スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告 | --:--:--
泡沫人の羽衣  13
いろいろなコメントありがとう御座います。 まあ、妄想二次創作作品なので、
のんびり書いております。 そして身体への気遣い、本当にありがたいです。感謝です!皆様も暑さ続く毎日ですので、よく食べ、よく寝て、オリンピック見て応援しましょう!


では、どうぞ。













後宮の庭園とは異なる洋風の庭に興味津々の表情で歩いていると、上から自分を呼ぶ声が聞こえた。 顔を上げると李順と解かる。 3階から声を掛けられ、何を言っているのかが解からず 庭の散策を諦めて夕鈴は李順の元へと急ぐことにした。


「・・・すいません、李順さん。 もしかしてお庭に勝手に入ってしまったのって駄目だったのでしょうか! ちょっと散歩していたらすごく綺麗な庭だったので」
「いえ、そうではありませんが夕鈴殿に頼みごとが出来てしまい、申し訳ありませんがお呼び出しさせて頂きました。 部屋に居らず探そうかと思っていた所でしたので良かったです。 ・・・ところで、夕鈴殿」
「は、はいっ!!」

眼鏡を持ち上げる李順を見ると、違う人だと解かっていても背筋が伸びて姿勢を正さなきゃならない気になるから不思議だ。 小さく頷いた李順は頼みごとの内容を夕鈴に告げた。

「只今 貴女は会長の縁談除けとして雇われていますね。 ・・・・・・早速ですが指定のホテルへ行き、黎翔様と婚約者としての演技をして来て欲しいのです」
「婚約者としての演技・・・ですか。 はい、お役に立てるならその様にさせて頂きます。 直ぐに伺いますが、何か注意する事はありますか?」

未だにこの世界に慣れていない自分を知っているため、李順に気を付ける事項の確認をする。
李順は姿勢正しい夕鈴を上から下まで一瞥すると、顎に手を当て暫し黙った。

「・・・黙って微笑んで会長の横に立っていれば良いだけの仕事ですが、今の姿では無理ですね。 急ぎ其れなりの衣装へと整えて頂きます」
「衣装を替えるって・・・、あ、いえ。 解かりました、直ぐに!」
「これから向かうホテルには縁談を薦める、他企業の会長がいらっしゃるそうです。 その方は娘様を伴っていらっしゃるとの事ですが、今は縁談を受ける訳にはいかず、既に婚約者が居るということにして如何にか円満に避けたいのです。 ですから貴女はただ黙って微笑んでいるだけでいいですからね。 黙ってです!」
「は、はいっ!!」

李順の言いように懐かしさを感じて思わず笑顔で勢い良く返事をすると、李順から眉を寄せた怪しむような顔で見つめられた。 夕鈴が慌てて真面目な顔をすると溜息を吐かれ、それすらも懐かしいと思った。
 
李順からの説明の後、桂香に着替えを手伝って貰い着慣れない衣装に戸惑いながら、少しは慣れてきた車に乗り込み、指定されたホテルへと急いだ。
さあ、しっかりバイトをしなきゃ!

そこで夕鈴は 「あっ!」 と思わず声をあげた。 
もしかして これから会うお嬢様って『紅珠』 かしら? 
これまでの流れだと、紅珠が出てくる可能性が高いと思えた夕鈴は少しだけ気が楽になっている事に気付いた。 白陽国での紅珠は『狼陛下』が恐くて、思い出しただけで全身を震わせるトラウマを抱えてしまっている。 こちらの世界でも同じかしらと考え、それなら演技も楽かも知れないと想像した。






しかし、夕鈴の想像は半分当たりで、半分は大きく外れていた。
同じ系列の企業だという、氾カンパニーは主に医療系に名を馳せており、多数の病院経営や医療研究所の運営及び従事者の育成、高齢者施設の運営、高額所得者向けの保養施設などを多数手掛けていた。 
その一人娘といえば紅珠だろうと思い、異世界ながら会える嬉しさに浮き立ちながら黎翔と共に約束の部屋へと向かえば、そこに居るのは想像を遥かに超えた美しい女性だった。


「水月・・・さん?? いや、紅珠み、たい・・・・?」


思わず呟いた声は幸いにも相手には届かなかったが、夕鈴は彼女から目が離せなかった。

やはり氾大臣そっくりの氾史晴が目の前にいて、彼が氾カンパニーの会長と聞き納得する。
彼なら経営や運営は卒無くこなせるタイプだろうと思えた。 
王宮での手腕をみる限り 場所が違えど同じなのだろうと思えたのだ。 
政務室などで何度も見た、同じような柔らかい物腰で柔和な微笑みを浮かべた氾会長は夕鈴を見ると静かに頭を下げた。 はっとして夕鈴も急ぎ頭を下げると、黎翔が夕鈴の肩を掴んで自身へと寄せた。 夕鈴は頬を染めて言われた通り黎翔の隣で背を正し笑みを返す。

