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秋雨  1
久々のお話。 台風の影響でつい書いちゃった。
あ、80000hitしてました 
本当にほんとーに有難うございます 訪れて下さった方皆様に感謝です。


では、どうぞ。
















大風と大雨が庭園の木々を揺らし葉を落し舞わせ、窓には叩き付けるような雨が吹き付ける。
暴風の接近に伴い侍女は早めに帰し、今部屋には夕鈴一人だけ。
窓に叩き付ける雨と風の音を夕鈴は物憂げに黙って見つめていた。

暴風が雨雲を集め、あっという間に外は暗くなって行く。 それでも窓近くの椅子に腰掛けた夕鈴は動かずに、じっと外の様子を見つめていた。 夕鈴が椅子から動かず、部屋の明かりを灯してくれる侍女らがいないため、部屋は徐々に薄暗く外からの暴風に震える窓枠の音だけが鳴り響いていた。

「・・・ふぅ・・・」

小さな溜息が零れ、誰も居ない部屋に流れていく。
少し寒く感じたが、それでも夕鈴は庭園の木々が風に大きく靡き翻弄される様を眺め続ける。

「どう・・・・しようかしら」

その表情は昏く視線は膝元を彷徨った後、またゆっくりと窓の外に向けられた。








政務が大方片付き、雨風が激しくなってきた夕刻近く、李順が王宮内の各部署に施錠するように指示をして回り、同時に早くから移動をしておいた壷や衝立や植木鉢の確認、落下が心配な回廊に下げられていた灯篭の撤去、大臣や高官の退仕の確認などで忙しく走り回っていた。 
この大雨、大風の影響で王宮にある物品に何らかの損傷があれば、それは王宮の財産が減るということ。 それだけは避けなければならないと李順は確認作業に余念が無かった。

陛下が執務室にて署名済みの書簡を片付け、今日の仕事を終えたと身体を解しつつ背伸びをすると、浩大が姿を見せる。

「いや~、すごい雨っすね! 屋根の上から落ちそうになるよ~。 危ない、危ない」
「こんな日にこそ入り込む刺客も居るから念のため調べておいて損はなかろう。 御苦労だな、浩大。 これを使って拭え」

にっぱりと哂った浩大は受け取った布で、濡れた肩を拭きながら首を傾げた。

「そういえばさ~。 お妃ちゃんってば早々と侍女を帰してるし、部屋は真っ暗だし、具合でも悪いのかぁ? 陛下、なんか聞いている?」
「・・・いや、昼間政務室に来た時は元気だったな。 部屋が真っ暗?」

陛下は首を傾げた。 夕鈴は怖がりのはず。 
今日みたいな強風と雨が叩き付けるような暴風時に部屋に一人、灯りも点けずに早々と寝ているとは。 侍女はこの天候だから早々と帰したのかも知れないが、夕鈴自身はもしかしたら掛け布に包まって怯えているのかも知れない。 
そう思うと居ても立っても居られなくなり、陛下が執務室から離れようとした時。

「陛下 どちらへ?」
「言わずとも判るだろう、李順。 愛しい妃の元へだが何か?」

外回りを終えた李順が扉を開き、合羽を脱ぎながら陛下を睨ね付ける。 

「夕鈴殿は侍女を帰しましたので、演技の必要はありません。 バイトとはいえ女性の部屋に容易に陛下が赴くのはお止め下さい。 それより周宰相より新たな書簡が来ております。 此方に目を通して頂いて署名を・・・・」
「この暴風だからこそ、一度様子を見てくる。 もし休んでいたら直ぐに戻る。 書簡はそこに置いておけ、戻ったら直ぐに確認するから」

陛下は李順の言葉に眉間に皺を寄せ、不機嫌を隠そうともせずに冷たい視線を投げ掛けると執務室から離れて行った。 同じように眉間に皺を寄せて李順が文句を口の中に飲み込むと、浩大がケラケラと哂い出した。 李順が睨み付けるも肩を竦めただけで悪びれた様子は無い。

「李順さんの気遣いは判るけどさ~、陛下だっていろいろ解ってはいるだろうから放って置けばいいじゃんか。 余り締め付けると逆に煽るだけだって~」
「夕鈴殿は一庶民であり、期間限定のバイトです。 陛下が執拗に関わるべきではないと進言することも臣下である私の役目ですのでね」

大仰な溜息を吐き、李順は宰相から受け取った書簡を卓へと移動させる。 
浩大は 「大変な仕事ですな~」 と哂ってその姿を嵐の中へと消して行った。







回廊は暗闇に包まれていた。 
叩き付けるような秋雨があっという間に陛下の長袍を濡らし、暴風が庭園の木々の枝を折り廊下に何本も飛んで転がっている。 稲光が時折回廊を浮き上がらせ、一拍置いてから周囲に恐ろしいほどの雷鳴を轟かせた。 
こんな時に夕鈴は明かりも灯さず一人部屋に佇んでいると思うと、陛下の足は自然急ぎ足になる。 
夕鈴は何かに悩んでいるのか、それとも借金のことか? 
普段から僕に悩みを伝えることは無い夕鈴だけど、こんな日に一人きりでいるなんてしないで欲しい。 どんなことでも話して欲しい。 君から紡がれる言葉だったら悩みでも文句でも、僕に向けてくれるものならば受け止めたいと思っているのに。

