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泡沫人の羽衣  11
陛下が出なくなって、あっという間にここまで来ましたが、黎翔さんがいるので違和感を感じません。段々自分の感情に正直になる黎翔さんは「狼化」していくような?本当に長いのですが、お暇な時にでもお付き合い下さいませ。



では、どうぞ











エントランスから左へと誘導されロビーより大きなダンスフロアに目を瞠る。

花恵宴に招かれた楽団よりも、格段に大人数が壇上で様々な楽器で奏でていた。 
ダンスの練習時に聞いたことのある落ち着いた曲が会場内に流れ、黎翔と共に歩いていると会場内からざわめきが起こった。 夕鈴が驚いて黎翔の腕に掛けた手に力を入れると、その手を優しく撫でられ 顔を上げると黎翔が夕鈴を見下ろして笑みを見せてくれた。


ざわめきは黎翔がホールに登場したためと解かる。 
それも何処の誰とも解からない女性を伴って会場に現れたたのだから注目だって浴びるだろう。 招待された客の女性たちから熱い視線を受ける黎翔と、不躾に上から下まで見られる夕鈴。 
夕鈴は笑顔のままで周囲に気付かれないように小さく息を吐いた。


『官吏に見られていると思えば気にならない。 方淵の視線より苛立たない! 会長の黎翔様の側に居るんだから、こうなるのは端から解かっていたことよっ』


『妃演技』 だと思い、優雅に微笑みながら黎翔の腕に手を掛けフロア内を歩いていく。 
会場に居る女性達からの羨望と妬みの視線が痛いが、敢えて微笑みで受け流し 黎翔を見上げて口角を上げると、黎翔が腕に掛けた手を撫でてくれる。


そして壇上に黎翔が進むと、夕鈴は胸を撫で下ろしながら一旦会場から廊下へと出て指定された部屋へと移動した。 黎翔が会場内の招待客に会長として御礼と挨拶をしている間、李順が部下と一緒に夕鈴の元へやって来て軽食を用意してくれた。 ドレスアップなどで食事をする暇が無かった夕鈴のために黎翔から指示があったと聞き、嬉しくなった。 
 
簡易テーブルで食事を始めると李順の背後で無言のまま立ち尽くす部下の顔を見て思わず夕鈴は咽込みそうになった。 夕鈴の様子にその人物はあからさまに眉間に皺を寄せ睨み付けるような表情を見せる。  

『桂香さんの言ったとおり!! パラレルって奥が深い・・・』

如何見ても部下だという彼は 柳方淵そのもの。
無言で睨み付ける彼に居た堪れなくなり、李順さんに小声で 「彼に私はバイトです、と言ってもいいですか?」 と尋ねると、「これ以上秘密が広がるのを防ぎたいので内緒でお願いします」 と言われた。 彼の視線は憎々しげで、正に方淵を彷彿とさせるものだ。
きっと尊敬する珀黎翔会長が連れて来た不審な人物(わたし)に何か言いたいのだろう。
政務室を思い出すな~と苦笑を漏らすと、更に眉間に皺を寄せて睨むから困ってしまう。


招待客への挨拶をし終えた黎翔が優雅に御辞儀をすると会場からは拍手喝采が沸き起こり、背後に居た楽団が曲を奏で始めた。 壇上から黎翔が降りると直ぐに大勢の人々が押し寄せた。 彼の功績を称え褒め言葉を告げる者、共に起業をしたいと申し込む人、取材をしたいと申し込む取材陣などが黎翔を囲み、彼の姿が見えないほどになった。 
勿論その人垣の中には自分の姿態に自信がある妖艶な女性も多く、熱い視線と共に少しでも黎翔に触れようと近付いて来る。

「皆様、本日はホテル開業の祝いとしてダンスを楽しんで頂きたいと思います。 楽団の演奏と共に 皆様どうぞ御楽しみ下さい」

その言葉に潤んだ瞳の女性陣が黎翔を縋るように取り巻くが、黎翔はするりと身を躱すと休憩を終え会場へと姿を見せた夕鈴の元へ近寄り、その手を持ち上げた。 
一瞬戸惑った表情を見せたが、直ぐに 『バイト!!』 と割り切った夕鈴は黎翔に微笑みながらフロア内中央へと共に足を進めた。




