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泡沫人の羽衣  33
白陽国は? と良く聞かれますが、御免なさい。今はこっちに力が入っております。その内、他の話でいちゃいちゃ陛下&夕鈴を書きたいと思っております。




では、どうぞ。














スタッフは確かに皆着飾っていた。 
次々とホテルに現れた招待客は華やかなドレスと輝く宝飾を身に纏い、または洗練されたスーツに身を包み会場に入って来た。 紳士淑女の笑みを浮かべ、ウェルカムドリンクを片手に招待された顧客達は大きなホールのあちこちで歓談を始めた。
ウォルターに言われたが去年まではバイトだったため、接待パーティには参加していないし、こんなに大規模のものだとは思わなかった。 確かにドレスでは無く、スーツを着て参加していたらユーリは見事に浮きまくっていただろう。 華やかなドレスに身を包む社員の中、ユーリは着慣れないドレスに身を包み、笑顔で接待をしながら素直にウォルターに感謝することにした。  

「へえ、お前のそんな格好、初めて見るな」

振り向くと几鍔がスーツに身を包み立っていた。 髪を軽く後ろに靡かせて会社内で見かける几鍔とは全く違って見える。 上背が高く、整った容姿の几鍔が社内で他の女性社員に騒がれるのが、スーツ姿を見て何となく解かるような気がした。 

「・・・・・失礼ね。 ウォルターの結婚式の時もちゃんとしたドレスを着ていたわよ」
「ああ、確かに着ていたな。 上から下までストンっとした子供っぽいワンピース」

良く覚えているものね。 でもあの時はハイスクールだったし、ドレスだって結構高いのだ。 
ベビーシッターのバイトではあのドレスが限界。 それでもあのドレスは未だに気に入っている。 淡いイエローのオーガンジーで肌触りが良く、ベルトをしたりスカーフを巻けばバリエーション豊かに長く着られるドレスだから。

今日はホテルに来てから化粧をされ、髪までセットされ、ドレスを着せられた。

 『たまには兄の言うことを聞いて欲しいな』

そうウォルターに言われ、仕方なくホテルメイドに身を任せたユーリ。 
ここまでしなきゃならないのかと戸惑ったが、鏡の中の自分を見て思わず感嘆の声を上げた。 
人間ってここまでしたら、こんなに化けられるのね! と。

普段、殆ど化粧をしない夕鈴は肌が綺麗ねとメイクされながら褒められ、背がざわつくほど恥ずかしくなった。 しかし鏡の中の自分は頬を染め、グロスで濡れた唇は艶やかに輝いて見え、髪はドレスと同じ色合いのリボンを何本も複雑に編み込まれてアップにされ、自分で言うのも変だがいつもより大人びて見える。 
ドレスは胸元が淡いチェリーブロッサムの色合いだが、裾へ行くに従ってグラデーションが濃く染まっている美しいドレス。 膝丈のドレスからはしなやかな足が覗き、その足元にはドレスの裾と同じ色合いのクローズトゥパンプス。 

その靴で几鍔の足を踏むと、ユーリはにっこりと微笑んだ。 苦笑しながら手を伸ばす几鍔は、いつもと違う髪型に躊躇し、少し手を彷徨わせた後ユーリの肩を叩いた。 

「ああ悪かった、ユーリ。 すごく似合うよ。 いつもと違って大人っぽく見える。 ・・・・普段とまるで違って怖ろしいくらいに、な」
「・・・・几鍔、褒められた気が全くしないわ・・・・」
「・・・っ! お嬢さんっ! うわあ、すごっく綺麗だよっ! 驚いた~!」

背後から急に掛けられた声に驚いて振り向くと笑顔で眼を瞠る浩大の姿。 
彼はいつも見るカジュアルな姿なのに違和感を感じなかった。 浩大の顔を見てユーリが唇をきゅっと結び、眉間に皺を寄せ、その表情に浩大は顎を引いて戸惑う。

「あー、・・・・・もしかして王様との食事は気に喰わなかったのかな? 騙したことになったのは謝るから許してくれる? ねっ、お嬢さん!」  

浩大が両手を重ねて必死に謝るから、ユーリは溜息を吐くしかない。 
珀会長を思い出すから彼にも会いたくは無かったというのに。 
騙されて食事に連れて行かれたということも、それはそれで思い出すたびに腹が立つ。 
そして真相を知ってしまった今、如何いう対応をとればいいというのか・・・・。 
浩大だって私が珀会長の想い人に似ているから食事をセッティングしたのだろう。

