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泡沫人の羽衣  34
ラストスパートォ!!! いえい、頑張るぞっと。やっと雨が降り出し涼しくなって来ましたが、日中はやはり暑い。おまけに湿気がすごい。 蝉の鳴き声が少なくなり、道や公園のあちこちに蝉の亡骸が。それを拾って職場のあちこちに置くと、あちこちから甲高い悲鳴が。

ああ・・・・・、夏の終わりを感じます。 わたくし 蝉、平気で触れます。


では、どうぞ。













ぎくりと身体が強張る。 
ユーリがそろそろと顔を上げ続けると、顎に手を当てた黎翔がじっとユーリを見つめていた。 
そんなに直視されると如何していいのか解からない。 ユーリが紅茶へと手を伸ばしたまま息を詰めていると、柔らかい、でも緊張を余儀なくされる声が耳を擽る。

「ユーリ、私は君に何かをしたのだろうか。 もしそうだと言うなら理由を知りたい。 ・・・・・確かに君を騙して食事に誘ったのは謝罪すべきことなのかも知れないが公園での礼を君にしたいと思って、考えた結果、ああいう形に・・・・」
「違っ! 何も、何もされていません! レストランで逃げ出したのは私が悪いんです。 本当に・・・・ 私が悪いんです。 急に・・・・ 戻らなきゃならない用事が出来て!」

背を正し膝で強く手を握り締めてユーリは俯いて必死に喋った。 珀会長は確かに悪いことはしていない。 レストランから珀会長を置いて逃げ出したのは自分だ。 
それも自分の感情に動揺して。

「本当に・・・・ 申し訳御座いませんでした。 そして御馳走様でした」

ユーリは深く頭を下げ、そのまま勢い良く立ち上がると会場に戻ろうと足を向ける。 
視線を合わせないように、心臓が跳ねているのを気付かれないように、身体の震えを知られないように縺れそうな足を運ばせる。 
しかし、腕を捕られ振り向かされてしまい 反射的にユーリは目を瞑って俯いた。


黎翔は身体を強張らせて俯いたユーリに驚いた。 
レストランで一体何があったのか解からないまま日々が過ぎ、焦燥感だけが募っていた。 
公園で過ごした時の彼女から、今の彼女の様子へと変わる何があったのか。 
今日の姿はいつものスーツとは異なり、彼女の白い肌に似合う色合いのドレス。 髪は編み込まれアップに纏まり、黎翔の眼下にはユーリの頬や耳、首筋が紅く染まり出したのが眼に映る。 黎翔の腕にユーリの微かな震えが伝わり、黎翔は目の前の姿態とその震えに彼女を解き放つことが出来なくなった。

「・・・・もう少し話しをしたい。 ユーリ、時間は取れるだろうか?」

その言葉にユーリは首を横に振る。 「仕事がありますので・・・」 
そう告げるだけで精一杯だった。 
自分ではない自分に想いを寄せているのだと解かっていても、黎翔に声を掛けられ嬉しいと感じる自分がいる。 でも彼が求めるものは違うのだから、これ以上自分の心が傷付く前に離れなきゃ駄目だと解かっているからこそ、震えるながらも拒否の言葉を紡ぐしか出来ない。

「ユーリ、お願いだ。 私を見て欲しい」

強く望む言葉を君に伝えるが、俯いたままの君はまた首を横に振る。
「申し訳御座いません。 仕事が・・・」 と同じ言葉を繰り返す。 その言葉が耳に届いた時には手が動いていた。 乱暴とも思えるしぐさでユーリの顎を捉えて上を向かせると瞳を覗き込んでいた。 ユーリが声無き悲鳴をあげて息を吸い込むのが判ったが、そのまま両頬を押さえ込み強く見つめる。
両目をぎゅっと強く閉じたままのユーリが、 「お願いです・・・。 離して下さい」 と周囲に気遣い声を顰めて囁いた。 ふっくらとした唇が目の前にあり、黎翔は強気で返す。

「ユーリが見てくれないなら、目の前の唇にキスをする」
「・・・いっ!?」

その言葉に直ぐに目を開いたユーリは、近距離から顔を覗きこむ黎翔に息を呑む。 
頬を捉える黎翔の手を剥がそうと暴れるが、一向にその手は離れてくれない。 整った顔が驚くほどに近く、キスという言葉に思わず視線がその唇に注がれる。 
大きく見開いた瞳に彼の口角が上がっていく様が映り、そこで嘘だと解かった。 
からかわれたのだと解かり、我慢していた涙がぽろりと零れた。

「ユーリ・・・・」

黎翔の声が聞こえたのと、抱き締められたのとどちらが先かなんて解からなかった。 
気が付けば黎翔の腕の中に閉じ込められて、頭の中が真っ白になり動くことが出来なかった。 
ただ彼から香るフレグランスを感じながら涙で濡れた瞳を閉じた。
 
どの位そうしていたのだろう。 多分一分も経っていないのだろうが、香りに捕らわれたユーリはその感覚が判らないまま、ただ身体を黎翔に預けていた。
ゆっくりと身体が離れ、涙で濡れたユーリの瞳を覗き込む黎翔が見て取れる。 長い指が眦の涙を掬い取り、自分を見つめる優しげな表情に胸が痛み、目を瞑るとまた涙が零れた。

「・・・そんな風に・・・ 彼女を、夕鈴さんのことを見つめていたんですね」
「え・・・・?」

真赤な顔で黎翔の手を振り払った。 ・・・・とうとう口にしてしまった。 
一時はこの顔で珀会長が癒せるのならばと思ったけど、やっぱり私には無理だ。 
こんなに胸が苦しくなるなんて、想像していた時は思いもしなかった。 
眉を寄せ困惑した顔の黎翔の手が私に払われたまま、宙に浮いているのが見える。 

