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泡沫人の羽衣  29

本当にすいませんと言いたいくらいに長くなりましたが、どうにか目処が立ち、あとはラストスパートを走るだけです。 短距離は苦手で(瞬発力が無いからか?) 長距離は割りと好きだったのですが寄る年波には勝てず、地下鉄の階段でへたばりそうです。
特に大江戸線の六本木駅。 ・・・・・あれは地獄です。

では、どうぞ。







 





ユーリがその後もいろいろな話をしている内に、ふと相槌が聞こえないことに気付いた。 
隣で横たわっているはずの黎翔を見ると、瞼を閉じて静かに寝息をたてているのが解かる。

ユーリは不思議に思った。 
自分が口を滑らせたことが原因とはいえ、珀黎翔と公園で一緒に、手作りの弁当を一緒に食べたなんて夢でも有り得ないだろうと。 
相手は世界規模の事業を展開している超多忙な珀会長だ。
こんなことは一生に一度あるかないかの出来事で、もうたぶん二度と会うことも無いだろう。

モデル並みにハンサムで背も高く、博識で、大富豪、大企業のトップ。 
おまけにホテルやビルを多数個人的に所持し、珀一族自体が世界的にも有名な財閥。 
独身なので多数の女性が結婚を狙っていると、雑誌を碌に見ない自分だって知っている。 
それも相手は皆一流企業のお嬢様ばかり。 中には女優や州議員の娘もいるという。 

そういえば珀一族の中には上院議員がいたわね。 
まるっきり住む世界が違うって、こういうことなんだなぁ。 へー。 すごいわね。 
そんな話がハーレクインの小説以外でも本当にあるものなのね。

顔を覗き込むと長い睫が見て取れる。 薄い唇から静かな寝息。 すっきりとした鼻梁。 
男性なのになんて肌が綺麗なの。 黒髪が秋風に揺れる様はどこかの国の皇子みたい。
会長だから国王陛下って感じかしら? 

・・・・そして、酷く疲れているみたい。 

少し蒼褪めたかのような顔色で眠る黎翔を見て、ユーリは長袖のシャツを脱ぎ、そっと彼に掛けた。 バッグからハンカチを出して広げて重ねる。 葉陰の隙間から秋の柔らかな日差しが降り注ぐ。 時折葉を揺らしながら気持ちの良い風がユーリの頬を撫でるが寝ている身には寒く感じるだろう。 その風に黎翔の黒髪が流れて叡智な額を覗かせる。

本当に綺麗な男性だわ。 妖艶な大人の魅力を持っているのに、時に引き込まれそうな笑顔を持ち、そして何より彼が持つカリスマが周囲の人間を魅了する。 

何故、こんな人が私と一緒に公園でお弁当を食べたのだろう。 
素直に嬉しいが、正直困惑もする。 ウォルターを 『おじさん』 呼ばわりした件を黙っていてくれる替わりとはいえ、本当に有り得ないことだわ。 
こんなに疲れ果てているのに、折角の休日なのに・・・・・。


ユーリは傍らで眠る現実、 『珀黎翔』 を見ながら眉を寄せた。











珀コーポレーションにいつもの書類を届けがてら 他部署へも頼まれた書類を届けようとしていたユーリは廊下で偶然黎翔を見かけた。 公園で一緒にお弁当を食べてから2週間ほど経過していたが、未だに不思議な感覚が残っていたユーリは思わず隠れてしまう。
隠れる意味が解からないと、瞬時に思ったが身体は勝手に動いていた。

「会長、次の会議はあと1時間ほどで第7会議室にて行なわれます」
「あの書類では役に立つ訳が無いだろう! 会議を行なう時間が勿体無い。 担当者へ時間までに再度見直すか、その首を洗うかを決めておくように告げろ!」
「解かりました。 その様に指示致します」
「あとカンダーダホテルの経営の伸びが悪い。 経営者に詳細を聞いておけ。 無能者にいつまでも任せる訳にはいかないと告げるように」
「解かりました。 その様に伝えます」


怒気を孕んだ黎翔のその声に驚いてしまう。 それを当たり前に受け止めている周囲の様子に、彼の言動がいつものことなのだと解かる。 初めて耳にしたビジネスモードの珀会長の声色にやはり大企業のトップなのだと思い知らされた気持ちがした。 そんな人と一緒に休みの日を過ごしたなんて信じられないことだわとユーリは肩を竦めて 静かにその場を離れる。

仕事を終えて帰社しようとホールを歩いていると、突然背の高い人物が目の前に現れる。

「こんにちは! えっと覚えているかな? おきさ・・・ お嬢さんとぶつかった浩大と言いますっ! ホント、あん時はごめんね~!」
「あ、いえ、こちらこそっ! ・・・・持っていた書類ケースで思い切り叩いた感触が残っています。 その節は本当に申し訳ありませんでした」