「ユーリ、騙されたって何だ? ・・・・最近元気が無いのはこいつが原因か?」
 
ユーリの肩に置かれた几鍔の手に力が入り、浩大を睨ねつける視線に熱が籠もる。 
睨みつけたまま几鍔が一歩浩大に近付くと、驚いたように目を見開き、それでも飄々とした顔で浩大が大きく一歩下がった。 ユーリがそれに気付き 「ち、違うわよっ!」 と几鍔の腕を掴み慌てた。 几鍔が自分の為に憤ってくれたのは嬉しいが、普段の仕事中そんなに気付かれるような顔をしていたのかと恥ずかしくなる。

「浩大さん、もうあのようなお誘いは御遠慮致します。 几鍔、元気が無い訳じゃなくって単に仕事が忙しかっただけ! ・・・・でも気遣いは嬉しい。 ありがとう」

浩大は困った顔でブツブツ言っているが、その呟きの内容は聞こえない。 
几鍔は口を半開きにした顔をユーリに向け、声無き憤りを口の中で喚いているようだった。 
ユーリはにっこりと微笑むと、もう一度浩大を正面から見据え頭を下げた。

「これからも御社との御付き合いが長く続きますよう、お願い致します。 本日はごゆるりと御過ごし頂けると嬉しく思います」 

社員として来て下さった方への口上を述べると几鍔の腕を掴み、踵を返して場を離れようとした。 そこへ背後から足早に近付く靴音が聞こえて来た。





「あああっ、御久し振りですっ! お姉様っ!」

ユーリは腕を取られ振り向かされると、モデルのような女性が大きな目を見開き深紅の花が咲き誇るかのような笑顔を向けてきた。 そして声を出す暇も無く、あっという間にボリュームのある胸がユーリの顔に押し付けられる。 

「珀会長に聞いても教えて下さないから、もしや何処かへ行かれたのかと心配で堪りませんでしたわ。 どうして私に何も教えて下さなかったのですか? ああ、夕鈴お姉様っ!」

顔をぐりぐりと胸に押しつけられて呼吸が出来ない。 
彼女に抱きつかれたまま、息が出来ないと手をわたわたと動かし続けていたら、几鍔が抱き締め地獄から掬い上げて救助してくれた。 
いきなり引き離されたことに女性は几鍔を冷たく睨み付けるも、その顔貌はとても美しい。 
抱かかえられたユーリは女性を振り返るが見たことも無い女性と解かるだけ。 
そして気付いた。  彼女が間違えているのは珀会長の想い人である女性だということに。

「あの、私は峯エンタープライズ社員です。 何方かと御間違えではありませんか?」

眉間に皺を寄せた彼女はユーリを凝視し、静かに顔色を変えていった。 
悲しげな蒼褪めたその表情にユーリは悪いことを言ってしまったように感じるほどだ。 
それでもユーリを見つめ続ける彼女は 「お姉さまではありませんのね・・・・」 と寂しげに微笑みながら掠れた声を漏らす。 
几鍔がユーリを床に降ろすと、彼女はユーリの手を取り柳眉を顰めて柔らかく微笑んだ。

「申し訳ありませんでした。 わたくしは氾カンパニー会長の秘書、氾紅珠と申します。」

目の前の女性を見ると何処と無くウォルターに似た柔らかい眼差しと立ち振る舞いと知る。 
そして華のような美しさで笑みを向けられ、ユーリは居た堪れなくなった。 
こんな美女に抱き締められる 『夕鈴お姉さま』 の存在が今まで以上に大きくユーリの心を占め、こんな美女より 良いといわれる彼女の存在の夕鈴が苦しいほどに大きく膨らみ出す。 
_________ 珀会長の想い人。 

「氾の姉さんも 未だお妃ちゃんのこと想っているんだ~・・・・」
「勿論ですわ。 珀会長に御聞きしても教えて下さらないし・・・。 でも本当に似ていらっしゃいますのね。 もしかして夕鈴様のご親戚なのでしょうか?」

大きく目を見開いた紅珠に問い掛けられるが、ユーリの両親は既に亡くなっており、アメリカに現在親戚は居ないはずだ。 そんなことは聞いたことも無い。 ふるふると首を横に振るが、それでも紅珠はユーリの手を取ったまま微笑み続ける。