「は、珀会長の想い人に、・・・・ゆ、夕鈴さんに似ているなんて光栄ですが、会長に毎回そんな眼で見られるのは・・・・ めっ、迷惑なんですっ!!」

足が震えるし、語尾が荒くなるし、手先は痺れるし、涙はぽろぽろと零れて止まらないし! 
戦慄く唇から嗚咽が漏れそうで、言うだけ言ってユーリは口を強く結んだ。 
顔を背けて踵を返し、会場まで一気に走りこみ、ウォルターに申し訳ないが帰ると告げようとした。 こんな顔のままでは仕事なんか出来やしない。

それなのに珀会長がまた腕を掴むから、走り出すことも出来ない。 腕を思い切り引くが全く相手にもされていないのが解かる。

「嫌だって言ってるのにっ!」
 
どんな状況でも珀会長は目立つから声を顰めなきゃ駄目だろうと、嗚咽を抑えながら告げるが、一向に手は離れてくれなかった。

「・・・・浩大」
「はいよっ! 峯エンタープライズのウォルター氏に伝えればいいんだよね」
「ああ、それと・・・・・。 あとで説教だな」
「ひぃっ!」

珀会長が彼の名を呼ぶと何処にいたんだろうか、即座に姿を見せた浩大と二言三言話して、浩大が蒼褪めてフロントに行き、直ぐ会場へと走り出した。 
ユーリが走り出した浩大に視線を向けていると、肩を抱かれ何処かへ連れて行かれそうになり、驚いて足を踏ん張ると、頭上から溜息が聞こえてくる。 
眉間に皺を寄せて睨み上げようとした時、膝裏に黎翔の手が廻り横抱きにされてしまった。

「ぬあっ! な、何をするんですかっ!?」
「黙って!」

ぎゅっと胸に押し付けられた上に、低い怒気を孕んだ声が頭上から降り注ぎ、ユーリは蒼褪めて息を止める。 エレベーターに入ると、昇降操作パネルの上部にある小さな数字パネルにいくつかの数字を打ち込んだ。 浮上する感覚に上階へと動いているのは解かるが、インジケータが最上階まで表示した後 「R」 を表示したのを眼にして 「・・・屋上?」 と思わず呟いてしまった。




ポーン


軽快な音と共にエレベーターのドアが開き、広い部屋が目の前に広がっていた。 
周囲は大きな窓ガラスで占められ、外の景色が広がっている。 夕刻から始まったパーティだったが、いつの間に宵闇が広がる時刻になっていたのだろう。 蒼と漆黒とビルの谷間から少しだけ覗く昏い茜色、そして街のイルミネーションが醸し出す無音の喧騒が見て取れる。 
ゆっくりとした動作で足を降ろされ、ユーリの身体から熱が離れて行く。

「・・・・強引に連れて来てしまったが、ここでなら君とゆっくり話せる。 君は仕事中だろうが、こっちの話しの方が重要だ。 あとで君の上司には私から侘びを入れる。 まずは・・・・ 泣き止んで欲しい」

すんっと鼻を啜ると、テーブルからティッシュを持って来てくれた。 
「・・・・すいません」 と鼻を押えると、また涙が零れて落ちる。
 
普段、自分は滅多に泣きはしない。 ウォルターの両親の家とはいえ何不自由なく育ち、自立したい気持ちを尊重され、バイトをしたり、勉強したりで忙しくも楽しく過ごしてきた。 泣くような状況は殆ど無かったのだ。 それなのに、今はこんなにも涙がぽろぽろと零れ落ち続けている。 
恋愛をした経験が無かったユーリは、人は誰かを好きになるとこんなにも涙脆くなってしまうのだと初めて体験した。

「ラウンジで飲むことが出来なかったから、コーヒーでも淹れるよ。 ミルクと砂糖は?」
「ミルク多めで砂糖は少しだけ。 ・・・・あ」

いつもの調子で答えてしまったが、珀会長にコーヒーを淹れて貰うなんて出来ないと、通された部屋に設置されたキッチンへと追い駆ける。 しかし黎翔に 「君は座っていて・・・」 と柔らかく言われフロアへ戻されるも、所在なさげにユーリは立ち竦んでいた。  
直ぐに戻って来た黎翔はテーブルに二人分のコーヒーを置くと、ユーリをソファに座らせる。
両目を真赤に染めたユーリが鼻を啜りながら膝の上で手をもじもじさせていると、その手が黎翔に囚われた。 ユーリが顔を上げると 黎翔が戸惑ったように見える顔で見つめてくる。

「君の涙を見ることになるなんて思いもしなかった。 悪かったと思っている」
「いえ、勝手に零れてくるだけですから。 それより私、仕事があり・・・・ ん、きゃっ!」
  
急にまた黎翔の胸の中に囚われる。 抱き上げられた時のように強く身体に巻きつく黎翔の腕にユーリは動けなくなり、耳元に低く響く声に背が震える。

「・・・・君に嫌われたくない。 ユーリに顔を背けられると悲しくなるし、意地悪を言いたくなる。 君を見つめて居たいし、君に見つめて貰いたい」

黎翔からの言葉を聞き、ユーリはぽかんと口を開いたまま、ふるふると首を横に振る。

そんな訳ない! だって、だって会長には 『夕鈴さん』 が!  あ、でも・・・・・。

ユーリは強く抱き締められて離れることが出来ないけど、必死に胸に額を押し付けて顔を俯いた。 深く息を吸ってコクンと唾を飲み込み、聞いてみたかったことを小声で問い掛ける。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 00:34:34 | トラックバック(0) | コメント(0)
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