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血湧き肉踊る  4

今週は午後から書類作成に忙しく、PCの前で座っていることが多くなります。
あの「パソコン用めがね」っていいのかしら? 眼鏡屋さんの前を通るといろいろ書いて
あるから興味があるけど、帰りが遅いシフトの為、ゆっくりと話をするのも面倒で。
まあ結局は、面倒でそのままになりそう。 (笑)



では、どうぞ。






















黒衣の男性は試合が終わると一旦会場から離れ、控えの天幕に移動した。 
会場では次の試合が始まっており、武官らの気合の声が響き渡り天幕内にも聞こえてくる。


「へーか。 オ、オレ・・・・死んじゃうかと思った」
「なんで? 夕鈴がいつ気付くか楽しみで、張り切っちゃうなら解かるけど!」

腹を抱えて苦しそうに未だ哂い続けている浩大と黒衣の陛下がひそひそ話していると、菰将軍が近寄って来て戸惑いの声を掛けた。

「陛下・・・・ まだお続けに為られるのでしょうか・・・・・」
「ああ、妃からの口付けが褒美ならば夫である私が貰うべきだろう?」

脛当ての紐を引き締めながら、事も無げに告げる陛下に菰将軍は肩を落とす。

「それは後宮で好きなだけして下さい。 それに褒美は御妃様からの口付けではなく、王宮管轄区域の離宮2泊3日、夢の温泉旅行でしょ。 なんで口付けが足されているんですか? それは御妃様がお嘆きになられますよ?」

菰将軍の言葉に浩大が 「ぶほっ!」 と咽込んだ。 約束した時の妃を思い出したのだろう。 のた打ち回るように身体を屈ませて苦しそうに悶えている。 それを気にすることなく、陛下は顔を菰将軍に向けて妖艶な笑みを見せた。

「我が妃は其れを了承したぞ。 だから私が優勝しなければ為らないのだ。」

しかし、陛下の次の対戦相手は趙将軍の武官で腕は確かな人物。 如何な陛下であろうとも容易く勝てる相手とは思えなかった。 菰将軍は趙将軍の武官に手を抜くように進言しようか本気で悩み、頭痛を覚えた。

「それより、お前が審判だろう。 会場に行かなくていいのか?」
「陛下が心配で足を運びました次第です。 審判は他の武将に任せております。 それより本当にお続けに為られるのですか? これは御前試合ですよ!?」 

今度は真面目な顔付きに変わった陛下が菰将軍に向き直り、「だからだ・・・・」と告げる。

「この手で受ける鍛錬の結果を、次世の平穏に繋げたいと願っている。 過去の悲惨な内乱も戦も繰り返す訳にはいかないからな。 退けるための兵の力量を自らの手で知りたいと思い参加しているのだ。 将軍、鍛錬の結果を私に示せっ!!」
「・・・っ、 はっ!!」

菰将軍はその言葉に感動し片手を胸に宛がい頭を下げると、陛下の前から踵を返して試合会場へと向かった。 菰将軍が去った後、浩大は陛下に白けた視線を投げ掛ける。 


「旨いこと言うよな~。 参加は大臣らの武官への干渉と賄賂、各州将軍への威嚇が目的だろ? おまけにお妃ちゃんからのチュウ・・・って。 まったく人が悪いにも程がある。 んで菰将軍は人が良過ぎるね~! ホントに将軍か? 禁軍内では問題ないだろうけどね、実直すぎだよね~」
「嘘は言っていないよ?  まあ、夕鈴にばれたら後で怒られそうだけど大丈夫。 きっと夕鈴は許してくれるから!」 (小犬陛下で謝れば・・・・ ね!)

陛下は満面の笑みを見せると黒衣の頭巾で口元を隠した。 
浩大は高官と大臣の某州への不必要以上の干渉と其れに関する不正を調べ、御前試合で集まった将軍から裏を取っていた。 ついでに 『唯一の妃』 への近寄る密偵を捕縛し、他隠密へと引き渡して来たところだ。

大きな催し物が開催されると、裏で跋扈しようとする輩が動き出すから面白いように捕らえる事が出来るねと 事も無げに浩大は話すが、裏づけには何ヶ月も調査が掛かっていた。 駒とされる武官をこの試合で翻弄し、大臣らの裏をかくことも陛下の試合参加を決めたひとつだ。 上手く追い込み、追い詰めるために。

