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泡沫人の羽衣  14
どんどん話が進んでいます。すいません、白陽国まで書ききれません。御了承下さい。パラレルワールド主体で書かせて頂いております。ご了承の上御覧下さい。


では、どうぞ。














黎翔が夕鈴の顔を見ると笑顔なのだが どう見ても青筋を立てて怒っているように見えた。
グラスを持つ手が小刻みに震え、中の液体が揺ら揺らと揺れている。
その光景に驚いて夕鈴に恐々と尋ねてみた。 

「あ、の・・・、夕鈴? 如何したのかな? ・・・・・もしかして突然呼び出されたから怒ってる? それとも、こんな仕事は嫌だったとか?」
「いいえ、仕事ですので呼ばれればどこへなりとも私は伺います。 それに対しては全く怒っていません。 ええ、それに対しては」

こくんっと唾を飲み込んだ黎翔は冷たい怒りを押し込めた表情の夕鈴を見て、では何に怒っているのかを恐る恐る聞いてみた。 夕鈴は冷やかな視線を投げ掛けながら、薄く笑みを浮かべている。 初めて見た夕鈴の表情に、驚きと動揺でいっぱいになる黎翔。

「でも夕鈴、怒っている・・・・・よね?」
「怒っているように見えますか? ・・・・ええ、今の黎翔様のお言葉に怒ってます! あんなに優しく綺麗な紅珠様に対して、『綺麗なだけ』とか、『声が掛かれば』とか。 その上 『綺麗な薔薇には・・・』 の後は棘って言うつもりですか?  ふ~ん・・・」

下から睨めつけるような視線を感じ、黎翔は如何したらいいのだろうと思案した。

「あ、あの・・・、夕鈴。 だってね、氾会長はその気でね・・・・」
「氾会長はその気だったとしても、紅珠様は違うかも知れないじゃないですか! それに本当にそうだとしても これから彼女は父親の仕事の手伝いをするんです。 もう少し愛想良くしてもいいんじゃないですか? あんな冷たい態度で酷いです! それなのに、その笑顔で何時の間にか紅珠様を陥落させているしっ! 紅珠様、真赤な顔で黎翔様を見て居たんですよ? あんな綺麗な人にあんな顔させて。 ご自身のその笑顔の威力をちゃんと判って下さい!」
 
一気に喋り出した夕鈴に黎翔は驚いた。 3ヶ月近く夕鈴を見てきたが、こんな風に文句を言って怒り出すところなんて見たことがなかったのだ。 そして最後の台詞が気になった。

「えっと、笑顔で陥落って・・・そんな事していないし。 第一、娘が秘書になったって、わざわざ時間を取らせるのは 氾会長が縁談のつもりだからだろう? こっちはその気が無いと柔らかく断わる為に夕鈴に来て貰ったんだ。 夕鈴・・・ それより私の笑顔はそんなに威力があるのかな? 気になるなんて、もしかして、その焼きもちも演技なのかな?」

その言葉に夕鈴は驚いた。 思わず黎翔を見ると嬉しそうな顔で夕鈴を見ているから余計に驚いて目を瞠る。 そんな筈はない! そんなことしていない!

返答も出来ずに夕鈴は思わず黎翔から顔を背けた。 
私は黎翔様に焼きもちなんて妬いていないはず。 陛下とは違うと判っているのだから。 
それでも指摘されたその言葉に直ぐに返答が出来ないのは何故? 
グラスの水を飲み呼吸を整えて、視線を黎翔から外しながら夕鈴は言葉を選んだ。

「・・・つ、つまり紅珠様はその気で来たのかなんて判りませんよね? それなのに彼女まで悪者のような言い方は駄目です! それは彼女への侮辱ですっ!」

紅珠を庇っているのであって、そして無駄に笑顔を振りまいて女性を陥落させている黎翔に腹を立てたのであって、別に私は焼きもちなんて・・・・・。 
でも指摘された言葉に胸が痛むのは何故? いや、陛下じゃないのに、痛む訳がないっ!
戸惑ううちに頭の中が混乱して来て、夕鈴の瞳が潤み出した。 

顔を背けて肩を竦ませながら答える夕鈴を見つめながら、黎翔もその言葉に返事をする。

「夕鈴、それでも氾会長はその気だったんだ。 だから仕事に亀裂が生じないよう君に来て貰ったんだ。 勿論、連れて来られた彼女は判っている筈だよ」
「で、でも 紅珠様は私にあんなに気さくに話をしてくれて・・・・・。 花を咲かせたように綺麗で、可愛くて、お話し上手で、それに優しくって・・・・・」
「処世術に長けているだけだ。 それに私にその気がないのだから早めに決着をつけておいた方が互いの為だ。 これ以上、彼女にも関わって欲しくないしね。 ・・・・誤解は解けたかな? そんなに心配しなくても君だけが私の未来の妻だよ」