突然話し掛けられ驚いたが、目の前の人物を思い出して慌てて頭を下げると笑い声が聞こえ、ユーリが顔を上げると悪戯小僧のような彼の顔が近付いて来る。 
ユーリが吃驚して一歩下がると、浩大がにっこり笑顔で聞いてきた。

「お嬢さん、この間、王様と一緒にご飯食べたんだって?」
「王様って珀会長のこと? ・・・・ええ。 よくご存知ですね」
「うん、王様が嬉しそうに話していたんだ。 お嬢さんとデートに行くってね!」

ユーリはその言葉に真っ赤になった。

「デッ、デートじゃありません! 私の失言を忘れてくれる替わりとして一緒にご飯を食べただけです。 デートだなんて珀会長に悪いですよ。 私はただの・・・・・」

そこまで言ってユーリは首を傾げた。 
自分は珀会長とは仕事で多少係わり合いが出来たにしろ、普通は会うことも無い外部の会計監査を請け負う会社だし、また会う必要も無い筈だ。 
それなのに偶然会ったパーティで話をし、その中の話しの流れで公園でお弁当を食べた。 
でもそれは有り得ないことなのだとユーリも解かっている。 

珀会長は大企業の会長なのだから。 

それなのに貴重な休みを自分と公園に、ユーリが勧めた公園に赴き、ユーリの手作り弁当を食べたなんて誰が信じようか。

・・・・・ただの普通の会社員である私と。


「でも王様、すっげぇ嬉しそうだった。 久し振りに見たよ、あんな嬉しそうな顔。 ・・・・・一年ぶりかも知れないな。 ねえ、お嬢さん、また誘ってあげてよね!」
「うれし・・・って。 いえいえ!! 会長をお誘いするなんて出来ませんよ。 出来る訳がないでしょ。 御会いする機会も無いですし・・・・。 あの・・・・ 仕事中なので失礼致します」

ユーリは浩大に頭を下げて回れ右をした。 何故か目の前の彼から逃げ出したくなり、書類ケースを胸にしっかりと抱かかえホールから会社へと戻ろうと、急いで離れようと足を急がせる。  
デートだなんて有り得ないことを言う彼の言葉はユーリを動揺させるには充分だった。 


それなのに。


「ユーリ? ・・・やあ、この間はご馳走様!」

背後から掛かる声にユーリの足が止まった。
大股で近付く彼の靴音が聞こえ、ユーリの肩に手が掛かる。

「知らぬ間に寝てしまって悪かったね。 御詫びに今度は私がご馳走しよう」
 
ユーリが強張った顔を向けると満面の笑みを浮かべた黎翔がいた。 パーティの時のように洗練されたスーツを着こなした長身の彼の笑みを見れば、女性なら誰もが頬を染めるだろう。 
声色は優しく甘く、先ほど聞いたビジネスモードの声色とは全く別人の声に聞こえた。 

それなのに何故私は蒼褪め震え出しそうな自分を押さえ込むのに必死になっているのだろう。

「・・・いえ、そんな訳には・・・。 あの、仕事中ですので失礼致します」

ユーリは俯いてそう言うと、後は一気に外へと走り出した。
背後から自分を呼ぶ大きな声が聞こえたが、それは耳に届かなかったことにして。





両親の死後、両親の親友だったというだけで自分の後見人になってくれたウォルターの両親には感謝しても仕切れない。 惜しみない愛情で大学まで出して貰い、その恩をどう返していいのか解からず、余計な負担を掛けさせないようにとバイト三昧の日々を過ごしていた。 
奨学金を受けられるように必死に勉強し続け、就職と同時に一人暮らしをさせて貰う。
両親の親戚は殆どが外国で、留学中の母が父と出逢ってアメリカで結婚したため、ユーリが頼れるのはウォルターの両親とウォルターくらいだ。 気付けば勉強とバイトに明け暮れ、恋愛もしたことがない自分に気が付いた。


あの時、ユーリは公園で寝入る黎翔の顔をずっと見ていた。 目が離せなかった。 
整った容姿に目が奪われ、戸惑うばかりだった。 
何故戸惑うのか、この2週間不思議だったが漸く気が付いた。 

ただの一庶民が大企業の王様に・・・・・・。

それは実ることの無い哀しい現実。 

彼から離れなければ辛いのは自分だ。 これ以上有り得ない望みが膨れる前に、深く関わるのを止めよう。 そう、普通なら会うことも無いはずの人。 時折見かける雑誌の中の彼に憧れるだけでいい。 叶う訳が無い馬鹿な望みを持つ前に、離れる方が懸命だ。


自分の気持ちが、生活が、全てが壊れてしまう








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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 22:29:29 | トラックバック(0) | コメント(2)
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2012-08-24 金 07:47:43 | | [編集]
Re: タイトルなし
有難うございます。元気にかきかきしますね。 もう少し続きます。 もう、どうしてこんなに長くなるのでしょうか。とほほですが、お付き合い、もう少しよろしくお願いします。(仕事場からこんにちは!)
2012-08-24 金 15:36:33 | URL | あお [編集]
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