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抱擁  3
続きです。 夕鈴の台詞が同じ言葉の繰り返しで、超楽チン!!
今月は頑張って仕事を推進めていますが、精神的に疲労度が高い。
あー、宝くじ当たらないかな~。 (マジで思っています)


では、どうぞ。














謎の侍官に言われた通り水月が李順の元へと急ぎ、妃は陛下が来る前に場所を移動したと耳元へ告げた。 侍官姿の人物に李順へ告げるように謂われたと報告すると、心当たりがあるらしい李順は水月に顔を向けると小声で答える。

「解かりました。 貴方はこのまま政務に御戻り下さい。 大変でしたが、陛下の妃に関することですので他言は無用に御願い致します」

念を押すように告げると、李順はそのまま執務室へと向かって行った。
 
方淵が水月に近寄り小声で 「おい、アレは離れたのか・・・・」 と聞いて来たので、水月は首を擦り乍ら 「首が離れることは無くなったようだよ」 と微笑んだ。 互いに今日の事は忘れた方が良いだろうという事は承知している。 互いの身体には抱きついて来た妃の感触が甦るも、頭を振ってそれを追い出そうとした。
次回妃に会った時、陛下の傍でも平常で居られる為にも。



李順は大量の書簡に埋もれ怒気も露わな陛下に拱手すると表情を変えずに告げた。

「夕鈴殿は後宮に御戻りだったようです。 心配することは何もありませんでしたね」

だからさっさと仕事を進めてくれと李順が書簡を差し出すと、陛下は訝しむ視線を李順に向けた。 李順が今まで夕鈴の所在を政務中に報告することなど無かった。 それに李順の言った台詞の内容にも引っ掛かるものがある。

「李順、心配することとは何だ? 夕鈴に何かあったと言うのか?」
「いえ、陛下がバイト娘の心配をされているようでしたので・・・・」

瞬時李順の表情が強張ったように見え、陛下は追求するように筆を置いて側近を注視した。 
筆を置いてしまった陛下に隠し事は無理だと判断した李順は、溜息を吐くと簡単に経緯を報告することにした。

「あ~、夕鈴殿はちょっと面倒なことに巻き込まれたようですが、先程浩大が後宮立ち入り禁止区域へと運んだようです。 が、問題はありません。 心配は無用です。 さて、次の懸案では東の・・・・」
「李順、面倒な事とは何だ? 後宮立ち入り禁止区域に運ばれたとは何だ? 浩大が関わっているという事は夕鈴の身に危険があったというのか?」

李順は眉間に皺を寄せて陛下に答える。 

「・・・面倒なこととはいえ、陛下の御政務には係わり合いの無いことです。 そして彼女の身に危険があるとは到底思えない事項ですので御安心を。 今は浩大が見ておりますので先ずは急ぎの書簡を裁くのが先です。 まあ、危険があったのは妃に関わった者達の方でしょうね。」 
 
李順が顔を上げると陛下の厳酷な視線に一瞬身を竦ませる。 
細まった紅い瞳が李順を捉え、昏い哂いを浮かべた陛下が椅子に深く凭れて手を組んでいる。

「詳細を述べよ、李順・・・・・」


つい夕鈴の所在を伝えてしまった自分が悪いのだと反省の深い溜息が李順から零れる。 
そしてバイト娘の心配より仕事を優先して欲しいと、李順は瞑目した。









「じいちゃん、何かいいアイディア無いかな~?」
「とは言ってものぅ・・・。 解く方を知らないとは困ったことじゃ。 まったく馬鹿な奴もまだ居たものじゃ。 陛下が知る前に何とかせんとなぁ~」

立ち入り禁止区域の一室、管理室の寝台で目を閉じる夕鈴はいつもの彼女にしか見えない。 
だが、先程までの彼女はいつもの彼女で有り得ない行動を取っていた。 弟にしかした事が無いだろう抱擁を何度も陛下の臣下にしていた。 その場に方淵と水月、李順だけが居たから行なったのだろうが、政務室でその行動を起こせば陛下がどんな表情をするだろうか。 また政務室がどんな状況になっただろうか。
想像するだけで怖ろしいことだと老師と浩大は肩を竦ませた。

浩大は絹頭巾を取り、侍官の衣装を脱いでいつもの隠密衣装になると嘆息した。

「あ~・・・ 陛下が来るよ。 怖ろしいほどの足音だよん、じいちゃん」
「そうは言っても詮無き事よ。 困ったものじゃ」

二人が溜息を吐いている間に陛下が到着する。 部屋に入ると直ぐに寝台で横になっている妃に目を遣り、二人を睨み付け、浩大が直ぐに両手を上げて白旗を揚げる。

「浩大・・・・どういう状況だ。 何故夕鈴は寝ている?」
「先ずはへーか、落ち着いてね。 順序立ててせつめーするからさ」

浩大は 『いつものように書庫に入った夕鈴』 から説明を始めた。









:::::::::::: ::::::::::::::::::: ::::::::::










妃が書庫でいつものように書簡片付けをしていると、官吏が書簡を大量に運んで入って来た。
入って来ると卓に書簡を置こうとしたが、卓から箱がずれて中身が零れ落ち、慌てて妃と二人で書簡を拾い上げ始めた。 それは時にあること。 妃が書庫に居ることで何時来るかも知れない陛下の存在に怯え、緊張して書簡を落したり、急ぎ書庫から出ようとして慌てて踵を返し扉にぶつかったり、呂律が回らず舌を噛んだり・・・・。