黎翔が壇上の楽団に目を遣ると静かに曲調が変わり、二人はステップを踏み始める。
ダンスフロアを滑るように軽やかに二人が舞うと、感嘆の溜息が聞こえて来たが夕鈴はそれどころでは無かった。 何度も練習した曲とはいえ大勢の人に囲まれた状態でのダンス。
強張った笑みを見せながら黎翔の胸と手に手を添わせて、必死にステップを踏んでいる。 
ふんわりと広がる裾と、目の前の黎翔からの涼やかな香りに瞑目しそうになる。 
耳では音楽を聞いている筈なのに、揺れる頭の中はふわふわと現実感が無い。


必死にステップを踏む夕鈴は頬を紅潮させ、息継ぎの為に薄く開いた唇は艶やかで、サイドを緩やかに編みこみ後ろはそのまま流した髪がステップを踏むたびに舞う。
髪に飾り付けられたダイヤが光を浴びてキラキラと輝きを放つ。
今日の為に仕立てたドレスは彼女の白い肌に合うベビーピンクを基調としたモノで、デコルテが大きく開けられており、胸元はギャザーが寄せられ優しく包み込んでいる。
ふんわりした肩口から豪奢なレースが肘近くまでを飾り付けており、細い腰を大きな紫紅色のサッシュリボンが覆い、そこから裾が大きく広がっている。 Aラインのドレスは夕鈴がステップを踏み度にふんわりと舞い、レースが幾重にも重ねられたパニエが覗く。 
普段足を見られることに躊躇する夕鈴の為に、長めのドレスに仕立てたがステップを踏みやすくする為にそれでも夕鈴が戸惑うほど足が見えてしまう。 黎翔にくるくる回されるたび脹脛に空気を感じ、夕鈴は緊張してしまう。 するとタイミング良く夕鈴の腰に回る黎翔の手に引き寄せられてしまい、他の事を考えることが出来なくなるのだ。


少し顔を上げると整った黎翔の顔が存外近いところにあると判り、心臓が跳ねる。
強張った笑顔を見せると妖艶な笑みが返って来た。 気付くと周囲でも沢山の男女が踊り始めていて、踊りながらも女性が黎翔へと熱い視線を送っているのが見えた。 
その視線に気付く度に 『バイト中! ぱーとなーのバイト中』 と口の中で唱える。

音楽が途切れた時を見計らい、咽喉が渇いたと夕鈴は黎翔の手を離れて壁近くのブッフェへ行き飲み物を手にした。 頬が紅潮し未だ胸が跳ね続けている。 
夕鈴は深呼吸した後、今しがたまで一緒に踊っていた黎翔の姿を追った。 
彼はあっという間に女性陣に囲まれ、次のダンスを強請れている様子が見えた。 
胸が痛んだが、あれは陛下ではないのだと目を伏せて視線を逸らし、自分を戒めた。 

・・・・・・・・・・狼陛下には誰も近寄らない。 
妃にして欲しいと多方面から望む貴族の声はあるけど、内政が整うまではと其れを全て蹴っている状態。 全ては磐石な国造りの為に行っている事で、そのためのバイトをしているのが自分だ。 それなのに今は傍に居られない現状を思い夕鈴は視線を足元に落とした。 
落とした視線の先には履き慣れない靴。 ヒールはそれほど高くは無いがダンスを踊るためと、身長差がある黎翔のため、慣れない高さのヒールを必死で履き慣れようと努力した靴。 
数曲踊っただけで靴擦れがおきてしまったようで両の踵が酷く痛む。

それも今だけのこと、バイトなのだから仕方が無いことなのだと夕鈴は近くの椅子に腰掛け足を休ませた。 椅子に腰掛けると人だかりに黎翔の姿は見えなくなる。



そこへ肩も露な女性が数人近寄って来た。 気配に気付き夕鈴が顔を上げると豪奢な女性達が夕鈴を囲むように取り巻いた。 皆ボディラインがはっきりとしたイブニングドレスに身を包み、夕鈴が顔を顰めるほど香水の匂いを纏わせていた。

「ちょっと伺いたいの。 ・・・・・貴女、珀黎翔様の何?」
「貴女だけと踊っていらっしゃるけど、そろそろ離れてもいいのではなくて?」
「どの様な立場か解かりませんが、独り締めなんて御止め頂けるかしら?」

