スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告 | --:--:--
泡沫人の羽衣  16

今日は涼しくってエアコン使用せずに過ごせています。窓を閉めて寝なきゃ駄目なくらい。これは絶対 腹冷えます。皆様 身体を大事に夏を乗り切りましょうね。


では、どうぞ。











 



「黎翔様、紅珠は私と少し遊んでいただけですわ。 着せ替えをして、他愛無いおしゃべりを楽しみながら遊んでいただけなんですの。 ただ黙って消えたのは申しないと謝り」
「夕鈴、いいの。 珀会長が怒るのは当たり前だわ。 でも貴女に危害を加えるつもりは本当に無かったのよ。 それだけは信じて・・・・・お願い」

柳眉を顰めて紅珠が夕鈴に告げると、夕鈴は更に紅珠を抱き締める腕に力を込めた。
そして柔らかく紅珠に微笑んだ後、黎翔を見上げて笑顔で言い切った。

「大丈夫よ、黎翔様は判って下さるから。 女同士で着せ替えを楽しんでいただけですもの。 黎翔様、勝手に居なくなって本当に御免なさい。 ここに来ることをお伝えしなかった私が悪いんです。 ですから紅珠を責めないで下さいませ」

眉根を寄せた笑顔の夕鈴を見て黎翔は瞬時黙ったが、口元を押さえると大仰な溜息を吐き項垂れた。 浩大が二人のやり取りを見て、口笛を鳴らす。

「王様、あんたの負けだ。 お妃ちゃんに適う筈無いだろう。 で、どうする?」
「仕方がないだろう・・・・。 今回の件は不問にする。 だが氾会長には報告をさせて貰うから、そのつもりで居るんだな。 個人的な絡みは今後一切無しだと了承して貰えばいい」
「珀会長・・・、申し訳・・・・御座いませんでした」

紅珠は深く項垂れ掠れた声で謝罪をした。 黎翔のその言葉に心底ほっとした夕鈴は、もう一度紅珠に抱きついて、「ね、大丈夫でしょ?」 と優しく声を掛ける。 そしてベッドから立ち上がり紅珠の前に身体を移動させると、右手を大きく頭上に持ち上げ 「紅珠、私を見て」 と声を掛けた。
 
紅珠がその言葉に顔を上げると夕鈴の右手が・・・・




バッチーンッ!!



思い切り紅珠の頬めがけて振り下ろされたのは夕鈴の右手。 
突然の痛みとショックで唖然とした表情を見せる紅珠に、夕鈴は満面の笑みで彼女を見下ろした。 黎翔と浩大は驚き過ぎて、口を開けて二人を見ているだけ。

「紅珠、私は貴女が好きだわ。 初めて会った私に優しくしてくれた貴女も、楽しいお喋りをしてくれた貴女も好きよ。  ・・・・でもね、して良い事と悪い事があるのは判るわよね?  こんな風に連れて来られて、気分良い訳ないでしょ! 普通に会いたいって、どうして言えないのっ!? 」
「ごっ、御免なさいっ!! 夕鈴、許してっ!!」

頬を押えながら ぼろぼろっと涙を零して紅珠は縋るように夕鈴に謝罪をした。 
その言葉に夕鈴はにっこりと微笑むと、「もういいの。 また会いましょうね」 と紅珠が押える頬に手を重ねる。 その言葉に、紅珠は惚けた表情で 「夕鈴・・・ お姉様・・・」 と呟きを漏らす。


振り向いた夕鈴は、「黎翔様、では戻りましょうか?」 と清々しい笑顔を見せた。
黎翔と浩大はそこでやっと意識を取り戻し、こくこくと頷くしかない。 









「お妃ちゃんって・・・・すげぇ・・・・」
「悪いことしたら怒るのは当たり前です。 でも犯罪とか言うのは可哀想です。 そこまで酷いことはされてないし・・・。 まあ、驚いたのは驚いたけど・・・・」

