スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告 | --:--:--
泡沫人の羽衣  27
意外に好評のアメリカ編。 嬉しいです。 ありがとう御座います。毎回沢山のコメント、ありがとう御座います。 いつもひとつの作品が終わってからコメントのお礼をさせて頂いているのですが、今回長過ぎてなかなかお返事が出来ず、大変申し訳ありません。 それでもコメントは全て嬉しく読ませて頂いております。 嬉しいです。ありがとう御座います!!!


では、どうぞ。












「・・・なあ、王様。 似ている人間って本当に居るんだな。 お妃ちゃんも言っていたもんな。 王様やオレに似ている人が居るって・・・・」
「ああ・・・・。 だが似ているのは雰囲気と容姿だけかも知れない」

そう呟きながら今だ視線は彼女を追っていることに気付きもしない黎翔に 浩大は嬉しそうな笑みを浮かべた。 一時は痩せて顔色も悪く、それなのに何かに追い立てられるかのように仕事に没頭していた黎翔を見ていただけに、少しでも他へ興味を持った様子にほっとした。 
いや、少しの興味じゃないだろうな。 
うん。 これはきっと。

それにしても・・・・。 
王様の営業スマイル・・・・ 大抵の婦女子が心奪われ、ぽーっとなっちゃうあの笑顔に 頬も染めずに誘いをきっぱりと断わるなんて。 おまけに珀コーポレーション会長の肩書きも通用しなかった。 
この戦いは面白いことになるかもっ! 
浩大はふふんっと鼻を鳴らして先行きを眺めることにした。 





経理に届けられた書類は重要なもので、サインや証書類が極秘な書類であり直に運ぶしかない。 信頼したメッセンジャーを使用する場合もあるが、今回は初めて彼女が起用されたらしい。今後本社を訪れる事が多くなるだろう、それを託された彼女の信用度も判るものだ。 

ロスに行くと言っていた浩大が事も無げに彼女のことを調べ上げ、飄々として黎翔の元を尋ねて勝手に報告を始める。 黎翔は溜息を吐き、 「そんなことは頼んでいないだろう」 と言いながらも引き出しを開けて、取って置きの酒を黙って差し出した。

「おっ! こ、これは・・・ 『十四代「純米大吟醸」龍泉』 じゃないっすか! オレもこれは飲んだことないっす!! 王様、いいんすか!?」
「この間取引先の日本商社から貰ったものだ。 甘口らしいが要るか?」

何度も頷く浩大は破顔して嬉しそうに抱かかえ酒瓶にキスをしている。 
そして思い出しかのように 「あっ」 と短く声を上げて黎翔を見る。

「彼女の名前は ユーリ・ウィリアムス。 中国系アメリカ人だってさ。 なんでも今は無きある国のやんごとなき血筋を受け継いでいるとか、いないとか。 詳細を調べる暇は無かったけど、また彼女が本社を訪れる機会はあるだろ?」

今年度の取締役会が間近で確かに他方からの書類が集められ精査される時期だ。 外部からの監査も入り、膨大な量の書類が飛び交う。 そんな折喩え彼女が日参したとしても時間を取るのは難しいだろう。
それに一度断わられている。 
珀コーポレーションの会長の立場も彼女にとっては 会社の仲間に自慢出来る程度でしかないらしいし。 次の機会があっても、如何接すればいいのか。 その前に彼女は 『夕鈴』 ではないのだ。 
容姿が似ているだけの、雰囲気が似ているだけの、声が似ているだけの全く別の人物。

しかし惹かれてしまう。 昨日の今日で、また逢いたいと思う自分が居る。 持て余す自分を如何していいのか、黎翔は自分の気持ちを思春期の少年のようだと思い苦笑した。





浩大がロスに行った後は、彼女に関して特に目新しい情報を得ることも無く、もちろん偶然彼女に会う訳も無く、ただ漫然と日々が過ぎて行く。 忙しかった時期を乗り越え、一息吐けるようになるといつの間にか何度も彼女の名を口に刻み、忘れないようにしている自分に気付いた。 
彼女は 『彼女』 ではないというのに何故忘れないようにしているのか。 
そう思いながらも、時折彼女の名を唱え続けている自分が可笑しく思えて来た。
 

「最近、何か楽しみでも見つけられましたか?」

ふと、李順が眉を上げて黎翔に尋ねた。 
取締役総会も無事終わった残暑厳しい或る日、新規開拓事業案に目を通していると唐突に李順に尋ねられ驚いて顔を向けた。 何故そう思うのかと。

