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泡沫人の羽衣  18
本当に長い話になりました。これを書くと、「髪はなが~い友達♪」を思い出します。・・・・・すいません。 


では、どうぞ。







 




数日後、氾会長主催のパーティが開催され 夕鈴は黎翔と共に参加した。
新薬発表と 大学を卒業し親である氾会長の会社へ入社する紅珠の御披露目の為に開かれたパーティーと聞き、紅珠に逢えるならば この間思い切り叩いたことを改めて謝罪しようと緊張してしまう。 氾会長のお嬢様である紅珠に、その場の勢いとはいえ、一介の庶民が手を上げた事実。 ・・・もし白陽国でそんなことをしたら、その場で斬首となるだろうと思い返すたび、背筋が凍りつく。


新薬発表のための会場は、紅珠が氾会長に頼み込み黎翔のホテルが使用された。
ダンスパーティーを行なったホテルが使用され、夕鈴はここで黎翔とダンスを踊ったのだと思い返し、なんだか不思議な気分になる。 

あの場所で陛下と声を交わし、小さな希望が見つかった今、隣に立つ黎翔を見上げると何だか自分でも解らない気持ちが溢れそうになるのを感じてしまう。 
・・・・・同じ顔で、同じ声の人。
知らず黎翔から視線を外して俯いた夕鈴に、黎翔が声を掛ける。

「・・・夕鈴、緊張してる? 今回はダンスが無いから靴擦れの心配は無いよ」
「わ、解ってますっ! でも他の会社のパーティなのに私が御一緒でいいのですか? これって お仕事の一環ですよね? それなのに・・・・・」

その言葉に黎翔の手が夕鈴の肩に回り身体を寄せられる。 シフォンストール越しに黎翔の手から熱が伝わり、その感触に夕鈴の心臓が飛び出しそうになる。 
シルクのストールは透けるように薄く、肩が出たデザインのドレスを優しく隠す。

「今回のパーティーは仕事でもあるけど、是非君も一緒に出席して欲しいと氾会長から言われてね。 過日の件での御詫びを言いたいそうだ。 良いと言ったのだがな。 まあ、君を見せびらかすいい機会だと思ったし乗ることにしたんだ。 ・・・・今日のドレスも君に良く似合っているよ」

そう言われて夕鈴は真っ赤になり、「ありがとう御座います・・・」 と礼を伝えた。 
今回のドレスも夕鈴が 「困りますっ!」 と懇願するのも聞かずに黎翔が仕立てさせた品。

光沢のあるサテン地が夕鈴の胸元から腰下へと幾重にも重なりながら巻かれ、腰下からはふんわりと膝下までドレープが広がっている。 全体的にマーメイドドレスのようだ。 
スカーレットカラーのドレスに 胸元で輝くピジョンブラッドルビーが夕鈴の白い肌を際立たせている。 上下を緩やかに編み込んで襟足をすっきりと纏め上げた髪型に、数箇所に散りばめたルビーとダイヤのスティックが動くたびに輝きを放っている。
余り派手な化粧はしないでとお願いし、薄化粧の上にローズピンクの口紅を重ねると、黎翔に何度も褒められ、ドレスよりも真っ赤になってしまった。 そして靴擦れにならないようにと踵部分の無いミュールパンプスを用意された時は、流石に夕鈴も苦笑してしまった。 



「珀会長、今日はお越し頂きありがとう御座います。 それと先日の件では娘が大変無礼な真似をしてしまったと聞き、本当に申し訳なく思っております。 お嬢様も御気分を害したこと御座いましょう。 何か御詫びの品を用意させて頂きたいのですが、お受け取り頂けますでしょうか」

氾会長が会場入り口で黎翔を見つけると優雅な仕草で近寄り、深々と頭を下げた。 
御詫びの品と聞き夕鈴は慌ててしまう。 
氾会長の大事な娘に手を上げたのは自分で、逆にこちらが御詫び申し上げなければ! と思っていたのだから。 頭を下げる氾会長に夕鈴も急いで頭を下げた。

「こっ、此方こそ 紅珠様に・・・、あ、あの・・・・」
「え・・・・お姉様? ああ、夕鈴お姉様っ!!」

華やいだ声が頭上から聞こえた。 
夕鈴が頭を下げたまま今しがた聞こえた 『お姉様』 に固まってしまう。 白陽国での紅珠は14歳で確かに夕鈴の方が年上だろう。 だが此処に置いては逆の立場で紅珠は確か22歳と聞いている。 
その彼女から何故に 『お姉様』 と?