「あの、・・・もし、お嫌でなければお話をさせて頂きたいのですが宜しいでしょうか?」
「あー、悪いが俺らはこれから仕事があるので、一度集まらなきゃならない。 招待客への接待で個人的に関わっている暇が無いんで、日を改めて欲しいのだが?」

几鍔が間に入って来て、睨めつけるような視線を紅珠に向けると、紅珠は冷やかな視線で几鍔を見返し、そして小さく嘆息した。 
浩大が紅珠に 「他人なんだから彼女にお妃ちゃんの話は駄目だろう?」 と告げると、悲しげな表情をユーリに見せて深く御辞儀をしてから場を離れて行った。
そして、何度か振り返る彼女の視線が痛かった。





浩大と紅珠が離れて行ってからも、ユーリは自分の膝が微かに震え続けるのを止める術がない。 すると几鍔がユーリの肩を掴み、ロビーラウンジのソファに座らせてくれた。 
離れたと思ったらフレーバーティをテーブルに置き、肩に手を置いた。 ユーリが顔を上げると几鍔は真摯な表情で見下ろして来る。

「何があったのか全く解からないが、しばらくここで落ち着いて座っていろ。 ウォルターには・・・ 履き慣れない靴で靴擦れになり休んでるとでも言っておく」

曖昧な笑顔を向けてユーリは几鍔に頷いた。 
几鍔に上手く説明なんか出来ないし、紅珠に関してはユーリ自身がパニックになりそうだ。 
几鍔が会場に戻っていく姿を見送ったあと、深くソファに身を預けてユーリは目を閉じた。

一気に力が抜ける。 久し振りのドレスにパーティ。 この間 関連会社の新規事業パーティには参加したが、スーツのままだったし横にはウォルターが居てくれた。 
今日は会いたくないと思っていた浩大に、初めて会う氾紅珠。 
耳にした 『夕鈴』 という人の名前。 短時間の間に怒涛の出来事。

「・・・ふぅ」

そうか、夕鈴っていうんだ。 私にそんなに似ているんだ。 
また間違われた上に、あんな美女に似ているだけの私と話しをしたいと言われるほど、彼女は魅力的な人物だったのだろう。 でも、私と話しても楽しくは無いだろうに。
 
・・・・・ああ、だから珀会長は公園で眠ってしまったんだ。 
いつまでも喋り続ける私の話を遮るために・・・・・・。


涙が溢れそうになり、ユーリは慌てた。  今は仕事中だ。 
ソファに浅く座り直し、几鍔が用意してくれたフレーバーティに手を伸ばすと、テーブルの向こうに誰かの足が見えた。 視線を上げていくとダークグレーのブリティッシュトラッドスーツが目に入る。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 00:33:33 | トラックバック(0) | コメント(4)
コメント
我慢できない・
長編とのことだったので、あおさんを真似てコメントを最後まで我慢しようと思っていましたが、むりでしたぁ

読んでいて、何時になくのりのりの感じが話を更に素敵にさせているんですね・出逢いや別れ、切なさあり最後にまた出逢いがあって、自分のことのように、あぁ良かったと胸を撫で下ろしました。壮絶な輪廻を感じています・人って凄いですよねd=(^o^)=b

さぁ黎翔さん!こんどこそ幸せを掴み獲りましょう・
2012-08-27 月 01:19:58 | URL | ともぞう [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012-08-27 月 08:51:37 | | [編集]
テレテレ
思った以上に長くなっていて、自分でも「あああ、めんどくせぇ!」と叫びたくなります。(嘘です。) お付き合い下さる方が多くて、嬉しいです。 もう少し、もう少しと言いながら、結構続いています。 恥ずかしい位に続いていて、自分でも如何しましょう?? お暇な時にでも読んで頂けたら嬉しいです。
2012-08-28 火 22:54:29 | URL | あお [編集]
感涙!
コメントありがとう御座います。 長い話に付き合ってくださるだけでも感涙なのに、黎翔さんへの温かいコメント。 涙の泉が足元に溜まっております。 もう少し、もう少し・・・・のはずでので(爆) お付き合い頂けたら嬉しいです。(^^)
2012-08-28 火 22:59:44 | URL | あお [編集]
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