「いえ、何となくそう思うだけです。 時折、微笑んでいらっしゃる時がありますし。 尋ねられて御心当たりはありますか?」
「・・・・有るというか、無いというか。 正直戸惑ってはいるのだが・・・・・」

言い淀む黎翔を不思議そうに見るが、李順は深く追求せずに午後の予定を告げていく。
その予定の中に峯エンタープライズ社長との契約延長に関しての会合があった。 
最高会計責任者が長期休暇中ということもあり、他の者が担当となっていたのだが その彼の妻が急に産気付き急遽早退となり、時間が空いていた会長である黎翔が会合へ参加することになる。

来期延長契約と新たな取り決めを交わすだけの短時間で済むことだが、必要不可欠なことであり、上の立場としても詳細を把握する必要があるでしょうと、周最高執行責任者にいつの間にか予定に組み込まれていたと李順から説明があった。

「周に言われたら文句は言えないな。 まあ、問題はない」
 
・・・・・もしかしたら彼女の新たな情報が得られるかも知れない。 
重要書類の運搬で今後も彼女が会社に来ることがあるのなら、その件に関しても尋ねてみようか。 いや、それは経理に聞いたほうが早いか? 会長が何故そんなことを聞くのだろうと不審に思われるかも知れない。 しかし このまま黙っているのは性に合わない。 
でも彼女は・・・・・・。

「・・・会長? 午後の予定に何か不都合でも?」

李順に問われて、自分がいつの間にか深く考えに沈んでいたことに気付く。 
顔を上げて問題ないと告げ、深く息を吐いたあと黎翔は早めの昼食を摂ることにした。









数件の会議と海外支社との電話を終えると、予定通りの時間に峯エンタープライズとの会合が始まり、李順に伴われ小さめの会議室に入ると、そこには相手が既に着席していた。

「遅くなり申し訳ない」

そう言うと室内で静かに立ち上がる二人の姿を確認する。 
一人はやや長めの髪を項で軽くまとめた物腰の柔らかそうな長身の男性。 そしてその横には先日ホールで出会った女性、ユーリが俯いたまま節目がちに書類ケースから必要用紙を取り出し、早速、書類を広げ出した。 

「・・・・ユーリ、先ずは挨拶だろう。 こんにちは、珀会長。 本日は御忙しい中御時間を頂き、誠にありがとう御座います。 峯エンタープライズ営業部長のウォルター・朔と申します。 隣りの彼女はユーリ・ウィリアムス。 書類運搬などで、たびたび訪れることもあると思いますので、どうぞお見知りおきを」
「・・・・どうぞ、御掛け下さい」

淡い水色のスーツに身を包んだユーリは髪を後ろで軽く結んでおり、挨拶時は小さく御辞儀をしたのみで顔を上げることは無かった。 強張った顔で緊張しているようにも見える。 
共に座しているウォルター・朔と名乗った人物は営業部長という肩書きとは不釣合いなほど若く、20代前半にしか見えない。 どちらかというと音楽家か芸術家のように見て取れた。


「では、早速ですが来期契約の延長に関して新たな事項の取り決めと確認作業、そして書類へのサインを行いましょう。 詳細はこの書類にありますので、御確認を」

ウォルターがそう言うとユーリが先ほど早々と用意した書類を差し出した。 
その時 やっと李順がユーリに気付いたようで息を詰めたのが伝わってくる。 
・・・・・やっぱり似ているのか。 
李順の機微を感じ黎翔がそう思い、もう一度彼女を見る。
スーツ姿でいる夕鈴を見る機会は無かったが、髪型や顔立ちはやはり似ているように思えた。 

一年経過しても、未だ夕鈴の顔を忘れることは出来ない。 
・・・・別れが印象的過ぎたのか。


「・・・・問題なければ承認のサインをこちらに・・・・」

李順と経理役員と共に内容を確認して問題ないことを把握する。 黎翔がサインした書類と、こちら側で提示した取り決めの書類を共に差し出し、ウォルターが確認を行なう。 
直ぐに書類をスキャンして、会社へ送る作業を行なうユーリは真剣そのものだ。
黎翔は彼女のその動きを黙って眺めた。

彼女の年は幾つなんだろうか。 恋人は居るのだろうか。 何処に住んでいるんだろうか。

仕事中だというのに、心の中に勝手に湧き上がる疑問を抑えることが出来ず黎翔は困ったことだと口角を僅かに上げた。 今は仕事中なんだと彼女から視線を外そうとするが、それは強く思わなければ為らないほど難しいことに思える。

書類内容に不備が無いことを双方で確認すると、ウォルターが立ち上がり手を差し伸べ握手を交わす。 会合はこれで終了だ。 
書類を片付け、やっと緊張が解けたのかユーリが肩を落として小さく息を吐くのが見える。