上からの冷たく鋭い視線は苛立っており、黎翔と共に現れた少女に対して訝しむ視線が見て取れた。 黎翔が夕鈴以外とは踊らないと話しているのを聞き、その少女は一体何者なのかと直接問い質しに来たようだ。 
夕鈴は 『来たっ!』 と身構えるも、その表情は落ち着いた態を見せる。

「・・・・まあ、ご挨拶もなしで離れろとは突然ですのね? 私は彼の親戚の者です。 田舎から出て来ましたので 彼から離れるなと言われているんですの」

ずきずきと痛む足を隠し、周囲を囲む女性達に優雅に微笑んで答えた。 
一人が 「親戚ですって?」 と少し慌てた声を出すが、一番最初に声を掛けてきた女性は声高に夕鈴を見下ろした。 艶やかな赤い口紅がひく付く様子が目に入る。

「ただの親戚でしたら私達の邪魔はしないで欲しいわ。 お嬢さんにはダンスはお早いでしょう? ここで 『お花』 になっているのがお似合いですわよ」

花になっているのがお似合い?
その言葉の意味は判らないが、何となく厭味を言われたのは理解出来た。
睨み付けるような視線が痛いが、夕鈴は微笑んだまま女性達を見上げる。
 
「そう申されても離れるなと言われておりますので、難しいですわ」

夕鈴が答えると、数人の女性が苛立ちも顕わに顔を近づけて来た。

「子供は寝る時間だから、御帰りになった方が宜しいのでは?」
「そうですわね、大人の時間に子供は必要ありませんものね。 こんな子供に黎翔様を独り締めされているなんて 有り得ませんわ」
「・・・・子供のお守りだなんて黎翔様が御可哀想ですわ!」
「あら、この子のネックレス・・・・ピンクダイヤだわ。 まあ、髪飾りにも」

夕鈴を睨み付ける視線が一層強くなり、『ああ、やっぱりこの宝飾は高いんだ・・・』 と瞑目した。 ぱーとなー役には必要だからと飾り立てられたが、首と頭の飾りを鏡越しに見て夕鈴はめまいを感じた。 そして豪奢な衣装の女性人が睨み付ける程にやはり高い品と判り、思わず手を当てて隠そうとすると、その仕草が女性達の悋気に触れたようだ。

「こんな子供が・・・・」

その時、女性達の背後から夕鈴を呼ぶ声がした。 夕鈴を囲む女性達が一気に蒼褪め、声のする方向へと顔を向ける。 そこには眉間に皺を寄せた冷酷な表情の黎翔が立っている。
数歩下がった女性達は、何処から聞かれていたのだろうと戸惑いの表情を浮かべるも、直ぐに気を取り直し、甘い声を出し黎翔の傍へと近付いていく。
 
「彼女に何か?」

黎翔が短く問うと、一斉に彼女達は喋り出した。

「黎翔様の御親戚と伺い、少しお話をさせて頂きましたの。 ね、貴女?」
「そうですわ。 それにこの方のネックレス、とても素晴らしいダイヤですわね。 カットも独特で美しい輝きですわ! 溜息が零れてしまいますわ」
「ドレスも良く御似合いで、可愛らしいと褒めておりましたの」

一斉に喋り出した女性達に冷たい視線を向け、それでも営業用の微笑みで黎翔は答えた。

「昨年オープンした宝飾店から最高級品を彼女に贈らせて貰ったんですよ。 彼女は私の大事な愛しい人ですから・・・・。 さあ、夕鈴もう一曲踊って欲しい」

黎翔の台詞に女性陣から低いざわめきが聞こえ、蒼褪めた顔や怒気に赤らめた顔が見えた。
差し出された手に、おずおずと手を重ね夕鈴はフロアへと誘われた。 
背後からは恐ろしいほどの鋭い視線が飛んでくるが、敢えて気にしないように笑顔を作る。
『臨時花嫁のバイトだと思え!』 と何度も自分に暗示をかけ流れ出した曲に身を委ねると、夕鈴の腰を掴む黎翔の手に力が入り身を寄せられた。 

 






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 23:59:59 | トラックバック(0) | コメント(0)
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