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泡沫人の羽衣  24
白陽国編 続きです。 本当は ≪戻って来た≫ でまとめて終わりたかったのに、陛下が勝手に李順の元へと行ってしまうから慌てて続きを書いております。くう~、楽しいけど難しいっ! 
 




では、どうぞ。

















「先ずは夕鈴殿が目覚めるのを待つのが先決です」

眼鏡を持ち上げて李順が冷たく言い放つ。 ある程度は予想していた陛下からの言葉に素っ気無く対応する。 執務室の椅子に深く腰掛けた陛下は、側近からの返答に動じる気配もなく薄く哂っているだけだ。 李順は深い溜息を吐き同じ言葉を繰り返す。

「夕鈴殿の体調が戻り、精神的に落ち着いてからよく話し合われるべきですね。 勝手に行動を起こしたら後でどれだけ彼女から怒りを買うか、過去を鑑みれば容易にお分かりになると思いますが。 陛下、よく思い出して下さいね」

陛下が妃の鼻を噛んだ時のことだと目で訴えると流石に思い出したのだろう、陛下の視線が下がり唸り出した。 

『夕鈴を正妃にする。 文句は言わせない!』

晴れやかな表情で執務室に戻って来た陛下の第一声がそれだ。 
少し蒼褪めてしまったが直ぐに上記の返答をする。 彼女は陛下の気持ちに添うことはしないだろう。 バイトの立場を重々理解しているし、現実借金があるのだ。 
おまけに後ろ盾はないし持参金もない。 
第一、彼女はただの庶民。 問題だらけだろうと李順は溜息を漏らす。

陛下が彼女に執心しているのは薄々解かってはいたこと。 理解したくはないが、好ましいと思う人物に対する行動の度を越している。 下町には付いて行くし、勝手に王宮を出た彼女を勝手に迎えに行くし、彼女の希望だからと離宮には行くし・・・・・・。 
何度も何度も何度も陛下に彼女はバイトであると、一介の庶民であると忠告し続けたことか。
それに対して、解かっていると何度返答されたことか。

それなのに・・・・・・・。 

全く頭の痛いことだ。






翌日、夕鈴が目を覚ましたと侍女から報告を受けた陛下は急ぎ部屋を訪れた。
寝台の上で背に枕を沢山宛がい、お茶を飲んでいた夕鈴は陛下の訪れに笑顔を見せる。
何も言えずに黙って寝台に腰を下ろし、夕鈴が持っていた茶杯を取り上げ近くの卓へと置きそのまま両手を伸ばし抱き締めた。 声なき悲鳴が聞こえたが、それに構わず少しずつ力を込めて抱き締めていると夕鈴の体の熱が伝わり、漸く安堵出来た。

「本当に・・・、本当の夕鈴だ・・・・。」

僕の言葉に君の身体が小さく震えたのを感じた。 その震えは徐々に大きくなり、そして君の両腕が僕の背に回りしがみ付き、その手が酷く震えて響く。

「ぃっ・・く。 ・・・へい、かっ・・・。 ・・・っか・・・・」
「夕鈴、心配した。 心配したんだ・・・。 良かった、戻って来てくれて・・・・」

夕鈴が力を込めて僕を抱き締めるから嬉しくて嬉しくて何も考える事が出来ずにいた。 
それなのに、やっぱり君は君らしくて・・・・。
 
しばらくすると僕の背から手を離し、胸をぎゅーぎゅー押し出した。 唯でさえ熱があり紅潮した顔が更に赤くなり、思わず手を緩めると呟く君の言葉。

「あ、あの、ちょっ・・・、離れて・・・陛下・・・・」

何と思う間も無く、身体を捩って枕元に置かれた懐紙を数枚取ると背を向けて勢いよく鼻をかむ君。 勢いあり過ぎて鼻をかんだ後クラクラしたのか 君は背当ての枕に身体を預けて顔を隠した。

「泣いた・・・から、鼻が出ちゃ・・・・。 すいません、陛下・・・・」

侍女が下がり二人きりの部屋。 君らしくって思わず声を出して笑ってしまう。 

「君が池に落ちたと聞いてから、池を攫い水を抜き、数ヶ月間に渡り周囲を捜索していたが見つかる気配はなく、それでも諦めずに探し続けていたんだ。 だが・・・・・ 良かった。 怪我もなく無事に戻って来てくれて・・・・・。 夕鈴、どうした? 頭痛でもするのか? 吐き気か?」