浩大のジャケットを腰に巻き、今まで着ていた衣装を膝上に置いた夕鈴は紅珠のマンションを出た後、黎翔が自分を余り見ないことに気付いた。
最後に目を合わせたのは、黎翔が着ていた背広を肩に掛けてくれた時。
黎翔の熱が伝わるその背広を肩に掛け、戸惑いながら車に乗り込むと、その後彼はずっと外を眺めていて口を開くことは無かったため、夕鈴も声を掛けられずに浩大と話し続けていた。 

思い切り氾会長の娘である紅珠を叩いた事が原因なのか、勝手に場を仕切った自分に呆れているのかと、視線を向けることも出来ずに浩大と話し続けるしかない。 
でもそうしなければ紅珠に対する黎翔の怒りは収まらないだろうと確信めいたものを感じていた。 夕鈴が突飛な行動をとったために、その後 黎翔は紅珠に何一つ文句を言う事なくあの場を離れることが出来たのだ。

ただ、沈黙されると夕鈴はひどく居た堪れなくなる。

「浩大は何の仕事をしているの? もしかして隠密・・・とか?」
「隠密って・・・、古いっすよ~。 内部調査員とか王様のボディガードとかスパイとかSSとか、まあいろいろね。 そういう意味では 『隠密』 で合ってはいるのかな?」
「ぼでぃーがーど・・・って?」
「有名な映画があるじゃんか! 知らない? 本当? 最近 挿入歌も再ブレイクしたんだよ。 へ~、知らないんだ! んん~っと、王様を守る盾ってことかな?」
「・・・・納得。 やっぱり浩大なんだ・・・・」

この世界の浩大も白陽国の浩大も同じ仕事に就いているのだと知り、夕鈴は嬉しくなった。

「あ・・・、紅珠が電話で態度が変わったのも、浩大が何か言ったから?」
「オレじゃなくって、李順っちが紅珠嬢の上司に掛けさせたんだけどね。 まずいことになる前にやめさせるようにってね。 すぐにお妃ちゃんの迎えが行くから開放しろって伝えた筈だよ。 お妃ちゃんの場所が特定したら、誰が犯人か直ぐに解ったからね!」
「私のいた場所・・・・よく解ったわね。 どうして解ったの?」

浩大がにっこり哂いながら沈黙した。 その笑顔は 「何も聞くなよ」 と言っているようで夕鈴は肩を竦めて、それ以上聞くことは諦めることにするしかない。 
それから紅珠の自宅マンションのセキュリティーを如何突破したかの話しに変わり、理解出来ないながらも夕鈴は頷きながら聞いていた。 

しかし 喋っている内に浩大が困った顔になり 「これ以上は・・・・オレも限界かも」 と諸手を上げて車を止めさせ、「オレはここらで失礼しますよ!」 と黎翔へ告げた。 
話す相手が居なくなり、黎翔と二人きりになると知った夕鈴は慌てる。

「浩大は黎翔様の邸には住んでいないの? 李順さんみたいに いつも一緒じゃないの?」
「今日は仕事明けなんで、ゆっくりしたいんだ。 お妃ちゃん、またねっ!」

車が指定された場所に停まると、するりと車を降りて浩大はあっという間に人ごみに消えて行った。 浩大が車から降りると、リムジンの中は黎翔と二人きり。
運転手は居るが運転席とは仕切りが設置されており、後部シートの広い空間に無言の気まずい空気が流れる。 浩大と話していた間、黎翔はずっと無言だった。

『く、苦しい・・・。 心配して探してくれた黎翔様に、ここはやはり謝るべきだろうな。 犯罪とか言ったから思わず紅珠を庇ってしまったけど、自分を探しに来てくれた人にあの態度は駄目だったのかも知れない・・・・・』

ちらりと視線を向けると、窓に流れる景色を見つめ続けている黎翔の姿。 
如何見ても怒っている表情に見えてしまい、夕鈴はどうしようかと思案した。  
それでも自分が言わなければならない台詞は判っている。 
唾を飲み込み 夕鈴は深呼吸をした。