『ただ黙って微笑んでいるだけでいいですから』 

李順から言い付けられた言葉を心の中で何度も唱えながら。


「氾会長、時間を作って会って欲しいと言われたが、互いに忙しい身だ。 早速用件を話して欲しい。 ・・・・愛しい人と約束をしていたので時間が惜しいのだ。 その時間を割かねばならないような用件なのかな? 氾会長?」
「それは申し訳ありません。 新しい秘書を雇う事になりましたので、彼女を紹介しようと思い足を運んだ次第です。 御社との会合や連絡時には今後彼女を多用する予定ですので、是非 顔を覚えて貰いたいと思ったのですよ。 ああ、近々合併の話が出ている施設の話のついでですがね。 詳細が纏まりましたので、その報告と修正箇所の指摘を・・・・・。 お時間は宜しいでしょうか?」

氾大臣、いや 氾会長が微笑んで隣の女性を紹介した。 
黎翔へ御辞儀をした女性はそのまま俯いていたが、氾会長が声を掛けると顔を上げ、黎翔を見つめると頬を染めてそっと目を逸らした。 

紅珠のような大きな瞳に艶やかな唇。 顔の造作や表情は紅珠そのものなのに、長い髪を緩やかに三つ編みにした彼女はすらりとした高身長で 全体の姿は水月にしか見えない。 
紅珠の可愛らしい表情と水月の落ち着いた雰囲気を持つ、正に『好い処取り』 の女性。
 
黎翔を見つめる瞳が可愛らしく、それなのに大人の微笑みが妖艶に見える、すごく素敵な美人だと、夕鈴はぽかんと口を開けそうな自分の口元を慌てて押さえた。
まるで大人になりきれていない妖精のような印象だ。 
秘書という事もありリボンタイが華やかな、それでいてボディラインが強調されるスーツに身を包んでおり、まるでテレビで見たモデルさんのようだと夕鈴は思った。


李順が夕鈴に着替えて出掛けるようにと言った意味がようやく解った。
ワンピースにボレロを着て庭を散策していた夕鈴が、そのまま黎翔の傍に立つと親戚か、近所の子供だと思われて居ただろう。 
離宮での寵妃衣装用意や化粧のスキルを思い出し、やはりここでも李順は侮れないと夕鈴は思った。

着替えるように言われた夕鈴は、淡いオレンジカラーでフロントがアシンメトリーな裾が膝を隠す、シフォン素材の柔らかいドレスを着ていた。 ウエストに向かってギャザーが入っており、胸元が柔らかく包まれている。 背中部分は編み上げになっており、桂香が少しきつめに締め上げてくれたので その分腰から下のフリルがふんわりと広がり夕鈴を細く魅せる。 
同じカラーのボレロを着て、髪は片側だけ編みこみを施しピンで飾り付けていた。
初々しい婚約者らしい装いで黎翔に寄り添い、微笑み続ける夕鈴。

その笑みの影で、異世界である此処でも同じように偽者を演じる自分に胸が痛んだ。 
『バイト』 だと解かっているのに・・・・・。 黎翔は 『陛下』 じゃないと解かっているのに、胸が痛くなるのは違うと夕鈴は思った。 
ふるっと頭を振り、今は婚約者らしく微笑むだけだと強張った笑顔を氾親子に見せる。


「・・・・宜しく、珀黎翔です。 大抵は秘書課の李順が対応するでしょうから、後日 改めて彼に紹介する機会を設けましょう」
「はい・・・ 氾紅珠と申します。 会長の秘書でもあり、娘でもあります。 これから度々逢う機会があると思いますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます」

頬を染めた紅珠が震える手で黎翔と握手を交わす。


すぐに黎翔は振り向くと柔らかい表情を夕鈴に見せ、「氾会長と仕事の話し合いを行なうことになったから」 と残念そうな表情を見せる。 その間、紅珠と共に別室にて待つように案内され、その部屋で、そっと彼女の顔を伺い見た。 『好い処取り』 の羨ましいほどに美しい彼女に正面から視線を合わせることが出来ずに、どうしようかと重ねた手をモゾモゾさせるしか出来ない。 
すると、紅珠がやんわりとした雰囲気で椅子を勧めてきた。 

「珀会長と父が話し合いをしている間、わたくしが御相手をさせて頂きますわ。 まずはお掛けになって下さいませ」

紅珠の笑顔と声に、夕鈴は勧められるがままに椅子に腰掛けた。 
柔らかな微笑みを浮かべた妖艶にも見える紅珠が夕鈴をじっと見つめるため、俯いてしまいそうになるが、今は一応珀黎翔の婚約者なのだ。 縮こまっている場合じゃない! 
其れなりの態度を演じなければ、バイトとしての立場が無いっ!
夕鈴が背筋を伸ばして紅珠に向き合うと、未だ頬を染めたままの彼女から話し掛けられた。