熱のため紅潮していた顔色が今は蒼褪めており、見て解かるほどに震えている。 体調が変化したのかと両頬を掴み顔を上げて見ると眦に涙を浮かべ眉根を顰めている夕鈴。 

「・・・夕鈴? どうしたの? 気持ち悪い? 何かサッパリしたものを飲む?」
「い、いいえ・・・。 あ、あの李順さんは?」

夕鈴がそう尋ねると、扉を叩く音が聞こえて李順が来たと侍女の声が聞こえた。 その声に直ぐに振り向いたため、夕鈴の顔色が更に蒼褪めたのに陛下は気付く筈もなく。
寝所から出ると拱手している李順が立っており、さも当たり前のように 「政務が滞りますので急ぎ御戻り下さい」 と告げてきた。

「我が妃が目覚めたのだ。 もう少しくらい良いではないか。 全く・・・」
「まだ安静が続いているのですから御妃様はお休み頂き、陛下は政務の方へ集中して頂きたく思います。 ここで滞る訳にはいきませんでしょう?」

執務室に行くしかないかと諦めの溜息を付くと背後から音が聞こえた。 振り返ると寝所の扉に縋って立つ夕鈴の姿。 驚いていると蒼褪めた顔の夕鈴が戦慄く唇で何かを言おうとしているのに気付く。

「夕鈴っ! まだ熱があるんだから寝ていなくては駄目だ!」
「り・・・、李順さんの声が聞こえたから・・・・。 あ、あの・・・正直に、正直にお答え頂きたいのですが・・・、その・・・・」

陛下が抱き上げて寝台に寝かせようとするが、夕鈴はその腕にしがみ付き李順に必死な表情を向ける。 何が言いたいのかと訝しむが、此の侭では大人しく寝てはくれないだろうと抱き上げたまま李順に近寄った。 

「何でしょうか、夕鈴殿。」
「あの・・・、妃捜索に全ての池を攫ったと伺いました。 その他にも捜索をしたと」
「ええ、侍女が大騒ぎをしましたので急ぎ陛下の指示の元、その様に致しました。 まさか数ヵ月後に自室にずぶ濡れで妃が御戻りになるとは考えもしませんでしたが」

冷たく哂う李順を陛下が睨むが、夕鈴はそれどころではなかった。 

二人には、夕鈴の体の震えが伝わるが どうして震えるのか想像も出来ない。 
しかし直ぐに判明した。

「李順さん、その・・・捜索費用は・・・・ 私の借金に加算されるのでしょうか!?」
「「 ・・・・・・・・・ 」」









侍女を下がらせておいて良かった。 
ずきずきと痛む頭を押さえながら夕鈴はそう思った。

あんなにも、あんなにも陛下が大爆笑するなんて。
 
李順さんには大仰な溜息を吐かれた後、すごく怒られるし・・・・。 
だって、だって心配だったんだもの。 
これ以上の借金なんて絶対に嫌だけど、探して貰ったことは嬉しいし有り難いことだと解かるのよ。 でも、捜索費や池の水抜きに掛かった費用などは如何したら良いの? 一介の庶民には到底払えるものではないし、もう考えるだけで怖ろしくて恐くて寝てなんて居られないわよっ!

・・・・・でも良かった。 費用は全て王宮で持ってくれると言ってくれて。 
今回ばかりは深く李順さんに感謝しなきゃ。 
   
未だ長椅子で腹を押えている陛下を無視して、侍女が鏡台に置いてくれた私の 【土産】 を取りに行った。 いつの間に持っていたのか解からないけれど、もう返しに行くことは出来ないし、私の自由にして・・・・・いいですよね? 

「あの李順さん。 これ、少しは足しになると思いますのでお使い下さい」

夕鈴が手の中の品を李順に渡すと、李順が眼鏡を上げてそれを見た。 
一瞬の沈黙した李順は先程の笑い声より大きな叫び声を上げるとワナワナと震え出す。

「ゆ、ゆ、夕鈴殿っ!! こ、これは、これは一体?」
「足しになりますか? だいやもんど、という物だそうです。 すごっく高い価値があるはずですが、どうでしょうか?」

それを見て、手にして、李順は心底驚いてしまった。
外国で持ち運びの便利な価値の高い宝石として珍重されている金剛石は、白陽国には極僅かしか流通されていない。 その品が如何して此処に? それも行方不明だった夕鈴殿が? 
足しになるどころではない、粒は小さいが5つもあるではないか! 
それも過去流通している品と比べても明らかに輝きが違う。 
正に宝飾の中の宝飾だ! 
李順はダイヤモンドの髪飾りを受け取ると、驚いた顔を戻せないまま夕鈴を見た。

「李順さん、足しに・・・なるんですね! 良かった・・・・」
「夕鈴殿、これを如何されたのですか? そして王宮が頂いてもいいのでしょうか?」

夕鈴は少し困った顔を向けたが、捜索などで迷惑を掛けたのですから使って下さいとお願いをした。 李順は戸惑いながらも受け取ることにしたが、その顔に夕鈴は苦笑してしまった。










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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 00:24:24 | トラックバック(0) | コメント(0)
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