陛下ミタイナコトヲ、陛下ミタイナアナタガイウナンテ。


その気がない・・・・。 ええ、判っています。 
その気が無い貴方が縁談を断わる為に雇った 『偽婚約者』 が私なのだから。

「あの・・・ すいません、ちょっとレストルームへ・・・・」

すっかり反撃の言葉を失った夕鈴は戸惑ってしまい、その場から逃げ出すように離れた。
黎翔の何故か嬉しそうな表情を見ていられなくなったのもある。 そんな顔を向けられてもただ困惑するだけなのだ。 
異邦人の私が少しの間 『臨時婚約者』 を演じるだけなのに新しいドレスは作らせるし、宝飾を贈ってくるし、言葉や態度がいちいち大袈裟なくらいに甘いし。 
元は白陽国下町の一庶民の自分。 狼陛下の時にも動揺したが異世界の 「狼度」 が高い黎翔にも思い切り動揺してしまう。








レストルームの鏡で自分を見つめ、夕鈴は溜息を吐いた。
水月さんみたいに綺麗で可愛い顔立ちの紅珠にも靡かない黎翔に 「そんな気は無い」 と繰り返し言われ、安堵してしまう自分が恥ずかしい・・・・・。 
それなのに黎翔の言葉にムキになって必死に抗おうとする自分が馬鹿みたいだと、涙が滲んでしまう。 あの人は陛下ではないのに。 
似ているだけの違う世界の人だと解っているはずなのに心臓が跳ねてしまうのが嫌だった。 


俯いて首を振る。 それでも今はバイト中なのだ。 
雇い主の望むように 『偽婚約者』 の仕事に戻らなきゃ。



夕鈴が頭を上げて鏡を見ると鏡の中に紅珠の姿が映っていた。 
やはり大輪の花を咲かせたように綺麗だなと思ってしまう。 でもここはレストルーム。
夕鈴が目を瞠り鏡を注視すると、妖艶な微笑みを浮かべた紅珠が手を振っていて、その手には黒い長四角のモノが握られているのが視界に映る。 夕鈴が鏡越しに見る紅珠に何も言えずに唖然としていると、黒い長四角のモノから蒼白い火花が散って ふいに鏡から消えた。

「ごめんなさいね」

そう聞こえたのと、鋭く熱い痛みが夕鈴の体に奔ったのは同時だった。













夕鈴がレストルームへ消えてから、黎翔は押えきれない笑顔になる自分を抑えていた。
自分の営業用の笑顔に夕鈴が焼きもちを感じてくれた事に、互いの気持ちが近付いたような淡い期待をしてしまう。 指摘すると戸惑った顔を背け、頬を染めていた夕鈴を思い出し、グラスに映った自分の顔を見て思わず口元を押さえる。

「困ったな。 ・・・・手を出しそうになる」
「それはやばいですよね。 身元不明の未成年に手を出しちゃ~」

その声を耳にすると 眉間に皺を寄せて黎翔は溜息を吐く。 
見なくても誰と判るその人物は 空いたグラスにワインを注ぎながら黎翔の隣の席に勝手に腰掛けて来た。 普段は人の気配に敏感な自分が、奴がこんなに近づ居てくるまで気付かなかったことに舌打ちする。 しかし、相手はそれを生業としている人物。
 
彼は平気な顔でテーブル上の皿に手を出し始めた。

「なぁんか、王様がロリに走っているとの噂を聞きましたが本当だったんすね。 いや~、驚いた、驚いた! ・・・んで、そのお相手は? もしかして逃げられた?」
「・・・・少し席を外しているだけだ。 浩大、何の用だ?」

ジャケットにデニムのジーンズ姿というラフな姿の浩大は 珀コーポレーションの内部調査員であり、腕に自信があるため、時にボディーガードの任も兼ねる人物だ。 
童顔に見える彼は警戒されることなく各部門でいろいろな内部調査を行ない、部下と共に不正が無いかを日々調べる影のサポーター役である。 

暫らく他州の各支店を巡っていたが 久し振りに纏まった報告に足を運んだところ側近である李順から面白い情報を穿り出し、意気揚々とからかいに来たのだ。 

他州にある珀コーポレーション内部に居る調査員からの報告をまとめ上げ、黎翔へと報告に来たついでに気配を消して暫らく二人の様子を楽しんで眺めていた。
勿論、夕鈴がレストルームに行くと姿を消したのも承知している。

