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泡沫人の羽衣  32
今回はユーリのじたばたです。 黎翔さんは出てきません。夕鈴出てないのにお付き合いくださってる心広い皆様方、もう暫らくお付き合いを。そして、パラレルだから仕方ないね~と笑って下さる太っ腹、愛しています。


では、どうぞ














________もう彼の顔を見るのが辛い。 


彼は私じゃない女性の面影を私に求めていると解かった時点で、見られることも辛くなる。

自分の気持ちに気付いた瞬間から、珀会長と自分の立場の違いにも気付いていた。 立場が違うというのは重々承知している。 だからこそ二度と会わないように気を張っていた。 思いも掛けず食事に誘われたが、そこで珀会長が自分に優しい本当の理由を知ってしまった。

そうだよね。 そんな訳でもなければ私と話しをするなんて有り得ないって!

あれから何度も心の中で繰り返す言葉。
 
どんな女性なんだろう。 私に似ているなら庶民的なふつーの顔の作りよね。 髪は同じなんだろうか? 間違われるくらいだから同じ色なんだろうな。 身長は同じくらいだと言っていたわね。 
少し雰囲気が違うような・・・・ と言っていた。 少し違う雰囲気って何?

「こら、ユーリ。 仕事中に何呆けている?」

頭を叩かれ、振り向くとウォルターが書類を差し出した。 新規の顧客会社の経理書類と判り、直ぐに受け取り中を確認した。 頭を仕事モードに切り替えようと立ち上がり、ミルク多めのコーヒーを淹れる。 カップから立ち昇る甘い香りにユーリはゆっくり目を閉じた。

ほんの少し休憩し、コーヒーを飲み終えると頬を叩きながら席に座り、データを入力し始める。
その様子を黙ってウォルターは見ていたが、今度はユーリの頭を軽く撫でてから自席に戻って行く。 ユーリは振り向くことなく手を止め、一度大きく息を吐いた後に気を付けながら数字を入力し続けた。

その後、数日は仕事が立て込み残業が続き、家に帰ると倒れ込むようにソファに沈み込む。 
忙しくて身体も頭もくたくたで、何も考えることが出来ないほどの筈なのに、それでも珀会長に寄り添っていただろう自分に似た女性が頭に浮かんでくる。


何故、彼はその女性と添い遂げなかったのだろう。
未だに代わりを求めるほどだというのに、・・・・何故。 
もしかして振られてしまったのかしら。 いや、あの珀会長が振られるなんて想像出来ない。 
様々な事業を展開し、掌握している会長が一人の女性の心を捉えるくらい訳ないことだろう。
では、何故?
いやいや、余計なことだろう。 
顔が似ているだけの私がいろいろ考えることさえ痴がましいのではないだろうか。 

珀会長には珀会長の事情があるんだし・・・・。 
そして、その事情に私は巻き込まれたのか。 
でも、そんなに似ているなら、会長が見たいというなら見せてあげても・・・・。 

いやあっ!!  私は馬鹿か!?
あの整った顔で、妖艶に見つめられて耐えられるの? 
熱い視線が私自身ではなく、私を通り越した誰かに微笑む珀会長を見ていられる?
でも彼がそれを望むなら・・・・。
・・・・・って、私はマゾか!?

ああああ、神様。 毎晩繰り広げられる脳内での戦いをやめさせる方法はありませんか?

今日も就寝間際まで頭の中で自問自答しながら、その内酷く疲れ果て深い眠りについた。 




或る日、ユーリはふと思った。 もしかして彼女は亡くなったのだろうか。
気になる余りネットで調べたが、自分に似ているという女性の写真は見当たらない。 
しかし去年、珀会長所有のホテルでのレセプションパーティで一緒に踊る女性のことが記事に書かれているのを見つけた。 そのパーティで珀会長が彼女とだけ踊り、謎の女性は一体誰かと噂が立ったと書かれてある画面を、ユーリは長い間見つめ続けた。 

