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一葉落ちて貴方の秋を知る  2
元の言葉は 「一葉落ちて天下の秋を知る」 です。
青慎の心配とバイトに挟まれて苦しい夕鈴ですが、ここで大きな展開が。


では、どうぞ。










 












 
「夕鈴殿、ご心配なのは判りますので一旦家に戻られるのを許可します」
「・・・・・へ? あ、あの李順さん、だっ、大丈夫ですか? 陛下が下町に来るなんてことになりませんか? 本当に帰ってもいいのですか?」
「大丈夫です。 実は近隣国より使者が午後より来ますので陛下は逃げることが出来ないのです。 貴女はさっさと支度をして家に戻り、状況を浩大に報告しなさい。 大事なら仕方ありませんが、それ以外は直ぐに戻ることです。 いいですね?」

夕鈴は李順の言葉に大きく頷き、急ぎ執務室から部屋へと走った。 
背後から李順の 「妃が走らないっ!」 の言葉が聞こえ、急ぎ落ち着いた足運びに直したが、気持ちは急いていて傍から見たら可笑しな歩き方をする妃だっただろう。 それでも嬉しくて足は速まる。 
本来後宮から政務室や書庫へと出歩いたり、何度も宿下がりをする妃なんて在り得ない。 
最近も実家に帰っていた期間が長く、申し訳ないと思って居ただけに、上司の李順から許可が降りるとは思ってもいなかった。 駄目なら浩大に頼み込んで青慎の様子を見て来て貰おうと思っていたくらいだ。 思ってもいなかった事に夕鈴は嬉しくて堪らない。 
上司が何を考えているのか判らないが、この機会は黙って受け取るが勝ちだ。
おまけに陛下は政務で来られない。 
心配事が減ったことに安堵して夕鈴は急いで下町へと足を運んだ。




「李順・・・・。 夕鈴が下町に行く許可を出したというのは本当か?」
「おや、陛下。 もうお耳に入りましたか? 左様ですがそれが何か?」

バイト妃が下町に行ったくらいで政務に支障がある訳では無い。 普通ならそうだ。 まあバイトの妃がいる時点で普通ではないのだが、そのバイトの実家に顔を出そうとする陛下の存在も普通ではないだろうと李順は眼鏡を持ち上げながら思った。 おまけに目の前にいる陛下はバイト娘の不在に対して、狼化して明らかに機嫌が悪くなっている。
いや、その前からバイト娘の挙動不審な様子に政務が滞りがちとなり、何度溜め息や舌打ちで嗜めても気もそぞろ状態だった。 だから先ずはバイト娘の心配事を片付けて、落ち着いて政務に当たって貰おうと画策していた。

「彼女は弟の怪我の様子を見て、大事無いようでしたら直ぐに戻る予定です。 浩大も付けています。 陛下は安心して近隣国との接見に向かう準備をして下さい。 今回の接見で新たな貿易を開き国庫を潤さなければなりませんのでね」
「・・・・解っている。」
「では、すぐに衣装を整え書簡に目を通して下さいませ。 書簡は周宰相も目を通していますが、陛下も質疑応答に対して・・・・」
「解っているから大丈夫だ。 あと一刻で使者も来るだろう。 さっさと用意しろ。」
 
「御意」 と短く返答した側近は女官に指示を出し、謁見に相応しい衣装の用意を整え出した。 書簡に目を通しながらも夕鈴の様子が気になり、嘆息を漏らすと鋭い咳払いが背後から聞こえた。 肩を竦めて有能な側近の指示に従い使者を待つことにした陛下は浩大からの報告が待ち遠しく、窓から見える秋の装いを始めた庭園に目を走らせた。
使者との話し合いを早めに切り上げて下町の夕鈴の元へ行こうと、側近の目を盗み走る算段をしていると使者の到着が告げられた。 謁見の間へと大仰な衣装を身に纏った陛下が重い足取りを向けると、側近が背後から静かに予定を告げる。

「使者の次は各州から将軍が陳情を持ち御待ちで御座います故、そのまま待機されますように。 その後柳大臣と灌漑事業についての話し合いがあります」
「・・・・・・・・」
「柳大臣との話し合いの後は周宰相がお待ちですので、宜しくお願い致します。」
「・・・・・・・・」
「では、使者殿を待たせる訳には参りませんので御急ぎ下さい。」
「・・・・・・・・」

狼陛下の非情冷酷な表情を見ても側近である李順は眉ひとつ動かさず、しれっとした顔で扉を指差した。 大仰な溜め息を吐き陛下が足を進めると、その後に李順も付き従った。










・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・










「青慎、怪我は如何なの!?」

下町の自宅に飛び込んで、夕鈴は直ぐに青慎の顔を両手で挟み込んだ。 蒼白い顔で慌てた様子の姉に驚いた青慎は自分のためにわざわざ仕事を休んで足を運んでくれたと知り眉根を寄せて、それでも心から喜んだ。
 