夕鈴がゆっくりと頭を上げると頬を染めて胸で両手を組んだ愛らしい表情の紅珠が目の前に立っていた。 濃いパープルのエンパイアラインのドレスは華やかな紅珠によく似合っている。 生地全体に小さなダイヤが縫い付けられており、動くたびに光を放って女王様のようだわ・・・・と夕鈴は思った。

「あ、あの紅珠様、・・・・お姉様は止めて頂きたいのですが・・・・」
「そうですか? お姉様がそう言うなら・・・・。 では夕鈴様と呼んでも宜しいでしょうか? ・・・・もちろん、私のことは紅珠と呼び捨てにして下さいませ」

頬を染めた紅珠が首を傾げる仕草に、夕鈴は見惚れてしまう。 
夕鈴がぽーっと紅珠を見つめていると、肩を抱いた黎翔の手に力が入り氾会長へ返答した。

「氾会長、先日の件とは何でしょうか? 私の婚約者と会長の娘さんが一時過ごしただけのこと。 何も問題はありません。 そうだな、夕鈴?」
「あ・・・・はいっ! そ、そうです! 御詫びも何も必要ありませんので!」

夕鈴がそう伝えると困った顔の氾会長が微笑んだ。 紅珠も柳眉を寄せて静かに頭を下げた。
黎翔が小さく頷いて夕鈴を伴い、その場から移動し始める。 紅珠が縋るような視線を寄越すが、黎翔はそれを無視して人ごみの中へと夕鈴を誘った。

「れ、黎翔様、そんなに急いで紅珠から離れなくても! まだ私叩いちゃったこと御詫びしていないんですよ。 ちゃんと御詫びをさせて下さい!」
「そんな必要は無いだろう? 夕鈴だって足輪を付けられ、勝手に衣装を着替えさせられ、拘束されていたんだ。 ああ・・・・本当にすごい衣装だったよね」

チャイナドレス、それも超が付くほどの丈のドレスを着て 浩大に抱きついていた夕鈴を思い出し、夕鈴を見下ろした。 その台詞に 瞳を大きく見開いた夕鈴が徐々に頬を染めて真っ赤になっていくから苦笑してしまう。 
普段は肩も足も出ることを嫌がる夕鈴が着ていた衣装。 
その衣装から見える肌の白さと線の細さに目を奪われ、浩大に抱きつく君に悋気を覚えた。

「思い出さないで下さいっ! 恥ずかしいんですから!」
「でも、・・・・うん、可愛かったよ。 夕鈴何でも似合うんだね。 今度また一緒にお買い物行こうか? 今度は丈の短くて足が思いきり出ているものとか・・・?」
「いっ、いいですよ! 本当に結構ですからね? あれは不可抗力ですからっ! 他にもいろいろな衣装を用意していたと紅珠は言っていたんです。 確かえっと、なーす服に、ばにーに、キモノに、それから後は・・・・」 


真っ赤になって文句を言っていた夕鈴は自身の言葉に詰まった。 
急に黙り込んだ夕鈴に、黎翔は言い過ぎたかと肩を引き寄せ、「ごめんね」と笑いを零す。 その声に夕鈴は顔を上げ、目を大きく見開いたまま首を横に振った。

強張った笑顔のまま。



その後しばらくの間、口数が少なくなった彼女に違和感を覚えたが、パーティが始まると笑顔を崩さずに黎翔と共に挨拶をして回る夕鈴に何も言う暇がなくなり、その上 自身も会社関係の面々と挨拶や仕事の話などで彼女の傍にいることが出来なくなった。 
気付けば紅珠が寄り添い楽しそうに談笑している姿を見つけ、『・・・今だけなら良いか』 と思う自分に哂いそうになる。 偽婚約者のバイトをさせているのは自分だというのに、己の所有物かのように考えるその哂いに嘆息する。


紅珠が黎翔に気付き小さく御辞儀をすると、夕鈴が振り向き笑いながら手を振る。 黎翔が手を振り返すと、夕鈴は紅珠に向き直り二人は楽しそうに笑う。 先日のことを話しているのか、とても楽しそうな様子が気に掛かった。 眉間に皺が寄りそうになり、例え同性でも夕鈴からの笑みを受ける相手に苛立ちを覚えそうになる。 


・・・・・・もう、彼女を離せない。

彼女の興味を自分だけに向けさせたい。 もう誰にも彼女の微笑みを見せたくない。 
だけど自分のものだと周囲に大声で知らせたい。 着飾った君を周りの人間に見せ付けたい。

彼女の涙も戸惑いも消してみせる。 異世界への未練も時間を掛けて必ず忘れさせてみせる。
あれから例の場所には行って居ないと思うが、彼女の心残りが其処なら何か手を打つべきなのか。 突然現れた時のように、突然消えてしまうことがあれば・・・・・・。
考えたくはないが、頭に浮かぶその考えに指先が痺れるほど冷たくなるのを感じた。


あの場所で、泣きながら震える手を伸ばした夕鈴を思いだす。 
潤んだ瞳から幾つも零れ落ちる涙の熱さを覚えている。 溢れた涙を拭いもしないで悲しげな微笑みで見つめられ、震える唇から零れた言葉・・・・・・。