その女性とだけ踊ったんだ。 それほどまでに・・・・。

調べなければ良かった。 珀会長がそれほどまでに愛しく思う女性の存在を知り、ユーリは胸が締め付けられてしまう。 彼女はその後パーティには姿を見せなかったようで、ネットからはそれ以上の情報は得られなかった。 
レストルームで女性達が 『暫らく姿を見せないと思ったら・・・』 と言っていたのを思い出す。 きっと彼女は黎翔様の邸で大事に・・・・。 いやそれなら私が誘われることは奇怪しい。 
きっと今は黎翔様の傍には居ないのだろう。 あんなに優しげな微笑みで、そして真摯な視線で私を見るということはやはり、その人はこの世にもうイナイ人なのかも知れない。 
・・・・・・それでは対抗しようにも出来ないではないか。


そこまで考えてユーリはハッとした。
・・・・対抗しようにも?  自分に似た誰かに対抗しようとしたの?  私が?
仕事で少し知り合っただけの大企業の会長の愛しい相手に対抗しようと考えたの?
もう会うこともないだろう雲の上の人だというのに、まだ会おうなんて考えていた? 
 
ああ、やっぱり私はマゾなのかも知れない。

ユーリはパソコンを閉じて嘆息した。 そうだ、もう二度と会うことも無い人だった。 
経済雑誌かタブロイド誌で見ることはあるかも知れないが、直接会うことはもうない。 
・・・・本社への書類運びも誰かに替わって貰えないかな。 会長だけではなく、浩大さんに会うのも辛い。 
でもウォルターに何故替わりたいかの理由を説明しなければならない。 義理兄だとしても仕事では上司だ。 そんな私事は言えるはずも無い。  ユーリは深い溜息を吐いた。






「ユーリ、似合うね。 色が白い君に良く似合うよ」
「ウ、ウォルター? どうして? 何を? これは? あの?」

連休が近い週末、ウォルターが仕事の一環だからとユーリを連れてブディックに誘った。 
何時も無難なスーツしか持っていないユーリにパーティ用のドレスをプレゼントすると強引に連れて来られてしまった。

「ユーリは大学は奨学金で、生活費はバイトで、おまけに今は一人暮らしだろう。 両親も僕も、君のその倹約思考には感心せざるを得ないよ。 でもたまにはこれくらい可愛い 『妹』 にプレゼントさせて欲しいな。 ・・・・君、これも。」

店員に近くにあったドレスと同じ色合いの靴を指すウォルター。
ウォルターの実家はそれなりに裕福な生活をしていた。 ユーリが5人に増えようが余裕で大学に通わせただろう。 でもユーリはそれに甘えるつもりは無かった。 自立した人間になり、育ててくれたウォルターの両親に安心して貰いたかったからだ。 ウォルターを含めウォルターの両親はそれを寂しく思いながらも、彼女のやりたいようにさせてくれていた。

「でも、ウォルター。 ドレスなんて貰っても着ていくことは少ないでしょ? 総会にはスーツで充分だし、パーティに参加しなきゃならない時はの時はウォルターの結婚式で来たドレスがあるわよ。 ・・・・勿体無い」
「ユーリ、何年前のドレスを着るつもり? それに、僕たちの愛情を受け取らないとでも言うつもりかい?  今回は黙って受け取って欲しい。 既製品で悪いけどね」

そこまで言われるとユーリは受け取るしかない。 「でも 何故急に?」 ユーリが首を傾げてウォルターに問い掛けると、逆に首を傾げられた。 

「・・・・もしかして社内通知メールを見ていないのかな? 毎年恒例の行事だよ。 うちの会社がお世話になっている企業を招待してのパーティを開くから、そのためのドレスなんだけど。 重要事項もあるから毎回確認するように伝えておいたよね?」

微笑んだウォルターの静かに響く声色にユーリは黙るしかない。 
最近珀会長の事を調べたり、悩んだりして、メールの確認を確かに怠っていた。 見てはいたのだが、見落としたメールにそんな連絡があったとは。 

そして気付いた。

「ウォルター、お世話になっている企業って・・・。 珀会長のところも招待してる?」
「 ?  ああ、一番の顧客だからね。 緊張しなくても大丈夫だよ。 接待は最初だけで直ぐに歓談を交えた商談となるからね。 3時間位したらそっと帰宅してもいいよ」

3時間の我慢なら、それも仕事なら、ユーリは出席せざるを得ない。 






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 00:20:32 | トラックバック(0) | コメント(0)
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