「姉さん、大丈夫だって伝えたでしょう。 それなのに仕事を休んで・・・。 でも有り難う、嬉しいよ。 お仕事大丈夫なの・・・?」
「大丈夫よ。 それより凄く痛むの? 湿布は? 腫れは? 指先まで痺れるような痛みなの? ご飯食べてる? 勉強は、筆は持てるの? いっ、医者は!?」

矢継ぎ早な姉の台詞にも慣れている青慎は姉を椅子に座らせるとお茶を出し、先ずは落ち着くようにと姉の背をぽんぽんと叩くように撫でた。

「痛みは多少あるけど、腕を動かしても大丈夫だよ。 本当に強い打ち身だけで姉さんが来てくれるなんて・・・・・ 却って悪いこと書いちゃったね」
「そんなこと言わないでっ! でも大事無くて良かったわ。 心配で心配で上司にお願いした甲斐があったわ。 今日は美味しいご飯を作るわね!」

嬉しそうな顔を姉に向けた青慎は、はたと気付いてきょろきょろと周囲を見回した。
台所に向かおうとした夕鈴は何か心配事でもあるのかと青慎に首を傾げて見せる。

「あの、姉さん・・・。 李翔さん・・・・は、今日は来ていないの?」

その言葉に思わず卓を揺らし茶杯を倒しそうになった。 それでも微笑んで背を正すと、青慎の肩に手を宛がい、首を横に振る。
 
「青慎? 上司が掃除婦の家に足を運ぶなんて有り得ないでしょう」 

微笑んだ姉が掴んだ肩が痛いと思いながら青慎はそれ以上突っ込むのは危険とわかり、曖昧な微笑みを返して頷いた。 そこへ顔を出したのは几鍔。

「お、何だ夕鈴、お前また帰って来たのか? ああ、青慎の打撲でか? 全く・・・・お前は本当に弟大好きだよな~。 呆れるほどに」 
「何で几鍔が人の家に顔を出すのよっ! 毎回毎回人の家を何だと思っているのよ!!」
「あ~、煩い。 何だと思っているって幼馴染の家だと思っているよ」
「私は金貸しを幼馴染とは言わないっ! 用が無いなら出て行ってよ!」

夕鈴が真赤な顔で几鍔に向かって騒ぎ立てるも几鍔はしらけた顔でそっぽを向く。 それが余計に夕鈴の癇に障るのだが、相手はいつもの事と相手にもしない。 
それがいつもの関係だったのだが、今回は几鍔が何か言いたげに頭をガシガシと掻き回して、眉根を寄せて深い溜め息を吐き、夕鈴を真正面から見つめた。

青慎が 「僕が打撲してから几鍔さんは何度も来てくれて心配してくれたんだよ。」 と間を取持とうとアワアワと言葉を挟むと、夕鈴も口を閉ざした。 確かにあの父親じゃ青慎のことをちゃんと看ているのか心配だったし、几鍔は金貸しとはいえ面倒見がいいのは知っている。 
多少とはいえ心配して家に来たのだと判ればこれ以上は文句の言いようも無い。
それでも几鍔は父親に金を貸す、金貸しだ。 簡単に借りる父親が悪いのは解っているが、貸す方にも多少責任はあるだろうと几鍔を睨み付けた。

「青慎を何度か見舞ったのは別に意味はねえが・・・・。 あ~、お前が家に帰って来たなら・・・・・。 いや、でも・・・・。 まあ・・・・・」

眉間に皺を寄せた几鍔が頭をガシガシと掻き回しながら、舌打ちを何度もして夕鈴を見る。
 
「な、何よ。 何か言いたい事でもある訳?」 
「あ~・・・・・・・・」

戸惑った顔で夕鈴が向き直ると、深い溜め息を漏らした几鍔がそのまま勢いよく頭を下げた。

「・・・なっ!」
「頼みがある。 黙ってオレの・・・・・ 彼女になってくれ!!」




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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 21:00:02 | トラックバック(0) | コメント(2)
コメント
きゃあ[i:63951]
何ですかぁこの展開は
珍しいことに、几鍔が面倒ごとに巻き込まれたんでしょうか?夕鈴の性格からすると、いやいやながらも彼女役を引き受けるのかな?っていうか引き受けてっ・あぁ続きが待ち遠しい(^-^)・
2012-10-07 日 23:41:34 | URL | ともぞう [編集]
Re: きゃあ
早速のコメントありがとーです。 展開が変わり、下町風景となりました。 夕鈴は苦渋の選択を迫られるのか、・・・・・・・・・ああ、如何しましょうか? 悩み中です。えへ。
2012-10-07 日 23:59:17 | URL | あお [編集]
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