「あん? 本社に行ったらさ~、方淵が王様は所用で、別の場所にいるって言うから、李順っちに場所を聞いてさ。 でも、なかなか教えれくれないから困っちゃった。 何か美味しい物でもご相伴に預かろうかと思ってね~。 あ、お邪魔かな~?」
「・・・・判っているなら早く消えることだな。 もう直ぐ彼女も戻るだろうから」
「あらら~。 このあと毒牙に掛ける気だな。 未成年はやばいって! ぷぷー。 で、その娘にバイトさせているんだろ? それも 『偽婚約者』 って笑える・・・・」

浩大が皿の上のフィレ肉のポワレをフォークで串刺しにして笑顔で口に運んだ。 
黎翔が睨み付けるも涼しい顔で更にパンに手を伸ばしている。 そのパンを頬張りながら胸ポケットよりメモ用紙とUSBメモリーを出し 黎翔へと渡す。

「今回の不正に関してのログだよん。 王様が目を光らせて居ても悪い奴はいるものだ。 対象者はメモに書かれているし、面倒な案件はCOOの周さんに任せてあるよ~」
「・・・・・御苦労。 ふん、大きくなればなっただけ膿は出るものだな」
「大変っすね、王様。 ま、この後の人事異動で目を覚ますか、尻尾巻いて逃げ出すか、あとはそれなりの場所へと消えて貰うか・・・・・ かな?」
  
浩大の言葉を聞き薄く昏い笑みを浮かべてメモリーを弄びながら見る黎翔を横目に、浩大はレストルームの方に視線を移す。 

「・・・・王様の大事なお妃ちゃんは遅いね~。 手を出されそうで恐くなって戻って来れないのかな? ・・・・それとも本当に逃げられちゃった?」
「浩大、ナイフで刺される前にその口を閉ざせ。 ・・・・確かに遅いとは思うが」

浩大に細めた視線を寄越しながらナイフを器用に手の上で回転させる。 
その様子に片手だけホールドアップした浩大は苦笑しながらコーヒーを註文していた。


・・・・・・焼きもちとか言って彼女を困惑させたのだろうか。 
彼女が気に掛けているのは自分ではなく、此処に居ない 『陛下』 だというのに。 

立ち上がる時の夕鈴の表情を思い出し、黎翔は柳眉を顰める。
浩大が近くを通りかかったウェイターに声を掛け、レストルームに居るはずの彼女の様子を見てきて欲しいとお願いすると、了承して足を向けたウェイターは存外直ぐに戻って来た。

そして、其処には誰も居なかったと告げてくる。
  

「・・・え? マジに逃げられた? んな訳ないよね? ねえ、王様これって・・・・」
「考えたくはない事態かもな・・・・。 ホテルレセプションでも夕鈴は目立って居ただろうし、一人にする筈ではなかったのだが・・・・・」

夕鈴が黎翔の婚約者と知って何者かが攫った可能性があると低い声で呟き 黎翔は眉間に深い皺を寄せてレストラン内をぐるりと睨み付ける。 
夕鈴が消えたとされる場所は黎翔所有ホテルのレストランだ。 その場所で彼女が消えた事実。 彼女はもしかすると自分の婚約者として誘拐されたのかも知れない。
紅い瞳は細まり、怒気を孕んだ視線は窓際の特等席からレストラン内全体を覆う。
 
「偽婚約者なんてさせるから狙われちゃったって? お妃ちゃん、可哀想っ! まあ、何か仕掛けてるんでしょ? 王様ってイヤラシイほど先々まで考えているからさ~」

浩大は親指の爪を噛みながら、黎翔に視線を絡ませた。
携帯を取り出した黎翔は直ぐに李順に連絡を取り、夕鈴の所在を確認するように指示を出し、片眉を上げて浩大が哂うと、冷酷で残酷な笑顔を見せる主に向き直る。

「王様、指示を」
「直ぐに動ける者を配備して周囲を捜索しろ。 彼女に傷ひとつでも付けてみろ、お前の首ひとつじゃ済まないからな。 発信機の電池寿命は今から後30時間ほど、彼女のヘアピンに取り付けてある。 急げ!」
「了解っす! ピンクダイヤのヘアピンだろう? 超高いじゃんっ!! さすが王様っ! ・・・・んじゃ、お妃ちゃんは傷ひとつ無くお返ししますよ~!」

軽快な口笛を残し、浩大はレストランから出て行った。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 01:14:14 | トラックバック(0) | コメント(0)
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