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秋雨  2
続きです。 秋の雨って落ち着きます。 休みの日なら、または夜の雨なら尚いい。
出勤時はやはり困ります。 


では、どうぞ。







部屋から回廊へ出ると浩大が直ぐに姿を見せたが、その表情は哂いを堪えているようにしか見えなかった。 訝しみながら夕鈴の薬湯を浩大に頼むと、直ぐに了解した浩大がそれでも何か言いたげに離れがたくしている様子が窺えた。

「・・・・何だ? 言いたい事があるのだろう」
「あー・・・、そうじゃないって判ってはいるんだけどさ~、台詞だけ聞いたら互いに凄いこと言っているな~って聞こえて来てね~。 曲解して邪推してました!」
「・・・・・・」

顎に手を宛がい思い出してみる。

『自分で脱ぎますっ!』 
『でもすごく濡れているから・・・・』
『・・・・脱げますから』  
『脱いだら大人しく僕を待っていてね』

ああ、確かに台詞だけ聞けば、そう聞こえないことも無い。 
楽しそうな表情の浩大に、僕は表情を落して細めた視線を投げ掛ける。 気配を察して隠密は急ぎ場を離れ、侍医の下へと薬湯を取りに走って行った。
 
僕が嘆息して踵を返し夕鈴の部屋へ戻ると、夕鈴は長椅子で腰の痛みを耐えながら薄い内着と掛け布だけを纏って、うんうんと唸っている。 浩大の考える甘い妄想を思い出し、痛みに呻く夕鈴を見て思わず小さく笑いを零す。 存外早く部屋に戻って来た陛下に気付いた夕鈴が顔を向けると、陛下が近付いて来た。

「夕鈴、冷えちゃったからお茶飲んで。 薬湯は浩大に頼んだから直ぐに届くよ」
「有り難う御座います。 ・・・あの、ちょっと起こして貰っていいですか?」

夕鈴の肩を支えながら起こすとくぐもった声が彼女の口から漏れた。 茶杯を渡して背と腰を擦っていると小さな震えを感じる。 温かい茶を飲んだ夕鈴は深く息を吐き、涙目で茶杯を置く。

「ごめんね、ちょっと我慢して」

僕はそう言って夕鈴の膝裏に手を回し、身体を持ち上げ膝上に横向きに座らせる。 羞恥と痛みが一度に襲ってきた夕鈴は悲鳴をあげるが、丁度雷鳴が響き渡り僕の耳にしかその叫びは届かなかった。 痛みと戦いながら僕の膝の上から逃げようと暴れるから苦笑してしまう。

「こーした方が暖かいでしょ? 腰に湿布を貼ることは出来ないから暖めるくらいはさせてね。 風邪ひいたら掃除も出来ないでしょ? 李順に怒られちゃうよね」

腕を回して夕鈴を束縛して耳元で囁くと夕鈴は抗うのを瞬時止めた。 そろそろと真赤な顔を僕に向けて何か言いたげに口をもぐもぐさせていたが小さく息を吐き、その何かを飲み込んだのが判る。 背を支えながら、片手で掛け布をしっかりと夕鈴に掛けて僕は頭を撫でた。

「バイト出来ないとお給料に響くもんね。 だから暖かくして薬湯飲んで早く治そうね。」
「・・・・はい。 薬湯飲んだら早く寝て治します。 風邪だったら大変ですので陛下もうつらないように嗽と手洗いをして早くお休み下さいね。 陛下も濡れてますよ」

そう言われて君を冷やす訳にはいかないと、僕は膝に夕鈴を乗せながら器用に長袍を脱いだ。 

「こ、ココで脱ぐんですか!? 直ぐに御戻りになって自室で御着替えなさった方がいいですよ? また外に出たら濡れちゃいますよ!」

驚いた顔をして夕鈴は膝の上で慌てたから痛みに悲鳴をあげる。 涙目でふるふる震える夕鈴の腰を擦ると大きく震えてまた悲鳴をあげた。 真赤な顔で眉根を下げるから、そんなに痛いのかと寝所へと抱き上げると腕の中で夕鈴がまた叫ぶ。
寝台にそっと下ろすとひんやりした絹の感触に夕鈴から違った震えが伝わった。  