君の部屋を覗くとやはり暗闇に包まれており、そして静かだった。

「ゆーりん? ・・・・寝ているのかな」
「えっ ・・・・陛下ですか? こんな天候の中、如何されたんですか」

夕鈴の驚いた声が返ってきて僕の方が驚いた。 部屋に入ると稲光が光り、夕鈴が窓近くの長椅子に腰掛けているのが判る。 僕が部屋の明かりを灯しただけで夕鈴の表情に安堵の色が浮かび、一体何故暗闇の中で黙って腰掛けていたのか考えただけで胸が苦しくなった。 
そっと長椅子に腰掛けると夕鈴の衣装がしっとりと濡れていて細かく震えているのが判る。

「夕鈴っ! 震えているよ、どうしたの!?」
「あー・・・・、実は諸事情がありまして・・・・」

困った顔で笑う夕鈴は眉間に皺を寄せて肩を竦めた。 僕が急ぎ寝所から掛け布を持ってきて肩に掛けると、ほっとした顔で身体に纏わせて、その諸事情を話しだした。


暴風の接近に伴い政務室で官吏らが政務を片付け帰り支度を始めた頃、夕鈴は政務室から後宮立ち入り禁止区域に向かっていた。 立ち入り禁止区域の部屋の戸締りと、風に煽られ飛ばされそうな品々を片付けしなければと働いていた。 悪天候の為腰痛が悪化した老師の分も動き回り、その後妃衣装に着替えて足早に部屋に戻る途中、回廊に落ちていた枝に足を取られ、雨で濡れた廊下で思い切り腰を・・・・・。


「この部屋に戻るまではただ痛いくらいだったのですが、徐々に痛みが増してきて、夕餉を終えて嵐に怯える侍女さんを帰したはいいけど、灯りを灯して貰うのを忘れて部屋は暗くなっていくし、寒いし、痛いし・・・。 陛下が来てくれて良かったぁ」

夕鈴が安堵の表情で僕を見上げるから、先程とは違う意味で胸が苦しくなった。
もっと早く此処に来れたら良かったのに・・・・ と僕は心の中で夕鈴に詫びる。 
何かに悩んで居た訳ではないと判りほっとして、震えながら寒さに耐えていた君を抱き締めたくて、でも痛みがあるからと手を出すのを堪えるのが辛い。  
君の為に僕が出来ることをしようと立ち上がり、早速湯を沸かしてお茶を淹れようとすると 「陛下の御手を煩わせてしまい、すいません!」 と君の言葉。 
これくらいでと思ったけど、夕鈴の顔を見ると本当に申し訳なさそうで僕はがっかりしてしまう。
  
「直ぐに侍医を呼んで湿布か薬湯を用意させるから、夕鈴はそこで待っていて」
「あ、それには及びません。 暫らくしたら這ってでも寝台に行き勝手に寝ますから。 ただの打ち身ですから寝ていれば治りますよ。 大丈夫です」

すっぱりと言い切った夕鈴。 それでも眉間に皺を寄せて痛みに耐えているように見える。 
頼って貰えない寂しさに小さく嘆息した後、お茶を淹れて卓に置き、長椅子に腰掛けて夕鈴の頬に触れてみて僕はぎょっとした。

「ゆーりん! 頬が熱いよ? 寒いんでしょ? 本当に風邪かも知れないから直ぐに濡れた衣装を脱いで着替えなきゃ駄目だ! 薬湯を持ってくるからね!」
「えっ? 熱い・・・ですか? 寒気はしますが熱なんて・・・」

それでも強い口調で言い付けると夕鈴は戸惑いながら自分の額に手を宛がった。 掛け布をもう一枚持ってきて彼女に重ね、濡れた衣装を脱がそうと腰紐を解き、肩口を大きく開いた。 

「だぁっ! 自分でっ、自分で脱ぎますっ! 痛いから自分でしますからっ!」
「でもすごく濡れているから・・・・・。 袖抜ける?」
「濡れていても脱げます、から。 あっ、いっ、痛っ・・・!!」

小さく悲鳴をあげながら、夕鈴は震える身体から如何にか袖を抜く。 肩から腰部分が随分と濡れている妃衣装をどうにか腰部分まで脱ぐと肩の上に掛け布を覆って、夕鈴は荒い息を吐いて額の汗を拭った。 卓を夕鈴の傍へと寄せてお茶を飲むように告げ、僕は急いで侍医に薬湯を作らせようと部屋を離れることにした。 

「脱いだら大人しく僕を待っていてね。」 
「・・・っ、はぁ・・・、待っています。 やっぱり痛いです・・・」

如何にか身体を捻って濡れた衣装をやっと脱ぐことに成功したが、そこで痛みが強くなったようで掛け布を掴み夕鈴は長椅子に横倒しになった。 我慢強い夕鈴も少し蒼褪めた様子で、それでも微笑んで僕を見送るから僕も笑うしかない。








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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 21:30:01 | トラックバック(0) | コメント(0)
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