してね。 あと、この世界の衣装に少しでいいから慣れて欲しいな」

少しは慣れて欲しいと言われると、それ以上の文句は言えない。 自分だけが恥ずかしいだけで、邸のメイドも、桂香も、ホテルのメイドさんだって足が見えている服装だ。 
これが通常なのかと真赤な顔のまま席に着いた。 


テーブルに着くと足が隠れるからか、少し表情が柔らかくなる夕鈴を見て黎翔は勿体無いと思った。 すらりと伸びた夕鈴の足は驚くほどに白く、普段の衣装が発見時のあの衣装だったと思うと頷けることだったが いい歳の大人が未成年の足を見て動揺するなんて奇怪しいだろうと苦笑してしまうほど 黎翔には魅力的に見えた。
 
「この 『ぱん』 ってサクサクしてて美味しいですね。 卵料理もこんな風に食べるのは初めてです。 青・・・いえ、美味しいです」

夕鈴は一生懸命食べる。 全部を平らげるのは無理なようだが、取り分けた分は綺麗に食べる。 尋ねると 「え? だって勿体無いじゃないですか!」 と当然のように答える。
上流社会のお嬢様のようであり、普通の家庭の娘のようでもあり、時に感じる上品な雰囲気が一体何処から醸し出されるのか興味が尽きない。

・・・・・それにしても、十七歳か。

苦笑しながら黎翔もクロワッサンを口に運んだ。




夕鈴がいくら恐がっても、最上階から階段を使って降りる訳には行かない。 
101階から階段を降りるとなると黎翔だって骨が折れる。 そう説明をして夕鈴と専用エレベーターに乗り込むが、扉が閉まる前から夕鈴は黎翔の腕にしがみ付いていた。 
強張る夕鈴の表情を見て、「何処にでもあるから頑張って慣れようね」と話すと涙目で頷かれる。 おまけにまだ膝上のスカートが気になるようで、夕鈴が何度も押さえているから気になってしまう。

「どうしても駄目なら、昨日乗ったヘリを呼ぶよ? 一度邸に戻って車で目的の場所に移動する事も出来るよ。 時間は掛かるけど、そうしようか?」
「・・・いえっ、大丈夫ですっ! そこまでして頂く訳には参りませんっ! 大丈夫です。 何事にも努力は必要です! な、慣れる為にっ!!」

涙目で見上げられ、しがみ付いた腕に力が入るのを感じる。 
黎翔は口元を押さえて瞑目した。 自分を何度律しても、この隣で震える少女が可愛くて仕方が無い。 取り立てて特別美人な訳ではないし妖艶でもない。 抜群のプロポーションでもないし、何か特筆すべきものを持っている訳でもないだろう。 「記憶喪失の迷子です」 そう言って警察に渡しても世間に咎められることもない。

しかし発見された夕鈴が屋敷内に連れ込まれた時から、気になって仕方が無いのだ。
李順にも 「そこまで入れ込むのは何故でしょうか」 と尋ねられたが、自分にも理解し難い感情をどう説明すればいいのだろう。


「あ、あの、珀様? 大丈夫です、覚悟を決めましたから! ただ腕は・・・ 珀様の腕にしがみ付くのだけは許して下さい」

夕鈴の言葉に総毛立つ。 やっぱり自分は奇怪しいのだろうか。
小さく詰めていた息を吐き、階下へとボタンを押すと夕鈴の手が黎翔の腕へと強くしがみ付いた。 静かに下りていくエレベーター内、夕鈴が息を止めて真赤な顔で耐えているから自分の心臓の音が周囲へ聞こえそうだと黎翔は心の中で思った。

まるで十代の初心な頃に戻ったかのように感じ、眉根を寄せて苦笑した顔を夕鈴へと向けた。


「・・・・なんか耳がきーんってします」

涙目で僕を見上げる君に、「唾を飲み込んで。気圧の変化で一時的に鼓膜が振動しているだけだよ」 と話すと不思議そうな顔をして、それでも唾を飲み込んだ。 治ったのか安堵の表情を見せて夕鈴は僕の腕に絡み付く。 いや、ただしがみ付いているだけなのだが、そう思えてしまう。
全く・・・・・ いい歳の大人が十代の少女に対して思うことじゃないだろう。

「あのっ、すごい勢いで数字が変わっていきますが、これは?」

エレ内の階表示パネルを見上げる夕鈴に、「今いる階数だよ。あと少しで『2』になる。 そこで下りるから」 と告げる内に、静かに扉が開かれた。 緊張していたのだろう、扉が開き歩き出そうとしたが、夕鈴の膝がガクガクと笑って歩ける状態じゃなかった。

「す、すいませんっ! 少しだけ、少しだけお待ち下さいませっ!」

真赤な顔で僕の腕にしがみ付いたまま、笑う膝を必死に動かそうとして腰を突き出した姿に思わず笑い出してしまう。 ぎっと睨み付けられ、急ぎ口を隠すがもう遅かったようで夕鈴の目に涙が浮かんできた。

「ご、ごめんね、夕鈴。 そうだよね、乗ったのは初めてだしね」
「くぅっ、だ、大丈夫ですから! 少ししたら・・・・ひやぁ!」

苦笑しながら夕鈴を抱き上げると、真赤な顔のまま僕を睨み付ける。 その表情も可愛いと思いながら、「ごめんね、時間が惜しいんだ」 と告げると、一瞬瞳を大きくして直ぐに項垂れた。 如何したのかと顔を覗きこむと。

「何処かで・・・動く部屋の勉強をします。 正直、まだ膝が震えてますから」

悔しそうに君から漏れる声に夕鈴の膝に注目すると、確かに小刻みに震えている。
そして其処から伝わる夕鈴の暖かさ。 素肌に触れるのは初めてだったなと注視していると、夕鈴の手が膝を隠してしまった。
隠されたことに思わず眉間に皺を寄せると、「はっ、恥ずかしいので余りっ!」 と震える。
逆に煽られているように思えて目を瞠ると、困った顔で 「足を出す衣装は初めてで・・・」 と泣きそうな顔を見せた。 確かに抱き上げていると下着が見える可能性があるかもと一度床へ降ろし、自分のジャケットを脱ぐと彼女の腰に巻き付ける。
戸惑う夕鈴を再度抱き上げると 黎翔は満足げな笑みを浮かべた。

「これで君の悩みも、僕の心配も解消したね!」
「・・・? ありがとう御座います・・・・?」







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 00:55:55 | トラックバック(0) | コメント(0)
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