「へーか、そっちですか? 薬湯を持って来たんだけどー・・・」

浩大の声が聞こえ、その声に一旦寝所から離れて顔を出すと、浩大が瞬時目を見開いて直ぐにニヤニヤと哂い出した。 すごく嬉しそうで意地の悪そうなその顔に嘆息する。

「・・・今度は何だ?」
「長袍脱いじゃってるから驚いただけっす! さっきの台詞に今の格好じゃ李順さんが青筋を立てるのが目に浮かぶっすよ~。 あ、この天候の中鼠を一匹捕まえてます」
「・・・それは李順に任せるように。 夕鈴が寝入るまでは此処に居る」
「了解っす! 李順さんには黙っていてやるよ。 じゃ、お大事に~!」

含み笑いのまま浩大が姿を消したので肩を竦ませ、薬湯を持ち寝所に戻ると夕鈴は大きな枕に体を埋めてまどろみに落ちそうだ。 
寝台に腰掛け 「夕鈴、薬湯を飲んでから休んでね」 と声を掛けると目を擦りながら手を差し出した。 その手に薬湯を持たせて手を重ね口へ運ぶと、薬湯の苦さに眉間に皺が寄る。 
飲み終えると、そこが限界だったのか大きく震えて夕鈴はゆっくりと目を閉じた。 
頬に触れるととても熱く感じる。

「熱があるね、寒気は?」
「ちょっと寒いです。 でも一眠りしたら大丈夫ですので陛下は御戻り下さいね」 

少し掠れてはいるけど、いつも通りの元気な声が返ってきた。 枕から身体をゆっくりとずらして深く寝かせると夕鈴の眉間に皺が寄ったが、僕がその表情に戸惑っていると慌てたように夕鈴は喋り続ける。 

「一眠りしたら痛みも風邪も治ってます。 陛下は風邪がうつらない内に早く御戻りに」 

僕を気遣う君の言葉を聞いて、僕はするりと夕鈴の隣に潜り込んだ。 夕鈴から大きく息を飲み込む声が聞こえたが、身体に手を回し腰を擦り乍らきゅっと抱き締める。

「なあっ!? 陛下っ! な、何、何をっ!?」
「夕鈴の体調が気になるから暫くは此処に居ると李順に伝えてある。(浩大にだが) それに・・・・私も寒いから暖めてくれ、夕鈴」
「嘘っ! 駄目に決まってますっ。 風邪がうつるし、いっ、痛いですからっ!」
「ん? ここが痛いのかな? それともここ? 大丈夫、ゆーりん?」
「ひぃぃ! だ、駄目ですって、陛下っ!」

狼の声色から小犬の声色に変えて、腕枕から伸ばした手で夕鈴の髪を、そして片手で腰を擦ると、夕鈴が僕の胸に羞恥に染まった真赤な顔をぐりぐりと押し付けながら声無き悲鳴をあげる。 僕は少し顔を上げて夕鈴の耳元に囁いた。

「ゆーりんを暖めてあげたいけど僕の手、冷たいかな? 痛いのかな?」
「いっ、いえ、冷たくは・・・・。 痛いのは、痛いけど・・・・陛下がそこを擦るのは駄目じゃないかと・・・・。 あっ、手を下げないでっ! いっ、痛っ!」

腰を擦っていた陛下の手が少し下がって来たから慌てて身を捩ると、背筋にまで痛みが走った。 涙目で顔を上げると至近距離に陛下の心配げな顔が見え、それでも痛いのだと思わず陛下の襟を掴むと柔らかく抱き締められる。