勿論、やる気になる為に夕鈴を上手く遣ってはいるが・・・・・。

「あと二つで優勝だ。 我が妃からの口付けと温泉旅行が待っているな。 夕鈴、温泉好きだから喜ぶだろうな~!」
「まあ、へーかの側近が其れを許すとは思わないけどね・・・・・」

浩大の呟きは陛下の耳に届いたのか、否か。 そのまま踵を返して陛下は会場へと向かった。 



控えの間の天幕を開けると、地面が揺れるほどの歓声が上がる。 

黒衣の人物を今か今かと待ち侘びていた観客からの声援に片手を軽く上げて応える。 その動きに更に歓声が大きくなり、試合会場で待ち続けた対戦相手の武官の顔が憎々しげに睨み付けているのが解かる。

夕鈴は余りの体躯の違いに、今度こそ黒衣の人物は完膚無きまでに叩きのめされるだろうと思った。 周囲の大臣らが柳大臣に気を配りながらも強く手を握り締め、賭けた人物への勝利を願っているのが感じられた。 柳大臣は聞えよがしに傍に控えている高官へ 「・・・戻る。」 と短く告げると席を立ち上がった。
夕鈴が思わず顔を向けると冷やかな視線で、それでも 「政務に戻ります。 誰が優勝でも政務には一切係わり合いが御座いませんのでな。」 と拱手して告げてくれた。 夕鈴が慌てて御辞儀を返すと踵を返して去って行った。 

そう謂えば柳方淵の姿がないわね・・・・と夕鈴が周囲を見回すと、柳経倬が腕を振り回して 「お前に全てを賭けるっ!!」 と叫んでいる姿が目に入った。

・・・・近くに父親が居たのに。 ・・・・たぶん彼は気付いていないわね。


思わず彼を残念そうに見つめていると会場から怖ろしいほどの激しい気合の声が響いた。 
いつの間にか試合開始の号令が掛かり、今まで見た誰よりも体躯の良い武官が大きく斜めに昆を持ち上げ、鋭い気合を放ったようだ。 其れに対して黒衣の人物は下段の構えで対峙している。 

しかし素人の夕鈴から見ると下段の構えというより地面に昆を投げ出し脱力しているように見えた。 その彼は対峙する武官に向かって片手を差し出し指をくいっと曲げ、掛かって来いと誘っているかのような挑発をしている。

観客が息を呑むのが夕鈴にも判った。 
そして相手の武官がその挑発にいとも容易く乗るのを感じた瞬間、武官が怖ろしく低い怒声を響かせ、昆を振り回して黒衣の人物に襲い掛かる。 思わず夕鈴が両手で顔を隠すと周囲から大きな歓声が上がった。

指の合間からそっと覗くと、昆を避けて相手の攻撃をかわした黒衣の人物が昆を低く振り回し、相手の足を攻撃する瞬間が目に入る。 地面に叩き付けられた昆が振り回された昆を受け、地面で互いの昆が力比べをするように動かなくなった。

「・・・・っ!!」

思わず力が入り、夕鈴の息が止まる。 
耳が痛くなるほどの歓声が瞬時に止み、場は水を打ったかのように静かになった。
相手の武官が昆を緩め、バランスが崩れたところを畳み掛けるように大きく昆が振り上げられ、黒衣の人物へと振り下ろされる。 黒衣の人物が直ぐに回り込み昆を避けると、正面から突き出した昆が武官の咽喉元に直撃した。
 
「あ、痛いっ!!」

そこは急所だ。 
しかし武官も突き出された昆を避けるように、瞬時身体を退いたのだろう。 でも少しは当たったのかも知れない、大きく身体を揺らしてそれでも体勢を立て直そうとした時、ぐんっと近寄った黒衣の人物が足払いで武官の巨体を場に倒し、昆を咽喉元に突きつけた。 
勢いよく後方へと倒れた武官の後頭部には黒衣の人物の足があり、地面への直撃を避けている気遣いさえあった。 それを知り目を見開いた武官が小さな声で負けを認めた瞬間、会場は今までにない歓声でどよめきが響く。



眉間に皺を寄せて会場に注目していた夕鈴の傍へと浩大が笑顔で近付いてきた。 
侍官姿だというのに満開の笑みを見せる浩大に、夕鈴の眉間に更に深い皺が彫られた。 










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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:05:55 | トラックバック(0) | コメント(0)
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