 『あ、ああ・・・・ 陛下・・・・』

紡いだ言葉と共に 私の手に涙に濡れた頬を寄せ、安堵の溜息を吐く君。 そして君の望む相手ではなかったと知った時の落胆の表情。 
二度目は同じ場所で眠っていたと君は誤魔化したが 兎のような赤い目に直ぐ気付いた。 
思わず抱き締めると、謝罪を繰り返す君。 未だ心は彼のものへと繋がっているのか。
それでも君を離せないと知って欲しい。 
もう君をこの世界から、自分の下から逃がしたくない。



帰りの車の中では 疲れたのか何時の間にか瞳を閉じた夕鈴を自身の肩に寄り掛からせて寝かせていた。 その寝顔を覗き込みながら思案する。 
この世界から逃げ出さないようにするには如何したらいいのかと。 
時間を掛けて夕鈴の気持ちを自分へと向かせようと思うのだが、どうしても例の場所が気になる。 もうこれ以上あの場所で涙を流す彼女を見たくは無い。 あの場所で彼女が泣いて居ると思うだけで強い苛立ちを覚えるほどだ。
早急に手を打たなければ。彼女の真の望みを叶えられない代わりに。


黎翔の気持ちを知らず、夕鈴は深い眠りでどんな夢を見ているのか。
その夢にさえ、嫉妬しそうな自分を自覚する。





**





「李順さん、あの・・・私の衣装はどうなりましたか?」
 
その後、しばらく会社に詰めていた李順と邸で久し振りに会うことが出来、夕鈴は急く気持ちを抑えながら聞いてみた。
総会が近いとの事で黎翔も李順も連日会社に泊り込みをしており、夕鈴が驚いていると桂香達メイドから この時期は毎年そうだと伝え聞く。 李順にも黎翔にも会えず、最近の天候が安定して日々暑くなり、夕鈴が焦る気持ちを持て余していたところだった。

「・・・夕鈴さん、大学教授が今 他国へと出張中とのことで連絡が取れません。 連絡が取れたとしても直ぐに夕鈴さんのお手元へとお渡しする事が出来ません。 申し訳ありませんが 暫らくは引き続きお待ち頂くこととなります。 もし お急ぎでしたら同じような物を作らせますが?」
「いえ、あれでなければ・・・・」

李順からの言葉に夕鈴は言葉も無かった。 
あれから雨が降るたびに芝生に向かい、陛下へと声を掛けたが何の返答も無かったのだ。 
もう後は自分の衣装を着て声を掛けるしかないのだと思い詰めていたのに、この気持ちのまま待てと言われ、目の前が真っ暗になった。 

「夕鈴さん。 何故、そんなにお急ぎなのでしょうか?」
「じ、自分の衣装ですし・・・・。 あの、その教授は何時お帰りなのでしょうか?」
「申し訳ありませんが、教授が何時お帰りなるのか 私は存じ上げません」
「そ、うです、か・・・。 では・・・ 御帰りになったら、教えて・・・・頂けますか?」

李順は蒼褪めた顔色の夕鈴を見て、「解りました」 と短く答えた。 
項垂れた夕鈴がその場から離れようと踵を返すと、李順から声が掛かる。 

「来週より芝生は暫らくの間立ち入り禁止となりますので、立ち入らないようにお願い致します。 危ないですからくれぐれもお願い致しますよ」
「え・・・? また 『めんてなんす』 ・・・ですか?」

夕鈴が意味が判らないと首を傾げると、李順が眼鏡を上げて溜息を吐いた。

「建物を新築するそうです。 此方でも仕事が出来るように新たに支部を設立するとか。 現状でも問題ないというのに、何故そんな事を会長は急に・・・・・」
「李順さんっ!! 建物って? あの芝生に建物って?」

驚いた夕鈴は李順に詰め寄った。 聞けば夕鈴がよく足を運ぶ芝生辺りをを中心に建物が
建つと言われた。 

そんな事をされたら陛下と声を交わす事が出来なくなる! 
衣装が戻り次第、自分がしようとした事が出来ない! 
国に戻れるかも知れないという 最後の希望が潰えてしまう!

夕鈴が蒼白の表情で李順のワイシャツを掴むと、瞬時驚いた李順だが直ぐに背を正し、「黎翔様よりその様に承っております」 と答えた。 

「黎翔様に会わせて下さい! お願いします、李順さん! 直ぐに黎翔様に連絡をして下さい! 建物を建てるのを待って下さいってお願いしたいんです!」 

夕鈴が指先が白くなるほど力を込めてワイシャツを握り締めていると気付いた李順は躊躇したが 息を整えると自身のシャツから夕鈴の手を外し、小さく御辞儀をした。

「総会の準備で大変忙しく、あと二週間はこの邸には御戻りになる事は出来ません。 その間、緊急時以外での連絡は断わると黎翔様より言付けがありました」
「・・・っ!」

李順が夕鈴と目を合わせることなく離れて行ったが、夕鈴はその場から一歩も動けずに佇んでいた。 頭の中は何も考えることが出来ず、ただ時間だけが過ぎて行く。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 21:55:10 | トラックバック(0) | コメント(0)
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