「もう動かないで僕の熱で温まってね、君が眠ったら僕も戻るから。 熱があるんだから大人しくしていてね。 ほら、ちゃんと掛け布を掛けて」

駄目だろうと思うのだが、・・・・思うのだが陛下は離れてくれないし、腰は痛いし、熱が上がったのか頭痛はするし、もう夕鈴は降参するしかなかった。 
それに確かに温かいし安心する。 
心臓が爆発しそうなくらいドキドキしているけど、何故か安心している自分が居る。 いろいろ考えていると薬湯のせいか熱のせいか夕鈴の頭の中は朦朧としてきた。 こんなことはいけないのだと身体は強張っているけど、心の中では 『温かいし、陛下がいいって言ってるし・・・』 と甘えたい気持ちが熱に浮かされて満ちてくる。 

「・・・あ、の・・・」
「僕もあったかいから嬉しい。 明日は片付けしないで身体を休ませてね。 無理は禁物だよ。 ちゃんと寝所で休むこと。 じゃないと添い寝しに来るよ」
「・・・・ちゃんと休みます。」
「うん! そうしてね。 じゃあ、お休み。」

小犬に抱き付かれぐるぐる回る頭の中に、ちらりと李順さんが浮かんだが温かさに包まれて滲むように消えていく。 陛下の襟にしがみ付く指に力が入らなくなり、瞼が重くなってきた。 
このままじゃ駄目だ・・・・・と思う気持ちに反して身体からは力が抜けていき、それでも如何にか 「私が・・・寝たら、陛下・・・・戻る?」 と聞いてみた。

眠気のため、舌っ足らずの甘い声が胸から響いて来て、そっと彼女の頭に唇を押し付ける。    

「うん。 ちゃんと仕事しに戻るよ」
 
そう言うと夕鈴から完全に力が抜けていくのが解かり、傍から離れることに安堵されて眠りに沈み行く彼女に寂しさを感じた。 こんな気持ちや僕の悩みなんか君は知らないだろうな、と。


窓を強く叩いていた雨足も徐々に遠のき出し、深い眠りに就いた彼女から規則正しい寝息が聞こえ出した頃、残念だと思いながら夕鈴の熱から身体を起こす。
少し赤味の差す夕鈴の頬を撫でてから掛布をしっかりと肩までかけると、君の手が這い出てきて何かを探すように動き出した。 手を伸ばすときゅっと握りしめ小さな声で僕の名を呼んだ。
早く君の熱が下がり腰の痛みがなくなるよう祈りながら、重ねた手を持ち上げて唇を寄せると、擽ったいのか手を引かれ、あっという間に掛け布の中に戻って行った。 

「早く元気になって僕をもっと悩ませてね。 君に翻弄されるのは楽しいから」


回廊に出ると秋風が冷たく感じたが、雨雲を流したのか空には綺麗な十六夜が見える。 
暫し眺めていると背後から暴風に近い気配を感じ、振り向くと想定した人物が昏く微笑んでいた。 鼠の件も政務の件も忘れては居ないけど、せめて側近が来れないくらい暴風が続いてくれたら良かったのに・・・・と陛下はそれはそれは深い溜息を吐いた。








FIN
 

 
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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:02:02 | トラックバック(0) | コメント(2)
コメント
本当にあおさんの、夕鈴と陛下に対する気持ちが伝わってくるような、優しさのあるお話ですよね。
愛が溢れてるっていうか。
毎日楽しみにしてます!
長く続けてくれる事を切に望んでます。頑張ってください(*^^*)
2012-10-04 木 17:21:51 | URL | 希望 [編集]
照れ
嬉しいコメント、超嬉しいです!! 陛下はやっぱり優しいですもんね。 下町にいくと意地悪になりますが、やっぱり優しい陛下。 なかなか濃いスキンシップがないところが、私の『萌え』や『暴走妄想』のタネになってます。 コメントいただけて嬉しい~! ありがとー!
2012-10-04 木 20:32:25 | URL | あお [編集]
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