「あの、珀黎翔様の・・・・婚約者様、ですよね? 先日行なわれたホテルのレセプションで珀黎翔様とダンスを披露されておりましたでしょう。 ドレスがとてもお似合いでしたわ。 あの、御名前を御伺いしても宜しいでしょうか?」

紅珠は小首を傾げて問い掛けてきた。 妖艶なのに可愛らしい仕草ってどうなのよ!? 
紅珠が大人になったらこんな風になるんだろうなと考えると、何だか泣きそうになる。
握手していた時の二人の雰囲気がとても似合っていたと、過日の後宮での二人を思い出して
しまう。 でも今は泣いている場合じゃない。 バイト中なのだっ!!

「初めまして、汀夕鈴と申します。 今回はお邪魔をしてしまい申し訳ありません。 でも、氾紅珠様に御会い出来て嬉しいです。 宜しくお願い致します」

強張っているだろうと思いながら笑顔を作り、紅珠に挨拶をした。

そして、何時の間にか初めて後宮で会った時と同じように最初は緊張していたが 氾紅珠の柔らかい物腰と豊富な会話で思いも掛けず、楽しいひと時が過ごせた。



氾会長が扉を叩き、黎翔と共に部屋に足を踏み入れる頃には、笑い声を上げるほど紅珠と親しくなっていた。 黎翔が驚いた顔で苦笑し 夕鈴を誘って退室しようとすると、紅珠が夕鈴へ 「また御会いしましょうね」 と微笑みかけて来た。 
夕鈴が嬉しそうに 「ありがとう御座います。是非」 と頷くと隣で黎翔が小さな咳払いをした。  

黎翔たちが退室のため横を通り過ぎる時、夕鈴は、頬を染めてはにかんだ表情を向ける紅珠に気が付いた。 その彼女に冷たい一瞥を見せるも、紅珠の頬は染まるばかり。
紅珠のその表情を無視して、黎翔は夕鈴に視線を向けると肩を抱いて妖艶な笑顔を見せた。
夕鈴が瞬時に真赤な顔になり思わず視線を背けると、何か言いたそうな表情を浮かべる氾会長と目が合った。 

『紅珠の方が黎翔様にお似合いなのは 私も解かっています』 と思いながら何も言えずにいた。 夕鈴は 『でもバイト中ですのでっ!』 と気持ちを切り替えて黎翔に寄り添い、肩を掴む黎翔の手に自身の手を重ねて、氾会長に、そして紅珠に微笑んで見せた。 






「今日は突然でごめんね。 でもそのお陰で着飾った夕鈴を見ることが出来て嬉しいよ。 今日の夕鈴もすごく可愛いね! そのドレス、とても似合うな」

今日の仕事は全て終わったからと、黎翔が自社のレストランへと夕鈴を誘い 少し早めの夕食をすることになった。 黎翔が楽しそうに夕鈴の衣装を褒めてくれるが、それよりも夕鈴は先刻紅珠の黎翔を見つめる表情が気になっていた。 
どちらの世界の李順も 『今は縁談を受ける訳にはいかない』 と言っていたのを思い出し、ここでも同じように胸が苦しくなるのを感じた。 
そう、・・・・『今は』 なのだ。 
近い将来、然るべき伴侶がどちらの黎翔にも添うのは間違いのないこと。  

同じ痛みを受けるなら、私は・・・・・・・・・陛下の傍で痛みを受けたい。


「夕鈴、・・・・・彼女が気になる?」
「え? あ、いえ・・・。 驚くほど綺麗な方だったので素直に驚きました。 それに物腰が柔らかく、すごっくお話し上手で楽しかったんですよ」

ぼんやりと陛下に想いを馳せていた夕鈴は、慌てて目の前の黎翔へと気持ちを切り替えた。
そして、見た目の美しさだけでは無く、彼女の機知に富んだ話のお陰で楽しい一時を過ごす事が出来たと黎翔へと報告をした。 きっと誰が相手でも卒なくこなす女性なのだろう。
外見も中身も上品で美しい彼女が黎翔の隣に立つと、一枚の絵のように綺麗で本当にお似合いだったと素直に思って、切なくなった。 


「綺麗なだけで父親の言うなりの人形だろう。 今回も縁談が目的なのは解かっているし、他にも多数の企業トップや議員とも、それが目的で会って居たと聞く。 忙しいことだ。 その中から声が掛かれば 更に上を目指している氾会長も喜ぶだろうな。  綺麗な薔薇には・・・・だ。 それより今日の夕鈴の  ・・・・・え?」






→ 次へ


スポンサーサイト

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 23:20:10 | トラックバック(0) | コメント(0)
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。