「・・・・彼女はまだ入社したばかりなのかな? 緊張しているね」
「へっ? あ、いえっ、私ですか? はい、入って間もないですっ! でも大学時代からバイトで峯エンタープライズに居りましたので経験はあります。 ですから御心配は重々解かりますが、書類運搬に関しましては信用して頂きたく存じます! 本当に気をつけて運びますので!」

入社したての自分が書類を運ぶことに懸念を抱かれていると思ったのだろう。 
真面目な顔をあげたユーリは、そこでやっと黎翔の顔を直視した。 
そして目の前の人物が先日あった珀黎翔であることを知り、目を瞠り驚いた表情を見せる。 

そんなユーリの後頭部をこつんっと叩き、ウォルターが穏やかな顔で謝罪をする。

「すいません。 負けん気が強く意固地な人間ですが、正直で真面目な性格ですので重要書類の運搬に関しては問題ありません。 他、御社との会合にも彼女を起用する機会があると思いますので、これからも御指導を宜しくお願い致します」
「おっ、お願い致しま・・・っ!!」

急ぎ立ち上がり勢いよく頭を下げたユーリは慌て過ぎたのか、机に額を強かにぶつけてしまい、同時に鈍い音が室内に響いた。

「・・・っ! ぐぅ・・・・・」

両手を額に当ててのた打ち回りたいのを必死に我慢するユーリにウォルターが 「また・・・」 と呟き肩に手を乗せ、椅子に座らせた。 困った顔を上げ 「少々粗忽者ですが、本当に真面目な人物である事は私が保証しますので・・・・」 と笑顔を見せる。
 
黎翔が李順に振り返ると、何も言わずグラスに冷たい水を汲み、黎翔が差し出したハンカチにその水を垂らす。  黎翔が冷たく濡れたハンカチを彼女に差し出すと、涙目のユーリが戸惑った顔でおずおずと手を出し額にそっと当てた。

「ありがとう御座います。 この間も変なところを見られたのに・・・。 恥ずかしい・・・」
「ユーリ? この間って何、聞いていないよ?」

ウォルターがユーリの顔を覗き込み柔らかい笑みで問い質す。 
そのしぐさを目にして、黎翔の胸にちりっと小さな痛みが走った。 
ユーリがウォルターに 「初めてこちらに書類をお届けに来た際、ホールで転んでしまって・・・・」 と答えると、その後を黎翔が続けて説明する。

「うちの社員が彼女とぶつかり、転倒させてしまいました。 逆に彼女に御迷惑を掛けたのはこちら側で、謝罪をしたいと申したのですが、断わられてしまいました」
「ああ・・・・。 スーツが濡れていた時のことですね」

柔らかい笑みを浮かべたまま、ユーリの頭にぽんっと手を置く。 親しげなその動きに仕事上の上司だけではないモノを感じた。 

「と、兎に角 宜しくお願い致します・・・・」

恥ずかしそうに真赤な顔で小さく頭を下げるユーリの仕草は、懐かしい想い出を呼び覚ますようで・・・・。 黎翔は柳眉を寄せてその表情を見つめていた。


退社が迫った時刻に李順が会長室へ姿を見せ、明日の予定を報告する。 
が、報告を終えても何か訴えるような表情で立ち竦んでいるのが見えた。 李順のその表情に気付いた黎翔が苦笑する。

「・・・この間、浩大とホールでぶつかった彼女を見て、私も驚いた。 李順、お前が見てもやはり似ているか・・・・・」
「ええ、驚くほどに似ております。 あれから一年経ちますが忘れる筈もありません。 本当に驚きました。 夕・・・、彼女と何か関わりが有るのかも知れませんね」

現実主義の李順がそう言うほどに彼女は似ているのだ。 
もっと彼女と話がしたい、顔が見たいと気持ちは正直に心に告げる。 
素直に心に願望が浮かび上がるが、ウォルターの親しげな動きが思い出され、黎翔は知らず唇を噛み締めていた。







→ 次へ

スポンサーサイト

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 00:10:10 | トラックバック(0) | コメント(2)
コメント
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-08-21 火 16:14:47 | | [編集]
まずは
寝違い大丈夫ですか?お大事にして下さい。 結構地味に痛いですよね。で、周囲には解かりにくいというこの痛さ。湿布を貼ってアピールして下さい。 陛下ならきっと抱っこしてくれます! ええ、間違いなく!(笑)

もう少しで終わります。予想外に長くなりましたが、もう少しだけお付き合い下さると嬉しいです。コメント有難う御座います。
2012-08-22 水 15:42:44 | URL | あお [編集]
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。