良く見る光景に笑いながら妃が書簡を拾い上げ箱に入れていると、官吏が 「お妃様、此方をじっと見て下さい」 と声を掛けてきた。 振り向いた妃の前に紐にぶら下がった石が揺れている。 夕鈴が首を傾げてその石を見つめる。

「この石をじっと見て・・・・。 深く・・・ 深く集中して見て下さい。 私の声だけを聞いて・・・・。 そあ、だんだん私の声しか聞こえなくなる。 そして、ゆっくりと瞼を閉じて・・・・。 これから言うことを良く聞いて・・・・」

揺ら揺らと揺れる石を見つめている内に夕鈴の頭もゆっくりと揺れ出し、官吏の言葉通りに妃はゆっくりと瞼を閉じた。 


その後、書庫に来た方淵がぼうっと佇む妃を睨ねつけながらいつもの厭味を妃に投げ掛けると、妃は微笑みながら彼に抱きついて・・・・。

「方淵に抱き付いた? 夕鈴がっ!?」
「そうそう。 でもお妃ちゃんが悪い訳じゃない。 暗示のせいだからね」
「・・・・・・方淵は何処だ。 あと抱きつかれたのは誰だ? 正直に言え、浩大」

腹を抱えて哂い出した浩大は陛下にストップを掛ける。 

「方淵が悪いんじゃないって!! 水月も李順さんも被害者みたいなもんだろ? 彼らの方が可哀想じゃん。 陛下に知られたら睨まれるの解かっているもんな~」
「そうじゃのう。 陛下に睨まれたら水月殿じゃなくとも引き篭もりたくなるよのぅ」
「水月に李順にまで? ・・・・で、その暗示はどんなものだ?」

う~んと頭を掻きながら浩大は老師を見て、もう一度深い溜息を吐いた。

「もう一度言うよ、陛下。 暗示が悪いんで、お妃ちゃんが悪いんじゃないからな。 ・・・・まあ、実際見た方が早いよ」

寝台に近寄り、瞳を閉じた夕鈴を起こしに掛かった。 ユサユサと揺さぶられ、ゆっくりと目を覚ました夕鈴は眇めた瞳で周囲を見る。 ここは何処なんだと言う顔でゆっくりと寝台から起き上がると首を振り、顔を上げる。

「あ、れ・・・? 私 書庫で片付けをしていたはずで・・・・。 ・・・老師、浩大?  陛下まで! え? あの、一体如何されたんですか?」
「うん、ちょっと問題があってね、ここに来て貰ったんだ。 あのままじゃ陛下が殺戮者になっちゃうからね~。 で、気分は如何?」

浩大の笑顔と言っている意味が解からないが、夕鈴は首を押さえながら答える。

「何故か首が痛いけど・・・、他は問題ないわね。 私倒れちゃったの?」
「いや~、それはオレが悪い。 で、早速だけど・・・・・・・『お妃様』」

夕鈴は首筋を擦っていた手を寝台に降ろし、にっこりと微笑んで寝台から立ち上がると浩大に近寄り両手を差し出してするりと抱き付いた。 浩大の首に手を回してきゅっと抱き締めると、その肩に顔を埋めて 「大好き、浩大」 と嬉しそうな声で甘えてきた。

「・・・・・っ!!!」  
「へーか、こういうことですよ。 解かった?」
「な、な、な、何だこれは? 聞くのと見るのとでは違うのぅ・・・」

老師が小さな瞳を最大限に開いて驚いていると、背後から猛吹雪を伴う強風が吹き荒れた。
老師が背を丸めてその極寒の強風に耐えていると、陛下が浩大の身体から夕鈴を引き剥がそうと腕を取った。 しかし浩大の首に巻かれた妃の腕は強固で組まれた指先が白くなるほど力が入り、無理をすれば折れてしまうほどにみえる。

「大好きっ! 浩大!」

陛下に腕を強く引っ張られた痛みの為か、眦に涙を滲ませながら、それでも笑顔で浩大に擦り寄る夕鈴を見て陛下は驚愕した。 浩大は両手を上げ夕鈴に出来るだけ触れないようにしながら説明を続ける。

「陛下、お妃ちゃんの耳元で優しく 『お妃様』 って言ってみーよ。 そうしたらお妃ちゃんはオレから直ぐに離れるからさ」
「・・・・・夕鈴じゃ駄目なのか? 『お妃様』?」

浩大にぎゅっと抱きついていた夕鈴の腕から力が抜け、浩大の横に立っていた陛下に手を差し伸べると笑顔を向けて胸に抱き付いた。 陛下の両脇に手を回し背に縋りつくように抱きつくと艶やかな甘い声色で 「陛下、・・・好き・・・・」 と囁く。
反射的に陛下が夕鈴の頬を掴み顔を上げると、頬をほんのり染めた夕鈴の笑顔が見えた。

「・・・・あれ? 皆の時と反応が違うな~。 ・・・ま、陛下、解かったでしょ?」
「反応が違う? これは何の暗示なんだ? 暗示をかけた奴はもう捕まえたんだろうな」 
 
浩大が頷くと陛下がもう一度夕鈴を見下ろす。
頬を染めた夕鈴が目を潤ませて陛下を見上げていた。 

「好き・・・・、陛下」  

囁く声と薄く開いた艶やかな唇は陛下を誘っているかのようで、この場に二人きりだったら神経が焼き切れていたかも知れない。 陛下は溜息を吐き、そして深く息を吸うと浩大に告げる。


「・・・・一刻も早く暗示を解くようにその者に伝えよ」









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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:59:03 | トラックバック(0) | コメント(0)
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