「れっ・・・・・」
「・・・・夕鈴、なんで浩大に抱きついた?」

夕鈴が言葉を紡ぐより先に、黎翔から冷たい台詞が零れてきた。 一瞬何を言われたのか解らず、夕鈴が開いた口をぱくぱくさせると、漸く黎翔の視線が夕鈴を捉える。
その瞳は車内に入り込むネオンに照らされ紅く見えた。 

この瞳・・・・・知っている。
  
薄く口を開いたまま、その瞳から目を離せずに居ると同じ台詞が繰り返されるのが耳に届く。
先程よりも怒気が含まれているように感じ、思わず肩が竦んだ。

「あ・・・、あの、私が居た世界にも同じ浩大がいて、背の高さはまるで違うんですが、雰囲気と顔はそのままで、懐かしさの余り・・・・つい・・・・・ すいません・・・・」

そういえば、私ったら浩大に抱きついたんだよね。 それも紅珠と黎翔様の前で!
は、恥ずかしいっ!! 
浩大に抱きついたことなんて今までないのに、余りにも驚いちゃって!
あああ、何であんなことを!?  ・・・まさか・・・呆れちゃったかな?

顔が真赤に染まるのを感じながら車内が暗くて良かったと頬を押えると、押えていた手を掴まれた。 黎翔に顔を向けると思いも掛けず近い場所に居て夕鈴は悲鳴を上げそうになるのをどうにか押さえ込んだ。 

「・・・れ、黎翔様っ! 今日は本当にすいませんっ! 折角迎えに来て下さったのに全否定するようなことを言っちゃってっ! で、でもっ、紅珠は悪気があって私を攫った訳ではないと・・・・・」
「謝罪は先程も聞いた。 それはもういい。 君が良しというのだから不問にすると告げたはずだ。 それよりも浩大と砕けた話し方をするのに、どうして今は畏まった話し方になるんだ?  
・・・・・・面白くない。」

黎翔は頬から夕鈴の手を離し、片側だけ編み込まれた髪から見える耳を指でなぞる。
指の感触にざわりとしたものを覚えたが、それよりも、今言われた台詞に何と言って答えたらいいのか、悩んでしまう。 
浩大は何と言っていいのか、上手く言えないが陛下とは別の存在。 
捉え方としては几鍔の子分に話し掛けているようなもの。 
気を遣う相手ではないし、掃除中に菓子屑を落とす厄介なやんちゃ小僧みたいなもの。 
そんな相手に黎翔と同じ話し方はしないし、する必要も無い。

「黎翔様には住むところから衣服や食事までお世話になっております。 それに 『バイト』 の雇い主でもありますから、砕けた言い方は出来ません。 難しいですし、無理・・・・です」
「無理じゃないと思うけど。 夕鈴が勝手に線引きしているだけで私自身は雇い主でいるつもりは無いよ。 バイトはして貰っているけど話し方は砕けた方が好きだな」
「・・・・・と申されましても」

夕鈴が困った顔を向けると、黎翔から溜息が漏れる。 
  
「夕鈴、雇い主とは思わないで対等な立場で話をして欲しいな。 それが私の願いであり、望みだと思って叶えて欲しい。 ゆっくりでいいから・・・・ね?」
「・・・・・はい」

ゆっくりでいいと言われて、そんなに長くいるつもりは無いのですと即答出来ない自分。
この間から心の奥でちらちらと見せる小さな光が気になり、思わず視線を車外へと向けた。  








今日は雨が朝から降っている。 
部屋の窓から見える芝生は煙るように朧気で、夕鈴はただ黙って見つめる。
今日、黎翔様は政務責任者である周さんと話し合いをするため出掛けており帰りは遅いと聞いている。 『授業』 の予定も無く、することが無くなった今、夕鈴は黙って外の景色を眺めていた。


『・・・・・見たことも無い衣装で、ずぶ濡れで倒れていた』


私を発見した時の様子を、黎翔様はそんな風に言っていた。
 
今、外は雨。 

あの場所でうつ伏せになったらいつも以上に陛下の声が聞こえるのかしら。 




長い間、窓を見つめ続けていた夕鈴は静かに立ち上がった。  








→ 次へ


スポンサーサイト

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 02:16:16 | トラックバック(0) | コメント(0)
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。